2018年11月23日公開
2018年11月23日更新
秒速5センチメートルが鬱アニメ映画という理由は?あらすじや結末を考察
「秒速5センチメートル」は、あの世界中で大ヒットした「君の名は。」で有名な新海誠監督の作品の一つであり、全3話の短編連作アニメーションです。視聴者の間では「鬱アニメ映画」との感想が多く、この記事では「秒速5センチメートル」の簡単なあらすじや結末をご紹介しつつ、鬱アニメ映画と呼ばれる理由の考察をまとめました。ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。
目次
秒速5センチメートルは鬱アニメ映画?あらすじや結末も紹介!
それでは鬱アニメ映画こと「秒速5センチメートル」について見ていきます。「秒速5センチメートル」は、原作・脚本・監督・演出・絵コンテの全て新海誠監督が手がけています。「秒速5センチメートル」は短編の連作アニメーションとなっております。1話「桜花抄(おうかしょう)」2話「コスモナウト」3話「秒速5センチメートル」の全3話で構成されています。
「何の速さ?」と思ってしまうタイトル「秒速5センチメートル」に込められた意味、貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」鬱アニメ映画のラストを描いた表題作「秒速5センチメートル」それぞれのあらすじ、鬱アニメ映画と言われる結末を順に紹介していきます。ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。
秒速5センチメートルのタイトルの意味とは?
1話「桜花抄」
「桜花抄」に込められた意味とは、作中でも「桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル。」「ねぇ、なんだか雪みたいじゃない?」と明里が貴樹に伝えています。その後、転校で別れ離れになってしまいます。再会を心待ちにする心情をゆっくりと落ちていく桜の花びらに例えて、明里は手紙で貴樹に伝えています。「桜花抄」の言葉としての意味は桜の花を掬い取る(すくいとる)、掠め取る(かすめとる)となります。
2話「コスモナウト」
「コスモナウト」に込められた意味とは、ロシア語で「cos mo naut」と発音し、旧ソ連の宇宙飛行士の呼ばれ方です。2話のコスモナウトでは種子島が舞台となっています。2話の主人公である花苗が貴樹に告白しようとした時にロケットが打ち上げられますが、その瞬間に遠い星を見つめる貴樹の目に自分が映ることはないと気づいてしまいます。そしてロケットが暗闇の中を孤独に飛んでいくを恋愛に結び付けられています。
3話「秒速5センチメートル」
「秒速5センチメートル」に込められた意味とは、手紙が届くスピードや吹雪の中で停止してばかりの電車のスピード、貴樹と明里の想いが届き離れていくスピードなどが込められてます。物理的、心理的スピードを描いている恋愛ストーリーでの時間の感覚を強く表現するために印象的でシンプルな「秒速5センチメートル」とされています。
秒速5センチメートルのあらすじをネタバレ!
主な登場人物:遠野 貴樹
遠野 貴樹(とおの たかき)[声:水橋 研二]は「桜花抄」「秒速5センチメートル」の主人公です。転勤族の1人息子で、東京の世田谷の小学校に通っている誰にでも優しい爽やかイケメンな男の子です。小学生の頃から転校してきた篠原 明里に想いを寄せ続ける。まっすぐで純粋な気持ちが無意識に貴樹に想いを寄せる女性を傷つけてしまいます。
主な登場人物:篠原 明里
篠原 明里(しのはら あかり)[声:近藤 好美「桜花抄」/尾上 綾華「秒速5センチメートル」]遠野 貴樹と同じく転勤族の子供で、貴樹の初恋の相手です。貴樹の1年後に東京の小学校に転校してきたが、小学校卒業の日に栃木に引っ越してしまう。明里も貴樹のことが好きで両思いになるが、大人になるにつれ貴樹と連絡を取ることが無くなっていきます。
主な登場人物:澄田 花苗
澄田 花苗(すみだ かなえ)[声:花村 怜美]「コスモナウト」の主人公です。貴樹の転校先である鹿児島の中学校に通っていた貴樹に恋する女の子です。貴樹に片思いし続け同じ高校に進学します。その高校には教師の姉がいて、その姉にサーフィンを習っています。進路や貴樹への想いを伝えられず悩み苦しむ女の子です。そしていつも誰かわからない相手にメールをしている貴樹に悲しい想いを抱いてます。
1話「桜花抄」のあらすじ
桜花抄の舞台は貴樹と明里が出会った東京から明里の転校先である栃木の岩舟駅前です。岩舟駅前は「秒速5センチメートル」の映画ポスターになってます。あらすじは、転校生の遠野貴樹と、その1年後に転校してきた篠原明里は精神的にどこかよく似ていて、体が病気がちだった2人は図書館にこもり自然と仲良くなりました。この先もずっと一緒だと思っていた貴樹だが、ある日、明里から転校すると告げられたのです。
すぐには受け入れられなかった貴樹は明里に冷たくあたり傷つけてしまいます。その後、離れ離れになった2人は手紙でやり取りをし、貴樹が鹿児島へ転校することになったため、再会の約束をしました。東京から何本も電車を乗り継いで明里のいる岩舟駅を目指す中学生になった貴樹だが、初雪の降雪で電車は遅延を繰り返します。不安を募らせながら、ついに停車し復旧のめどが立たず身動き取れなくなってしまいます。
待ち合わせの19:00になるが、そこから2時間も動きのない電車の中で、泣くのを我慢しながら明里が待たずに帰宅してくれていることを願います。そして、岩舟駅に到着すると暖炉の前でずっと待ち続けていた明里に再会することができたのです。互いに涙を流し、明里が手作りで作った暖かいほうじ茶とお弁当を二人で食べます。駅も閉まり、歩き出した二人は枯れている桜の木を眺め、東京で一緒に見た桜を思い出しながら木の下で初めてのキスをします。
その後も柔らかな唇の感触だけが残っています。その夜、小さな納屋で古い毛布に包まり、眠りにつくまで長い時間をかけて明里と話続けます。朝になり動き始めた電車で帰る貴樹と別れを告げる明里は互いに想いを乗せた手紙を渡さず別れたのです。キスをする前と後では書いた手紙とは変わってしまったからです。貴樹はその後、鹿児島の種子島へ転校したのです。
2話「コスモナウト」のあらすじ
2話「コスモナウト」の舞台は鹿児島のロケット基地がある種子島です。そして主人公が貴樹ではなく澄田 花苗に変わり、視点が変わリます。桜花抄から時は流れ、遠野 貴樹の高校の同級生である女の子の澄田 花苗はスーパーカブ(種子島では原付の一種であるカブに乗って学生は通学する)に乗り、海から高校へ通学します。その高校の教師でもある姉に放課後も海へ行きサーフィンをするのか確認され、付き添いをお願いします。
高校へ到着し、弓道の朝練をする貴樹に気づかれるよう近づき、朝の挨拶をします。花苗は中学の頃に転校してきた貴樹に一目惚れをし、貴樹に片思いし続け同じ高校に進学したのです。学校で進路希望調査が始まり、進路に悩む花苗は友達から遠野は絶対東京に彼女がいると不安を煽られ、告白を急かされます。そして、下校する時に姉から車で一緒に帰るか聞かれるが断り、貴樹が現れるのを待ちます。
貴樹が現れ、偶然同じタイミングの帰宅を装う花苗は一緒に帰れることになりバレないよう胸の内で喜びを爆発させるのです。帰宅途中でコンビニにより飲み物を買う2人だが、花苗は決めるのが遅く貴樹が先に会計を済まし外に出てしまいます。がっかりしながら外へ出た花苗は誰かに真剣な顔でメールをする貴樹を見てしまいます。時々誰かにメールを打っているのは知っていて、いつも花苗は嫉妬していたのです。
それから数日後、校内放送で花苗は担任に呼び出されてしまいます。理由はクラスで1人だけ進路希望調査が出せていないからです。姉にねだって始めたサーフィンも、一向に実りそうにない貴樹への片思いもうまくいかず、自分が嫌になってしまいます。貴樹の近くにいると胸が苦しくなるが、帰り道で丘の上にいた貴樹を見つけ、貴樹の側に行きます。
貴樹と話していて花苗は優しくされると辛くなり、泣いてしまいそうになります。貴樹と進路の話になり、東京の大学へ進学すると言われてしまいます。花苗は明日のこともよくわからないと悩みを打ち明ると、貴樹に共感され花苗はホッとします。帰り道で今年打ち上げられるロケットの運搬を目撃し、花苗は打ち上げ場まで時速5キロでゆっくりと運ばれていくという話を貴樹に教えます。
それから、いくつかの台風がすぎた夏の終わりに花苗は半年ぶりにサーフィンで波に乗れます。今日こそ告白すると決意する花苗は貴樹と一緒に帰るが花苗のカブが故障してしまう。治らず2人で歩いて帰っていると、優しくされ辛くなった花苗は泣いてしまいます。そして、「もう優しくしないで」と小さく呟きますが、どうして泣いているのかわからない貴樹が立ち尽くします。
するとその瞬間、ロケットが打ち上がります。宇宙へと孤独に突き進むロケットを見た花苗はロケットと貴樹に重ねて自分の届かないところにいると気づき、告白を諦めます。そして、告白できぬまま卒業式を迎え東京行きの貴樹が乗る飛行機を見つめ花苗は泣き崩れます。貴樹は東京へ行ってしまったのです。
秒速5センチメートルの結末をネタバレ!
3話「秒速5センチメートル」のあらすじと結末
貴樹は大学進学で東京に戻り、会社に就職します。ただひたすら仕事に追われながら高みを目指しもがき続ける貴樹ですが、何のために頑張っているのか自分のことが理解出来ずにいたのです。そして、ある日3年間付き合っていた水野という名の女性からメールが届きます。「1000回メールしても、心は1センチくらいしか近づけなかった」と言われてしまいます。
彼女に自分の心が彼女に向いていないことが伝わってしまったのです。その彼女は眼鏡をかけており、どこか少し明里に似た面影を感じれる外見だった。だが、貴樹はあの岩舟の桜の木の下でキスをした明里のことが忘れられずにいたのです。そして、一方の明里は実家に帰省しているところです。その理由は結婚式の前に両親に顔を出すためだったのです。
そして、明里は実家で大事に保管していたあの日の手紙を見つけます。その影響なのか昔、彼と雪の中歩いた夢を見ます。そして、貴樹も同じ夢を見るのです。貴樹は現状に嫌気がさし、仕事を辞めてしまいます。
そして未練を残し彷徨い続ける貴樹と結婚し幸せな明里は電車の踏切ですれ違い振り向くが、電車で姿が確認できません。電車が通り過ぎるのを待った貴樹の目に映った光景には、そこには振り返る彼女の姿は映らなかったのです。
秒速5センチメートルは鬱アニメ映画?感想を紹介!
「秒速5センチメートル」の感想は、「鬱アニメ映画」「バットエンドが辛い」「心に残る名作」「映像が美しい」「儚さがいい」「泣ける」と様々な評価が視聴者から集められてます。岩舟まで電車のシーンや種子島での貴樹と帰宅する花苗のシーンなどは切なすぎて鬱になるそうになるとの感想が多いです。
中には貴樹のクズさについての感想もあります。その理由は誰にでも優しい人にありがちな無意識に傷つける言動や行動です。そして一番は絶妙なタイミングで主題歌の山崎まさよしの「one more time, one more chance」が流れてきて、切なさが強くなり映画に惹きこまれていきます。その歌詞とストーリがマッチしていてセリフなしでも歌詞が心情を物語ります。
秒速5センチメートルが鬱アニメ映画だといわれる理由とは?
鬱アニメ映画と入れる理由は、感想にも多くあったようにとにかく切なくて悲しいからです。貴樹と明里と花苗の三人のそれぞれの想いが届かない恋愛の儚さをリアルに描いた結果、鬱になってしまうくらいの感情移入してしまう映画だからです。そして映画のキャッチコピーの「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか」から辛くて儚い映画と伝わります。
秒速5センチメートルが鬱アニメ映画といわれる理由まとめ!
小説を見ることでより深く鬱アニメを楽しむことができる?
鬱アニメ映画と言われてしまう理由は何か?鬱というと良くない状態を指したり、印象が重たい言葉です。「秒速5センチメートル」は印象が悪い理由で鬱アニメ映画と言われているわけではないです。その理由は恋愛の儚さがこれ以上に伝わる映画はないというファンたちの想いが鬱になりそうなくらい感情移入してしまうという理由があっての鬱アニメ映画という素晴らしい評価なのです。
映画公開後に新海誠監督は自ら「秒速5センチメートル」の小説を書き上げています。映画と同様に3話で構成されていますが、映画では描かれていない細部まで描かれています。その中には岩舟駅でお互いが渡せなかった手紙の内容も描かれています。そして漫画・漫画原作:清家 雪子が秒速5センチメートルを全2巻で描いた作品もあります。
他にも関連作品として、ライトノベル作家の加納新太が「秒速5センチメートル one more side」のタイトルで、原作とは別の視点で描かれています。原作との違いは1話のあらすじは原作が貴樹ですが、明里の視点で描かれています。2話のあらすじは花苗ではなく、貴樹です。3話のあらすじでは明里と貴樹の両者の視点となっています。
主題歌「One more time, One more chance」/山崎まさよし
秒速5センチメートルの主題歌である「One more time, One more chance」は、シンガーソングライターの山崎まさよしの1997年に発売された音楽作品です。これほど「秒速5センチメートル」を引き立てる歌はないと言えるくらいストーリーにマッチングしております。作品と合わせてフルムービーをご覧ください。