【BANANA FISH】李月龍とは何者？関係キャラや華僑について紹介

「別冊少女コミック」に連載されていた吉田秋生原作の漫画「BANANA FISH」（1985年〜1994年）は、コミックス全19巻・文庫版全12巻となっています。同作者により発表された「YASHA－夜叉－」「イヴの眠り」は「BANANA FISH」の続編ではなく世界観のみを共有しており、イケおじになったシンがサブキャラとして登場しています。

「BANANA FISH」の主人公は少女漫画屈指の美少年アッシュですが、内容はバードボイルド映画を彷彿させるような展開となっています。当時の読者は、少女漫画の域を超えた斬新なストーリーと、アッシュと英二の男性同士のプラトニックな関係に心ときめかせていたようです。

吉田秋生の漫画家生活40周年記念してアニメ化された「BANANA FISH」は、フジテレビのノイタミナで2018年7月～12月・全24話が放映されています。アニメ界のトップクリエイターにより、原作のイメージを損なうことなくスタイリッシュな仕上がりとなったアニメ「BANANA FISH」は、当時のファンを満足させるだけでなく新たなファンを獲得したようです。

時は1973年。ベトナム戦争に従軍していた米軍兵士グリフィンは、いきなり錯乱し同僚を射殺してしまった後、「バナナフィッシュ」と呟き精神が蝕まれていきます。それから1985年、ニューヨーク。スバ抜けた知能と超絶戦闘スキルでストリート・キッズを従えている美少年アッシュ・リンクスは、日本からストリート・キッズの取材で訪れたカメラマンとその助手である奥村英二と出会うことになります。

接点のないはずのアッシュと英二は、いつしか友情を築いていくことになります。そんな二人は、アッシュの兄グリフィンが呟いていた「BANANA FISH」（バナナフィッシュ）を巡り、国家を揺るがす陰謀に関わっていくことになります。原作設定を80年代からアニメ放映当時の2018年頃に変更した「BANANA FISH」では、アッシュの兄グリフィンはベトナム戦争ではなくイラク戦争の帰還兵となっています。

女性的な美しさを漂わせている美少年・李月龍（リー・ユエルン）は、アメリカではユーシスと名乗っています。チャイニーズ・マフィアを配下に置く李家の末弟である李月龍は、幼少期から薬草や毒、劇薬に関連の英才教育を受けており、人間を自由自在に操る薬物「BANANA FISH」の組成に関心があるようです。父の死後、母を殺害した異母兄達に復讐を誓った李月龍は、彼らを抹殺し李家を乗っ取ることになります。

アッシュと敵対することとなる李月龍は、自分と同じく愛情とは無縁の子供時代を送っていたアッシュに親近感を抱いていたようです。しかし李月龍は、短期間に唯一無二の関係性を築いたアッシュと英二に憧れと憎しみが入り混じった感情を露わにしていきます。

華僑の「華」は中国人、「僑」は仮住まいを意味していることから、華僑は故郷の中国国籍と移住先の国籍を取得した中国人やその子孫を意味しています。華僑と混同されがちな華人は移住先の国籍のみだけなので、中国国籍を持ったままの華僑とは違い故郷への愛着は低いとされています。

「BANANA FISH」で登場するチャイナタウンには華僑が生活しており、李月龍、ショーター、シンは華僑であると言えるでしょう。移住先の国でマイノリティとなる華僑は人一倍警戒心が強いようですが、一旦信頼関係を構築するとそれを大切にすることから世界各国で繁栄していったようです。李月龍の祖先もその様にして李家を繁栄させ、華僑の実力者となっていたのでしょう。

ショーターはチャイナタウンのストリート・キッズのボスですが、同じくストリート・キッズのボスであり少年刑務所時代からの親友アッシュとは対立することのない温厚な性格のようです。実家で姉マーディアが経営している中華料理店は、アッシュたちの憩いの場になっているようです。

アッシュを手中に収めようと画策するゴルツィネによりショーターは、「BANANA FISH」を投与され英二を殺害するように精神を支配されてしまったことで、究極の選択を下したアッシュに殺害される非業の最期を遂げています。

非業の死を遂げたショーター亡き後のボスとなったシンは、子供のような見た目とは裏腹にリーダーとしての才能を発揮していきます。シンはショーターを殺害したアッシュを憎んでいましたが、真相を知って以降は友好的になっていったようです。「BANANA FISH」のアナザーストーリー「光の庭」でのシンは、190.5cmと急激に背が伸び当時の面影はなくなったようです。

後にシンは、「光の庭」に登場したアッシュと英二を引き合わせることになった伊部の姪の暁と結婚ししています。シンの結婚エピソードは描かれていませんが、「YASHA－夜叉－」で注目のイケメンセレブとなったシンの結婚に中国中の女性が涙したと語られています。

シンと異母兄弟のラオは、ストリート・キッズのボスとなったシンを陰から支えているようです。ラオはショーターの死の真相を知っても、シンとは違いアッシュに対する憎悪は払拭されることはなかったようです。暴走していく憎悪に取り込まれてしまったラオは、最終回でシンのためにアッシュを殺害してしまいます。

「BANANA FISH」の主人公アッシュは、コルシカ・マフィアのボスであるゴルツィネにより英才教育を受け、並外れたカリスマ性でストリート・キッズのボスにのし上がっていきます。男女問わす魅了してしまうアッシュは、不幸な生い立ちが災いして他人に心を開くことは無かったのですが、日本から来た英二に心を許していくことになります。

唯一の家族である兄グリフィンを廃人にした「BANANA FISH」の真相に追求しようとするアッシュは、親友ショーターを手にかけ、唯一無二存在となった英二を巻き込んでしまったことに罪悪感を抱いてしまいます。すべてにケリをつけたアッシュは、帰国する英二の前に姿を見せなかったものの、英二からの手紙に心揺さぶられた矢先、ラオに刺されてしまいます。

「BANANA FISH」で李月龍を演じた福山潤さんの声優人生は、意中の女の子が声優を目指していたことがきっかけで一緒にオーディションを受け合格したことから始まったそうです。1997年に「月刊Asuka」のラジオCMナレーションで声優デビューした福山潤さんは、2000年にテレビアニメ「無敵王トライゼノン」の主人公・神威章役に抜擢されています。

福山潤さんは以降、アニメイベントの声優部門でファン賞やグランプリを受賞するほどの人気と実力を兼ね備えた声優へ成長していったようです。元々「BANANA FISH」のファンであった福山潤さんは当時、李月龍というキャラは理解不可能だったようです。声優として20年近くのキャリアを重ねた福山潤さんは、冷酷無慈悲な李月龍が人間らしく見えてきそうです。

福山潤さんはCLAMP原作の作品「XXXHOLiC」（四月一日君尋）、富野由悠季監督「∀ガンダム」（キース・レジェ）、実写映画にもなった「暗殺教室」（殺せんせー）など注目アニメではお馴染みの声優となっているようです。2001年にニンテンドーゲームキューブ最高売上ソフト「大乱闘スマッシュブラザーズDX」でロイ役を演じていますが、2015年に同名ゲームのリニューアル版で再びロイを演じています。

アッシュと李月龍は頭脳明晰な美少年ですが、アッシュはブランカから戦闘訓練も受けているので文武両道に秀でています。一方、お坊ちゃまオーラを放っている李月龍は執事がいそうなので、箸より重いものは持ったことがないのかもしれません。

ゴルツィネのボディーガードから李月龍のボディーガードになったブランカは、かつての愛弟子アッシュを助けるため李月龍の元を離れていきます。そして李月龍は、独り取り残された感となったようです。

憎しみに囚われた李月龍は、最終回でようやく自分を受け止めてくれるシンにより救われたのかもしれません。「YASHA－夜叉－」「イヴの眠り」でシンは、世界各国に散らばっている華僑のトップに君臨していますが、これは李月龍のバックアップがあったと見ているファンもいることでしょう。

「YASHA－夜叉－」で李月龍は、シンにより亡くなったと語られています。「BANANA FISH」アナザーストーリーの「光の庭」のように、李月龍のアナザーストーリーとしてシンとのその後の関係や、亡くなるまでの経緯を知りたいファンもいることでしょう。