2021年01月28日公開
2021年01月28日更新
【この世界の片隅に】憲兵が帰った後になぜ笑いが起こった?批判が多い理由も考察
「この世界の片隅に」では、戦時中の日本の日常が丁寧に描かれ、海岸線を写生するすずさんを間謀行為とみなして叱責し、北條家で厳重注意をした憲兵の存在は、観る者に恐怖を与えると同時に、憲兵が帰った後の北條家のある行動が問題視されました。本文では、「この世界の片隅に」から、憲兵が帰った後に北條家で起った笑いの意味や、笑いのシーンに対する批判的な意見が多い理由等を考察しました。
目次
この世界の片隅にとは?
「この世界の片隅に」は、戦時中の広島・呉を舞台に、激動の時代を必死に生きぬく1人の女性の日常を描いた作品です。以下では、「この世界の片隅に」から、海岸線を写生するすずさんを叱責した憲兵と、憲兵が帰った後に起った笑いのシーンや意味、それらに対する批判的な意見が多い理由などを考察しました。
この世界の片隅にの概要
こうの史代先生の漫画「この世界の片隅に」は、2007年~2009年にかけて「漫画アクション」で連載されていた作品で、2011年・2018年にテレビアニメ化、2016年にアニメ映画化されました。物語は、太平洋戦争中の広島を舞台に、軍都・呉に嫁いだ北條すずの日常を主軸に、激動の時代を生き抜く人々の姿を描いた作品です。
この世界の片隅にのあらすじ
太平洋戦争が激しさを増す1944年2月、主人公・浦野すずは、北條周太郎との結婚を機に、広島から呉に移り住みます。しかし、日本の敗戦の兆しが見え始めると共に、軍都・呉も空襲を受けるようになり、広島も原爆投下による甚大な被害を受けます。すずも、空襲による右手の負傷や、家族を失う痛ましい出来事に遭遇するも、過酷な運命にもめげず、戦後を生き抜きます。
この世界の片隅にの憲兵が帰った後になぜ笑いが起った?
「この世界の片隅に」の憲兵は、高台の畑で停泊中の軍艦を写生するすずさんを「間諜行為」と叱責し、北條家に厳重注意をした恐い人物でしたが、憲兵が帰った後、北條家にて怪子たちが笑うシーンが起き、批判的な意見が相次ぎました。以下では、「この世界の片隅に」の憲兵が帰った後の笑いの意味の考察と、戦時中は恐い存在と言われた憲兵について紹介します。
憲兵が帰った後に怪子たちが一気に笑い出したシーン
間諜行為の疑いを持つすずさんを北條家に連行した憲兵は、周作の母・怪子・晴美を前に、すずさんの写生について厳重注意します。しかし、憲兵の話に耳を傾ける怪子たちの表情は、笑いをこらえているようにも見えます。そして、憲兵が帰り、周作が戻ってきたとたん、すずさん以外の家族は一気に笑い始めます。
すずさんは、自分だけが笑えないとしょんぼりしつつも、「この世界の片隅に」を見ている視聴者からは、なぜ、緊張感漂うシーンの後に怪子たちが大笑いをしたのか、疑問が浮上しました。しかし、この笑いのシーンの意味は、その後の北條家のセリフを読み解くと分かります。
憲兵が帰った後の笑いの意味
本来ならば、笑ってはいけないシーンにもかかわらず、憲兵が帰った後に起った笑いは、すずさんの性格にありました。すずさんの写生が、憲兵から間諜行為とみなされたことは、北條家の人々だけでなく、「この世界の片隅に」を見ているファンにとっても、予想外の展開です。また、すずさんが間諜目的で写生したという訴えも、すずさんの性格からは想像のつかないことであり、怪子たちが笑ってしまうのも、無理はないでしょう。
夫の実家から戻ってきた小姑・怪子の登場により、北條家も一時はぎぐしゃくした雰囲気が漂いましたが、憲兵の勘違いが思わぬ形で北條家に笑いを呼び、円満な空気を作り上げました。しかし、間諜行為を疑われたすずさんにとっては、違う意味でショックを受けた出来事だったでしょう。
批判が多い理由を考察!実際の憲兵は甘くない?
「この世界の片隅に」の憲兵のシーンは、北條家に笑いをもたらすための演出でしたが、よりリアルな展開を求めるファンからは、実際はそんなに甘くないと批判的な意見も寄せられました。まず、憲兵とは、日本陸軍に所属する軍事警察であり、治安維持法や軍事保護法の下、軍に対して批判的な行動をしている国民の監視・取り締まりを担った組織です。
日常を舞台した「この世界の片隅に」では、北條家に連れて帰り、その家族に厳重注意をする程度で収まりましたが、実際は、憲兵隊詰所に連行・拘留され、尋問で疑いが晴れたら釈放という流れでした。そして、戦争の激化に伴って憲兵の監視も厳しさを増し、キリスト教信者も監視の対象とされました。また、尋問中に死亡する摘発者も少なからずおり、憲兵は国民にとって戦争より恐ろしい存在だったでしょう。
この世界の片隅にの憲兵役のTBS版ドラマキャスト
2018年7月~9月にかけて放送された「この世界の片隅に」のTBS版では、ドラマオリジナルエピソードとして、90歳を越えたすずが登場する現代(2018年)パートが加えられました。以下では、「この世界の片隅に」から、憲兵役のTBS版ドラマキャストを紹介します。
川瀬陽太のプロフィール
「この世界の片隅に」の憲兵役・川瀬陽太さんは、1969年生まれ、神奈川県出身の俳優です。専門学校を卒業後は、映像関係の仕事に就き、1995年に映画「RUBBER'S LOVER」の主演で俳優デビューします。近年は、瀬々敬久監督作品を中心に映画やテレビに出演し、2016年には映画「ローリング」等で、第25回日本映画プロフェッショナル大賞・主演男優賞に選ばれました。
川瀬陽太の主な出演作品
俳優・川瀬陽太さんの主な出演作品は、映画「ジョーカーゲーム」、映画「64(ロクヨン)の前編・後編」「シン・ゴジラ」、「おっさんのケーフェイ」等です。テレビドラマは、「贖罪の奏鳴曲」、「anone」、「監察医 朝顔」、「竜の道 二つの顔の復讐者」等です。
この世界の片隅にの憲兵役のアニメ映画の声優キャスト
2016年11月に公開されたアニメ映画「この世界の片隅に」は、第71回毎日映画コンクール日本映画優秀賞をはじめとする数多くの賞を受賞しました。また、上映館の増加により、アニメ映画版の連続上映は1133日に及び、日本のアニメーション映画では、史上最長のロングラン記録となりました。以下では、アニメ映画「この世界の片隅」の憲兵役の声優キャストを紹介します。
栩野幸知のプロフィール
アニメ映画版「この世界の片隅に」の憲兵役・栩野幸知さんは、1952年生まれ、広島県出身の俳優で、大学大学中に、映画「仁義なき戦い・頂上作戦」でデビューしました。現在は、俳優業と並行して映画スタッフとしても活動しており、劇場刺青師やガンエフェクトコーディネーターとしての腕前も、高く評価されています。また、アニメ映画「この世界の片隅に」では、広島弁の監修も担当しました。
栩野幸知の主な出演作品
アニメ版憲兵役を担当した栩野幸知さんの主な出演作品は、映画「狂った果実」、「ゼイラム」、特撮ドラマ「牙狼-GARO-」、映画「おかあさんの被爆ピアノ」等です。また、映画「ホワイトアウト」「日輪の遺産」等ではガンエフェクトを担当しました。声優初挑戦となったアニメ映画「この世界の片隅に」では、憲兵役の他に、玉音放送の声や空襲警報の声など、1人6役を演じています。
この世界の片隅にの憲兵に関する感想や評価
以下では、憲兵が帰った後の北條家の人々の笑いについて賛否両論が飛び交った、「この世界の片隅に」の憲兵に関する感想や評価を紹介します。
感想1:ロケ地マップに憲兵さんが登場
今日いただいたロケ地MAPになんと!?憲兵さん達がΣ(゚д゚lll)
— CLM (@CLM10290306) January 5, 2017
ヒール役になりがちなこの二人をMAPに載せてあげるご配慮に当MAP監修の片渕監督とデザインの浦谷監督補=片渕ご夫妻の優しさを感じました。#この世界の片隅に#片渕須直 #浦谷千恵#憲兵さん pic.twitter.com/Le7UnOqX4E
2016年にアニメ映画の上映を受け、片淵須直監督監修による「この世界の片隅に」のロケ地マップが制作・配布されました。全て手描きで描かれたロケ地マップには、モデルとなった場所や主要キャラのイラストに加えて、憲兵さんの顔もマップに描かれました。「この世界の片隅に」でも恐い存在だった憲兵でしたが、彼らは戦時中の日本の様子を演出する、物語には欠かせない名脇役でしょう。
感想2:平和な時代を実感させられた
からす小島係留所から1枚パチリ!
— たく@WORLD IN UNION (@taku_seka) August 16, 2017
近くに海自の門番の人が・・・
すずさんの時代なら間違いなく「間喋行為じゃ!💢😠💢」としょつぴかれてた((( ;゚Д゚)))
平和な時代で良かった・・・(皮肉ですよ(^_^;))#この世界の片隅に#からす小島係留所#憲兵さん pic.twitter.com/XyoAqK3UZn
スマートフォンやSNSの普及により、いたる場所で写真撮影をする人々が増えた一方、戦時中は、何気に書いた風景すら、憲兵の摘発対象と見なされてしまい、現代では考えられないでしょう。平和な時代を謳歌する現代人にとって、「この世界の片隅に」の日常は、常に憲兵の監視がつきまとう窮屈な時代と思える一方、平和な時代に対する幸福を、作品を通じて改めて考えさせられたとの声も多く見られます。
感想3:涙なしでは見られない作品
とても素晴らしい作品だと思った。
— まつ (@7korobi_100ki) January 19, 2021
戦争がテーマだけど ほんわかしていて 登場人物も皆 親近感があって。だからこそ悲しくて沢山泣いた。#この世界の片隅に
従来の戦争ものといえば、実体験を元に戦争の恐ろしさを描いたシリアスな展開が多く、今回取り上げた憲兵が帰った後の笑いやそれらの意味から、戦争ものに相応しくないと批判的な意見が挙げられています。一方で、すずさんの日常を主軸に描いたストーリーが良いとの感想も多く見られ、「この世界の片隅」を称賛する意見や、涙無しでは見られないとの声も上げられています。
この世界の片隅にの憲兵まとめ
「この世界の片隅に」の憲兵が帰った後の笑いのシーンや起った意味、笑いのシーンに対する批判などを考察しました。すずさんの視点で見れば恐い存在だった憲兵でしたが、「この世界の片隅に」に登場する憲兵は、史実よりマイルドに描かれており、北條家に笑いをもたらすきっかけを作った人物とも捉えられるでしょう。