【機動戦士Zガンダム】ブレックス・フォーラはエゥーゴの創立者！最期は暗殺された？

「機動戦士ガンダム」終了から５年後、続編「機動戦士Z（ゼータ）ガンダム」（1985年～1986年）のテレビ放映がスタートしたようです。「Z（ゼータ）ガンダム」は一年戦争終了後から７年の年月を経て、新たな主人公カミーユを据え「ガンダム」以上に濃い人間ドラマを繰り広げていきます。

「Z（ゼータ）ガンダム」のOPには、監督・冨野由悠季さん、キャラクターデザイン・安彦良和さん、メカニックデザイン・大河原邦男さんら「ガンダム」の生みの親がクレジットされています。しかし、安彦良和さんと大河原邦男さんはデザインのみで、「Z（ゼータ）ガンダム」は才能豊かな若手アニメーターたちが彼らのデザインを元に進めていったようです。

宇宙世紀0087年。一年戦争を勃発させたジオン残党掃討のために地球連邦で設立されたティターンズは、公的権限を逸脱しコロニー居住者であるスペースノイドに強硬的な姿勢を取り始めていきます。ニュータイプと言われるアムロ・レイと似たような経緯を経てガンダムのパイロットとなったカミーユ・ビダンは、反地球連邦組織エゥーゴに身を投じていく中、ニュータイプとして片鱗を見せ始めていきます。

地球連邦軍の准将ブレックス・フォーラ（58歳）は、一年戦争で指揮官のような役割に就いていたとみられます。ブレックスのプライベートな面は不明であるものの、家族を亡くした悲劇に見舞われたようです。一年戦争終了後ブレックスは、極端な地球至上主義者ジャミトフが設立したティターンズに対抗するため、地道なロビー活動を経て反地球連邦組織エゥーゴを創立したようです。

ブレックスはクワトロが赤い彗星のシャアで、宇宙世紀における人類の未来を模索し続けたダイクンの息子キャスバルであることを知りながらもエゥーゴの幹部に迎え、アムロを彷彿させるようなニュータイプセンスがあるカミーユに期待を寄せています。宇宙世紀0087年8月17日。人類の愚行から危機に瀕している地球の行く末を訴えようとしたブレックスは、志半ばでティターンズ側の刺客によって無念の最期を迎えてしまいます。

地球連邦議会出席のため地球に降りていたブレックスは、滞在先のホテルの自室で死亡していたようです。ブレックスは銃で殺害されたとみられ、暗殺はティターンズ説が濃厚であるものの、殺害の瞬間や死亡に至るまでの経緯がテレビ版・劇場版「Z（ゼータ）ガンダム」では具体的には描かれていないようです。ブレックス死亡後のエゥーゴは、ウォンとクワトロとブライトの三人体制で指揮を取っていったようです。

ブレックス暗殺をエゥーゴの内部犯とすると、第一容疑者はエゥーゴのスポンサーであるアナハイム・エレクトロニクス社の幹部ウォン・リーが挙げられるかもしれません。スポンサーが出資した側に発言力があるのは当然であることから、二人の対立があってもおかしくはないでしょう。対立の末にウォンが広い人脈を使って、ブレックス暗殺を実行した可能性もないとは言えないでしょう。

大企業の幹部であるウォンは狡猾な人物に見えるかもしれませんが、エゥーゴで戦略や戦術など積極的に関わっている行為は、損得勘定ではなくエゥーゴの理念に共感した故の行為と考えられます。ブレックス死亡にウォンは悲しみはすれど、ブレックス暗殺を実行した可能性は低いでしょう。

ブレックス暗殺をアクシズ関係者とすると、第一容疑者はシャアと因縁があるアクシズの指導者ハマーン・カーンが挙げられるかもしれません。一年戦争終了後、ジオンの残党はザビ家の後継者ミネバがいる小惑星アクシズに集まっていったようです。生き残ったシャアはアクシズで一定期間定住していたようですが、後にハマーンと意見の相違からアクシズを立ち去ることとなります。

「Z（ゼータ）ガンダム」はエゥーゴVSティターンズの武力抗争から、ザビ家再興を掲げたアクシズが加わり三つ巴の戦いに突入していきます。「Z（ゼータ）ガンダム」後半の重要なキャラクターとなるハマーンは、袂を分かつこととなったシャアに公私ともに固執していることから、ブレックス暗殺を実行した可能性は低いでしょう。

ブレックス暗殺をティターンズとすると、第一容疑者はティターンズの創立者であり総帥ジャミトフ・ハイマン、総司令官バスク・オムが挙げられるかもしれません。ジャミトフとバスクはブレックスと因縁があることから、二人が結託してブレックス暗殺をした可能性はあり得るかもしれません。

「Z（ゼータ）ガンダム」の劇場版では、テレビシリーズでは詳細不明だったブレックス暗殺について踏み込んでおり、暗殺はティターンズのジャミトフとバスクによるものではなく、権力欲の強いバスクだったことが示唆されているようです。ちなみにバスクは、カミーユの両親を人質に取った末に死亡という悲劇的な最期を引き起こした人物でもあります。

ブレックスの最期を見届けたのは、一緒に地球へ降りていたクワトロ・バジーナです。ブレックスはクワトロが亡き父ダイクンの意思に導かれ、キャスバルから赤い彗星のシャア・アズナブルになったことを理解しているからこそクワトロにエゥーゴを託して絶命します。「機動戦士ガンダム」の前日譚「THE ORIGIN」では、シャアことキャスバルの激動と波乱に満ちた少年時代が描かれています。

亡き父ダイクンが唱えたニュータイプ論を肌で感じ取っているシャアは、ジオン士官学校時代には地球連邦に反旗を翻した「暁の蜂起事件」を引き起こし、一年戦争時代には赤い彗星のシャアとして活躍するなどリーダーとしての資質は十分と言えるでしょう。しかし、「Z（ゼータ）ガンダム」時代のシャアは、自分自身がどうするべきか悩んでいた時期なのでブレックス暗殺には関与していないでしょう。

テレビアニメ版「Zガンダム」でのブレックス役の声優・藤堂貴也さんは、OVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」（1989年）にも出演していたようです。俳優としての出演作品には、70年代から80年代にかけてNHK大河ドラマ「黄金の日日」「春の波涛」やNHK連続テレビ小説「ハイカラさん」に出演、民放では80年代を代表する人気ドラマ「男女7人夏物語」「アリエスの乙女たち」に出演していたようです。

劇場版「Zガンダム」でのブレックス役の声優・石井康嗣さんは、現在はフリーで活躍しているようです。賢プロ在籍時には声優兼賢プロ会長である故・内海賢二さんから指導を受け、内海賢二さんの代役としてナレーションを務めたこともあるようです。「名探偵コナン」では石塚運昇さんの死去により、刑事部捜査二課の警部・中森銀三役を引き継いだようです。

「ガンダムシリーズ」のゲームでのブレックス役の声優・沢木郁也さんは、声優以外に音響監督やオーディオドラマなどの演出も担当していたようです。数多くのアニメや洋画に出演している沢木郁也さんは、2002年からは国民的アニメ「サザエさん」のカツオの担任の先生役を担当しているようです。

ブレックスは安彦良和さん曰く、冨野由悠季監督の「一見温厚そうな人」との指示のもとデザインされたキャラクターのようです。そして内には、情熱を秘めた人物であったと言えるでしょう。

宇宙世紀の先駆者であるブレックスとダイクンはカリスマ性があり、死亡原因は敵対勢力による暗殺説が濃厚と言われ、そこまでに至る経緯が不明となっており、お二方は何かと共通点がありそうです。

「ガンダム」に登場する大人たちは、良い面も悪い面も的確に描いておりリアリティを感じさせます。ブレックスはどことなく亡きレビル将軍に通じる穏やかさがあり、亡くなってしまったのは残念だったと思っているファンも多いことでしょう。

一見するとブレックスは、カミーユやシャアなどに押され影が薄いキャラクターのように見えるかもしれません。出番は少なかったものの、暗殺で死亡するまでの生きざまを振り返ってみるとダイクンと同じように揺るぎない高潔な信念の持ち主であったようです。