【あしたのジョー】ウルフ金串はジョー最初のライバル？30万借金エピソードや声優も

本記事では、あしたのジョーに登場するウルフ金串という人物に焦点を当て解説していきます。しかし、世に出てから半世紀以上も経過していることから、あしたのジョーという作品自体をご存じない方もいることでしょう。ここではウルフ金串の話題に移る前に、まずは「あしたのジョー」についての作品情報を紹介していきます。

ボクシングのヒーローを主人公にした漫画作品「あしたのジョー」。原作は巨人の星やタイガーマスクなどスポコンもので知られる高森朝雄（梶原一騎）、作画はちばてつや。1968年週刊少年マガジンにて連載が開始されると大きな反響を呼び、社会現象を巻き起こすまでになります。

主人公・矢吹ジョーのライバル・力石徹が試合後死亡したときは、劇作家・寺山修司の発案で「葬儀」が執り行われるほどでした。後にWBC世界バンタム級チャンピオンに輝いた辰吉丈一郎も本作から影響を受けたと語っています。コミックスの累計発行部数は2000万部に上ります。

テレビアニメ化も行われ、1970年から翌年にかけてフジテレビ系列で放映されました（最高視聴率29.2％、全79話）。さらに、1980年には続編となる「あしたのジョー2」が日本テレビ系列で放映（全47話）。また、それぞれのシリーズを再編集した劇場版アニメも制作・公開されています。

東京都台東区にかつて存在した日雇い労働者が多く住む街、山谷。このドヤ街が物語の舞台です。主人公は矢吹ジョーと名乗る風来坊の少年。そして、街の暴力団員たちと戦う彼の姿にボクサーとしての天性の才能を感じた元ボクサーでアル中男の丹下段平が登場します。丹下は自分の果たせなかった一流ボクサーの夢を託して、ジョーにボクシングの魅力を語ります。しかし、一筋縄でいくジョーではありませんでした…。

ここからは、本記事の主役となるウルフ金串（かなぐし）の解説に入って行きます。まずはプロフィール、そして彼の残した名言へと続きます。

所属するアジア拳ジムの金の卵と呼ばれ周囲の期待を一身に集める若手ボクサー・ウルフ金串。気が短く時に冷酷な一面を見せることもあります。

後に全日本新人王決定戦に出場し、バンタム級の新人王に輝きます。この時は、試合の始まる直前まで何度もトイレに行くなど緊張した面持ちの彼に驚いた方も多かったのではないでしょうか？

次に、ウルフ金串の有名な名言を紹介しておきましょう。デビュー戦でジョーが見事なクロスカウンター披露した時に、観客席で見ていたウルフの口からついて出た名言です。アジア拳ジムの会長に向けた名言ですが、過去のジョーとの出会いを思い出し自らに言い聞かせるように発した印象的な名言といえるでしょう。

では、この名言に出てくる「アリ地獄」とはどのようなことを意味しているのでしょうか？一度喰らったら二度と生きて出られないというような意味の名言なのでしょうか？この名言の直後に「あのアリ地獄みてえなクロス・カウンターが頭にこびりついて」とも語っています。それほどまでに強烈なジョーのカウンターを、ウルフ金串はこの名言で「アリ地獄」という比喩を使って表現したのでしょう。

ジョーとの出会いは、ウルフ金串の脳裏に鮮烈な記憶として刻み付けられることになりました。それは、ウルフ金串が満を持して臨んだ全日本新人王決定戦でのことでした。会場に来ていたジョーは、目の前を通り過ぎていくウルフ金串に、わざと足を引っ掛け転倒させます。それが、ジョーとウルフ金串との出会いとなりました。

その日の試合では、ウルフ金串は決定戦を勝ち抜きバンタム級の新人王に輝きます。控室に戻った興奮冷めやらぬ彼を1人の青年が待ち受けていました。その青年はウルフ金串にサインを求め、ウルフがサインを書いてあげるとヘタクソだと馬鹿にしました。その青年こそ先ほどウルフ金串の足を引っかけ転倒させた矢吹ジョーだったのです。怒ったウルフ金串が殴りかかろうとすると、次の瞬間ジョーのクロスカウンターが炸裂します。

実はこの一連の行為は、ジョーの策略によるものでした。ボクシング協会と険悪な関係にある丹下段平の門下であることからライセンスの取得ができなかったジョー。注目の強豪選手にパンチをヒットさせ実力を示すことで、ライセンスを手に入れようとして起こした一世一代の茶番劇だったのです。

遂に一戦を交えることになった両雄、ジョーとウルフ金串。それは、互いのA級ライセンス切り替えがかかった試合でした。意外にもセオリー通りのファイトで臨んできたジョーに押され、ウルフ金串は劣勢に立たされてしまいます。しかし、ジョーの放った必殺技クロスカウンターを得意のダブルクロスカウンターによって防御することに成功。形勢が逆転、ウルフ金串は優勢に立ちます。

ところが、今度はジョーがトリプルクロスカウンターを仕掛けてきます。その強烈なパンチは、見事にウルフ金串の顎を捉え、結局その一発で試合は決まってしまいました。さらに悪い事に、顎の骨を砕かれたウルフ金串は選手生命を絶たれ、引退を余儀なくされてしまいました。

ジョーとの戦いに敗れた上、顎の複雑骨折で再起不能となったウルフ金串。ボクシング界を引退した後の彼は、どのようになっていったのでしょうか？

ウルフ金串のその後ですが、ヤクザのお抱え用心棒に身を崩し、手下に愚痴をこぼす毎日を過ごしていました。ただし、現役時代の強烈なパンチはなおも健在で、街のチンピラでは到底歯が立たない強さを誇っていました。

ある日喫茶店でゴロマキ権藤とケンカになったウルフ金串。爆弾を抱える顎を蹴られて、再び粉砕骨折の大けがを負ってしまいます。戦意を失っているウルフ金串に、なおも執拗に攻撃を浴びせるゴロマキ。その場にたまたま居合わせたジョーは、見るに見かねてゴロマキを殴り倒します。

ここからは、ウルフ金串にまつわるエピソードを2つ紹介します。まずは30万円の借金についての話からです。ある日パチンコ店で時間を潰しているジョーにウルフ金串が声を掛けてきました。彼の話によると、ヤクザの用心棒はすでに辞め、今はとあるボクシングジムのトレーナーをやっているとのことでした。

ウルフ金串はジョーを店の外に連れ出し、自分の勤めているボクシングジムに案内します。そのジムに30万の借金があるというウルフは、1週間後には必ず返すから30万円貸してほしいとジョーに頼んできました。

ウルフ金串の頼みを聞き入れ、30万というお金を用立ててあげるジョー。しかし、後日ボクシングジムを訪れると、そこにウルフ金串の姿はありませんでした。ジムの関係者に尋ねたところ、ウルフ金串はたまに遊びに来るもののここで働いているわけではないことが判明します。借金を踏み倒す気か？ジョーの頭をそんな考えがよぎりました。

ジムを出たジョーの前にウルフ金串の元婚約者を名乗る女性が現れます。ウルフ金串は、彼女からも借金をしていました。その女性は、ジョーが貸したお金を自分が返済すると言い出します。しかし、ジョーはその申し出を断りこう言いました。「丹下のオヤジのお金だしまあいいよ。アンタがウルフ金串を信じているように俺もウルフ金串を信じる」。そう言ってジョーはその場を後にしました。

元婚約者の女性も心配していた30万円の借金の件、どうなったのでしょうか？ホセ・メンドーサとの世紀の一戦を控えた前日の夜。興奮から目が冴えてしまい、窓外の景色をぼーっと眺めていたジョー。その目にウルフ金串の姿が映りました。何と彼は30万の借金を返しにやって来たのです。

30万の金が入った封筒をドアにそっと置いて帰ろうとするウルフ金串を、ジョーが呼び止めます。その後2人はバーに出かけ飲むことに。明日の試合は必ず見に行くと告げるウルフ金串。ホセとの試合では、リング下の席から「クロスカウンターを見せろ！」と叫んで応援するウルフ金串の姿がありました。

アニメ・あしたのジョーでのウルフ金串の声ですが、複数の声優が担当しています。1970年4月に開始したアニメと1980年10月の続編アニメでは、別々の声優が担当していたからです。

1970年のアニメ・あしたのジョーでウルフ金串の声を演じたのは、声優で俳優でもあった加藤治。1936年1月1日東京に生まれた加藤は、2017年12月18日81歳でこの世を去りました。

重厚で低い声質の加藤は、中年から老年の悪役男性役を多く演じました。その一方で、「美味しんぼ」の富井精一など裏声を駆使してコミカルなキャラクター作りをすることもありました。

1980年に始まった「あしたのジョー2」で、ウルフ金串の声を演じた納谷六朗。1932年10月20日に生まれ2014年11月17日82歳で亡くなった、声優で俳優、さらにナレーター、演出家としても幅広く活躍しました。

「聖闘士星矢」のカミュ役をはじめとする数多くのアニメ作品のほか、洋画ではエド・ハリスやジョン・ハートの吹き替えでも有名です。また、俳優・声優の納谷悟朗は実兄で、「ルパン三世 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜」では兄弟の共演が実現しています。2014年、第8回声優アワードで「功労賞」を受賞しました。

2011年に公開された実写版映画「あしたのジョー」。この映画でウルフ金串を演じたのは、1975年1月16日福島県会津若松市に生まれた俳優の虎牙光揮です。

2000年にNIKEのアジア・オセアニアモデルとして芸能界デビューした虎牙光揮。プロボクサーのライセンスをはじめとして、空手二段やブラジリアン柔術青帯など格闘技の資格を持っていることで有名です。

ここまで、あしたのジョーのウルフ金串特集をお届けしてきましたが、最後にウルフ金串に関する感想や評価をツイッターから紹介します。

最初に紹介するウルフ金串に関する感想や評価は、ウルフ金串といえば必ず出てくる借金にまつわるエピソードのツイートからです。実は今回紹介する感想や評価はすべてこのエピソード絡みになりました。それほど多くの方の心を揺さぶる名シーンなのでしょう。このツイートを投稿した方も、大人になってから改めて見ると心に沁みたと語っていました。

続いて紹介するウルフ金串に関する感想や評価は、原作にはないアニメオリジナルエピソードが最高だというツイートからです。律儀に借金を返しに来るウルフ金串と彼を呑みに誘うジョー、そして自分が姿を見せると雰囲気を壊してしまうと静かに去るゴロマキ権藤。出崎監督による演出が光る絶妙の構成と言えるのではないでしょうか？

ウルフ金串に関する感想や評価、最後に紹介するのは、あしたのジョー原作にないキャラがいいと言うツイートからです。落ちぶれてジョーに借金するウルフ金串など原作には出てこないキャラが作品を彩り、原作にはない魅力を醸し出しているのでしょう。

ここまで、あしたのジョーに登場するウルフ金串を特集し、彼のプロフィールから30万借金エピソードや名言、そして声優の情報までまとめてお届けしてきました。

強烈な個性を持ちながらも登場回数は多いとは言えないウルフ金串。しかし、彼の登場する回は、そのいずれもがファンの脳裏に深く刻み込まれるものとなりました。矢吹ジョーとの鮮烈な出会い。そして、ウルフ金串の選手生命を絶ち結果として彼を引退へと追い込んでしまう、互いのA級ライセンスを賭けた名試合。さらには、数々の名シーンの宝庫である「あしたのジョー」の中でも最高の回との評価の高い30万借金エピソード。

この記事で彼に興味を持った方は、ウルフ金串に注目しながら作品を鑑賞してはいかがでしょうか？この記事で紹介した彼の魅力に実際に触れることができるかも知れません。ウルフ金串は登場回数は少ないものの見ごたえのあるキャラクターです。