ウロボロスってどんな意味?尾を飲み込む竜のタトゥーに込められた思いとは?

『ウロボロス』は警察とヤクザ、相反する2つの組織に所属する2人の青年が、殺された恩師の事件の真相を暴く神崎裕也によるサスペンスアクション漫画です。2015年にはTBS系列で実写ドラマ化され、生田斗真と小栗旬のW主演でも話題になりました。そんなウロボロスですが、作品のタイトルでもあり、主人公の1人、段野竜哉はその背に大きなタトゥーとして彫っているなど作中でも重要なシンボルとして描かれる2匹の竜が食らいあうマークの意味をご存知ですか?意味が分かればより深く作品を楽しめる、ウロボロスの真実に迫ります。

ウロボロスってどんな意味?尾を飲み込む竜のタトゥーに込められた思いとは?のイメージ

目次

  1. 数多の作品に登場する大人気モチーフ「ウロボロス」
  2. ウロボロスという作品について
  3. ウロボロスの主要登場人物
  4. ウロボロスとはどんなもの?
  5. 他作品でみるウロボロス
  6. これもウロボロス?デザインのバリエーション
  7. ウロボロスに意味はあるの?
  8. 2匹のウロボロスに意味の違いはあるの?
  9. ウロボロスが作品に与える意味について
  10. 竜哉の背に彫られたウロボロスのタトゥーに込められた思いとは?
  11. 作品に隠されたウロボロスの意味まとめ

数多の作品に登場する大人気モチーフ「ウロボロス」

漫画やゲーム、果ては刺青など様々な媒体に用いられる人気モチーフのウロボロス。尾を噛む蛇、または竜の模様は誰しも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。紹介する『ウロボロス-警察ヲ裁クハ我ニアリ-』ではタイトルにも使用されるなど、作中で重要なキーワードとなっています。これほどまでに創作世界で愛されるウロボロスには一体どんな意味があるのでしょうか。ウロボロスの意味と重要な役割について紹介します。

ウロボロスという作品について

漫画版ウロボロス-警察ヲ裁クハ我ニアリ-

『ウロボロス -警察ヲ裁クハ我ニアリ-』は漫画家神崎裕也のサスペンスアクション作品で2009年12月から新潮社の週刊コミックバンチ(その後休刊に伴い2011年1月号より同社の月刊コミック・バンチに移動)にて連載されていました。施設で育った2人の少年が、恩師の施設職員を何者かに殺害されたことを機に、警察とヤクザ2つの相反する組織に属しながら復讐を果たすために共に真実を追う物語です。

ドラマ版ウロボロス

『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』はW主演に生田斗真・小栗旬を据え2015年1月シーズンにTBS系金曜ドラマ枠として放送された漫画版のウロボロス原作の同題ドラマです。おおよそのストーリーは原作を主軸にしつつ、警察や社会への配慮からウロボロスという主題はそのままに、副題を変え、イクオと竜哉の兄弟愛・恩師・柏葉結子への家族愛など「愛」に重点を置いた作品として描かれています。

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ウロボロスの主要登場人物

龍崎イクオ

ドラマ版ウロボロスでは生田斗真演じる本作品の主人公。幼少期に孤児として暮らした養護施設『まほろば』の恩師・柏葉結子が目の前で殺害され事件をもみ消されたことで、犯人に復讐するため相棒の竜哉と共に真相を追うべく、1人警察官の道を進みます。普段は温厚で優しい青年な一方、自らの正義に反する敵対者に対し冷徹な一面も持ち合わせています。また結子の形見である2匹の竜のウロボロスのネックレスを所持しています。

段野竜哉

ドラマ版ウロボロスでは小栗旬が演じるもう一人の主人公。イクオと同じく幼少期を『まほろば』で過ごし、恩師そして初恋の想い人である柏葉結子の死の真相にイクオとは異なるアプローチで迫るべく、極道の道に進みます。眉目秀麗かつ頭脳明晰でインテリヤクザとして頭角を表し若頭まで上り詰めるほどの才覚の持ち主です。その背に大きな2匹の竜のウロボロスのタトゥーを彫っています。

ウロボロスとはどんなもの?

すでにここまで耳だこになりそうなほど登場するウロボロスですが、そもそもウロボロスとは一体何者でしょうか?その起源は古く、紀元前1600年頃のエジプト神話に登場したものが今日まで続くウロボロスの原型だと言われています。後に古代ギリシアに伝わり、哲学者達によって名前が与えられとされています。

それが古代ギリシア語で「尾を噛む蛇」を意味する「drakonouraboros(ドラコーンウーラボロス)」。その名の通り、1匹ないし2匹の蛇または竜が尾を食らい円環をなした図案が現在「ウロボロス」と称されるものです。

他作品でみるウロボロス

TIGER&BUNNYにおけるウロボロス

2011年に放送され、今なお新シリーズ制作の発表や実写化など展開を続ける大人気ヒーローアクションTIGER & BUNNYでは、主人公の1人バーナビーが両親の仇としてウロボロスの刺青の男を探しています。その後、ウロボロスは犯罪組織のシンボルだと判明します。ここでは自らの尾を噛む1匹蛇が剣に貫かれたデザインのウロボロスとなっています。

鋼の錬金術師におけるウロボロス

2001年8月号からスクウェア・エニックス『月刊少年ガンガン』で連載され、最終話掲載の入手困難になるなど話題の中完結した荒川弘の大人気漫画。ここでも敵対するホムンクルスの象徴としてウロボロスが登場します。翼をもつ1匹竜が自らの尾を飲み込むデザインのウロボロスがそれぞれのホムンクルスたちに刺青として施されています。

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これもウロボロス?デザインのバリエーション

蛇と竜それぞれ正しいのはどっち?

上記に挙げた2作品のウロボロスは、どちらも「自身の尾を噛んだ円環」という部分は共通していますが、その動物に差異があります。TIGER & BUNNYでは蛇の図案が用いられていますが、鋼の錬金術師では翼竜の姿で描かれています。また本作に登場するウロボロスの図案もイクオのネックレス、竜也のタトゥー共に東洋系のデザインではありますが、竜の円環図です。

語源に「蛇」を意味する語句を持ちながら、蛇の他に竜が用いられたデザインがあるのは何故でしょうか?ウロボロスの語源となった、「drakonouraboros」は、drakon(蛇)、oura(尾)、boros(大食い)を意味する3つの語からなっており、ドラコーンとはその字面から推察できる通り、英語のdragon<ドラゴン>すなわち竜の由来となった単語でもあります。

そもそも竜とは存在しない伝説上の生き物であり、あるものは有翼、あるものは猛禽類のような鉤爪を有しているように、伝承ごとに異なる姿で描かれています。多くの場合に共通しているのが、蛇のような体に魚のを鱗を持つという特徴です。こうしたことから、古代世界において竜と蛇という2種類の生物間には、厳密な区別はなかったと考えられており、蛇と竜、2つの異なるウロボロスが現代にも残っています。

自らの尾を噛む1匹蛇(竜)と互いを喰らいあう2匹のウロボロス

ウロボロスには描かれる動物の差異の他に、その数にもバリエーションがあります。すでに述べた他作品の中ではどちらも1匹の竜ないし蛇が自らの尾を喰らうデザインで描かれていましたが、本作に登場するウロボロスは2匹の竜がお互いのを尾を喰らいあうデザインで描かれています。

ウロボロスに意味はあるの?

死と再生の象徴としてのウロボロスの意味

古代から続き、現代に至るまで人気モチーフのウロボロス。当然、ただの図案ではなくそこに隠された意味があります。その1つはデザインに用いられる「蛇」にヒントがあります。蛇は長期間の飢餓状態に耐えうる強靭な生命力を持ち、生命の象徴として古来より神聖な生き物とされ、様々な神話にその姿を見ることができます。

また成長の過程で脱皮を繰り返すことから、「一度死して、新しく生まれ変わる」「古い殻を捨て若返る」生死を超越した存在であると考えられており、ウロボロスは「死と再生」を意味しています。

永遠の象徴としてのウロボロスの意味

ウロボロスは必ず自らの尾を喰らう円環を描くデザインになっています。「円環」とはメビウスの輪に象徴されるように、途切れることのない連続・循環性を意味しています。また自身を破壊する傍ら、食した尾を養分に自生し続ける破壊と創造の連続は尽きることのない永続性を表しており、総じてウロボロスには「永遠」という意味があります。

閉鎖の象徴としてのウロボロスの意味

ウロボロスの円形には「永遠」の他に、「内」と「外」を隔てる境界としての意味があります。また、自らを養分として己を創生し続けることが可能なウロボロスは、生命活動が1個体で完結することから、外界からの影響を一切必要としない、排他性を表しています。つまりウロボロスには自己と外部を明確に分ける「閉鎖性」を意味しています。

2匹のウロボロスに意味の違いはあるの?

依存と均衡の象徴としてのウロボロスの意味

お互いの尾を喰らいあう2匹のウロボロスは、単純にデザインのバリエーションのみならず、2匹ならではの特別な意味が付加されます。1匹のウロボロスが1個体で完結していたのとは異なり、2匹は別個の2個体からなっています。この2個体はそれぞれ「陰」と「陽」、2つの相反する力を意味しています。

この異なる2個体がお互いを喰らうあい養分にしながらも己を再生を続けるには、この2個体間の力は均等でなければなりません。つまりどちらか一方が極端に強く、または弱くては成り立たない絶妙な均衡と保つ必要があり、己が存在するためにお互いの存在が不可欠となっています。つまり相反する2つの力の表裏一体の依存と均衡を意味しているのです。

ウロボロスが作品に与える意味について

ウロボロスが意味する2人の「リュウ」

これまで現代の「ウロボロス」の意味について紐解いてきましたが、イクオの持つ柏葉結子の形見のネックレスや竜哉のタトゥーなど、本作品中ではタイトルのみならずウロボロスは重要なアイテムとして幾度となく登場します。作者の神崎裕也先生は無類の竜好きとして、竜を扱った作品を描くことでも知られています。

もちろん、本作でも単純にモチーフとして無意味に用いられたわけではなく、これまでに挙げたウロボロスの意味が、きちんと作品の中に意図をもって組み込まれています。

本作品で用いられるウロボロスは2匹の竜が喰らいあうデザイン。これは当然、「龍崎」と「竜哉」の2人を意味しています。2匹のウロボロスの意味は相反する2つの力の依存と均衡。つまり、犯罪を取り締まる公序良俗の番人たる警察という「陽」と社会の闇の象徴たるヤクザという「陰」。それぞれ相対する組織に属し、同じ目的のために協力し合うイクオと竜哉の絆こそが、本作における2匹のウロボロスの依存と均衡を暗喩しています。

ウロボロスが意味する2人の閉鎖性

ウロボロスは1個体で生命活動を完結し、外界との接触を必要とせず、境界を描く円環模様から閉鎖性を意味するように、作中でイクオと竜哉はそれぞれ組織に属するものの、他の誰も仲間に引き入れずただ2人で柏葉結子の死の真相を追い、お互いの持つ秘密と闇から他者を排除するように行動します。これはウロボロスの閉鎖性が示す、2人ぼっちの孤独な戦いを意味しています。

ウロボロスが意味する永遠という執着

極道に入った竜哉はもちろん、警察でありながらイクオも柏葉結子の死の真相のためなら、手段を問わない非常な一面を見せることがままあります。また幼少期の事件を真実が明らかになるまで追い続ける様は、まさしく尽きることのない円環のウロボロスの永続性、2人の執拗な執念に見ることができます。

竜哉の背に彫られたウロボロスのタトゥーに込められた思いとは?

竜哉のタトゥー

本作で重要なアイテムとして描かれる「ウロボロス」の1つに、竜哉の背に彫られた2匹の竜のタトゥーがあります。ヤクザである彼が刺青を彫っていても違和感はありませんが、わざわざウロボロスをモチーフとした刺青を彫るということは、柏葉結子がまほろばの秘密を隠し、イクオに託した形見のペンダントとは違い、竜哉は自らの意思で彫られたということです。

つまりこのタトゥーには何かしら竜哉の思いが込められているということを意味しています。このタトゥーには一体どんな思いが込められているのでしょうか?そこには作品に込められたウロボロスとはまた違った意味が見えてきます。

背に負うタトゥーが担う意味

「過去を背負う」竜哉を象徴するセリフの1つであること言葉には、非常に多くの意味と彼の覚悟が隠されています。ご存知の通り、彼の背には喰らいあう2匹のウロボロスのタトゥーが彫られています。つまりこの2匹の竜は、竜哉の背負う過去を意味していることになります。

竜が意味するもの

果たしてこの背の竜には、どのような意味が込められているのでしょうか。先述したとおり、竜と蛇とは古来より区別されるものではありませんでした。そして蛇または竜は古来より神聖な生き物として多くの神話に登場します。

しかし、神聖な生き物とは必ずしも肯定的な意味ではありません。たとえばすでに上げた他作品を例にとっても、ウロボロスは敵あるいは悪役側の象徴でした。最も有名な例を挙げるとすればイヴをそそのかす蛇や、ヨハネの黙示録にも打倒すべき黙示録の獣ととしてドラゴンが登場します。つまり、蛇または竜とは悪であり罪を意味しています。

アクセサリーではなく刺青だった訳とは?

ヤクザである竜哉が刺青を彫っていることに事態に違和感はありませんが、なぜ刺青だったのでしょうか?イクオのようにアクセサリーなど手軽にウロボロスを身に着けることは当然可能です。あえて傷をこさえて墨を入れる、そこに竜哉の覚悟を見て取ることができます。

皮膚に傷をつけ着色する刺青は、基本的に消すことが容易ではありません。その性質から古くから個体識別に用いられてきました。特に犯罪者に対し、顔など見える範囲に刺青を施すことはそれ自体が刑罰であり、また犯罪者を識別する目的もあったとされています。つまり、刺青とは「犯罪者」の証というわけです。

竜哉のセリフにみる覚悟

すなわち、竜哉の背負うタトゥーが意味する過去とはイクオと共に復習だけに生きた17年間とその為に幾度となく犯してきた「罪」そのものを意味していることになります。「過去を背負う」その言葉の意味するところは、言い訳も逃げもせず己の犯してきた「罪を負う」という覚悟を刺青として己の体に刻み込んだというわけです。

作品に隠されたウロボロスの意味まとめ

過激さと警察の不祥事を主軸に置いたストーリーからすると、義賊的なダークヒーローものかと思われる本作ですが、ウロボロスの意味を紐解くとイクオと竜哉が単なる過去の事件の被害者ではなく、過去の事件を発端にした加害者であることがわかります。被害者であり、加害者である、まさに表裏一体のウロボロス。竜哉のタトゥーに隠された意味を紐解くと、最終巻でイクオと2人崖から飛び降りるシーンに一層の説得力が出てきます。

これまでウロボロスの象徴する意味と、作品内におけるウロボロスが意味するものについてまとめてきましたが、いかがだったでしょうか。セリフや目に見えるストーリーの中ではなかなか語られない意図や伏線が見えると、より作品に深みと面白味が増してきます。こうして言葉にして語られない意味を探るのも作品を楽しむ1つの手段として、ぜひ実践してみてください。

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