【攻殻機動隊】合田一人と個別の11人事件の関係は?最後や名言も紹介

合田一人とは攻殻機動隊に登場する、主人公たちの前に立ちはだかる人物です。その容姿と名前で強いインパクトを残すキャラクターで、合田一人と攻殻機動隊の暗闘、せめぎ合い、両者の間で交錯する神算鬼謀は、作品を魅力溢れるものにしています。そんな合田一人について、ここでは彼の名言や声優を。さらには合田一人のモデルとなった人物についてや、彼の最後についても紹介します。悪役でありながら強い魅力を持ち、合田一人の全てをご紹介しましょう。

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目次

  1. 合田一人が登場!攻殻機動隊とは?
  2. 合田一人と個別の11人事件
  3. 合田一人の最後
  4. 合田一人の名言
  5. 合田一人の声優
  6. 合田一人のモデル
  7. 合田一人の人物像考察
  8. 合田一人に関する感想や評価
  9. 合田一人の最後や名言まとめ

合田一人が登場!攻殻機動隊とは?

合田一人。名前だけでも既に強い印象を残すこの人物は、TVアニメシリーズ攻殻機動隊S.A.C 2ndGiGに登場したキャラクターです。彼は悪役ながら、非常に強い魅力を放つシリーズきってのユニークな存在です。まずは合田一人が登場する攻殻機動隊の世界観やあらすじ、作品の情報について、ご紹介します。

攻殻機動隊の作品情報

攻殻機動隊とは、『ヤングマガジン海賊版』1989年5月号に連載が始まった、士郎正宗による漫画が原作です。1991年に単行本第1巻も発行され、1995年に押井守監督作品『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』として初の映像化がなされました。その後TVアニメシリーズや新劇場版、ハリウッドでの実写映画化など、何度も映像化が行われています。

攻殻機動隊のあらすじ

時代は21世紀、第3次核大戦とアジアが勝利した第4次非核大戦を経て、科学技術が飛躍的に高度化した日本が舞台です。マイクロマシン技術を使用して脳に電子機器を直接接続する技術「電脳化」、義手・義足にロボット技術を組み合わせたサイボーグ技術「義体化」など、ハイテク技術が発展し、一般にも深く普及しています。

攻殻機動隊 -THE GHOST IN THE SHELL- Official Site [公式]

合田一人と個別の11人事件

攻殻機動隊S.A.C 2ndGiGは、前作である攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEXから2年後の世界が舞台となっています。「個別の11人」を名乗るテロリストによる事件を発端にしたストーリーです。前作で一時解散に追い込まれた攻殻機動隊は再結成を果たし登場します。合田一人はその攻殻機動隊に対して、どのように関わっていくのでしょうか。

合田一人のプロフィール

合田一人(ごうだかずんど)は、内閣情報庁と呼ばれるアメリカにおけるCIAのような組織の重要人物です。内閣情報庁とは、内閣官房長官直下の組織であり、国内外を問わず情報の収集・分析・操作を行う組織です。その内閣情報庁において、彼が代表補佐官を務める戦略影響調査会議とは、その中でも軍事関係で非合法な情報活動を行っています。組織力では攻殻機動隊を凌ぎ、軍事関係での情報操作を中心に行っている事から、日本の自衛軍との間に強い関係があるようです。

合田一人は内閣情報庁に来る前に、義体に関する技術で知らない者はいないとされる巨大多国籍企業ポセイドン・インダストリアルの社員でした。ポセイドン・インダストリアルがまだ大日本技研と呼ばれていた頃からの社員で、第3次核大戦で被爆した日本の復興を支えた技術である放射能粉塵除去技術の開発に従事していました。とはいえ、彼自身でも「私の脳は言語機能に特化している」と話す通り、技術者としてではなく、「プロデュース」したという事です。

この通称「日本の奇跡」と呼ばれる放射能粉塵除去の技術開発に関わった後、防衛局へと就職するわけですが、当時は非常に無個性で印象の無い見た目で、当時は落ちこぼれ組と呼ばれる立ち位置でした。その後死線を彷徨う事故に遭遇し、顔の半分が変形するほどの大きな傷跡を負ったわけですが、それをきっかけにして頭角を現し、内閣情報庁からヘッドハンティングされる形で現在の地位に就きました。

合田一人は学生時代から英雄やカリスマ的な人物に対して強い憧れを持っていました。社会システムの中でそういった人物が出現する状況を意図的に作り出し、英雄の出現をプロデュースする事についての論文を書いてもいたようです。英雄への憧れから、本気でカリスマを得たいと思っていた彼にとって、それは当初、自分が辿るべき状況だったのかもしれませんが、次第に彼は自分の持って生まれた資質がそれを邪魔していると気づいたと言います。

自分は英雄になる資質や志はあれど、無個性な外見であるが故にそうなれないと知ったという事です。それ以来、彼は自らが英雄になるのではなく、英雄をプロデュースする事を自身の目標に定めたようでした。

公安9課の宿敵ポジション

英雄をプロデュースするという事に自身の目的を見出した合田一人ですが、彼にとっての英雄とは「動機無き者たちが切望し、しかし声に出しては言えない事を代弁し、実行してくれる行動者」という事でした。この自身の考えと自身の望みに基づいて行動しているわけですが、その手段を選ばない行動は、目的の為に多くの人々に犠牲を強いるもので、攻殻機動隊のメンバーは彼を自分たちと正反対の宿敵であると認識していきます。

顔のインパクト

非常に強い印象を残す現在の合田一人の顔ですが、先に紹介した通り元々は非常に無個性な容姿でした。印象が無いとまで言える容姿だったようですが、遭遇した事故によって現在の顔になったわけです。それを合田一人自身は、肉体の変質によってゴーストも変化した、と言っています。無個性だった容姿が変化した事で、自分にも英雄たる資質が備わったと言いたげな合田一人のその言葉は、彼の現在の顔と共に、彼の中にある強い自己顕示欲を表しています。

イスラム国に入った学生との類似点

英雄をプロデュースする為に合田一人は手段を全く選びませんでした。そこには、自分は大衆が気付いていない事に気付いていて、自分こそ第一人者になるはずだという強い傲慢さがありました。そしてその傲慢さは自分をどこか選ばれた人間であるかのように錯覚させたようです。大衆が望んでいる事や、大衆が気付いていないこの世界に必要な事を自分はしなければならないとまで思っているように描かれています。しかしこれは単なる、自分にとって口当たりの良い幻想です。

つい数年前まで、名前を聞かない日は無かったイスラム国。日本でもイスラム国に志願して入っていった学生についての報道がされていました。そもそもイスラム国とは、イスラムの教えに忠実だと自負する原理主義の中で台頭した勢力です。しかし、いつしかそれはアメリカ憎しの勢力へと変化したようです。何故そのイスラム国へこの学生が志願したかという事については、多くの考察がなされています。

合田一人の考えは、「動機無き者たちが切望し、しかし声に出しては言えない事を代弁し、実行してくれる行動者」こそ理想という考えです。閉塞した現状を変え、本来評価されるべき自分が表に立ち、世界を変えていけるはずだ、という強い自負の賜物です。これはイスラム国に志願した学生とも似ているところがあります。現状に不満を持ち、何かを変えたい。自分が価値のある人物だと実感したい。両者にはこういった動機が透けて見えます。

現状を変えるという崇高に思える理念に邁進し、誰もしてくれない事を自分がやるというヒロイズム。それは時に口当たりが良く、その口当たりの良さに自分さえ騙します。良い事なのだと。特に自己顕示欲が強い人間であればあるほど、すぐに騙されてしまうでしょう。合田も、イスラム国に志願した学生も、正義と言う事さえおこがましいと思える身勝手なヒロイズムに酔い、自分の不満の解消を他者に求め、自分の望みに近づく為に他者を犠牲にします。

イスラム国自体も同じような存在で、現状に不満を持つ人々の不満を吸い上げ、その不満の象徴であるアメリカを標的として掲げ、さらには自分たちの理想に従わない人々の犠牲は省みない。イスラム国の在り様は、合田一人のプロデュースと同じようで、志願した学生の動機は、合田一人の傲慢さと自己顕示欲と同じようです。両者は共に理想があり、現状に不満を持っています。そして両者共に身勝手なヒロイズムに酔い、共感しない他者の犠牲を省みないのです。

個別の11人事件とは?

個別の11人事件は、まさに合田のその傲慢さと溢れ出す自己顕示欲によってプロデュースされた、象徴的な事件でした。事件を起こした「個別の11人」は全て、ある論文を読んで事件を起こす電脳ウイルスに感染した人々です。そもそも個別の11人とは特定の人物を指す名称ではなく、作中に出てくるある論文の一部です。本来その論文に存在しなかった個別の11人というファイルをネット上に流し、感染が広がりました。

特定の人物を指定していない個別の11人ですが、その考えは共通しています。攻殻機動隊S.A.C 2nd GiGの世界では、直近の2回の大戦争によってアジアで招慰難民が生まれました。故郷を追われ、戦争で行き場を失った人々ですが、それを受け入れたのは日本でした。但し、日本もそれを喜んで受け入れたわけではなく、戦争によって特需を受け、経済的に恩恵を多く受けていた日本は、国際社会からその役目を押し付けられたようでした。

当初は、日本も戦後の復興に力を注がなければならず、全国5カ所の招慰難民居住区を作り、復興のため安価な労働力として、それらの居住区に受け入れていきました。長崎の出島もその1つです。その後、難民の受け入れが始まってからすでに20年が経ち、もはや出島を故郷にする子供たちが生まれている世代となっています。そんな中、日本ではある感情が育っていきました。その感情とは「難民は邪魔者」という感情です。

戦後の特需も終わり、経済的に徐々に後退してきている日本にとって、難民の存在は重荷になってきました。長い年月を米帝に追従する形でやってきた日本は、外交面でも未だ強い立場を打ち出す事が出来ず、作中では中国の台頭が始まる中、米帝と中国、さらには米露連合との板挟みになっています。経済的に豊かであれば、そこまで大きくならなかった難民排斥の感情ですが、今やそれは日本の潜在的な感情として存在しています。

そこに「難民は難民自身で自分たちの問題を解決するべき」「日本は日本人の為に」などと言う所謂難民排斥運動を起こす主張が生まれていきます。個別主義者と呼ばれるこの主張に則り、過激な行動を起こしたテロリスト群こそ「個別の11人」と呼ばれる人々だったのです。彼らは元々、個別主義者的な考えを持つ人々でしたが、個別の11人ウイルスによって過激な行動を取るようになっていくのです。

そういった難民排斥運動の過激化によって、難民側からもリアクションが出始めました。彼らも「目には目を」と言わんばかりに、各地で自爆テロを起こしていったのです。こうしてこれらの行動は難民と国民の間に対立を生み、これらのテロに押され、世論は急速に難民排斥へと傾いていきます。そして遂に、長崎の出島にて追い込められた難民は武装蜂起。こうして、事は大きくなっていったのです。

「個別の11人事件」はこれらの事柄をまとめて指す呼称です。これを国民運動や時世の流れの結果こうなったとするのではなく、あくまで事件として捉えて呼称しています。なぜなら、そもそも過激な個別主義者たちの行動は、個別の11人ウイルスによって引き起こされた人為的なもので、いたずらに対立を煽り、テロを重ねさせた上、内乱まで誘発させました。これを裏で糸を引いた者こそ、合田一人だったのです。

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合田一人の最後

こうして、一連のテロ事件を引き起こさせ、巨大な内乱にまで発展させた合田一人ですが、彼の企てを暴き続け、合田に徹底的に対抗した者たちこそ、対テロ組織である攻殻機動隊でした。攻殻機動隊によって、合田一人は徐々に包囲されていきます。しかし合田の計画には、単に内乱を成功させるという事ではなく、非常に自己顕示欲に塗れた別の目的があったのです。

個別の11人事件の真相と最後

個別の11人事件は、ある論文に仕込まれた電脳ウイルスが原因ですが、それを仕込んだのは合田一人でした。彼は自分の目的を達する為、純粋な英雄ではなく、劣化した英雄を量産しました。このウイルスの発症条件は3つあり、それによって、合田一人にとって好ましい人物が、彼の思惑通りに動くように仕向けて行ったのです。

合田がウイルスの発症条件に設定した3つとは、「革命に身を投じた思想家、パトリック・シルベストルの著書『初期革命評論集全10巻』を読んでいること」「その初期革命評論集の幻の11冊目と呼ばれる合田の仕込んだ電脳ウイルス『個別の11人』を探し出して読んでいること」。そして「体がまだ義体化される前に童貞であったこと」でした。

これはヒロイズムに酔いやすく、それに基づいて行動を起こす行動力があり、どこか満たされず解消されない感情を抱いている人物を探し出す為でした。これによって発症してしまった人々は、劣化した英雄として、合田にとって好ましい行動を取るようになり、テロも躊躇せずに起こすようになります。これによって内乱が引き起こされたわけですが、合田はこの内乱を引き起こし、自分の能力を宣伝しようという事こそ真の狙いでした。

この計画はうまくいき、日本ではなく米帝のエージェントから合田はヘッドハンティングを受けます。内乱を引き起こした計画実行力とその組織運営力、一種のカリスマ、そういった事を個別の11人事件によって米帝に売り込み、より強力な権威や権力へと近付いていこうという計画。これこそ、彼にとっては真の狙いでした。彼は日本の状況を利用したに過ぎず、英雄をプロデュース出来る自分を真の英雄に仕立て上げようとしたのです。

合田によって計画した内乱の締めくくりともいえる米帝からの核攻撃を攻殻機動隊が阻止する事で、個別の11人事件は終結します。軍を動かしての空爆から、難民を追い込んでの状況の悪化。極めつけの核攻撃に至るまでの、この事件の仕上げともいえる工程を攻殻機動隊はギリギリのところで止めます。これらによって日本は引き返せない内乱に踏み込んでいく事になるはずでしたが、攻殻機動隊は最悪の事態を止めたのです。

射殺された最後

合田一人はといえば、内乱の最後へ向けて状況が進行していく中、既に事の成り行きを傍観しているだけでした。彼にとって既にこの一連のテロから難民の蜂起による内乱まで、状況を作り出した時点で目的は達成されていました。もはや合田が手を加える必要もなく、彼のプロデュースは米帝の認めるところになっていました。内閣情報庁の代表補佐官という立場上、合田一人は安全保障条約を結ぶ米帝CIAと深い関係を持っており、彼らを通じて米帝に亡命しようと画策します。

最後の最後で合田の計画に追いついた攻殻機動隊は、日本の情報機関の中枢にいた合田の亡命を阻止するため、CIAのエージェントと共に亡命しようとする合田を待ち受けて包囲しました。そこで総理からの書簡と共に、亡命を踏みとどまらず国外へ流出してしまう場合は殺害する事もやぶさかではない、と合田へ警告します。この時、合田は完全に日本の対応を読み違え、亡命を阻止するため、攻殻機動隊によって射殺されます。彼にしてはあっけない最後でした。

米帝にとって、日本に制御不能なカリスマや、必要以上の組織力と行動力を有する人物が存在する事は望ましくありませんでした。彼らが言うには「従順な消費者」としての日本を望んでいるということでした。結果として、米帝にとって合田に亡命されようが、それとも射殺されようが、どちらでも良かったのです。合田は「私の才能を必要としている国に行く」と言いましたが、米帝は彼が不必要だから手に入れようとしたように描かれています。

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合田一人の名言

合田は悪役ながら、非常に魅力あふれる名言を残しています。彼の言う名言はいちいち芝居がかっており、その名言の数々からも彼の自己顕示欲の強さが滲み出ています。しかし、その芝居がかった名言こそ、合田の魅力の1つであり、言語機能に特化しているという彼の名言を見ると、どの名言もその才能が遺憾無く発揮されています。ここでは合田一人の名言の数々から3つの名言をご紹介しましょう。

名言①「水は低きに流れ…」

「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」という名言ですが、実はこの名言、合田一人の言った名言ではありません。難民の指導者として立ったクゼという人物の名言なのですが、合田は最初からこの事を認識し、低きに流れる人の心を狙って、一連の事件を画策したようでした。合田は学生時代の論文の中でも、ネットが行き渡った社会においては、大衆に個性が消える代わりに無意識に協調性を重視するようになる、と言っています。

合田は、大衆が得やすい情報に偏り、自分で判断する事をやめ、より安易で簡単な方向へと誘導されてしまうという事を逆手に取りました。意図的に得やすい口当たりの良い情報を流し、それに追従してきた大衆を煽り、間違っていないと騙していたわけです。結果として、合田の内乱への企みは阻止できませんでした。最悪の事態は攻殻機動隊によって防がれましたが、人の心は安易な方へと流れていく事を望んでいると証明してしまったのです。

名言②「かく言う私も…」

これは、個別の11人ウイルスが発症する最後の条件を特定出来ていなかった攻殻機動隊に、合田が「もし自分がこの事態の犯人ならば」と言って「義体化以前に童貞だった事」という条件を話した時の名言です。直後にバトーから「人が悪いにも程があるぞ」と語気を強めながら言われた合田が「そうかな?かく言う私も童貞でね」と答えます。

この名言からは、「義体化以前に童貞」というサイボーグ化してしまってからでは取り戻す事の出来ない満たされない感情こそ、彼の言う英雄に不可欠であることを示し、その上で自分もその資質を持ち合わせているのだと言っているようにも聞こえます。私も英雄になる資質を備えているのだぞ、と。

バトーが人が悪いと指摘する中、彼は「童貞であることは君にとって恥ずべき事のようだが、それは資質を備えているという事だ。資質を備えていない君には、努力しても理解できない事かもしれないがね」と皮肉たっぷりに言い返したかった事こそ、合田の本心のようにも見えます。彼にとって満たされない感情、渇き、そういった渇望が無い者には、それらを持つ人の心など、最後まで理解出来るはずがないと言いたげでした。

名言③「ゴーダ カズンド…」

「ゴーダ カズンド。なかなかちゃんと呼んで頂ける人に出会わない。さして変わった名前とも思わないんですがね。ですが、今となってはなかなか良い名前だと思ってる。なんせ一度教えれば、大抵相手の記憶には残りますからね。特にこの顔とセットで」

これは攻殻機動隊の荒巻課長と会った時、自己紹介として言った名言です。自己紹介が名言だなんてと思われるかもしれませんが、非常に合田一人的な名言です。わざわざ名刺を先に手渡して、相手に字面を読ませてからの自己紹介。「一人」と書いてあればひとりと読むのが素直な読み方ですが、それを誘発しているかのよう。相手を泳がせ自分のペースに巻き込む手です。

さらに、ちゃんと呼んでもらえない事を残念がって見せ、相手に少しの気後れした感覚を植え付けた後、変わった名前と思わないという事で、相手の教養を貶めに掛かっています。その後、不快な感覚を多少与えたところで、自分は気に入っていると言い興味を引きます。その後、相手の記憶に残ると話し、忘れ去られてしまう凡庸な人物ではないと表現した上で、だから私の事を憶えておくんだぞ、と威圧しているかのようです。

これらは作品を通じて合田が表現し続ける彼の人物像の略図です。これを自己紹介の時からかましてくるのですから、言語機能に特化しているというのも頷けます。自己顕示欲と傲慢さが良く表現され、しかし見る側に興味を持たせる非常に歪な魅力のある名言です。その顔が表す通り、合田一人は歪な魅力を作品中に放ち続けて行くわけですが、それらの凝縮された名言です。

攻殻機動隊 Information Site

合田一人の声優

歪な魅力を放つ合田一人ですが、彼の声優をご紹介しましょう。キャラクターに命を与えるともいえる声優ですが、合田一人に関しては、まさにこの声優の方無しでは表現しきれなかったでしょう。ご紹介する声優は、老獪な合田一人の声を、その声優としての巧みな技量で演じ切っておられます。合田一人の声優は、その声でだけで、合田一人の薄暗さを支えておられ、それはご紹介する声優の方の幅広い活躍によって、培われたものでしょう。そんな彼の声優をご紹介します。

合田一人の声優は西田健

西田健さんは、2004年に始まったTVアニメシリーズ『攻殻機動隊S.A.C 2nd GiG』で合田一人の声優を担当されました。作品の黒幕の声優という事で、他の攻殻機動隊のシリーズに出演されてはいませんが、この声を聞くだけで合田一人を思い出してしまう個性的な声優の方です。俳優としての活動が多く、本来役者として多くの作品に出演してこられました。ウルトラマンなどの特撮から時代劇、サスペンスドラマなど、様々なジャンルの作品に登場なさっています。

また、TVでの活躍だけではなく、自らで演劇集団を設立なさり、ご自身も所属しておられた事もあり、舞台でも活躍なさっておられます。現在はフリーで活動なさっておられるようで、特定の事務所に所属されてはいません。2017年には西田健さんの俳優生活を紹介するインタビュー形式の番組にも出演され、俳優・声優のどちらでも、たくさんの魅力的な作品に出演なさって来られた事が伺えます。次は声優を担当された作品をご紹介します。

声優・西田健の出演作品

声優としての出演作品は『攻殻機動隊S.A.C 2nd GiG』の他に、TVアニメシリーズで『MASTERキートン』や『監督不行届』。ゲームキャラの声優も務められ、『メタルギア ライジング リベンジェンス』に出演なさっています。海外ドラマの吹き替え声優としても『アリーmy Love』や『ザ・ホワイトハウス』では、副大統領の声優を務められてもいます。韓流の『シルミド』でもその声を耳にすることが出来るでしょう。

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合田一人のモデル

合田一人は高い学歴と優秀な経歴、そして人よりも秀でた言語能力を持ち、十分に優秀な人材として通用します。しかし、その自尊心と自己顕示欲の高さから、自身に英雄たるカリスマ性が備わっていない事に悩み歪んでしまった攻殻機動隊の宿敵である合田一人。歪ながらも強いインパクトと魅力を持つ彼ですが、実在する人物がモデルになっている事をご存じでしょうか。

モデルは映画『アマデウス』のサリエリ

合田一人のモデルとなったのは実在の人物であるアントニオ・サリエリです。なかでも1984年に公開された映画『アマデウス』で描かれているサリエリがモデルとなっています。合田一人のモデルですから、『アマデウス』のサリエリもそのモデルたる歪な魅力のある人物です。そもそもモーツァルトの宿敵として、他の作品でも彼がモデルとして扱われるキャラクターは多いです。それほど、キャラクターのモデルとしてのサリエリは魅力を放っています。

モデルとなったサリエリを描いた『アマデウス』という作品は、そもそもモデルになったサリエリ像として、かなりモーツァルト側からの見方に偏って描かれています。実際にはモーツァルトをサリエリは殺してはいませんし、『アマデウス』で描かれたほど密な関係も無かったとされています。実在の人物としてのサリエリがモデルとなったというよりは、『アマデウス』で描かれたサリエリこそ、合田一人のモデルなのです。

『アマデウス』の概容

合田のモデルとしてのサリエリを描き出した『アマデウス』。元々はブロードウェイの舞台『アマデウス』を映画化したものでした。1984年に制作・公開され、モデルとなったサリエリを中心人物に据えて、サリエリを中心としたモーツァルトを描いています。

ウィーンの街で自殺を図ったサリエリは精神病院に運ばれ、病床でモーツァルトを殺したと懺悔し続けていました。その後、彼は驚くべき自身とモーツァルトについて告白しだします。時の皇帝に仕える作曲家として、サリエリは人々の尊敬を集めていました。しかし、天才であるモーツァルトが彼の前に現れた時、彼の音楽への情熱と喜びが、最後にはそのまま天才への嫉妬と羨望、憎しみへと変わっていきます。

彼が思い知ったのは、いくら皇帝に仕えていようとも、人から尊敬されていようとも、天才を前にすれば、自分は「天才の才能とその真価を理解するだけの才能でしかない凡庸な人間」だという事でした。それが彼の音楽へ傾ける情熱を憎悪に変え、その嫉妬を天才に向けつつ、しかし同時に強い憧れを抱いたまま歪んでいってしまったのです。この『アマデウス』で描かれるサリエリの苦悩こそ、モデルとして合田一人に強い影響を与えました。

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合田一人の人物像考察

ここまで合田一人について、理想やその最後など、様々な点を紹介してきましたが、もう少し合田の人物像について掘り下げていきましょう。彼が本当に得たかったものは何だったのか。何故あんな最後になってしまったのかなど、考察していきます。内乱を引き起こしてまで、彼が辿り着きたかった理想とはなんだったのでしょうか。

コンプレックスの塊

最初から最後まで、合田一人の行動は彼の抱えるコンプレックスを解消する事に向けて起こされていました。学歴も経歴も、日本の奇跡への従事も。個別の11人も、難民指導者のクゼも、ひいては自分の属する日本と言う国についても、全ては彼にとって劣等感を解消する為の舞台でしかありませんでした。

彼なりに理想を持って行動したように見えるのは、そのように彼が1つ1つの行動に理由付けをしていたからですが、もっともらしい理由をつけなければ自分を矮小な人間だと自覚してしまっていたでしょう。ただの自尊心と、自己顕示欲だけが自分の原動力だと。彼のモデルになったサリエリも、『アマデウス』の中での行動理念は天才への嫉妬へ終始していました。合田も同じく、満たされなかった自分を慰めていただけだったのです。

合田一人の悲劇は、サリエリとは違い最後までその嫉妬に正面から向き合えなかった事でした。認めてしまえば自分は凡庸な人間に成り下がり、死線を彷徨う事故に遭遇した事まで自分にとっての糧としてきた合田一人にとって、それは全てを台無しにした気分になったでしょう。だからこそ彼は最後まで自分の弱さに向き合えませんでした。

英雄とは、そういった弱さと向き合い、その上でより強くなっていく存在です。難民の指導者となったクゼは、合田一人の電脳ウイルスによって難民排斥のテロリストとなってしまったにもかかわらず、最後には難民の為に自己犠牲を厭わない姿勢を身に着けていました。決してクゼが正しい事をしたわけではありませんでしたが、しかし苦難を直視し、弱さを見つめ、一種の英雄たりうる姿へと変わっていきました。最後のクゼはまさに難民の英雄でした。

しかし合田一人はと言えば、最初から安全な場所で人を下に見て、プロデュースの名の下に自分は血を流さず、最後まで他者を利用する事で自分を押し上げようとしていました。合田は作中で言いました。「私は人としての最上部構造へ行くはずだった」と。その傲慢な自尊心と自己顕示欲しか、彼にはなかったのです。ですが、彼自身は最後まで、自分こそ真の英雄だと思っていました。英雄を作り出す英雄なのだと。

攻殻機動隊のバトーは合田一人との間で交わした言葉の中で、彼にこう言っています。「いつのまにかプロデュースしていると思っていたやつの方が、いつしかクゼの模倣者に成り下がっちまっていたとは」と。こう言葉を掛けられた時、合田は明らかに不満そうに目線を一瞬バトーに向け、バトーの言葉にすんなりと答える事が出来ませんでした。彼は即座にその現実から逃げました。合田一人は英雄などではなく、弱さに向き合えない凡庸な人間でした。

本当の目的とは?

合田一人が持っていた本当の目的とは、単なる自己の感情を満たせるだけの結果を手に入れる事だけでした。政治主義などどうでもよい。自分のプロデュースした者がどうなろうと、自分が満たされる結果であれば、どうでも良かったのです。彼にとっての最大の関心事は、満たされなかった心が満たされる事だけです。高邁な理想を掲げているようで、合田はそれに見合うだけの高潔さは持てませんでした。卑劣な凡人でしかなかったのです。

『攻殻機動隊 SAC_2045』公式サイト

合田一人に関する感想や評価

合田一人という人物は、最後まで天才に嫉妬する凡人でしかありませんでした。しかし、作中の悪役キャラクターとしては、天才的な魅力を放っています。

実際に作中でも、合田一人は英雄とまではいきませんでしたが、間違いなく人より多くの事に気が付き、物事を見抜く力を持っていました。それは彼の非常に優れた点でした。それは一種の憧れを抱かせるカリスマでもありましたが、しかし合田はそれでは満足していませんでした。

何より、合田一人は非常に手ごわい黒幕で、その存在感は作中でも、シリーズの中でも抜きんでています。歪み方も生半可ではなく、モデルとなったサリエリ顔負けかもしれません。

合田一人の最後や名言まとめ

今回は合田一人の最後、名言、合田の起こした事件から合田一人の人物像の深堀り、さらには彼のモデルとなった人物や声優の方まで、魅力的な悪役である合田一人について紹介してきました。合田の非凡さは、その突き抜けるほどに歪んだ精神と、人の寂しさを匂わせる弱さ、そして満たされる事のない願望を抱いてもがいた、その実に人間臭い姿でしょう。それこそ合田一人という悪役の非凡さであり、彼に強い魅力を与えるのです。

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