君の名は。のティアマト彗星・災害を考察！糸守町に落下したのは実話？

2016年夏に映画公開された『君の名は。』今回はその映画の中で登場するティアマト彗星の落下によって引き起こされた災害について、実話に基づいた話なのかどうも含めて徹底考察していきます。

東京に住む男子高校生・立花瀧（たちばなたき）は、ある朝、岐阜県糸守町に住む女子高校生・宮水三葉（みやみずみつは）になっており、物語は2人の精神が入れ替わるという奇妙な現象を中心として進んでいきます。

知らない誰かの体で一日を過ごしていたことがわかった2人は、入れ替わっている間に起きた出来事がわかるように記して数日を過ごします。そしてお互いのことが気になりだした矢先、ある日を境に2人の精神が入れ替わることがなくなりました。ここからクライマックスに向けてストーリーが動き出し、そこにはティアマト彗星の落下が深く関わってきます。

公開から現時点で40を超える国で上映されており、その人気は留まることを知りません。2016年8月26日（金）の公開後は、途中1週のみ『デスノート Light up the NEW world』に1位を奪われはしましたが、13週目までに渡って12回、週末動員数1位を獲得しました。更に2017年7月には日本国内の興行収入250.3億円となったことが発表されました。

新海誠監督と言えば、日本のアニメーション作家・映画監督・小説家で、本作『君の名は。』は6本目のアニメーション映画作品です。今ではご存知の方は多いですが、実は作品が大々的に上映するようになったのは本作の『君の名は。』からなのです。

前作の『言の葉の庭』の公開で『映画興行というのがこれほど楽しいことならば、もっと大きなところでやってみたい』と強く思ったことがきっかけで、『君の名は。』は爆発的人気を記録することになりました。今後の活躍が期待される映画監督です。

映画の公開より2か月早く発売された小説版『小説 君の名は。』は監督である新海誠監督が著者を務めています。原作小説とされていますが、脚本が完成し映画の製作も終盤になってから執筆したとのことで、新海誠監督本人も『どちらが原作なのかと問われると微妙なところ』とあとがきに書いています。

ストーリーは映画とほぼ同じだというのにも関わらず2016年10月20日に累積売上部数が100万部を突破したことが明らかになりました。外伝小説の『君の名は。 Another Side: Earthbound』も必読です。

『新海ワールド』とは、新海誠監督が描き出す世界観のことで、特に風景描写の緻密さ・美しさは大勢のファンから支持を受けています。その作風や世界観に惹かれ、新海誠監督の作品への出演を熱望する演者も多いそうで、これまで主演を演じた入野自由、花澤香菜、神木隆之介などはいずれも新海誠監督の作品のファンであることを公言しています。

『君の名は。』を語る上で外せないのがティアマト彗星の落下です。ここでは本作に登場した未曾有の大災害ティアマト彗星の落下シーンをまとめていきます。

ティアマト彗星が落下する日の三葉の体に戻れた瀧は三葉と糸守町の人々を救うために奔走します。しかし三葉が何を言っても町の人々はおろか、祖母や父も信じてはくれませんでした。しかし友達の2人は信じてくれました。そこで3人は強引な手に打って出ます。町の発電所を爆破して、緊急放送をかけ町民を避難させることを試みます。

爆破計画が失敗に終わり、町民を避難させることができなかった瀧は、本物の三葉の声ならば聞き入れてもらえるのではと、再び入れ替わることができた祠に向かいました。そのころ三葉は3年後の瀧の世界で目を覚まし、そこから町を見下ろしていました。自分はあの日、ティアマト彗星が落下してきた日に死んでしまったのだと、三葉は全てを悟ったのです。

三葉がティアマト彗星の落下で跡形もなくなった糸守町を見下ろしているとどこからともなく瀧の声がしました。2人は違う時代にいましたが、お互いの存在を感じることができました。黄昏時（かたわれ時）と呼ばれる2つの時代が重なるこの時に、短い時間の中で瀧は確かに三葉に思いを託すのでした。

瀧の思いを受け継いだ三葉は町人の避難を急いぎました。しかし三葉は父のいる町役場へ向かう途中で転んでしまいます。その時既に瀧の名前を思い出せなくなっていた三葉は、それでも彼の言葉や思いを信じて諦めませんでした。やっと辿り着いた町役場には祖母や妹の姿もあり、三葉は父親と対峙します。そしてその後ティアマト彗星が落下して、糸守町は壊滅してしまうのでした。

ここでは本作『君の名は。』に登場する美しすぎる大災害ティアマト彗星の落下について考察していきます。

そもそも彗星は太陽の周りを回っている天体の1つです。岩石や氷、チリでできた塊で、楕円形の軌道を描きながら太陽の周りを回っています。年によっては肉眼でも見えるぐらいに地球に接近し、それが天然の天体ショーになるということです。この彗星の破片が落下し災害になるという事件が『君の名は。』の中で起こることになります。

本作で登場するティアマト彗星もその天体の中の1つです。1,200年を周期として太陽の周りを回っており、過去にも彗星の破片が落下して災害が発生したことが綴られています。

彗星の名前にもなっている『ティアマト』とはメソポタミア文明の神話の中に登場する女神です。女神と言っても人の形はしておらず、その体は世界を想像するほど巨大で、典拠によって様々です。彼女の最後は死した後体を2つに引き裂かれて、天地創造の材料にされたとなっています。『君の名は。』作中のティアマト彗星も途中で2つに別れてしまう表現がされていますが、これが神話に基づいてそうなったのかは定かではありません。

本作に登場するティアマト彗星ですが、映画公開後すぐに天体ファンの方々から疑問の声があがりました。彗星は太陽の周りを回っている天体のはずが、作中のニュースの中で描かれている彗星の軌道は太陽を回り込まずに手前で曲がるように描かれていたのです。これにはわざとなのか、単なるミスなのかいろいろな憶測が飛び交いました。

しかしその答えは2017年7月26日に発売された『君の名は。』のDVD・Blue-rayで明らかになりました。発売されたDVDを早速購入した方々が確認したところ、問題となったシーンが書き直され、太陽を回り込む形に修正されていたのです。というわけで、いろいろと騒がれた本件は単なる作画ミスだったということで解決しました。

作中に登場するティアマト彗星ですが、実は人工天体なのではないかという説があります。人工天体とはその名の通り、人の手によって宇宙に放たれ軌道に乗せられた物のことを指します。このこと自体ははっきりとした結論が出ていませんが、これが事実だとすればこのティアマト彗星の落下は元を辿れば人の手によって引き起こされた人災ということになってしまいます。

そもそも何故ティアマト彗星が人工天体なのではないかという説が出ているかというと、それは本作に出てくる三葉の友人、勅使河原克彦（愛称：テッシー）という男子高校生が持っていた月刊ムーという雑誌に関わっています。なんと、この雑誌の表紙に『「ティアマト彗星は人工天体だった！』と書かれているのです。わずかな時間しか映っていないのでDVDなどをお持ちの方は一時停止をしてみてください。

月刊ムーとは実在しているオカルト情報誌です。本作の監督である新海誠監督も小中学生の時によく読んでいたとのことです。三葉が瀧と心が入れ替わったことやティアマト彗星が落下してくることなど、荒唐無稽なことをいう三葉を率先して助ける勅使河原ですが、ただ助けるだけでは説得力に欠けると思い、そういう不思議な現象を受け止める素養を示すためにも「ムー」を作中に登場させたのだと新海監督はインタビューで話しています。

大ヒットとなった『君の名は。』ですが、実際のところ糸守町にティアマト彗星が落下した災害は実話だったのでしょうか？そこで気になるのはそもそも『君の名は。』に登場する糸守町やティアマト彗星自体も実在するものなのかどうかということです。ここでは本作の物語が実話に基づいたものだったのかをまとめます。

物語の舞台となる糸守町と糸守湖は残念ながら実在する町や湖ではなく、本作に登場する架空のものになります。しかしモデルとなった町や湖は存在しています。

三葉達が暮らす糸守町は岐阜県の飛騨市がモデルとなっており、『君の名は。』の中では岐阜県にあり飛騨Z郡という設定になっています。映画の中でも自然豊かな町として描かれていますが、町の中心には糸守湖があり、その周りに町が広がっていて、更に周囲を山に囲まれています。非常に小さな町で人口も約1,500人程度となっています。

糸守町の中心にある糸守湖のモデルは長野県の諏訪湖ではないかという声も多数あります。長野県は新海監督の出身地でもあり、白鳥の遊覧船で有名な人気の観光地です。『君の名は。』が大ヒットになった後は聖地巡礼として訪れる観光客が増え賑わっている様子です。

ではこの諏訪湖も隕石が落下してできた湖なのかというとそこは違います。八ヶ岳の火山活動で出来た火口湖であったり、大地の変動により塚間川の扇状地が形成され竜川がせき止められてできたなど、諏訪湖ができた経緯は諸説あります。形はそっくりですが隕石落下で出来た湖というわけではなさそうです。

ティアマト彗星も残念ながら実在する彗星ではありません。そしてこれもまた残念ながらティアマト彗星はモデルとなったような彗星はありませんでした。前述したとおり、諏訪湖も彗星の落下によってできた湖ではありませんし、彗星に限らず日本には今の所宇宙からの落下物によってできた湖はないようです。

カナダのケベック州北部ヌナビク地区にあるピングアルク湖は、巨大な隕石の衝突によってできたクレーターに水が溜まってできた湖です。直径は3.44 kmにもなり、上空から見ると真円に近い湖になっています。この神秘的な風景を『君の名は。』のモデルになったと言う人々もいます。それではこの湖ができた時も『君の名は。』のような大災害は発生したのかというと、そういった心配はありません。何故ならこの湖ができたのは140万年も前の出来事だからです。

ロシアにも隕石が大爆発したという実話が残っています。1908年、ロシア、シベリアのツングースカ上空で何かが爆発し、半径20キロの木を焦がして円形になぎ倒すという事件が発生しました。幸いにもシベリアの奥地であったため人的被害は免れたそうですが、奥地であるが故に、実際に何が起ったのかは謎に包まれています。

20年掛かって発見された落下地点は現在のツングースカ北部のチェコ湖にあたるそうです。この湖のできた経緯については研究者の間でも諸説ありますが、隕石が落下したことによりできたクレーターに水が溜まり湖となったのだと考えられています。長い楕円形をしており、直径が約300メートルと大きさは小さく、この湖自体が『君の名は。』のモデルとなったとは言われていませんが、世界ではこのように隕石によってできたとされる湖はたくさんあるようです。

こちらもロシアであった実話の隕石の話です。

本作の中では糸守町にティアマト彗星が落下した災害によって500人以上の町人が犠牲となっていました。糸守町もティアマト彗星も架空のものなので実話ではありませんが、ロシアの町に実際に隕石が落下した実話がありました。2013年チェリャビンスク州の隕石落下です。ロシアのチェリャピンスク州で2013年2月15日9時20分頃に発生したこの事件は糸守町の隕石落下と非常によく似ています。

隕石の落下による被害の中では過去に無い大規模なもので、隕石の上空爆発がまき散らした衝撃波によって多くの被害が出ました。巨大な隕石が落下し凄まじい衝撃波により多くの建物が崩壊しました。建物などの被害総額は約30億円とされており、負傷者は実に1,491人にも登りますが幸いな事に死者は０人で済んだそうです。

チェリャビンスク隕石の落下地点はまさかの湖でした。チェラビンスク中心部から約90キロの場所の場所にあるチェバルクリ湖です。この湖の中に隕石が落下したのです。こちらは隕石が落ちて湖ができたのではなく、湖に隕石が落下したということになります。

いかがでしたか？今回は『君の名は。』の中の糸守町にティアマト彗星が落下して発生した災害が実話だったかどうかを考察しました。残念ながら実話ではありませんでしたが、日本や世界に点在する風景や、隕石が関連する事件、災害などが参考にされていることがわかりました。興味を持った方は是非この機会に『君の名は。』の視聴、再視聴をしてみてください。