2020年03月03日公開
2020年03月03日更新
【崖の上のポニョ】ブリュンヒルデがポニョの本名?名前の由来と意味は?
世界的に評価の高いジプリアニメには、テーマ性の強い「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」や誰もが楽しめる「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」のような作品に分けられるでしょう。娯楽性があるカテゴリに当てはまる「崖の上のポニョ」のヒロインとなるポニョの本名ブリュンヒルデの由来は、北欧神話がベースになっているなどの意外な裏設定があるようです。「崖の上のポニョ」のポニョの本名ブリュンヒルデの名前の由来や、それにまつわる北欧神話について探っていきます。
崖の上のポニョとは?
崖の上のポニョの概要
人間になりたい魚の子・ポニョと5歳の少年・宗介とのハートウォーミングな交流を描いた「崖の上のポニョ」は、宮崎駿氏が原作・脚本・監督すべてを担当した2008年7月公開されたスタジオジブリ制作の長編アニメ映画です。皆さんご存知の有名なアンデルセン童話「人魚姫」をベースしている「崖の上のポニョ」は、悲劇的な展開ではなく誰もが納得のハッピーエンドな結末となっています。
映画大ヒットに貢献したと言える主題歌「崖の上のポニョ」は、発売当初はイマイチだったものの、映画公開の1か月前程からの宣伝活動や、藤岡藤巻と大橋のぞみによるキャンペーン活動により楽曲の認知度を上げていきます。CD・音楽配信サービスなどでヒットチャートの上位にランキングする大ヒットとなります。
崖の上のポニョのあらすじ
母は海の女神、父は魔法使いである元気いっぱいの魚の女の子・ブリュンヒルデは、家出をして海岸へやって来ますが空き瓶に頭が挟まってしまうアクシデントに見舞われます。保育園児の宗介に助けられたブリュンヒルデは、宗介によりポニョという名前を付けられます。父により海に連れ戻されてしまったポニョは、宗介に会いたい一心で父が大切に蓄えている「命の水」で人間の姿へと変わります。
さらに強大な魔法の力までも得てしまったポニョは、嵐を起こして宗介の前に現れます。ポニョの逸脱行為により世界が破滅すると父は慌て出しますが、母はポニョを人間にして魔法の力を失わせるべきだと助言します。ポニョと宗介はお互い大好きなようですが、もし宗介が心変わりしてしまうと、ポニョは泡となって消えてしまいます。ポニョの両親の心配をよそに、再会したポニョと宗介は子供らしい冒険を繰り広げていきます。
ポニョの本名はブリュンヒルデ?由来と意味は?
ポニョの本名はブリュンヒルデ
天真爛漫なポニョの本名は、ブリュンヒルデというお姫様のような優雅な名前です。名を体で表すようなポニョという愛らしい名前は宗介が付けたもので、当の本人はいたく気に入っているようです。家出したポニョを叱る父フジモトは、キャサリンやジェニーのような日本人にとって馴染みのない名前ブリュンヒルデで呼んでいます。このシーンで観客は、ポニョの本名がブリュンヒルデだと知ることになります。
ブリュンヒルデの名前の由来や意味は北欧神話?
「崖の上のポニョ」の構想を思案していた宮崎駿氏は、19世紀の作曲家ワーグナーの楽劇「ワルキューレ」の全曲盤をBGMとして聞いていたそうです。楽劇「ワルキューレ」は北欧神話が由来で、ワーグナーの代表作である4部構成の舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」の2作目に当たり、上演は約15時間で4夜続く超大作品です。
「戦場で死んだものを運ぶ」を意味するワルキューレを冠した軍団には半神半人の美しき女戦士の集っており、ブリュンヒルデはこのワルキューレのリーダーを担っています。ワルキューレのリーダーであるブリュンヒルデは、父オーディンが治める死の館ヴァルホルへ戦死者の魂を連れていきます。
ブリュンヒルデことポニョも、軍団ワルキューレほどではないですが小さな可愛い妹たちがいます。ワルキューレはドイツ語ですが、古ノルド語ではヴァルキュリャと言い、話がズレますが80年代のアニメ「超時空要塞マクロス」の戦闘機ヴァルキリーを連想してしまう方もいるでしょう。
北欧神話のブリュンヒルデの人生
シグルドの出会い
父オーディンに敵対する陣営に加勢してしまったブリュンヒルデは、オーディンの逆鱗に触れてしまいます。罰としてブリュンヒルデが眠りに就くこととなった祭壇は、炎の壁に囲まれています。ある日、竜殺しの異名をもつ王子シグルドによりブリュンヒルデは長い眠りから目覚めます。2人はたちまち恋に落ち、ブリュンヒルデはシグルドに国王となるべくふさわしい知恵を授けます。
同じ時を過ごした2人はやがて結婚を誓いあう仲となり、シグルドはアンドヴァリの指輪が呪われた指輪だとは知らずにブリュンヒルデに渡してしまいます。ブリュンヒルデは、旅立つこととなったシグルドと再会できるその日を待ちわびながら再び眠りに就きます。旅の途中シグルドは、ギューテ王国に立ち寄ります。
ギューテ王の陰謀
シグルドが立ち寄ったギューテ王国のギューテ王は、王の風格を備えたシグルドが気に入ります。娘グズルーンと結婚させようと考えたギューテ王は、王妃と共謀してシグルドに物忘れの薬を飲ませ愛するブリュンヒルデを忘れさせます。愛するブリュンヒルデを忘れてしまったシグルドはグズルーンと結婚し、義兄弟となったギューテ王の息子グンナルとブリュンヒルデとの結婚の手助けをするはめになります。
ブリュンヒルデが眠りに就いている祭壇は炎の壁に囲まれており、グンナルでは力不足です。シグルドがグンナルに変装し炎の壁を越え、ブリュンヒルデはグンナルと結婚する皮肉な結果となります。グンナルに変装したままのシグルドは、愛していたことを忘れてしまったブリュンヒルデが眠っている隙に結婚の証に渡したアンドヴァリの指輪を持ち去ります。
ブリュンヒルデの怒り
ギューテ王国に戻りグンナルの妻となったブリュンヒルデは、シグルドから結婚の証である指輪をグズルーンがしていたことで真相を知ることになります。物忘れの薬を飲まされてしまったシグルドは、自分との結婚を忘れグズルーンと結婚し、グンナルとの結婚に加担していたのです。ショックを受け絶望したブリュンヒルデの前に記憶が蘇ったシグルドが現れ、ここを抜け出し2人で生きていこうと言います。
シグルドとの新たな人生を拒否したブリュンヒルデは、この結婚が嘘の上に成り立っているなら自分・シグルド・グンナルのうちの誰か死ぬ必要があると言い放ちます。ブリュンヒルデからの究極の選択により、理性を失ったグンナルは弟にシグルドを殺害させます。後悔の念に駆られながらも狂ったように笑うブリュンヒルデは自害してしまい、シグルドと一緒に火葬されます。
ポニョ(ブリュンヒルデ)の両親や謎
考察①母親と父親
派手な風貌のポニョの父フジモトは、元々は海の魔法使いではなく人間の船乗りだったのです。海の女神グランマンマーレと恋に落ちたフジモトは人間であることを辞め、長女ポニョとたくさんの妹たちと一緒に海で平穏な暮らしを営んでいます。
人間に破壊性があることを知っている元人間フジモトに対し、人間に興味津々なポニョは反抗的です。元人間フジモトと幸せな結婚生活を送っているグランマンマーレは、ポニョと宗介の関係にそれなりの理解を示しています。
考察②海を出た理由
母は海の女神なので不在がちですが、父と妹たちと海で平穏に暮らしているポニョは成長するにつれ人間界に興味を抱き始めます。好奇心を抱くことは、子供の成長過程として普通だと言えるでしょう。ポニョの場合は好奇心だけでなく、宗介との出会いも作用して海を出たいという考えが強くなったのでしょう。
考察③人間になった理由
ポニョが人間になりたかったのは、宗介に会いたいという一心だったのは一目瞭然です。そのせいでポニョは無自覚のまま、自然の均衡が崩れてしまう程の魔法の力を得てしまいます。海を守る立場であるポニョの両親は、ポニョを人間にして魔法の力を消滅させることで自然の均衡を正常に戻す必要があったのです。すなわち、大人と子供の事情が合致したと言ことでしょう。
ポニョ(ブリュンヒルデ)に関する感想や評価
ブリュンヒルデが話題になってるから聞いて欲しいんだけど崖の上のポニョのポニョはブリュンヒルデですよ
— とぅー@項羽さんは永劫の相棒 (@knight_ou) November 20, 2019
小さいのはポニョの妹達なんでまあつまりはワルキューレポジション pic.twitter.com/drOta53BYE
ポニョの本名の由来となる北欧神話に登場する女神ブリュンヒルデは、リーダーとして勇ましく軍団ワルキューレを率いています。こちらのポニョは、小さな可愛い妹たちを率いてとてもほのぼのとしています。
ポニョ(ブリュンヒルデ) pic.twitter.com/3V81P8EwrI
— わだかば (@wadakaba) September 9, 2019
宗介は海辺で助けた魚をポニョと名付け、運転中の母リサに紹介しています。もし宗介が、ポニョの名前を本名ブリュンヒルデとして紹介していたら、母リサは聞きなれない名前に気を取られ運転をミスしてしまうかもしれないと考えるファンもいました。
ポニョの本名、ブリュンヒルデは、ワーグナーの歌劇「ニーベルングの指環」に登場するワルキューレ(戦いの女神)の名前。だからポニョが波の上を走る時に流れる曲はワルキューレの騎行っぽい。そして奇しくも今日2月13日はワーグナーの命日。 pic.twitter.com/MqhpOg4Ujc
— TAKUMI™ XENO発売中 (@takumitoxin) February 13, 2015
「崖の上のポニョ」が影響を受けた「ワルキューレ」を作曲したワーグナーは、中世の騎士道が大好きな究極のオタク男子であるバイエルン国王ルートヴィヒ2世と親交があったようです。借金苦だったワーグナーにとって、ルードビッヒ2世は願ってもないパトロンだったようです。
ポニョの本名はブリュンヒルデだった
神話における人間と人外の恋物語は悲恋と相場が決まっていますが、「崖の上のポニョ」ではポニョの本名の由来となった北欧神話のブリュンヒルデのような悲劇的な展開にならず、人間となり大好きな宗介と一緒に暮らしていくことになります。
「人魚姫」をベースにしている「崖の上のポニョ」は、どうやら「ワルキューレ」も影響されているようです。物語のベースとなった裏設定を熟知して「崖の上のポニョ」を見直すと、新しい魅力が発見できそうです。