ピンポンのアニメ版と漫画版の違いは?作画のクオリティ・再現度や感想も紹介

「ピンポン THE ANIMATION」は松本大洋の原作漫画「ピンポン」を天才・湯浅政明が監督したテレビアニメ作品です。名作との誉も高いピンポンですが、アニメ化の感想には賛否両論あるようです。アニメ版ピンポンと漫画版ピンポンの違いはどこにあるのでしょう? また一部視聴者からは「作画が崩壊している」との感想もあるようですが、アニメ版ピンポンの作画のクオリティや漫画版の再現度はどのようなものなのでしょうか? またテレビ版ピンポンの感想についても紹介します。

ピンポンのアニメ版と漫画版の違いは?作画のクオリティ・再現度や感想も紹介のイメージ

目次

  1. アニメ版ピンポンとは?
  2. アニメ版ピンポンの監督は?
  3. アニメ版ピンポンのあらすじ
  4. ピンポンアニメ版と漫画版の時代の違い
  5. ピンポンアニメ版と漫画版の登場人物の違い
  6. ピンポンアニメ版と漫画版のストーリーの違い
  7. ピンポンアニメ版の作画のクオリティや再現度
  8. ピンポンアニメ版の作画方法
  9. ピンポンアニメ版の感想
  10. ピンポンアニメ版と漫画版の違いのまとめ

アニメ版ピンポンとは?

2014年の春アニメとして「ピンポン THE ANIMATION」のタイトルでフジテレビのアニメ枠「ノイタミナ」で4月から6月まで放送されました。東京アニメアワードフェスティバル 2015にてアニメ・オブ・ザ・イヤー部門テレビ部門グランプリを受賞しています。原作は週間ビッグコミックスピリッツにおいて1996年から1997年まで連載された漫画「ピンポン」です。作者は「鉄コン筋クリート」でも有名な松本大洋です。

TVアニメ『ピンポン』公式サイト

アニメ版ピンポンの監督は?

アニメ版の監督を務めたのは湯浅政明。「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」など数々の有名アニメ作品を手掛けてきたアニメーターです。監督としても、テレビアニメ「四畳半神話大系」や劇場版アニメ「夜は短し歩けよ乙女」「夜明け告げるルーのうた」など数々のヒット作を生み出しています。そのサイケデリックな色使いや傾いた遠近法、揺れる線やアクションなど、独特の作風は天才とも称されています。

Thumbピンポン(漫画版)の感想と魅力は?最終回や名言・名シーンも紹介 | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

アニメ版ピンポンのあらすじ

卓球が大好きで天才にして自信家のペコと、無口だが秘めた才能を持つスマイルが中国からの留学生や高校No.1の強敵、幼馴染のライバルとの対戦を通して悩みや葛藤、挫折を乗り越え、成長していく物語です。当初、湯浅監督は青春物語として捉えていたそうですが、原作者の松本大洋に聞いたところ「スポ根」とのことで、解釈の仕方を改めたそうです。

ピンポンアニメ版と漫画版の時代の違い

それでは、アニメ版ピンポンと漫画版ピンポンではどこがどのように違うのでしょうか。先ず挙げられるのは時代性でしょう。アニメ版ピンポンの放送が始まった時には原作漫画の連載が終了してから17年の歳月が流れていました。

卓球というスポーツの変質

多くのスポーツは時代と共に変わっていきます。ルール改正や使用する用具の発達、トレーニング方法も進化していきます。卓球も例外ではありません。漫画版では21点制だったのが、アニメ版では11点制に変更されています。またボールも17年前は38mm球を使用していたのですが、現在は40mmとなっています。そのため「たかが2.5gの球の行方に」というセリフも「2.7g」に変わっています。

戦術面での変化もアニメ版ピンポンでは取り入れられています。ペコはアニメ版、漫画版共に前陣速攻という戦型なのですが、この戦術はボールの大きさの規定が変更され、空気抵抗が大きくなってスピードが出せなくなった現在の卓球では完全に時代遅れなものになっています。アニメ版ピンポンではアクマによってその点が指摘され、その戦術故ペコはアクマに敗れます。またこの試合の時のアクマの戦型も原作から変更されています。

ペコが強くなるために身につける技も変わっています。漫画版ピンポン連載時は裏面打法はまだ新しい戦術だったのですが、現在では広く普及しています。そこでアニメ版ピンポンでは裏面打法だけではなく、裏ソフトラバーでドライブを打つ、という戦法が加わりました。これによりペコの戦型も前出の前陣速攻型ではなく、両面裏ソフト前陣寄りのドライブ主戦型となり、より2014年現在的なプレイスタイルになりました。

生活面の変化

17年も時代を経ると、社会的な背景も大きく異なります。漫画版ピンポン連載時の1997年における65歳以上の高齢者人口の総人口に占める割合は15.7%でしたが、アニメ版ピンポンが放映された2014年ではその割合が25.9%と大きく伸びました。四人に一人が高齢者という高齢化社会に既に突入しています。

そのため、漫画版ピンポンでは「高齢化社会を『迎える』人間の鑑だ」という表現が「高齢化社会を『支える』人間の鑑だ」という表現へと変更されています。また、高齢化に伴い、医療の発達や生活環境の改善、生活様式の変化があり、同じ年齢でも以前に比べて若々しい人が増えました。そのため、卓球部顧問の小泉丈の年齢設定も62歳から72歳に引き上げられています。

ペコが卓球を一度辞める時、漫画版ピンポンではラケットを焼却炉で燃やします。しかし、ダイオキシン検出の問題で期しくも漫画連載当時の1997年に文部科学省が全国の学校に焼却炉の廃止を通達しました。そのため2014年にはほとんどの学校で焼却炉がなくなっていて、アニメ版ピンポンではペコは自分のラケットを海に投げるという演出になっています。

環境面の変化もあります。舞台となる江ノ島では近年観光客の食料を奪うトビが問題となっていますが、漫画版ピンポンが連載されていた当時はトビにそのような生態はありませんでした。注意を促す看板や、ハンバーガーを食べていた女の子がトビに食料を奪われる描写などはアニメ版ピンポン独自の演出です。17年も時間が経つと、人間の社会だけではなく動物の生態も変わってしまいました。

スマイルが遊ぶおもちゃについても変更がありました。漫画版ピンポンではスマイルはいつも鼻歌を歌いながらルービックキューブで遊んでいるのですが、アニメ版ピンポンでは携帯ゲーム機となっています。ちなみにスマイルが興じているゲームソフトは「モンスターロボ」というゲームです。

ピンポンアニメ版と漫画版の登場人物の違い

アニメ版ピンポンと漫画版ピンポンでは物語上の違いも多くあります。アニメと漫画では表現方法が異なりますし、またテレビアニメシリーズ特有の尺の問題もあります。漫画版ピンポンは単行本にして5巻と比較的短い作品となっているため、漫画原作のままでは長尺のテレビアニメシリーズにすると尺が足りなくなってしまいます。そのため人物を追加したり、人物像をより詳細に描いている点が幾つかあります。

ピンポンアニメ版オリジナルの登場人物追加

先ずはアニメ版ピンポンから追加された登場人物を紹介します。また、新キャラクターのデザインは基本的には原作者である松本大洋が担当しています。

風間竜

卓球強豪校、海王学園の理事長。ペコやスマイルのライバルであるドラゴンの祖父。卓球用品のブランド「ポセイドン」の代表取締役も務めています。若かりし頃は卓球のトッププレイヤーで、オババや小泉丈とは旧知の仲です。かつては小泉とライバル関係でした。

風間百合枝

風間竜の孫。ドラゴンとはいとこ関係にありますが、恋人同士でもあります。卓球用品のブランド「ポセイドン」のCMキャラクターを務めるほどの美貌の持ち主。ドラゴンに対しては何かと世話をやき、献身的に支えています。物語中、フラワーアレンジメントを勉強するため、欧州へと渡ります。ドラゴンには赤いスポーツカーに乗った彼女がいる、という松本大洋が連載時に考えていたアイデアが使用されました。

ドラゴンの父

ドラゴンの回想シーンでの登場となり、物語の時間軸では既に他界しています。優れた卓球指導者でありましたが、夢であった花屋を経営します。しかし結局失敗して借金を抱えてしまい、その心労のため亡くなってしまいました。ドラゴンが幼い頃は父と一緒に卓球をしていたようです。ドラゴンの伯父である風間卓は「のりさん」と呼んでいます。

チャイナの母

チャイナ曰く「どこにでもいる田舎の母」。お菓子工場で働いていて、チャイナがまだ中国にいた頃、親元を離れて卓球に明け暮れるチャイナに毎週工場のお菓子を差し入れていました。クリスマスには来日し、チャイナのチームメイトにお手製のワンタンを振る舞い、チャイナとチームメイトとの仲を取り持つのに一役買います。

ペコの母親と兄弟

オババの息子、田村道夫の元で再起をかけるために練習しているペコの着替えや差し入れを持ってきているようです。家族全員同じ顔で、田村道夫を驚かせます。ペコの家族というアイデアも原作連載時に使用されなかったアイデアが反映されています。

登場人物の設定変更

アニメ版ピンポンの登場人物の中には漫画版ピンポンと設定が変わった人たちもいます。肩書きはもちろん、血縁関係にも変更が加えられています。

風間卓

海王学園の卓球部顧問ですが、漫画版ピンポンでは藤村という苗字で登場しますが、風間家との血縁関係は特にありません。しかし、アニメ版ピンポンでは風間竜の息子、ドラゴンの伯父にあたる人、という設定に変更されています。

田村道夫

オババの息子、田村道夫は漫画版ピンポンでは藤堂大学卓球部のコーチでしたが、アニメ版ピンポンでは日本代表育成センターのコーチとなっており、より上位の機関での指導者となっています。

ピンポンアニメ版と漫画版の登場人物の描き方の違い

アニメ版ピンポンでは全12話ということで尺に余裕があるため、漫画版ピンポンよりも人物をより詳細に描いています。各キャラクターを掘り下げるにあたり、原作者の松本大洋と監督の湯浅政明は多くの意見を交換したそうです。連載時には構想はあったものの、描かれることのなかった設定もアニメ版ピンポンに多く反映されているそうです。

ドラゴン

アニメ化に際して、選手としてもインターハイ優勝からオリンピックユース優勝へとスケールアップしていますが、キャラクターとしてのバックボーンも厚くなりました。湯浅監督曰く、一番もうちょっと描かないと、と思ったのが風間だったそうです。

漫画版ピンポンではなぜドラゴンがあれほどまでに勝利に固執するのか、その理由などは描かれていませんでしたが、アニメ版ピンポンでは前出の風間家の人々の追加によりドラゴンの背負う重圧や勝利にこだわる理由が細かく描かれています。

チャイナ

彼もまたドラゴンと同じく、アニメ版ピンポンでは登場人物として親族が追加され、キャラクターの背景が漫画版ピンポンよりも詳細に描かれています。母親とのエピソードが追加され、練習シーンやチームメイトとの交流もより多く描かれるようになりました。また、漫画では冬のインターハイでペコと対戦するのは一回戦でしたが、アニメでは二回戦ということで出場試合が一試合増えました。

江上

漫画版ピンポンではスマイルに負けた時点でお役御免となったキャラクターですが、アニメ版ピンポンではその後も何度か登場します。自分探しのため海外旅行に行ったり、海でアルバイトしたりと、登場する時間はわずかですが頻繁に顔を出します。湯浅監督お気に入りのキャラクターでもあり、そのため出番が多くなったのだとか。

ピンポンアニメ版と漫画版のストーリーの違い

物語中、ペコは一回卓球を辞めるのですが、そこから復帰するまでの流れがアニメ版ピンポンと漫画版ピンポンでは異なります。漫画版ピンポンでは卓球を辞めた後、ゲーセン通いをしています。ちなみにそこでは周りに「ポコ」と呼ばせています。しかしアニメ版ピンポンでは女の子と海辺でデートをしています。

ペコが再起を決意する流れは、漫画版ピンポンでは橋から川へ飛び込んだ後、タムラに戻ってアクマと会い、海に行って浜辺からペコが「パプアニューギニアを目指す」と言って海に入って溺れてしまい、そこをアクマに助けられます。アニメ版ではアクマに会うのは橋の上になり、橋から飛び込んだペコをアクマが助ける、というように流れが簡略化されています。

そしてペコが再起する動機としては、漫画版ピンポンではアクマに説得される形で再起を決意するのですが、アニメ版ピンポンではアクマに説得されることに加えて、タムラで見た幼い頃のスマイルの写真を見る、という要素が加えられています。

またクリスマスのエピソードや最終回で描かれる登場人物たちの5年後の姿もアニメ版ピンポンオリジナルとなります。他にも小泉丈が自分がバタフライジョーと呼ばれていた頃の話をスマイルに話すシーンや、海王学園卓球部顧問がアクマについてドラゴンに語るシーンなどは原作とは順番が異なり、所々構成にも変更がありました。

アクマがペコに勝った後に言うセリフ「絶対に負けない唯一の方法は勝つことだ」が「戦わないことだ」に変更されています。この変更も作者の松本大洋がその方が良かったと思っているということで反映されたそうです。

スマイルがロボットになる演出もアニメオリジナルです。これはスマイルとペコのヒーロー物語のドラマを表現した演出なんだとか。ロボット対ヒーローという構図が少年漫画の王道ということでわかりやすさを狙ったそうです。

ピンポンアニメ版の作画のクオリティや再現度

アニメ版ピンポンについて語られる時、よく話題に上るのが作画に関して。一部の人たちには「作画が崩壊している」とまで指摘されることもありますが、実際のところはどうなのでしょう。

アニメ版ピンポンの作画に対するコンセプトとして「漫画版ピンポンの絵柄を忠実に再現する」ということがあったそうです。しかし原作者松本大洋の絵柄は大変個性的で、線も細かく揺れています。元々の絵柄がそのようなタッチなので、それを忠実に再現するとなると「作画が崩壊している」と捉えられてしまうのかも知れません。加えてアニメ版ピンポンでは流動的な動きが多用されますが、それは湯浅監督の持ち味でもあります。

原作の持つ特有の線を忠実に再現していること、そして湯浅監督独特の動き、この二つの要素によって作画崩壊と言われることが多いようです。逆にこの原作の絵のタッチをよく再現している点を高く評価する声も多いようです。

ピンポンアニメ版の作画方法

作画が崩壊している、と言われがちなアニメ版ピンポンですが、その原因は極めて忠実に原作の絵のタッチを再現していたことが理由だと言われています。そしてそのことを実現したのは従来の製作方法とは異なり、フラッシュを使用している点にその秘密があったようです。

通常のアニメの製作は絵コンテ、原画、動画など複数の過程を分業制で行うのですが、フラッシュを使用した場合、原画以降の作業を一人で行えるようになります。普通なら各過程を経る毎に損なわれてしまう繊細な手描き感とでも言うべきタッチを最終段階まで維持することができるそうです。この点が原作漫画の独特のタッチをアニメで忠実に再現することができた理由であるのでしょう。

ピンポンアニメ版の感想

東京アニメアワードフェスティバル 2015にてアニメ・オブ・ザ・イヤー部門テレビ部門でグランプリを受賞する程の名作ですから、やはり好意的な感想が多いようです。

原作漫画に対してのリスペクトが感じられる点、またアニメオリジナルの設定や演出が加えられている点、更には作画に対しても、極めて原作を忠実に再現している点に評価の高い感想が集まっているようです。中には漫画原作よりも高い評価をしている感想もあります。

ピンポンアニメ版と漫画版の違いのまとめ

一部のアニメ視聴者からは「崩壊している」との感想が出てきてしまった作画については、個性的な原作のタッチを非常に忠実に描いていることが主な原因であり、むしろ非常にクオリティの高い作画であったということが言えそうです。またアニメ作品全般としての感想は非常に評価の高い感想が多く、やはり名作アニメであると言えるでしょう。

関連するまとめ

関連するキーワード

新着一覧

最近公開されたまとめ