映画この世界の片隅にのあらすじと感想を紹介!結末や伏線・設定をネタバレ考察

2016年に公開され、多くの人々から高く評価された映画『この世界の片隅に』。主演キャストのすずを演じたのんさんの代表作にもなったことで大きな話題となりました。今回は、アニメ映画『この世界の片隅に』をあらすじをネタバレと感想を交えて紹介します。あらすじをなぞるだけじゃなく、巧妙に隠された伏線など色んな裏話にも少しずつ触れますので、鑑賞済みの方も楽しんでください。

映画この世界の片隅にのあらすじと感想を紹介!結末や伏線・設定をネタバレ考察のイメージ

目次

  1. この世界の片隅にとは?
  2. この世界の片隅にの映画あらすじネタバレ
  3. この世界の片隅にを観た人の感想や評価は?
  4. この世界の片隅にの伏線・設定
  5. この世界の片隅にの見どころ
  6. この世界の片隅にに関する7つのこと
  7. この世界の片隅にの小説・ガイド情報
  8. この世界の片隅にのあらすじ映画まとめ

この世界の片隅にとは?

この世界の片隅にの作品情報

原作者のこうの史代氏は、日常をやさしいタッチで描く漫画家・イラストレーターです。
代表作は『ぴっぴら帳』『こっこさん』他、そして大ヒットとなった本作『この世界の片隅に』。『ぴっぴら帳』は人気作であり、こうの氏をこの作品で知る方も多く存在します。リアルに描かれたセキセイインコと主人公を中心に描かれるユーモアあふれる動物たちとの日常を描いた4コマ漫画でとても面白いのでオススメです。

監督・脚本を担当したのはテレビアニメシリーズ『BLACK LAGOON』、映画『アリーテ姫』、『マイマイ新子と千年の魔法』でそれぞれ監督を担当し、人気ゲームシリーズ『ACE COMBAT』の脚本家としても有名な片渕須直です。

実はこのコンビこの作品で初めてタッグを組んだわけではなく、2013年東日本大震災のチャリティーシングルとしてリリースされた鈴木梨央の『花は咲く』のプロモーション映像でこうの氏がキャラクターデザインを、片淵氏が監督をそれぞれ担当しています。

こうしてみると『花は咲く』から『この世界の片隅に』に通じるものも感じ取れるでしょう。片淵氏によるとこの時点で『この世界の片隅に』の映画化に対する構想があったそうなので、この『花は咲く』は運命的な出会いだったのかもしれません。

この世界の片隅にの予告編

「昭和20年夏、広島県呉」…これらの単語の並びだけで『不穏な影』を感じるのは、もはや日本人の1つの本能かもしれません。しかしこの予告ではこの『不穏な影』を描きつつ、まるで色鉛筆やパステルで描いたような優しい世界を派手な演出を極力削り、歌と共に淡々と流すだけの構成となっています。そこに、他の当時を描いた作品とはまた違う魅力を感じ興味を持つ不思議と魅せられる予告です。

この予告は本作一番の魅力を見事に表現した予告と言えるでしょう。優しい歌声と優しい絵柄なのに、流れている歌はザ・フォーク・クルセダーズの『悲しくてやりきれない』のカヴァーと言う悲しい歌。これがこの作品の描く世界なのだという事を端的に視聴者に伝えてくれます。

この世界の片隅にのキャスト・登場人物

ここでは簡単に『この世界の片隅に』の主要人物とキャストを紹介します。ネタバレは最小限にしつつキャラクターの性格も記載しますので参考にしてみてください。

  • 北條(旧姓:浦野)すず(キャスト:のん):本作主人公のおっちょこちょいでどこかおっとりとしている
    絵が得意。演じたのは『あまちゃん』などで知られる女優の「のん」
  • 北條周作(キャスト:細谷佳正):すずの夫。温厚で優しい性格。演じたのはFree! シリーズで山崎宗介を演じた細谷佳正。
  • 黒村径子(キャスト:尾身美詞):口が悪く勝気なすずの義姉。すずとソリが合わないようですずをよく見ている。演じたのは女優の尾身美詞。
  • 黒村晴美(キャスト:稲葉菜月):径子の娘とは思えないほど純粋ですずと仲がいい。兄に教えてもらったため軍艦に詳しい。演じたのは子役の稲葉菜月。
  •  白木リン(キャスト:岩井七世):広島市内の遊郭で働く女性。道に迷ったすずに道を教えてくれる。実はすずとは浅からぬ縁があり、その伏線も実は劇中に隠されている。演じたのは女優でモデルの岩井七世。
  • ばけもん(キャスト:三宅健太):本作の冒頭と終盤に登場。すずと周作をさらおうとするがすずの一計で寝てしまう。演じたのは『僕のヒーローアカデミア』でオールマイトを演じた三宅健太。

この世界の片隅にの簡単なあらすじ

広島生まれの浦野すずは、絵が得意でおっちょこちょいでおおらか。そんなどこにでもいそうな普通の女の子。そんな彼女がひょんなきっかけで、呉の北條家にお嫁に行くことになります。『この世界の片隅に』は、そんなどこにでもいる少女とその家族の日常を温かく優しく描いた物語なのです。次の章から詳しくネタバレや伏線を含みつつ紹介しましょう。

この世界の片隅に【映画】

この世界の片隅にの映画あらすじネタバレ

あらすじネタバレ:三人兄弟

海苔作りで生計を立てる浦野家。そこには3人の兄弟がいました。厳しく手も早い長兄の要一、本作主人公のおっちょこちょいでどこかおっとりとしているすず、そして末っ子のすみ。

ある日、すずは兄の代わりに海苔を届けに広島市内まで行きます。ところが、そこで大きな化け物に捉えられ籠の中に放り込まれてしまいます。籠の中には先客の少年がいました。

曰く、自分たちは人さらいにさらわれ食べられてしまうとのことでしたが、二人は呑気に帰りの心配をしていて事の重要性が分かってない様子…。そんな折、すずは一計を案じ無事化け物を眠らせ脱出成功。その後少年と別れ無事帰宅し、妹のすみに事の顛末を絵を描きながら面白おかしく話すのでした。

あらすじネタバレ:スイカと座敷童子

またある日、干潮を利用して叔父の家にスイカを届けることになった浦野家3兄弟は泥まみれになりながらも叔父の家にスイカを何とか届けます。そこで疲れたのか昼寝をしていたすずは、みすぼらしいなりの少女がスイカの残りを食べていることに気付きます。すずが少女のためにスイカを持ってくると少女は消えていました。親戚の話であれは座敷童だったのではないかとすずは思うようになりました。

この座敷童は『この世界の片隅に』の終盤の「とある驚き」への伏線になりますのでよく注目しておくといいでしょう。

あらすじネタバレ:波のうさぎ

またある日、学校で絵画の課題が出されます。絵が得意なすずは先生やクラスメイトに褒められ得意気に帰宅。その後使いに出ると、クラスメイトの水原が海の近くでぼんやりとしていることに気付きます。声をかけると家に帰りたくないから絵を描きたくないとのことでした。

「波がまるでウサギみたいだ、兄がおぼれたのもこんな波の日だった」と水原は語ります。それを聞いたすずは海にウサギがいるような絵を水原の代わりに描いて見せます。その絵を見た水原は「こんな絵じゃ海を嫌いになれない」と言いながらもその絵を持ち帰ります。

このように、主人公のすずはほーっとしていて、どこか抜けているという自覚のある少女ですが、その目に映る世界はまるで絵画のようにやさしく温かい物でした。すずはその日々を何かある度に描き、現実と幻想の世界を行き来するような子供時代を過ごしていきます。

あらすじネタバレ:嫁入り

ある日、海苔作りをしていたすずのもとに縁談が来ます。すずは最初は美人でしっかり者のすみちゃんの勘違いでは?と驚きます。相変わらずどこかおっとりしています。「嫌なら受けなくても良い」と言われはしますが、嫌かどうかもわからないうちに話はとんとん拍子に進んでいきます。

相手は呉に住む北條家の長男で海軍書記官の周作。あのバケモノのかごの中で一緒になった少年でした。ただ、すずはそのことを覚えてない様子でした。当時は昭和18年で既に太平洋戦争の最中で物資も不足していましたが北條家は精一杯おもてなししてくれました。

なお、周作は緊張のあまり食事が喉を通らないという状態でしたが、二人きりになると安心したのか干し柿を食べます。すずはなぜ自分を見初めたのかと聞くと、周作は小さい頃に会ったと答えました。

あらすじネタバレ:北條家

早速すずは北條家の嫁として働き始めます。そこにいるのはいつものすずですが、その姿はできるだけ嫁として振る舞おうと一生懸命頑張る姿でした。ですがおっちょこちょいはなかなか治らず、ドリフのコントを彷彿させるやらかしをしてしまったりする場面も登場します。BGMも『ドリフの大爆笑』オープニングの元ネタになった『隣組』が使用されていました。

その時、焼夷弾や、時限爆弾についての講習も受けますが先ほどのやらかしのせいかそれどころではない様子だったりします。

あらすじネタバレ:径子と晴美

ある日厳しい口調の女性が少女を連れて北條家を訪れます。出戻りの径子とその娘晴美でした。径子はそのキツイ性格のせいか嫁ぎ先と折り合いが悪く、すずにもついキツく当たってしまいます。しかし、すずが嫁いでから一度も規制していないことを指摘するツンデレな一面も。

実家に戻るとストレスで10円ハゲができていることが発覚したり、絵を描いて切符を買いそびれるいつものすずに戻ってしまうなどの場面もありました。呉に戻ってから戦況の悪化に伴う配給の減少に対処するため、すずはたくましくご近所さんから教えを請い工夫を重ね時には失敗しながらもなんとか日常をやりくりしていきます。

あらすじネタバレ:すずさんスパイ事件

ある日すずはいつも通りスケッチブックで風景をスケッチしますが軍港がガッツリ映り込む場所でスケッチしたせいで憲兵にスパイと決めつけられてしまいます…が、普段のすずの様子を知る北條の家族はその決めつけに笑いをこらえるので精一杯でした。なお、すずはといえば、非常に不本意な様子で映し出されています。

あらすじネタバレ:リン

またある日砂糖が切れたのでやむなく街の闇市に出たすずですが、迷子になってしまいます。そこへリンと名乗る遊郭の女性が道を教えて助けてくれます。

あらすじネタバレ:水原

12月、かつてすずのクラスメイトで海軍に入隊した水原がすずの様子を見にやってきます。北條家は彼を歓迎しますが周作は複雑な表情を浮かべます。周作は水原と二人になる時間を作り、すずも水原と話をしますが水原が抱こうとするとすずは謝りながらそれを拒みました。それを見た水原は安心し「お前は普通で、まともでいてくれ」と言います。

あらすじネタバレ:昭和20年の2月のこと

2月、兄・要一の死を知らされたすずは周作と共に実家に戻りますがそこに兄の遺体はおろか遺骨すらありませんでした。そのため誰も兄の死を実感できず、すずに至ってはその帰り道に周作と喧嘩し駅員に呆れられる始末。しかし、戦争と言う牙は確かに近づいていたのでした…。

やがて、呉も頻繁に空襲されるようになりました。最初は慌てる北條家。実際被害も相当出ました。しかし、やがてそれが日常になってしまい、晴美が『警報飽きた』と愚痴る始末。

戦況の悪化の影響で義父・円太郎が行方不明になり(後に空襲のため負傷し海軍病院に入院していた事が分かります)、周作も徴兵され3ヶ月は帰れないと伝えられます。すずは不安を隠しながら家は守ると約束します。二人もいない北條家はいつもよりがらんとした印象でした。

あらすじネタバレ:お見舞いの日のこと

やがて円太郎が海軍病院にいると知りすずと径子、晴美はお見舞いに行きます。この時、径子は晴美とともに疎開のための切符を買いに一旦二人と別れます。円太郎と話をした後病院を出たすずと晴美は空襲警報を聞きます。幸い近くにあった防空壕に避難した二人は空襲は何とかやり過ごします。しかし、二人は家へ帰る途中空襲で投下された時限爆弾の爆発に巻き込まれてしまいます。

北條家で目を覚ましたすずは右手を、そして晴美を失ってしまったことを知らされます。径子はやり場のない怒りをすずにぶつけてしまいますが、義母のサンは「あんたが助かっただけでも良かった」とすずを慰めます。何日かすると再び空襲がやってきます。この時、焼夷弾が家に打ち込まれますがすずを先頭に家族の必死の働きで家は何とか炎上せずに済みます。

しかし、すずの心はすでにボロボロで妹のすみが心配して見舞いに来るほどでした。すみは広島に帰って来るように言い残し帰ります。やがてすずは思わず周作に実家に帰ると言って聞かなくなってしまいます。

あらすじネタバレ:8月6日

すずが帰省の準備をしていると、径子が怒りをぶつけてしまった事を謝ります。径子の心に触れたすずは径子に「帰りません」と泣いて告げた瞬間、白い光が辺りを包みます。そして、キノコ雲が広島の方から上がってました…。昭和20年…西暦1945年。歴史的にもこの物語としてもターニングポイントとなる年でした。

あらすじネタバレ:終戦

何とか実家に戻りたくても、連絡したくても当面できそうにないすずは、広島市に支援に行く人々を見送ることしかできません。

そして8月15日。かつて晴美が配っていた回覧板でラジオで重大放送があると知ったすずたちは近所の人たちとラジオを聞き入っていました。そこで流れたのは終戦を知らせる玉音放送でした。すずはそれに納得が出来ず表へ走り出し、畑で大声で泣き出してしまいます。やっと恐ろしい戦争は終わった。しかし、その代償、失ってしまった者はあまりにも大きすぎたのです。

夜になると明かりが灯ります。空襲も灯火規制もなくなったのです。その灯りは悲しくも、これからの平和を象徴する灯りでした。

あらすじネタバレ:年明け

年が明けてようやくすずは広島に行くことができます。しかし、両親は原爆の影響で還らぬ人に…。ただ、すみは放射能被害を受けたものの親戚の家で生きていました。すみは治るかわからない放射能被害に不安を感じているものの、すずの前で勤めて明るく振る舞っていました。すずもすみを少しでも元気づけようと兄が南国でワニのお嫁さんをもらったという物語を聞かせてあげます。

親戚の家を後にしたすずは周作と待ち合わせしている場所に向かいます。その間何回も誰かが誰かと間違えてすずに声をかけます。「この街はみんなが誰かを亡くしてみんなが誰かを探しとる」そう言って周作がすずと合流します。すずと周作は思い出の橋で話をして、すずが「この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう」と礼を述べます。するとその後ろを冒頭のバケモノがワニのお嫁さんをかごに入れて去っていきました。

その夜帰ろうとする二人はある女の子を拾います。彼女は右手の無いすずを原爆で片腕を無くしそのまま命を落とした母と重ねたのでした。北條家はその子をあっさり受け入れ、径子はその子のために晴海の服を出してあげるのでした。

映画『この世界の片隅に』&映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』公式 (@konosekai_movie) | Twitter

この世界の片隅にを観た人の感想や評価は?

本作の評価は非常に高く、詳細は後述しますが多くの人々の心を掴みました。ミュージシャンで小説家でもある大槻ケンヂ氏は映画雑誌『映画秘宝』で、自身が連載しているコラムで「今までにないタイプの戦争映画。文句なしの大傑作」と評価しました。

また、映画監督の松江哲明氏も「いま生きている現実と地続きで戦争をイメージできる傑作」と高く評価しました。他にもここで紹介しきれないほど多くの著名人が本作を高く評価しました。ここではそんな数々の著名人の感想に加えて、SNSでの反応もネタバレを最小限にして紹介してみましょう。

『この世界の片隅に』感想①:生きている作品

体験談や群像劇のまとめかたが非常にやわらかで、生きているようだという感想があがっています。2時間9分の重みを感じられるほどの名作ということでしょう。

『この世界の片隅に』感想②:言葉にできない何かがある

手塚るみ子氏は本作を言葉で表現できない何かがあると表現しました。
感動と言う言葉では言い表せないほど、多くの気持ちや感情を持つ。実際そういう魅力があるという感想がSNSでも多く見受けられました。

『この世界の片隅に』感想③:台詞が綿密な伏線

こちらの感想のように、本作の綿密な伏線に驚かれている方も多くいます。その伏線はサラッと出る台詞や人物描写、風景に含まれているので、何度視聴しても伏線探しを楽しめる作品となっているとも言えるでしょう。

この世界の片隅にの伏線・設定

この章では『この世界の片隅に』をもっと面白く楽しむための伏線や設定などをあらすじやネタバレを含めつつ紹介しましょう。歴史的考察や体験談のインタビューなどが作り込まれた『この世界の片隅に』ならではのほっこりするネタをお届けします。

この世界の片隅にの伏線①:新婚初夜の傘のアドバイス

伏線のひとつに『傘問答』というものがある事が分かりました。傘問答とは要は結婚初夜の逢瀬の際に行う儀式のようなものだったそうです。この様な儀式は当時日本全国に多くのパターンがあり床の間問答と呼ぶそうです。今回の傘は広島で一般的だった問答ですが他にも、柿の木(日本各地)、栗の木(東北の一部地方)、馬(長野県)もあるそうです。傘問答は以下のような内容だったそうです。

花婿「傘を一本持って来た?」
花嫁「はい、新(にい)なのを1本持って来ました」
花婿「差しても良いかいの?」
花嫁「はい。どうぞ」

この様な問答を経てから、結婚初夜を迎える風習があったそうです。今の日本ではちょっと考えにくい風習です。ただ、こういう風習があることをサラッと描写できたのも、本作が持つリアリティの象徴と評価する声も多くありました。

この世界の片隅にの伏線②:座敷わらしの正体はリン

エンディングの後、クラウドファンディングで支援した人を紹介するロールが流れるのですが、画面下で一人の少女の物語が始まります。

幼いながらも家族を支えるも、原因は不明ですが売りに出され、ある豪邸で小間使いを行い、ひょんなことから家を逃げ出してしまい、何処かの家の屋根で雨風をしのぎ、ある時家のおばあさんに誘われスイカの残りを食べるのですが、この展開に見覚えはないでしょうか?実はここは本編内に伏線が隠れていたポイントになります。

「この子、序盤に出ていた座敷童では!」と声をあげた方もいるでしょう。座敷童はその後紆余曲折を経て遊郭で働き始め、そしてその時出て来る名刺が『白木リン』だとわかるのです。あの時、すずを助けたリンは、すずにスイカを分けてもらった『座敷童』だったのです。その伏線を踏まえると、なおさら彼女の安否など色々なことが気になります。

この世界の片隅にの伏線③:広島で出会った”ヨーコ”の存在

映画終盤に登場する原爆で孤児となってしまった少女・ヨーコは、すず、そして「北条家の希望」の象徴として物語の凄惨さへの伏線になっています。それは、径子が晴美の服を見てヨーコに合うかと誰に言うでもなく呟く場面からも感じることができます。その時の径子の表情に何とも言えない感動を覚える方も多いのではないでしょうか。

さて、希望の象徴であるヨーコは、「もう一つの希望」の象徴でもあるという考察があります。彼女は敗戦というドン底から立ち上がる戦後日本の希望の象徴の様にも感じられるというのです。エンディングですずと洋服を編んで、笑顔でそれを着て、新しい家族とともに立ち上がる。この流れが今の私たちの基盤を築いた戦後の人々のたくましさの様に感じられるのです。

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この世界の片隅にの見どころ

のん演じる”すず”のフィット感

芸能人の声優起用に対しては賛否を分けることも少なくないのですが、本作においてキャストののんさんの起用は概ね高評価となっています。実際に、のんさんは『この世界の片隅に』での熱演を受けて第11回声優アワードで見事特別賞を受賞しました。

これは、のんさんの今まで演じた役柄と(おそらくですが)彼女自身の人柄が、明るくおおらかで、そこにいるだけで何となく笑顔になれるすずという人物像に重なる部分が多いからなんじゃないかという考察や感想が多く存在します。この人柄と、それを表現できる才能を見抜いた片淵監督は本当に見事だという感想も多く、それに応え見事にすずを表現したのんさんの素晴らしさを様々な人々が絶賛しているのです。

戦時中の中にある、幻想的な情景

『この世界の片隅に』を評価する際に後述するリアリティを挙げる方が多い印象を受けます。実際、詳細は後述しますが本作のリアリティは素晴らしいです。ただ、それとは別にそのリアリティの世界の中から時にまるで風の様にフワッと現れる幻想的な情景も非常に魅力的であるという感想もあります。

例えばすずが水原の絵を代筆した時、水原が「こんな絵描かれたんじゃあ海を嫌いになれない」と呟くシーンはその時色鉛筆で描いた風景を背景に水原が去っていくほんの一瞬なのにその幻想的な絵が心に残るシーンとなっています。

このシーン以降も物語の要所ですずの絵が登場します。すずの絵は見る人の心にすっと入り残るほど優しく温かいものとなっています。あの動乱の時代の中でさえ、世界は輝く場面があった、そう受け止める人がいた。こういうシーンを通して『この世界の片隅に』を観た人々はそう感じるのです。

リアリティのある描き込み

視聴後、感想を語るとき、実際に昭和20年を体験した方が場面場面に出て来る小道具や、人々のしぐさや考え方どれもこれもが懐かしいと時には笑顔でときには目に涙を浮かべ語るといった風景が話題になりました。

例えば晴美が瓶で脱穀する様子を「動きが完璧。私もああやっていた」と述べたり、冒頭の学校に出て来る掲示物や時間割を見て「まるで自分が子供の頃に戻ったよう」と驚く感想もあります。住んでいる地域こそ違え、すずと同じ時代を生きた人々をここまで懐かしさを感じさせたのは、間違いなくスタッフの丁寧かつ綿密なリサーチに基づくものだという事でしょう。

70年前の日常。21世紀を生きる現代人から見たら『この世界の片隅に』は遠い昔の異世界かもしれません。しかし、確かに、その日常を送った人たちから見たそれは厳しく温かい現実の風景だったのです。

厳しい戦時下を生きる市井の人々

本作最大の魅力の一つは、太平洋戦争という騒乱の時代の中でも一生懸命に日常を生きる人々をしっかりと描いたことでしょう。そこにはいわゆる『悪役』も『正義の味方』もいません。

ただ、一緒に家事をして、買い物をして、家に帰れば家族とちゃぶ台を囲んで食事。ご近所さんとも特に大きなトラブルもなく、時には気遣いあい、いざという時は助け合う。緊張している子供をやさしく諭す、道に迷った人には道を教えてくれる、駅で痴話げんかする夫婦を諫める…。この映画『この世界の片隅に』に出て来るのはそう言う普通のどこにでもいる、言ってしまえばただの人間です

ただの人間が時に笑い、時に判断を誤り、時にはしょうもない喧嘩をして、時には涙をこぼしながら、それでもたくましくに生きていく。そういう日常をこの映画では(考え方次第では残酷なほど)優しく淡々と描いています。

そういう意味ではよく想像される『ステレオタイプな戦時中の人』との差に驚くかもしれない場面もありますが、そういうものも含めて、どんな時代であっても生きているのはただの人間なのだと感じさせてくれるのでしょう。

大切な人を亡くすシビアな現実

本作において視聴者は、はっきりと目に見える演出としても、サラッと出て来る台詞の端からも大切ななにかを亡くしてしまう過酷な時代だったという事を感じることができます。ただ、それでも日常を続けなきゃいけないと言う残酷な面をやさしく描写しているのです。

ただ、たった一つだけ例外があります。主人公のすずにとって大切な右手と晴美を失ってしまう場面です。この場面は他の場面以上に強く印象に残る描き方をしています。

このシーンにハッとさせられたという感想は非常に多く、それまでは、太平洋戦争という激動の時代の中でも、どこか幻想的で、ユーモラスで、温かいシーン構成にまるで戦争というこの世界の過酷な現実でさえ、登場人物とは直接関係無いどこか遠い国のファンタジーのように感じてしまっているのです。

しかし、それは決してファンタジーではなく、ちょっとしたきっかけで簡単に日常を崩してしまうほど、あまりにも肉薄した現実だったことが突きつけられます。

この物語はすずの視点で描かれる物語です。すずの見えてるものをすずが描きすずが感じている事を私たちも共有しているのです。言い換えればすずが見ていない場面、見えない場面で同じ悲しみを体験した人も当時大勢いたことをこの場面で思い出させます。

できる限り前を向こうと日常を送っても常に悲劇と隣り合わせ。あの時代はそういう時代だったんだと強く感じさせるシーン構成と言えるでしょう。余談ですが、同年公開の『シン・ゴジラ』中盤でゴジラが初めて熱線を吐き東京を焼き尽くしたシーンでも同じような衝撃を感じたという感想もありましました。

日常の崩壊、そして分かっていたはずなのに、どこかで気付かないフリをしていた最悪の事態に直面した衝撃という面ではもしかしたら共通するものがあったのかもしれません。

70年前の恋愛像

先述の伏線『傘問答』など本作ですずと周作が描く恋愛像は、恋愛か先で結婚が後と言う現代の一般的な恋愛像と違います。結婚してからゆっくりと愛を育てていくと言う、かつての日本で一般的だった恋愛像を本作では、優しくそして愛おしく描いています。それは、全く価値観が違うと言っても良い現代人が見ても、とても温かい気持ちになれるほどのものなのです。

腕を失くしたすずの心境の変化

右手を無くした後のすずは良くも悪くもそれまでは心のモノローグに留めていた言葉を実際に発するようになります。最初は晴美ちゃんを失ってしまって情緒不安定になったのかなとも受けとれますが、それだと説明できない場面として玉音放送の場面などが挙げられるでしょう。今までのすずの性格や言動を考えれば「戦う」なんて言葉を発すること自体『意外』なのです。

もしかして、すずはこれまで絵を描くことで自身の思いを、心の中を昇華したのではないか?そう考察すると、すずの『言葉』が増えた事も、感情表現が大きくなったことも説明できるという説があります。すずは今後、言葉でいろんな思いを紡ぐことでしょう。それはすずにとって一つの成長だったのかもしれません。

この世界の片隅にに関する7つのこと

①原作・テレビドラマ版「この世界の片隅に」

原作漫画『この世界の片隅に』は双葉社の漫画アクション誌にて2007年1月23日号から2009年1月20日号まで連載され単行本は2008年から2009年に上・中・下形式の三巻が出版されました。単行本は後の2011年に上下関係式でも出版されています。

映画との違いは多数ありますが、特に登場人物がより多彩になっている事、そして映画本編で道を教えてくれたリンとの交流がより掘り下げられている点が非常に好評となっています。また、本作は大好評だったアニメ映画以外にもメディア化されていて、2011年に日本テレビで2018年にTBSでそれぞれテレビドラマ化もされています。

ドラマ版『この世界の片隅に』では、キャストが以下のように変わっているのも注目ポイントになっています。

  • 北條(旧姓:浦野)すず(キャスト:松本穂香)
  • 浦野すず(幼少期)(キャスト:新井美羽)
  • 北條周作(キャスト:松坂桃李)
  • 黒村径子(キャスト:尾野真千子)
  • 黒村晴美(キャスト:稲垣来泉)
  • 水原哲(キャスト:村上虹郎)
  • 白木リン(キャスト:二階堂ふみ)
  • 浦野すみ(キャスト:久保田紗友)

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②アニメ映画「この世界の片隅に」

本作はこれまでの多くの映画と違い、クラウドファンディングと言う形で予算が編成されました。目標金額 21,600,000円に対して目標金額を大幅に上回る39,121,920円3,374人から集まりました。これはなんと2016年11月時点で国内史上最高額です。こうして高い注目と期待の基、本作は製作開始になりました。この手法も当時は一般的ではなかったこともあり大きな注目を集めました。

③この世界の片隅にの評価

『この世界の片隅に』は最初は国内63館での上映ですが、SNSでの口コミなどで徐々に公開規模が拡大され、なんと国内のみならず世界各国でも公開されるほどの大ヒットを記録しました。累計動員数はミニシアター系映画としては異例の210万人、興行収入27億円突破の大ヒット作品となりました。

なんとこの記録は70年の歴史を誇る東京テアトル社配給の劇場映画では2位を5倍上回るとなる最高記録だそうです。映画.comによると、伏線の巧妙さや絵柄の美しさ、描写の豊かさなどを讃えてTwitterでの満足度も98%と非常に高い結果が出ています。

この満足度の高さを証明するように映画雑誌『キネマ旬報』の読者選出映画トップ10、映画レビューサイトFilmarks(フィルマークス)の2016年満足度ランキング、ぴあの2016年映画満足度ランキング、Yahoo!映画「映画ファンが選ぶ!ベストムービー2017」の泣ける映画部門、同切ない映画部門それぞれで1位を獲得しました。

ぴあの2016年映画満足度ランキングに至っては満足度歴代最高記録をマークした事からも、観客の評価が非常に高いと言えるでしょう。著名人の有志が集いファンブックが発売されたことも話題になりました。また、その高い評価を裏付けるように国内外でも多くの賞でノミネート・受賞を果たしました。主な賞だけでも、以下のようなものがあります。

・第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位
・第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞
・第41回アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門審査員賞
・第21回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞

さらに海外でも数多くの賞を受賞したことから、本作の魅力にはある程度以上の普遍性があり、それが多くの人々の心を掴んだという事がうかがえます。

余談ですが、日本アカデミー賞の受賞に関して、「歴史的大ヒットを記録した同年公開の『君の名は。』が受賞するものだと思っていた」と言う感想が多かった一方、「『この世界の片隅に』が受賞したことに非常に驚いたと同時に、受賞しても違和感を一切感じなかった本作のクオリティの高さに改めて驚かされました」という感想もまた多く挙がっていました。それほどこの年はアニメーション映画が切磋琢磨していた年でもあるのです。

④この世界の片隅にの上映

いよいよ2016年11月12日満を持しての『この世界の片隅に』が東京テアトル配給で上映されます。最初は国内63館での上映ですが、口コミなどで徐々に公開規模が拡大され累計400館上映、世界60ヶ国でも公開され、ウィキペディアなどによると2年以上のロングランを記録している大ヒット作品となりました。

実はこの大ヒット更に凄いと思うのが、2016年と言えば、社会現象にもなった『君の名は。』や『シン・ゴジラ』を筆頭に国内外から名作映画が目白押しだったいわば黄金期。その中で派手な宣伝も無かったにも関わらず、しっかりと存在感を示し埋もれる事無く評価されたと言えばこの作品の評価の広がり方の凄さが少しでも伝わるでしょう。

⑤この世界の片隅には実話

すずや周作が実在していたと言う訳ではなく、先述の通り本作の登場人物は、どこにでもいるただの人です。大勢の人を救う英雄でもなければ、歴史に名を刻む偉人でも、多くの人を苦しめた悪党でもなく、それぞれがそれぞれの日常を必死に生きていく、そんなどこにでもいる名もなき人々です。

つまり、あの物語はあの激動の時代の中で実際に起こっていた日常を、すずと言う一人の人物の視点で描いた私小説でありながら、一種の群像劇でもあるわけです。だからこの物語は実話ともいえるのだと言えるのでしょう。

⑥この世界の片隅にのタイトルの意味

この世界の片隅にというタイトルがダブルミーニングなのではないかという説があります。これは1つは劇中終盤ですずが「この世界の片隅で私を見つけてくれてありがとう」と言う言葉に凝縮された愛。もう1つは、あの激動の時代を生きたあまりにも多くの世界の中から、特に中心人物でも何でもないすずと言う人物をピックアップした世界であるという説です。

本作は伏線なども巧妙に仕掛けられているので、この様に観る人の感じ取る「この世界の片隅に」が無数に考察出来るようになっているのです。

⑦この世界の片隅にの続編製作

すずとリンの交流を追加した「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が2019年中に公開されることが決定しました。この機会に、改めて「この世界の片隅に」を見直してもいいかもしれません。

この世界の(さらにいくつもの)片隅に【映画】

この世界の片隅にの小説・ガイド情報

ここで、映画『この世界の片隅に』をより楽しめる書籍をいくつかご紹介します!漫画や小説、解説書など幅広いジャンルを紹介しますのでご自身の読みやすいものを手にとってみてください。

原作漫画『この世界の片隅に』

原作漫画の驚くべき点として、アニメ映画と雰囲気が全く同じという事が挙げられます。通常、こういう原作がある作品は様々な理由で改変されることが多いのですが、本当に漫画の持つ雰囲気がそのままスクリーンに映し出されていたのです。それは片淵監督がこの作品を本当に愛しているという事を実感した瞬間でした。

「この世界の片隅に」公式アートブック

「このマンガがすごい!」編集部によって出版されたムック本です。漫画を愛する方々だからこその視点から『この世界の片隅に』を掘り下げています。片渕須直監督とこうの史代氏のインタビューや、のんさんのインタビューなど見どころも豊富です!

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

映画『この世界の片隅に』の世界をより理解したいならこちらもオススメです!特に作品が持つリアリティへの情熱が垣間見える場面もあります。また本編一回では気づけなかった細かい伏線や演出などもフォローしているので「気になる場面があったなぁ」という方にはたまらない一品でしょう。

のん、呉へ。2泊3日の旅

聖地巡礼のお供におすすめしたい書籍はこの本になります。すずを演じたのんさんが舞台となった呉を満喫する写真集と情報誌が合わさったような豪華な一冊。呉を訪れる際この本を携帯するとより楽しめることウケアイです。

ユリイカ

これまでは『この世界の片隅に』を掘り下げる本でしたが、こちらは原作者のこうの史代をより掘り下げる本となっています。『この世界の片隅に』でこうの史代を知った方が、その世界観を学ぶには最高の本となっています。

夕凪の街 桜の国

戦後10年後の広島を描いた作品です。舞台は爆心地の広島。これだけでぞくりと『不穏な影』を感じてしまいます。本作では当時必ず向き合わなければならない『不穏な影』と正面から向き合う作品で、それなのにとても優しい。そんな作品です。

マイマイ新子と千年の魔法

片渕須直監督の世界を深めたいならこちらの作品も観てみるといいでしょう。こちらは『この世界の片隅に』ほど大きな事件はありませんが、なんでもない日常を心に残るよう描くという点では通じるものもあります。マイナーですが良作だという感想があるマニアながら評価の高い一品です。

この世界の片隅にのあらすじ映画まとめ

この世界の片隅にのあらすじ紹介や伏線の解説、感想、キャストの紹介などはいかがだったでしょうか?「この世界の片隅に」をはじめとして多くの作品にも興味を持ってみると楽しいかもしれません。

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