2019年06月20日公開
2019年06月20日更新
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の元ネタは?作中での意味もネタバレ
バナナフィッシュの意味とは何なのでしょうか?BANANA FISH(バナナフィッシュ)は2018年のアニメ化を機会に、注目度が上がっている作品です。物語で頻繁に登場する単語があります。それがバナナフィッシュです。この記事では、「バナナフィッシュの意味とは?」、「元ネタとなった小説とは?」といった疑問を解消し、ネタバレも含めてお届けします。登場人物達が必死に追い続けていたバナナフィッシュ。その気になる意味や元ネタ(小説)を知ることで、バナナフィッシュの世界観をもっと深く感じることができます。
目次
バナナフィッシュ(BANANA FISH)とは?
バナナフィッシュ(BANANA FISH)は、日本人の奥村英二とアメリカ人のアッシュ・リンクスが出会う場面から始まり、2人や周囲の人物に待ち受けている運命を、繊細且つ衝撃的に描いた作品です。ここでは、バナナフィッシュとはどんな作品なのかを紹介し、より物語の深みに浸れるような情報をお届けします。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の作品情報
バナナフィッシュの主な舞台はニューヨークで、主人公の1人アッシュ・リンクスを中心に物語が進行します。アメリカが舞台であるため、登場人物は日本人を含め、全員英語で話しています。アッシュ・リンクスは、金髪に翡翠色の瞳が特徴的な美しい青年ですが、アメリカ裏社会のストリートキッズグループのボスで、強靭な肉体と賢い頭脳を兼ね備えているカリスマです。
時には自分や仲間を守るために暴力を振るったり、人を殺したりと、暗くて逃げ場のない生活を送っていました。しかし、日本人の純朴な青年・奥村英二(もう1人の主人公)と出会ったことで、アッシュの人生は変化を遂げ、彼は光を手に入れるのでした。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の原作情報
原作者・吉田秋生さんが描いたバナナフィッシュは、かつて「別冊少女コミック」にて連載されていました。連載期間は1985年~1994年で、その約9年間の連載で、多くの読者を得ました。バナナフィッシュは少女漫画の概念を覆し、センセーショナルな物語を展開させ、読者を釘づけにしました。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)のアニメ情報
アニメのバナナフィッシュは、2018年の7月から12月まで、フジテレビのノイタミナ枠で放送されました。アニメ制作は「吉田秋生の40周年記念プロジェクト」として進められ、連載当時のファンはもちろん、新規ファンの獲得にも繋がりました。
タイトルがユニークなので、アニメ化発表当時は、「バナナフィッシュとは?」と、作品に興味津々な人達が多くいました。ユニークなタイトルとは異なり、本編はシリアスで、最終回で涙を流す人が後を絶たず、心に残り続ける作品として評価されています。
原作では1980年代が舞台として設定されていますが、アニメ版ではスマートフォンやパソコンが登場したりと、時代設定が現代に置き換えられています。時代設定が変わっても、自然な流れで物語が進行するため、アニメスタッフの力量が見て取れます。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)のあらすじ
原作漫画とアニメでは時代背景が変化しているため、あらすじにも多少の差異がありますが、大まかな設定は変わっていないので、軽いネタバレと共に簡単にあらすじを紹介します。
ベトナム戦争(アニメではイラク戦争)のキャンプ地で、1人の米軍兵士・グリフが銃乱射を起こし、同僚を死に追いやります。彼はひどく錯乱した状態で、「バナナフィッシュ」という言葉を何度もつぶやきました。それから時は流れ、舞台はアメリカのニューヨークへと移ります。裏社会でストリートキッズグループのリーダーとして君臨するアッシュ・リンクスは、見知らぬ男から「バナナフィッシュ」という言葉を聞きます。
「バナナフィッシュ」とは、アッシュの廃人状態の兄・グリフが度々静かにつぶやく言葉でした。その頃、日本人の奥村英二は、カメラマンのアシスタントという名目でニューヨークを訪れ、アッシュ・リンクスと運命の出会いを果たし、彼の人生と深く関わることになるのでした…。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の元ネタ小説
バナナフィッシュの元ネタ小説はいくつかあり、J・D・サリンジャーの小説、アーネスト・ヘミングウェイの小説などが挙げられます。1人目のJ・D・サリンジャーはアメリカの小説家です。彼の有名な小説としては『ライ麦畑でつかまえて』などがあり、 日本でも名前が知れ渡っています。
バナナフィッシュの2期エンディングでは、美しいライ麦畑が登場し、アッシュと英二がそこで2人だけの時間を過ごします。サリンジャーが描く世界はバナナフィッシュの世界観に深く関わるため、 アニメ視聴後にサリンジャーの小説に興味を示すファンが多くいたと言われてします。
一方、アーネスト・ヘミングウェイも、バナナフィッシュの世界観に多大な影響を与えています。アーネスト・ヘミングウェイもサリンジャーと同じくアメリカの小説家で、独創的な描写に定評がある人物でした。サリンジャーとヘミングウェイの小説がもたらした影響とは一体何なのか?バナナフィッシュのストーリーを深く味わえる小説4作品を紹介します。
元ネタ小説①バナナフィッシュにうってつけの日
元ネタ小説の1冊目は、J・D・サリンジャーの短編小説『バナナフィッシュにうってつけの日(原題:A Perfect day for Banana fish)』です。この小説こそ、『BANANA FISH(バナナフィッシュ)』のタイトルの元ネタだと言われています。『バナナフィッシュにうってつけの日』は、サリンジャーの短編集『ナイン・ストーリーズ』で読むことができます。では、小説内のバナナフィッシュとは、一体どういった意味なのでしょうか?
気になる小説のネタバレをざっくりまとめます。ある浜辺のホテルにミュリエル・グラースという女性がいました。彼女はシーモア・グラースという男性を心配していました。シーモアとは、ミュリエルの娘の夫で、義理の息子でした。義理の母の心配をよそに、シーモアは浜辺の砂浜で寝っ転がっていました。そこに、シビルという黄色い水着を着た少女がやってきました。
シーモアはシビルとバナナフィッシュという魚を海で探し始めます。バナナフィッシュとは、バナナが入った穴に引き寄せられる魚だと、シーモアは説明します。そして、「今日はバナナフィッシュにうってつけの日」だと語りました。意味深な言葉を残したシーモアは、小説の終盤で自殺を遂げてしまいます。
シーモア・グラースは亡くなってしまいましたが、グラース家はサリンジャーの別作品にも再登場します。しかし、これだけでは、「結局バナナフィッシュとは何なのか?」となりますよね。この小説では、バナナフィッシュ以外にも、バナナ熱、バナナ穴が登場します。そして、シーモアは兵役で心を病んでいたとも解説されています。
バナナがつく単語は、戦争の悲劇や狂気の暗喩なのです。アニメ・漫画のバナナフィッシュに話を戻しますと、アッシュの兄・グリフィンも戦争経験者で、バナナフィッシュに侵された被害者です。グリフィンが仲間を殺害してしまう光景は、まさに戦争中の悲劇だと言えるでしょう。そのため、バナナフィッシュの意味=戦争被害説は確固たるものになります。
元ネタ小説②キリマンジャロの雪
2冊目の元ネタは、『キリマンジャロの雪(原題:The Snows of Kilimanjaro)』という小説で、アーネスト・ヘミングウェイが世に出した小説です。バナナフィッシュの作中で、アッシュは独り言でも言うような素振りで、『キリマンジャロの雪』に登場する豹について語ります。アッシュは自身の死を考える際、必ずこの豹の存在が脳裏に浮かぶのだと、英二に伝えました。
豹は何故高い山頂を目指したのか、また、死亡する前は何を考えていたの?。アッシュのそんな疑問に対して、英二は「人間だったら知恵で運命を変えられる」と、半ば励ますような言葉をかけました。ヘミングウェイの小説は、アッシュの師匠・ブランカの愛読書であると言われています。そのため、アッシュは師匠の影響でこの小説を読んだのではないかと考えられています。
元ネタ小説③海流の中の島々
アーネストヘミングウェイが執筆した長編小説で、アッシュの師匠・ブランカの愛読書として作中に登場しました 。『海流の中の島々』は、ヘミングウェイの死後、遺作として1970年に出版されました。以下は内容のネタバレとなります。主人公・ハドソンは自分のことばかりを考え、孤独に苦しむ男性でした。
そして、不幸なことに戦争の際に被弾し、致命傷を負って死んでしまいます。 小説内での死に対する表現、感情は生々しく、原作者のヘミングウェイ自身も自殺を遂げています。戦争の悲劇を描く面では、『バナナフィッシュにうってつけの日』と似ているかもしれません。
元ネタ小説④武器よさらば
こちらもアーネスト・ヘミングウェイによる長編小説です。ブランカはヘミングウェイの作品が好きなようで、この小説も所持品の1つとして、アニメに登場しています。下記は簡略化したネタバレとなります。第一次世界大戦時のイタリアで兵士となった主人公・フレデリック。彼は現地でキャサリンという女性と恋に落ち、やがて彼女は妊娠します。
その後、フレデリックとキャサリンはスイスに逃亡しますが、キャサリンは難産に見舞われ、最終的に母子共に死亡してしまいます。大切な人を同時に2人亡くしたフレデリックは、途方に暮れ、雨に打たれながら、1人で姿を眩ますのでした。
こちらの小説も戦争被害を描いており、ヘミングウェイ自身の戦争観が表れた作品だと言えるでしょう。バナナフィッシュに話を戻しますと、作品内では闘争と死が繰り返し描かれます。「逃れられない死」は、ヘミングウェイの小説から影響を受けているのかもしれません。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の作中の意味ネタバレ
この項目では、漫画・アニメのバナナフィッシュの意味をネタバレします。元ネタ小説とはまた違う形で表現されるバナナフィッシュは、不思議な存在でもあり、恐れるべき存在でもあります。人々を苦しめるバナナフィッシュの正体をご覧ください。
作中の意味①薬物
早速ですがネタバレです。アッシュが追っていたバナナフィッシュとは、なんと薬物の名前でした。バナナフィッシュ=薬物というネタバレには、驚く方も多いと思われます。ネタバレ前には、魚の名前だと思っていた視聴者も多くいました。アッシュもバナナフィッシュのことは人名だと思っていたため、まさか薬だとは誰も想像し得なかったでしょう。
作中の意味②死を招く魚
小説の項目でもネタバレしましたが、バナナフィッシュ=戦争被害、すなわち死や悲劇を表します。アッシュの敵であるゴルツィネが言うには、「バナナフィッシュは世界を変えるもの」だとのことです。以下はサリンジャーの小説内のバナナフィッシュに関するネタバレです。バナナ・フィッシュは死を招く魚で、それに出会ってしまうと、死への衝動が起こると言われています。このことからバナナフィッシュの恐ろしさが伺えます。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の被害者や詳細
存在自体が忌まわしい薬物・バナナフィッシュは、最初は謎めいていましたが、物語が進む上で段々とその姿を露わにし、恐ろしい効能で登場人物の命を奪っていきました。バナナフィッシュの効力には、どんな人間でも抗うことができず、人間の命を脆く儚いものへと変えるのでした。
バナナフィッシュの詳細①被害者
アッシュの兄でマックスの親友のグリフィン・カーレンリース。彼は戦場での苦しみを癒やすためにバナナフィッシュを摂取しました。しかし、結果的には仲間殺しという罪を犯し、「バナナフィッシュ…」とぼそっと呟くだけの廃人と化してしまいます。
そんな兄の状態に絶望していたアッシュは、ある男が怯えた表情で「バナナフィッシュ」と呟き死亡した場面に出くわし、バナナフィッシュの謎解きを本格的に始めます。凶暴性を煽り、廃人化を促すバナナフィッシュの薬効は、恐怖を感じさせます。
バナナフィッシュの詳細②症状
バナナフィッシュの症状で顕著なものは、幻覚作用、破壊衝動、攻撃的な態度、洗脳による盲信などで、その症状が1日以上続くこともあると、作中では語られています。凶暴化した後に廃人となってしまう残酷さは、現実世界でも起こり得る恐怖です。バナナフィッシュはフィクションですが、違法薬物の恐ろしさがリアルに描かれています。被害者や近親者の悲痛な叫びや心境は計り知れません。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)に関する感想や評価
感想①キャラクターが魅力的
個人的に一番好きだと思ったのはバナナフィッシュかな〜
— ちーと。 (@10t_t26) October 25, 2017
キャラ皆魅力的
特にショーターとシンが好き
バナナフィッシュのキャラクターは魅力的な人物ばかりです。アッシュと英二はもちろん、ショーターなど主人公サイドの仲間達、アッシュと敵対するゴルツィネやオーサー、動きの読めないユーシスや複雑な想いを抱えるシン。それぞれの関係性や個性が混ざり合い物語が彩られています。
感想②アッシュと英二の関係が尊い
アッシュが英二に惹かれたのって、やっぱりアッシュ自身が優しい少年だったからだと思う。そうしなきゃ生きていけないから残酷な事もしたけど、本来は仲間思いの勉強好き。英二の優しさは本来のアッシュの性格を出すことを許される唯一の場所だったのかもしれない
— 豆乳 (@LH5586) June 15, 2019
アッシュと英二の関係性は、バナナフィッシュで最も重要な要素であり、ストーリー展開の軸でもあります。BL(ボーイズラブ)、親友、パートナーなど、2人の関係性を言い表す言葉はたくさんありますが、逆に一言では言い表せない繊細な関係でもあります。しかし、2人の間には確固たる絆があり、アッシュと英二は生涯を通じての親友だったと言えるでしょう。
感想③ラストが悲しくてショッキング
バナナフィッシュおわった…悲しい
— UGOO(うごー) (@ugoo333) June 12, 2019
絶対幸せなENDじゃないと思ってたけど途中まで良い感じだったじゃないの…因果応報なんだね
バナナフィッシュのラストは衝撃的で、多くのファンが悲しみと苦悩を経験しました。ハッピーエンドとは言い難い終わり方を迎えるものの、全てが報われなかったわけではありません。アッシュと英二は最後の最後まで深い絆で結ばれていたのです。ファンの心を揺さぶるラストは、賛否両論関係なく必見です。
バナナフィッシュ(BANANA FISH)の意味・元ネタまとめ
バナナフィッシュとは何なのか?この疑問はバナナフィッシュという作品を知る上で、とても重要なものです。この記事では、よりバナナフィッシュの世界に浸かれるように、質問の答えをまとめてお届けしました。この記事を機会に、バナナフィッシュのアウトロー且つ魅惑的な世界観を知って頂けたら幸いです。