彼方のアストラは11人いるのパクリ？元ネタやオマージュポイントを考察

「彼方のアストラ」とは、少年ジャンプ+に連載された漫画です。同作品は、かつて漫画界における潮流で、現在では異世界ファンタジーものにその座を奪われたSFというジャンルに果敢に挑戦し、熱狂的なファンを獲得しました。その一方で、彼方のアストラは、「11人いる!」のパクリ説やオマージュ説が出ています。この記事では、彼方のアストラと11人いる!の似てる点、「宇宙船製造法」など他のオマージュ作品などを紹介します。

彼方のアストラは、集英社が運営するWebコミック配信サイトの少年ジャンプ+にて、2016年5月9日から2017年12月30日まで、全49話が連載されました。同作品のコミックスは、全5巻刊行されています。彼方のアストラの原作者は、篠原健太です。篠原健太は、同作品の前に週刊少年ジャンプで「SKET DANCE」を大ヒットさせています。また、2024年2月現在、同誌にて「ウィッチウォッチ」を連載中で人気を得てきました。

彼方のアストラは、少年ジャンプ＋の中では、藤本タツキの「ファイアパンチ」やLINK原作・宵野コタロー作画の「終末のハーレム」と並び、2010年代中盤の同サイトを支えてきました。しかし、その人気と評価は、むしろ連載終了後に高まったといわれており、2019年にテレビアニメ版が放映されています。彼方のアストラのアニメ版は、ブルーレイとDVD-BOXがあるほか、複数の有料動画配信サービスにて視聴することが可能です。

彼方のアストラの舞台は、西暦2063年の宇宙です。ケアード高校の女子学生であるアニエス・スプリングは、「大自然の中、生徒のみで5日間を過ごす」という惑星キャンプに参加しました。一緒に活動するメンバーは無作為に選ばれることになっており、顔合わせの場に来た彼女は、カナタ・ホシジマがメンバーの一人だと知って驚きます。カナタは、宇宙港でアニエスがひったくりに遭った際に、荷物を取り返してくれた人でした。

篠原健太原作のSF漫画彼方のアストラは、「萩尾望都原作の伝説的SF漫画11人いる!のパクリではないか？」という説が出たことがあります。また、一方で「似てる点はあるがパクリではなくオマージュだと思う」という意見も見受けられました。果たして、彼方のアストラが11人いる!のパクリ説は、本当なのでしょうか？この章では、11人いる!について解説しながら、彼方のアストラと同作品の似てる点をクローズアップしていきます。

11人いる!の原作者は、女性漫画家の萩尾望都（はぎお もと）です。萩尾望都は、1949年5月12日に福岡県で生まれました。幼い頃から児童小説などを読んでいた彼女は、高校時代に手塚治虫の「新撰組」を読んだことで漫画家を志すようになり、投稿を繰り返した後に上京し、手塚治虫と出会い「なかよし」編集部に自作漫画を持ち込んで1969年にデビューしました。萩尾望都の代表作には、「ポーの一族」などがあります。

11人いる!は、萩尾望都が、別冊少女コミック1975年9月号から11月号までに連載した中編SF漫画です。同作品は、少女漫画界で本格的なSFを描いた草分け的作品として知られており、第21回小学館漫画賞少女部門を受賞するなど、内外で高評価されてきました。また、続編「11人いる!東の地平・西の永遠」や番外編「タダとフロルのスペースストリート」が描かれています。さらに、テレビアニメ化、アニメ映画化、舞台化されました。

11人いる!のあらすじは、宇宙大学の受験生タダトス・レーンをはじめとする10人がチームを組んで、最終テストとなる協調性の実技試験に挑みます。10人は「黒」という惑星の衛星になった廃棄済みの宇宙船「白」にて、53日間の共同生活をすることになりました。ところが、メンバーが白に乗り込むと、そこにはなぜか11人のメンバーがいたのです。また、そのことを伝える非常ボタンを押してしまうと、全員不合格になるのでした。

11人いる!のパクリ説が出たことのあるSF漫画の彼方のアストラですが、原作者の篠原健太が影響を受けた作品として11人いる!を挙げていることが明らかにされました。つまり、同作品は11人いる!のオマージュであり、似てる点があることも当然のことと受けとめられるようになっているのです。オマージュとして両作品が似てる点について挙げますと、まずは作品の世界観が似てることがあります。

彼方のアストラと11人いる!は、人数こそ違うものの宇宙船が遭難し、本来はいないはずの存在にメンバーが疑心暗鬼になってしまう点が似てるのです。また、ストーリーの序盤で見られる「一人足りない」や「何かの試験とかじゃないすか？」というセリフは、11人いる!のオマージュと受け取ることもでき、両作品が似てることを如実に表していました。

さらに、彼方のアストラのストーリーを読み進めていくと、惑星キャンプメンバーのルカ・エスポジトの性別が、男性でも女性でもないいわゆる中性であることが判明します。実は、11人いる!にもフロルベリチェリ・フロルという性別不詳のキャラクターが登場していました。このように、ストーリーの本筋とは関係ない部分に、似てる要素を持ち込んだところに、彼方のアストラの原作者の篠原健太の力量が窺え、高評価されています。

前章では、彼方のアストラと11人いる!の似てる点やオマージュポイントを紹介してきました。同作品の原作者の篠原健太は、11人いる!の他にも、「宇宙船製造法」や「十五少年漂流記」が元ネタであることを公言しています。それでは、彼方のアストラには、宇宙船製造法のどのような部分が元ネタになっているのでしょうかこの章では、彼方のアストラの元ネタである宇宙船製造法、そして十五少年漂流記について取り上げていきます。

彼方のアストラの元ネタの一つに挙げられた宇宙船製造法とは、藤子・F・不二雄原作の短編SF漫画です。藤子・F・不二雄（藤本弘）は、藤子不二雄A（安孫子素雄）と二人で、藤子不二雄のペンネームで漫画家デビューしました。二人の純粋な合作作品は「オバケのQ太郎」など数えるほどしかなく、実際は別々に描いた作品が多いことで有名です。藤子・F・不二雄の代表作は、「ドラえもん」や「キテレツ大百科」などがあります。

実はドラえもんにも散りばめられているのですが、藤子・F・不二雄はSF漫画の名手として知る人ぞ知る存在です。俗に「SF短編シリーズ」と呼ばれる作品群があるのですが、傑作が多いことで知られ、後続の漫画家をはじめとするクリエイターたちに多大な影響を与えました。特に、「ミノタウロスの皿」や「夢カメラ」「パラレル同好会」などが、名作として多くのファンを獲得しているとのことです。

宇宙船製造法は、藤子・F・不二雄のSF短編シリーズの一作で、週刊少年サンデー1979年8号に掲載されました。宇宙船製造法のストーリーは、宇宙の遠い惑星に取り残されてしまった少年少女たちのサバイバル生活を描いたものです。篠原健太は、宇宙船製造法が彼方のアストラの元ネタであることを明かしており、「宇宙船製造法をはじめとする藤子・F・不二雄のSF短編集はバイブルのような存在」と最大級の賛辞を語っていました。

彼方のアストラの元ネタやオマージュとなった作品には、11人いる!や宇宙船製造法の他に十五少年漂流記もありました。十五少年漂流記とは、フランスの小説家ジュール・ヴェルヌが1888年に発表した作品です。同作品は、チェアマン寄宿学校の1年生から5年生までの少年14人と、水夫見習の黒人少年1人の15人が、アクシデントで無人島に漂着し、そこでサバイバル生活を送るという内容であり、世界中で読まれてきました。

十五少年漂流記は、日本での人気が極めて高い海外小説であり、作品自体が何度もアニメ化や実写映画化などのメディアミックスが行われています。また、SF作品における元ネタやオマージュの対象となることも多く、ロボットアニメの金字塔として名高い「機動戦士ガンダム」も当初は十五少年漂流記が元ネタとなり、後にそのプロットが「銀河漂流バイファム」へと活かされました。

彼方のアストラについても、篠原健太は元ネタやオマージュ先の一つとして、十五少年漂流記の影響を挙げていました。彼は、惑星キャンプのメンバーが当初15人だったことを明かしており、同作品の影響が如実に窺えたのです。また、宇宙船製造法も十五少年漂流記の影響が濃い作品であり、その意味では、彼方のアストラは十五少年漂流記の孫的な存在にあたると分析する熱心なファンもいるとのことです。

篠原健太原作のSF漫画彼方のアストラは、連載終了から6年以上経過した2024年の現在でも、面白い漫画として新規ファンを増やしているとのことです。同作品の熱心なファンの中には、X（旧Twitter）などのSNSを用いて、面白い魅力を伝えている人も見受けられました。彼方のアストラには、どのような面白い要素があるのでしょうか？この章では、彼方のアストラの面白い魅力を、二項目に分けて取り上げていきます。

彼方のアストラは、SFジャンルに分類される漫画ですが、そこに留まらないスケールを有しているとのことです。閉鎖空間の中に、惑星キャンプメンバーを脅かす刺客が紛れ込んでいるという点では、クローズド・サークルやミステリー作品に分類できますし、またメンバーが生存を懸けて試練に立ち向かう展開には、サバイバルの要素も見て取れます。このように、多彩なジャンルが内包されている点が、面白い魅力になっているのです。

彼方のアストラの原作者の篠原健太は、「SKET DANCE」や最新作の「ウィッチウォッチ」を読むとわかるように、テンポの良いギャグが得意な漫画家です。そのテンポの良さは、彼方のアストラにもしっかりと反映されていました。シリアスかつミステリアスな展開が続く同作品ですが、随所でコメディチックなシーンが描かれており、そうしたストーリー展開が読者を決して飽きさせることのない面白い魅力につながっているのです。

この章では、彼方のアストラに関するX（Twitter）でのつぶやきを、いくつか取り上げていきます。彼方のアストラは、インターネット上でどのような感想や評価を受けているのでしょうか？

こちらは、彼方のアストラの大ファンだと思われる方のツイートです。同作品の尋常ではない面白い魅力をSNSで伝えようとすると、どうしてもネタバレになってしまうことが歯がゆいとつぶやいていました。

こちらは、彼方のアストラのヘヴィなファンだと思われる方のツイートです。彼方のアストラの面白い魅力を数点挙げながら、コミックスが売れてないとされる現状を憂いているとつぶやいています。

こちらは、漫画やアニメの大ファンだと思われる方のツイートです。彼方のアストラについて、原作漫画もテレビアニメ版も面白いとつぶやいており、現代版11人いる!であると高評価していました。

こちらは、彼方のアストラの原作漫画を読んでいた方のツイートです。同作品を読んで、藤子・F・不二雄の宇宙船製造法を思い出したとのことで、篠原健太も藤子F作品のファンだと推察していました。

この記事では、人気SF漫画の彼方のアストラの11人いる!のパクリ説について検証してきました。同作品は、原作者の篠原健太が11人いる!のオマージュであることを語っており、パクリではないことが明らかにされています。この機会に是非、彼方のアストラと11人いる!、そして他の元ネタとなった作品を読み比べてください。