この世界の片隅にを考察!化け物の正体は?アニメと原作の違いや伏線をネタバレ

2016年に公開されSNSなどの口コミで大きな反響を呼んだ『この世界の片隅に』 今回は本作のが持つ独自の魅力について掘り下げていきたいと思います。また、本作に登場する謎の存在の1つである化け物とその正体について考察、さらに大ヒットしたアニメ映画と原作となった漫画との違いや、『この世界の片隅に』に巧みに散りばめられた数多くの伏線の一部について、映画や原作漫画のネタバレや考察も含めて紹介していきたいと思います!

この世界の片隅にを考察!化け物の正体は?アニメと原作の違いや伏線をネタバレのイメージ

目次

  1. この世界の片隅にとは?
  2. この世界の片隅にの考察!化け物の正体は?
  3. この世界の片隅にのアニメ映画と原作の違い
  4. この世界の片隅にの伏線をネタバレ
  5. この世界の片隅にの考察に関する感想や評価
  6. この世界の片隅にの考察まとめ

この世界の片隅にとは?

この世界の片隅にの作品情報

この世界の片隅にの概要

映画『この世界の片隅に』はこうの史代氏によって2007年から2009年にかけて双葉社の漫画アクションで連載された漫画を、人気ゲーム『ACE COMBAT』シリーズの脚本や人気アニメシリーズ『BLACK LAGOON』の監督などを手掛けた事でも有名な片渕須直氏によって製作されたアニメ映画です。

当初はわずか63館での公開でしたが、SNSなどの口コミで徐々に注目を集め最終的には国内400館まで拡大、累計動員数はミニシアター系作品としては異例の210万人興行収入27奥円突破と大ヒットを記録しました。また、劇場によっては2年にわたるロングランも記録したということで長く愛される作品として評価されています。

この様に多くの人々の心を掴んだ『この世界の片隅に』は第40回日本アカデミー賞 最優秀賞アニメーション作品賞を筆頭に多くの賞を見事受賞しました。

この世界の片隅にのあらすじ

広島県広島に暮らす浦野すずは、ぼぅっとしている事が多いおっちょこちょいでおおらかな、だけど絵を描くことが得意な、そんなどこにでもいるような女の子でした。ある日、ひょんな事から呉市に住む北条家にお嫁に行く事になります。本作は北條家に嫁いだすずが激動の戦乱の世を時に笑い、時に泣いて、時に落ち込む、そんな日常をやさしいタッチで描く物語となっています。

主人公の声優はのん(能年玲奈)

この様に高い評価を得た『この世界の片隅に』の主人公、浦野すずを演じたのは意外にも声優ではなく女優 のんさんでした。芸能人の声優起用は賛否を分けることも少なくありませんが、本作においてのんさんは評価が高く、第11回声優アワードでは見事特別賞を受賞しました。

のんの概要

『この世界の片隅に』の主人公、浦野すずを演じたのんさんの主なプロフィールは以下のようになっています。

  • 本 名:能年 玲奈
  • 誕生日:7月13日
  • 職 業:女優、ファッションモデル、芸術家
  • 出身地:兵庫県神崎郡神河町
  • 身 長:166cm
  • 血液型:A型
  • 趣 味:ギター、絵を描くこと、洋服作り

のんの出演作品

のんさんは2006年から活躍していて、その代表作は映画、ドラマ、アニメ問わず多数あります。今回はその中からいくつか代表作をご紹介します。

映画

  • 告白… 桐谷修花 役
  • ホットロード… 宮市和希 役(※主演)
  • 海月姫… 倉下月海(※主演)

ドラマ

  • 鍵のかかった部屋… 水城里奈 役
  • サマーレスキュー~天空の診療所~… 鈴木真子 役
  • あまちゃん…天野アキ(※主演)

アニメ

  • ロラックスおじさんの秘密の種… オードリー 役
  • 鬼平… おたか 役
  • この世界の片隅に…北條(旧姓浦野)すず 役(※主演)

この様に『この世界の片隅に』の主人公以外にも多くの作品で活躍している今後の活躍も期待されている女優の一人です。

この世界の片隅にの海外の反応

『この世界の片隅に』は海外でも公開され多くの人々の心を掴みました。主な賞だけでも

  • 第14回ナバラ・アニメフェスティバル 観客賞(スペイン)
  • 第41回アヌシー国際アニメーション映画祭 長編部門審査員賞(フランス)
  • 第45回アニー賞 長編インディペンデント作品賞 ノミネート

他にも多くの賞で受賞やノミネートを果たしました。フランスのル・モンド誌も「本作は、困難な日常生活のなかで世界に対する揺るがぬ愛の秘密を探しあてながら、あくまで派手さを排除することにより光り輝いている」と『この世界の片隅に』を賞賛しています。

この世界の片隅に【映画】

この世界の片隅にの考察!化け物の正体は?

人買いの存在

この世界の片隅には基本的にリアリティ溢れる展開で進みますが、その中で『人買いの化け物』だけは妙に浮いているように感じた観客が大勢います。それはこの正体不明の化け物が作品に合わないファンタジーさを出しているからだとする考察もあります。人買いの化け物は本作で2回登場します。

1回目の登場シーン

1回目は兄の代わりでお使いに中島本町まで来た時、見慣れない街で道に迷ったすずが正体不明の化け物に道を尋ねます。この時の化け物は面倒見のいいところも見せたりしますが、ちょっとしたことで怒ったり夜になると寝てしまうという何とも現実味にかける存在として描かれています。

2回目の登場シーン

2回目の登場は終盤、すずが周作と橋の上で会話する場面です。正体不明の化け物は2人の後ろを歩いていきます。この時、籠にはワニを入れているというファンタジーな雰囲気を残したままやはり正体は不明のまま何処かへ去っていきます。本作の化け物の出番は以上になります。

化け物の正体

正体は兄の要一

アニメ映画のみだと正体不明の化け物ですが、実は原作を読むとその正体はすずの兄である要一である可能性がある事が分かります。

鬼いちゃん冒険記から判明

これは原作漫画『この世界の片隅に』に収録されている小エピソード「鬼いちゃん冒険記」で示唆されています。この冒険記の内容は漫画らしくハチャメチャです。南の島で戦死したと言われていたは実は生きており、南国で逞しく生活をしていきます。その際ワニをお嫁さんにすると言う内容です。

  1. この時髭を生やした兄の姿が化け物に酷似している事
  2. 2度目の登場の時、籠にワニが入っていたこと

以上の2点から、この世界の片隅にに登場する化け物の正体は要一ではないかとする説も考察出来ます。

すずと兄の関係

そんな兄、洋一とすずの関係ですが、すずは要一を「鬼ぃちゃん」と恐れ、絵でも理不尽な暴力などの象徴のように描かれている事からあまり良い関係とはいいがたいと言われています。それは劇中で要一が戦死したと連絡を受けた後の場面でも「鬼いちゃんが死んで良かったと思ってしまっている」とすずが言ってしまうほどでした。

ただ、洋一は不器用なりにすずの身を案じていたという考察もあります。それは序盤で水原がすずに変な事すると要一に殴られる旨の発言をする場面からも読み取れます。また、すずも心の底から嫌っていたわけではないという事も『鬼イチャン冒険記』から受け取れると言われています。死んだとされる兄が南の島で逞しく生きていてほしいという願望の表れが『鬼イチャン冒険記』と考えられるからという事です。

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この世界の片隅にのアニメ映画と原作の違い

アニメ映画『この世界の片隅に』は原作がある作品で、原作がある作品にはつきものと言われる原作との相違がいくつかあります。アニメ映画と原作の違いを見比べて新たな発見を楽しみ、なぜこのような違いになったのかを考察することも良いかもしれません。ここではその中から代表的な違いをいくつか紹介します。

リンの存在の違い

アニメ映画と原作での違い

原作とアニメ映画の違いとして多くの人が例示しているのが『リン』の存在です。リンはアニメ映画では物語中盤に道に迷ったすずを助ける遊郭の女性として一度だけ登場しますが、実は原作においてリンは重要なエピソードとして描かれています。ですが、アニメ映画ではそのエピソードはほとんどカットされています。

リンと周作の関係

原作ではすずはリンに迷子から助けてくれたお礼として絵を描いてそこから交流を深めていきます。ただ、その交流を深めていくうちにリンはかつて周作の婚約者であったという事が分かります。すずは周作にとって自分はリンの代用品なのでは?と思い悩んでしまう場面があります。

また、原作ですずはリンとの交流を深める最中、リンは「誰でも何かが足らんぐらいでこの世界に居場所はそうそう無うなりゃせんよ」と話してくれます。このセリフは『この世界の片隅に』のタイトルの意味を考察するヒントとなると言われています。

絵の表現の違い

『この世界の片隅に』ではほとんどがまるで絵画のように描かれていて、場面や風景の美しさを見事に表現している一方でその空間からの広がり、つまり立体感はあまり描かれていません。ただし、たった2回だけ立体感を感じさせる場面があります。

  1. すずが晴美を失った後、時限爆弾から逃げる場面
  2. すずが鷺を追う場面

この時奥に向かう表現を使うことで印象に残りやすい場面となっています。これらの表現は原作には無く、アニメ映画ならではの表現として高く評価されています。こうして印象に残りやすい表現をすることで、すずの切実な思いをより強く印象に残るように表現しているのではないかと言う考察も多く挙がっています。

妊娠の違い

原作では「すずが妊娠したと感じ医者に見せてもらうも実は勘違いだった」と言うエピソードがありますが、映画ではその描写はさらりと流されています。全部カットしたと言う訳ではなく、病院から出る場面やご飯が2人分だったのが1人分になったという描写で映してはいますが、原作に比べると結構アッサリ描写されていたりします。この違いも映画を見る楽しみの要素の一つとして用意されているようです。

8月15日の違い

アニメでの8月15日の表現

映画では玉音放送を聞いたすずはめずらしく怒りを露わにします。ここは原作でも同じなのですが、この時のすずは怒りを表した後、すぐに畑で泣き崩れてしまいます。そして次の場面に移り変わります。

原作での8月15日の表現

一方、原作ではこの畑で泣き崩れる前にすずは太極旗を目にし、「暴力で従えとったいう事か。じゃけえ暴力に屈するという事かね」と誰と無しに呟く描写があります。この描写は映画ではカットされましたが、すずが戦争と言うものの不条理と因果を実感した場面と評価する声や考察が多数挙がりました。

すずの心境

玉音放送を聞いた後のすずの心境はこのようなものだったのではないかと言う事で、長崎平和推進協会「ピーストーク『繰り返すまいナガサキの体験』」永野悦子さんの寄稿を引用する方がいましたので、ここでもその一部をご紹介したいと思います。

私たちは「これはうそだ。そんなはずがない。」と口々に言い合いましたが、わすれもしない八月十五日、長かった戦争が終わり、日本が負けたことを知りました。

(中略)

私の周りにいた人たちは大人も子供も泣きました。「どうして・・・。なんで・・・。」と肩を抱き合って泣きました。今まで苦労して頑張ったのに。お国のためにと戦地に生き、戦死された方々、その家族。原爆で死んでいった人たちのことを思うと、涙が止まりませんでした。

本作ではすずの号泣でこのような当時の人々の心境を表現したのではないかと言う考察も多く挙がりました。

コミックの新旧版の違い

『この世界の片隅に』の原作漫画は2011年に新装版が発売されています。こちらは旧版が上中下の3巻だったのに対し、上下の2巻になっています。また、A5版の旧版に対しB6版とコンパクトになっており、新装版に当たりおまけ漫画も付いています。

残念ながらこちらの新装版は絶版となっていますので読みたい場合は古本屋などで探すしかありませんが、A5版の旧版は現在も大好評発売中なので原作が読みたい場合はこちらで読むのも良いかもしれません。

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この世界の片隅にの伏線をネタバレ

座敷わらしの正体

映画『この世界の片隅に』の序盤で叔父の家で昼寝をしていたすずは、みすぼらしいなりの少女がスイカの残りを食べていることに気付きます。すずが少女のためにスイカを持ってくると少女は消えていました。親戚の話であれは座敷童だったのではないかとすずは思うようになりました。その後、座敷わらしは一見すると物語に登場しません。

やがて物語が終わりエンディングの後、クラウドファンディング支援者を紹介するロールが流れ始めると同時に画面下ではとある少女の物語が始まります。

幼いながらも家族を支える少女、しかしある時原因は不明ですが売りに出され、ある豪邸で小間使いとして勤め、ひょんなことから家を逃げ出してしまい、何処かの家の屋根で雨風をしのぎ、ある時家の住民であるおばあさんに誘われスイカの残りを食べる… ここでこの少女に見覚えがあると驚く人も多くいたそうです。

「この子は序盤に出ていた座敷わらしでは!」と観客が驚く中物語は進み、『座敷わらし』はその後紆余曲折を経て遊郭で働き始め、そしてその時出て来る名刺が『白木リン』だとわかるのです。物語中盤で道に迷ったすずを助けたリンは、かつてすずにスイカを分けてもらった『座敷わらし』だったのです。

傘のやりとり

すずが北條家に嫁に行く際、すずは祖母から傘のやり取りについてアドバイスされる場面があります。これは『傘問答』と言うもので、かつて新郎新婦が結婚初夜の逢瀬の際に行う儀式だったそうです。

このような風習は日本全国にあり、傘以外でも柿の木(日本各地)、栗の木(東北の一部地方)、馬(長野県)と様々な儀リエーションがあったようです。これらはまとめて『床の間問答』と呼ばれていたそうです。今回のような傘の場合諸説ありますが主に以下のような内容だったそうです。

  • 花婿「傘を一本持ってきたか」
  • 花嫁「はい 新(にい)なのを1本持ってきました」
  • 花婿「さしてもええかいの」
  • 花嫁「どうぞ」

なぜこのような問答がこの世界の片隅にの劇中にあったのかという疑問に対しては「当時は初夜で初めて夫婦が顔を合わせる事も少なくなかった為、緊張をほぐし場面をスムーズに進めるための生活の知恵として定着したのではないだろうか」と言う考察が挙がっています。いずれにせよ、この場面は『この世界の片隅に』が現代では失われた文化をしっかりとリサーチして描いた作品であるということを示す場面と高く評価されています。

水原哲の生死

物語中盤に北條家を訪れる水原哲ですが、彼は海軍に志願したということですが、作中で彼の生死については明確には言及されていません。

されていませんが、彼の生死を暗示する描写はされていると言われています。水原は北條家を訪れた際、サギの羽を渡します。この羽根に注目すると作中で、羽根がある変化をしている事に気付くことができます。

この羽根の変化と水原を重ねた時、観客は考察を行いある結論に結び付けることができます。この様にこの世界の片隅には巧みな描写で観客に考察の余地を与えてくれる作品となっています。

方言の違い

作中の舞台は主に広島市と呉です。その言葉は微妙に違いますが、その違いで序盤は『すずが広島からお嫁に来た娘』と言う風に描写されていました。その後、方言の違いが印象に残る場面が2か所あるとされています。

1つ目は晴美を失った後、意気消沈しているすずをすみが見まいに来た場面です。この時広島はまだ軍港がある呉より安全だからと呉に戻ってきてという場面です。この時は『まだ広島の方が安全』だと思うのは劇中では自然なのですが。多くの観客はその後広島を襲う『悲劇』を知っている為思わず息をのんでしまう印象的な場面となったと言われています。

2つ目はその『悲劇』の後から大分経ち、焼け野原となった広島で久しぶりに見舞いに来た姉のために明るく振る舞うすみと、その意図を汲み同じく明るく振る舞うすずと言う、焼け野原に合わない明るい広島弁が悲壮感を1つ目の場面も併せて見事に演出したと高く評価されています。このように台詞の内容のみならず台詞を出す意味にも本作はこだわっている為、観客にその意味を考察させることができたと評価されました。

この世界の片隅にの題名

『この世界の片隅に』というタイトルですがこのタイトルには複数の意味があるのではないかという考察があります。これは1つは劇中終盤ですずが周作に向けた台詞に出て来る「この世界の片隅で私を見つけてくれてありがとう」に凝縮された愛。

他にもあの激動の時代を生きたあまりにも多くの人々の中から、特に歴史的に意味がある中心人物でも何でもないすずと言う人物をピックアップした世界であるという考察など様々な考察がネット上で語られています。『この世界の片隅に』本作は伏線なども巧妙に仕掛けられているので、この様に観る人の感じ取る「この世界の片隅に」が無数に考察出来るようになっているのです。

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この世界の片隅にの考察に関する感想や評価

『この世界の片隅に』がどのように評価されているのか、いくつかご紹介したいと思います。

すずを演じたのん(能年玲奈)に対する評価です。はまり役として高く評価されているようです。

『この世界の片隅に』で描かれる日常の丁寧さが作品のテーマや当時の世相をより引き立てているという感想もありました。

『この世界の片隅に』は言葉にできない感情がわく映画と言う感想もありました。ほかにも様々な感想・評価・考察がSNSで語られています。それほど語りたくても語りつくせない作品という事が言えるでしょう。

映画『この世界の片隅に』&映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』公式 (@konosekai_movie) | Twitter

この世界の片隅にの考察まとめ

アニメ映画『この世界の片隅に』の伏線考察や魅力についてのまとめ記事はいかがでしたでしょうか?

2019年12月20日には新たに30分新規場面を付け足した『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開予定されています。この機会に『この世界の片隅に』を改めて鑑賞して考察を深めるのもいいかもしれません。

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