バケモノの子が伝えたいこととは?細田守監督のねらいや物語の意味を考察

映画バケモノの子で細田守監督が伝えたいことを、作中のメタファーなどを紐解きながら考察します。バケモノの子とは、「竜とそばかすの姫」の細田守監督にとっての3作目の長編オリジナルアニメ映画作品です。この記事ではバケモノの子で細田守監督が伝えたいことや狙いを考察します。また合わせてバケモノの子に登場した実在の場所や本などの元ネタや意味を考察します。他にもあらすじやキャラクターのその後も紹介していますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

バケモノの子が伝えたいこととは?細田守監督のねらいや物語の意味を考察のイメージ

目次

  1. バケモノの子とは?
  2. バケモノの子が伝えたいことを考察!細田守監督のねらいは?
  3. バケモノの子の場所や本の意味・元ネタを考察
  4. バケモノの子の映画のその後を考察
  5. バケモノの子に関する感想や評価
  6. バケモノの子が伝えたいことまとめ

バケモノの子とは?

バケモノの子とは、熊の獣人と人間の子供の絆や成長を描いた細田守監督の長編アニメ映画です。この記事では細田守監督がバケモノの子に込めた伝えたいことやねらい、意味などを考察します。またバケモノの子のあらすじの他にも映画内に登場する小説「白鯨」について、またオマージュしている映画や小説などの元ネタについても紹介しますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

バケモノの子の概要

映画「バケモノの子」のあらすじや伝えたいこと・意味などを考察する前に、まずはバケモノの子の作品概要を紹介します。バケモノの子は2015年に公開された細田守監督の長編アニメ映画です。監督の細田守さんにとっては「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」に続く3作目の長編オリジナルアニメ映画作品で、興行収入は58.5億円を記録しました。

主演の九太/蓮役には染谷将太さん、熊徹役には役所広司さん、ヒロイン役には広瀬すずさんなど多くの人気俳優や女優がキャスティングされて話題を集めました。またバケモノの子は2016年に開催された第39回日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞を受賞しています。それでは次に、バケモノの子のあらすじを紹介します。

バケモノの子のあらすじ

バケモノの子のあらすじを紹介します。物語は主人公の少年・蓮(れん)が9歳の時に両親が離婚し、自分を引き取った母親が事故死したことから始まります。蓮は親戚一同にうんざりしてその場を飛び出し、渋谷の雑踏の中に紛れ込みます。そこで偶然出会った熊の獣人・熊徹に弟子として見込まれた蓮はバケモノの世界で熊徹に師事することになり、九太と名付けられたのでした。それではあらすじの次に、伝えたいことを考察します。

「竜とそばかすの姫」公式サイト

バケモノの子が伝えたいことを考察!細田守監督のねらいは?

作品概要やあらすじを紹介したところで、次に映画バケモノの子が伝えたいことや本作に込められた細田守監督の狙いを考察します。上で紹介したあらすじの通り、初めは反発し合っていた熊徹と九太の間に徐々に築かれていく親子の強い絆がメインに描かれています。実際に細田守監督は、バケモノの子を通して現代社会の変容とともに変わっていく新しい家族の在り方や親子関係を一緒に考えて欲しいという旨のコメントを残しています。

そこでここでは、映画バケモノの子で描かれた人間関係やエピソードを紐解き、細田守監督のねらいや伝えたいことを考察していきます。自身が親になり新たに気づくことがあったという細田守監督の伝えたいことを、より深く考察したい方や興味のある方はぜひチェックしてみてください。

考察①熊徹と九太の関係

映画バケモノの子が伝えたいことを考察します。一つ目に考察するのは熊徹と九太の関係です。熊徹はバケモノ界の頂点である宗師を決める闘技会に出場するべく、その条件となる弟子を求めていました。九太は両親を失った人間界に居場所がなく、利害が一致した2人はバケモノ界で師弟関係を結びます。しかし元々孤児で我流で武術を磨いた熊徹は師匠らしく振る舞うことができず、我の強い九太もそれに強く反発し、喧嘩ばかりでした。

ですが熊徹も九太も孤独な身の上という点では通じるものがあります。それに気が付いた2人は少しずつ歩み寄り、修行を通じて絆を深めていきました。熊徹と九太は一般的な上位下達の師弟関係ではなく、熊徹が九太に武術を教え、そして1人で生きてきたことで独りよがりになっていた点を逆に九太に教わります。修行を始めて8年が経ち九太が17歳になった頃には、それは本物の親子にも負けない強い絆となっていました。

考察②熊徹の言う「胸の中の剣」

映画バケモノの子が伝えたいことを考察します。二つ目に考察するのは熊徹が言っていた「胸の中の剣」についてです。修行を始めたばかりの頃、コツを聞かれて熊徹は「胸の中の剣を握るんだ」と伝えますが、抽象的過ぎて九太には全く伝わらず喧嘩になってしまいます。ここで熊徹が言っている「胸の中の剣」とはおそらく「各々が大切にしているもの」のことを指していると推測されます。

この時9歳の九太には大切にしているものはまだ見つかっておらず、熊徹の言っている意味も理解することができません。しかしバケモノの子の物語終盤にて、九太は自分にとっての「胸の中の剣」を見出し本当の強さを発揮します。詳しくは下の考察で紹介します。

考察③人間が心の闇にとらわれる表現

映画バケモノの子が伝えたいことを考察します。三つ目に考察するのは映画「バケモノの子」にて人間の胸に空く穴の描写です。バケモノ界には人間が住むとと心に闇を宿すという言い伝えがあり、九太が熊徹に連れられて初めてバケモノ界に来た時ほかのバケモノたちに反対されました。心の闇は胸にポッカリと空いた穴として描写され、九太にも出現します。

物語終盤、猪王山の息子である一郎彦の正体が人間であることが明らかになるのですが、一郎彦はこの心の闇に取り憑かれおかしくなってしまいます。このバケモノの子における「心の闇」とは、喪失感を示していると考えられます。一郎彦は自分が尊敬する父親や兄弟たちのようなバケモノではないことに薄々気づいており、それによって生み出された喪失感が猪王山が熊鉄に敗北したことをきっかけに爆発してしまうのでした。

考察④九太が人間界に戻る事に決めた理由

映画バケモノの子が伝えたいことを考察します。四つ目に考察するのは、九太が人間界に戻ることを決めた理由です。九太がバケモノ界にきて8年が経ち17歳になったある時、偶然人間界に通じる道を見つけます。九太はそこで両親が離婚して以来会っていなかった父親に再会します。父親は九太の無事を喜び、また一緒に住むことを提案します。九太は複雑な気持ちで一度バケモノ界に戻り、熊徹の参加している闘技会へと赴きます。

闘技会で行われている宗師の座をかけた猪王山との戦いで、熊徹は負けかけていました。しかし会場に到着した九太の応援で気力を吹き返し逆転勝利します。勝利に喜ぶ熊徹と九太でしたが、背後には心の闇に囚われた一郎彦がいました。猪王山の負けを認めない一郎彦は刀を投げ、それが熊徹の胸を貫きます。九太は逃走した一郎彦を追って人間界へと向かいます。

一郎彦は心の闇の力を暴走させ、大きな白鯨を出現させて渋天街に大騒ぎを起こしていました。九太はそれを止めるべく一郎彦に立ち向かいます。一郎彦の心の闇を消滅させるため自分の中に取り込んで自滅するしかないと考える九太の前に、九十九神の剣に転生した熊徹が現れます。九太は胸の中の熊徹をしっかり感じながら剣を抜き、白鯨を切り捨てます。

こうして一郎彦の引き起こした騒動が収束した後、九太は人間界に戻ることを選択します。それまで育ての親の熊徹がいるバケモノ界と、実の父親と大学進学の未来がある人間界の間で迷っていた九太でしたが、心の中にはいつも熊徹が存在するということを理解したからでした。ここで細田守監督が伝えたいことは、少年が父親によって強さというものを教えられ、大人に成長する過程だと考えられます。

考察⑤九太が闇落ちしなかった理由

映画バケモノの子が伝えたいことを考察します。五つ目に考察するのは、九太が闇堕ちしなかった理由です。九太は一郎彦と同じくバケモノ界に住む人間でありながら、心の闇に飲み込まれてしまった一郎彦とは違って最後まで闇落ちしませんでした。周囲との違いに悩み喪失感に苛まれてしまった一郎彦との違いは、熊徹との修行を通じて「強さ」とは何かを考えてきた点にあると考えられます。

一郎彦にとって強さの象徴はバケモノである父親・猪王山そのものであり、どうしてもバケモノにはなれない人間の自分を認めることはできませんでした。それに対し九太は、各地を行脚した旅の中で強さにはいろいろな形があるということを学んできました。そのため一つの強さに固執した一郎彦のように闇落ちすることがなかったのではないかと考えられます。それでは次にバケモノの子に登場する場所や本の意味・元ネタを考察します。

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バケモノの子の場所や本の意味・元ネタを考察

映画バケモノの子のあらすじや細田守監督が伝えたいことを考察したところで、次にバケモノの子に登場する場所や本の意味・元ネタを紹介します。バケモノの子には実際に存在する場所や本などが登場し、それぞれに意味が込められています。また物語のある展開にも元ネタが存在します。ここではバケモノの子を理解する手助けになると考えられる意味や元ネタを考察していきますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

考察①図書館と渋谷という場所の意味

映画バケモノの子に登場する場所や本の意味・元ネタを考察します。一つ目に考察するのは、渋谷が物語の舞台に設定された意味です。九太が熊徹と出会ったり、バケモノ界と人間界がつながったり、一郎彦の宿していた心の闇と対峙したりなど、人間界での大きな出来事はこの渋谷を中心に起こります。細田守監督は渋谷を舞台に選んだ理由として「慣れ親しんだ街の中にこそワクワクするものが潜んでいるのではないか」と語っています。

またバケモノの子を視聴した人の中には「人間界に戻った九太がなぜ唐突に図書館へ向かったのか」という点を疑問に思う方も多いようです。これは小説版の「バケモノの子」にて明かされており、そこでは8年ぶりに人間界に戻った九太は渋谷の街の中に溢れかえる文字たちに酔ってしまい、子供の頃に慣れ親しんだ文字を読んで感覚を取り戻そうと考えたということが説明されてれています。

考察②九太が図書館で見つけた「白鯨」

映画バケモノの子に登場する場所や本の意味・元ネタを考察します。二つ目に考察するのは、人間界に戻った九太が図書館で最初に手に取った本「白鯨」の意味です。白鯨とは1851年にアメリカの小説家であるハーマン・メルヴィルが発表した長編小説で、巨大なマッコウクジラ「モビー・ディック」を巡る捕鯨船の乗組員たちの陰鬱な運命を描き出しています。

この図書館で手に取った「白鯨」の小説は後に一郎彦の手に渡ることとなり、一郎彦の心の闇を具現化した大きな白い鯨として姿を表します。これは元ネタとなったメルヴィルの「白鯨」において、マッコウクジラ「モビー・ディック」に片足を奪われた船長エイハブが白鯨に対して並々ならぬ復讐心を抱いていたことと関係していると考えられます。復讐の鬼となったエイハブは、白鯨との因縁の戦いの結果自身も海に沈んでしまいます。

バケモノの子では楓の口から「白鯨は自分を映す鏡で、心の闇の象徴」であるというセリフが語られます。これは細田守監督による「白鯨」の解釈であると考えられます。よって細田守監督は、周囲との違いに苦悩して弱い人間である九太に憎しみを向けた一郎彦を、足を奪った白鯨への憎しみに囚われて自滅したエイハブ船長と重ね合わせていると推測されます。

考察③中島敦の小説「悟浄出世」との関係

映画バケモノの子に登場する場所や本の意味・元ネタを考察します。三つ目に考察するのは中島敦の小説「悟浄出世」との関係です。中島敦は1909年に生まれ1942年に亡くなった小説家で、「山月記」や「光と風と夢」などの代表作があります。映画バケモノの子は中島敦の小説「悟浄出世」を一部元ネタにしていると考えられます。「悟浄出世」は「西遊記」に登場する沙悟浄が三蔵法師一行の仲間となるまでを描いています。

「悟浄出世」は沙悟浄が「自分は何者なのか」という問いに対する答えを求めて色々な妖怪の賢人の元を訪ねにいく物語です。これは映画バケモノの子にて九太と熊徹、多々良に百秋坊たちが各地の宗師の元を巡り、「強さとは何か」を尋ねる展開と似ています。この旅で九太は強さには色々な形があるということを知り、そして後に熊徹という存在を「心の中の剣」にすることに繋がるのでした。

考察④カンフー映画へのリスペクト

映画バケモノの子に登場する場所や本の意味・元ネタを考察します。四つ目に考察するのはバケモノの子に込められたカンフー映画へのリスペクトです。バケモノの子には1978年に公開されたカンフー映画「スネーキーモンキー 蛇拳」へのオマージュが数多く盛り込まれています。九太が熊徹の動きを真似して修行するシーンや、熊徹と九太が争うようにして食事をするシーンなどがその例です。

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バケモノの子の映画のその後を考察

バケモノの子のあらすじや登場する場所や本の元ネタ・意味を考察したところで、次に映画のその後を考察します。細田守監督によって生み出された数多くの魅力的なキャラクターたちのその後が気になる方はぜひチェックしてみてください。

考察①一郎彦のその後

人間であることから心の闇に囚われてしまった一郎彦ですが、九太に斬られたあと意識を失っていました。目覚めた一郎彦は闇に囚われていた間の記憶を失っていました。そんな彼のベッドの傍らでは父親の猪王山を含めた家族が心配し疲れたように眠っていました。猪王山は一郎彦が闇に囚われた理由を真実を隠したためだと考えているため、その後は一郎彦に全てを打ち明けて再び家族としてやり直すことを予感させるシーンとなりました。

考察②九太と父親のその後

育ての親である熊徹がいるバケモノ界と、実の父親がいて大学進学の未来がある人間界のどちらを選ぶか葛藤していた九太。しかし熊徹が心の中の剣としてこれからもずっと共にあることを知ってからは人間界に帰り、実の父親と暮らすことを選びます。

考察③九太と楓のその後

渋谷の図書館で出会い、それから勉強を教えてもらう仲となった楓。九太が人間界を選んだことを喜んでいた楓とは共に受験勉強を支え合い、大学進学を目指していくと推測されます。ここまでバケモノの子のあらすじや細田守監督の伝えたいこと、元ネタや意味などを考察してきましたが、最後にバケモノの子に関する感想や評価を紹介します。

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バケモノの子に関する感想や評価

バケモノの子の熊徹の九太の不器用な絆の深め方や、白鯨の解釈について感想を述べているツイートです。バケモノの子における白鯨は、物語を理解する上で重要なメタファーとしての意味を持っていることが分かります。

バケモノの子における熊徹と九太が一般的に想像する師弟関係ではなく、それに学ぶところがあったという感想のツイートです。細田守監督が意図し伝えたいことがしっかりと観客に伝わっていることが分かります。

バケモノの子における熊徹と九太の関係に感動したという感想のツイートです。熊徹と九太の、師弟でありながら親子のような絆に感動したという感想が他にも多くみられました。

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バケモノの子が伝えたいことまとめ

バケモノの子のあらすじや細田守監督が伝えたいこと・狙いを考察しました。またバケモノの子に登場する場所や本の元ネタ・意味や登場人物たちのその後を考察しました。この記事でバケモノの子に興味を持った方はぜひ視聴してみてはいかがでしょうか?

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