2018年12月12日公開
2018年12月12日更新
モリのアサガオは死刑囚が題材の漫画!あらすじや感想をネタバレまとめ
漫画家・郷田マモラの衝撃作「モリのアサガオ」。当事者以外誰も知ることがない、死刑確定囚の拘置所内の生活と拘置所で勤務する刑務官の仕事、そして死刑執行までの流れを知ることができる漫画です。死刑囚、刑務官、被害者の気持ちや考え方がリアルに表現され、死刑制度について考えさせられる作品でもあります。今回は「モリのアサガオ」のあらすじと読者の感想をネタバレしながらご紹介していきます。
目次
モリのアサガオは死刑囚が題材の漫画だと話題に!
漫画家郷田マモラの「モリのアサガオ」。この漫画は死刑囚と刑務官の友情と拘置所内の出来事について書かれており、日本の死刑制度の在り方を読者に考えさせる一面を持ちます。死刑囚も人間である、という点が丁寧に描かれ、罪を犯した背景や被害者の心情も含め物語そのものに引きずり込まれます。罪と罰、そして死刑という重い題材を扱った「モリのアサガオ」が何故話題となったのか、あらすじと感想についてご紹介します。
モリのアサガオとは?作者についても紹介
モリのアサガオとは?
漫画のタイトル「モリのアサガオ」とはどういう意味でしょう。その答えは、漫画の中で主人公の新米刑務官と死刑囚によって語られます。死刑囚は死刑をもって罪を償うため、牢屋の中では比較的自由に暮らしています。そんな死刑囚の暮らしぶりは世の中に知らされておらず、存在すら忘れられてしまうことから、拘置所は町の中にあっても深い森のように閉ざされている場所だと主人公は認識します。
そして、死刑囚への死刑執行は死刑囚に事前に知らされることなく、当日の朝9時から10時までに済まされることから、自分たちを朝早くに咲いて昼までにはしおれるアサガオの花と一緒だ、という囚人の言葉を主人公は受け取ります。
このことから、モリ=拘置所 の アサガオ=死刑囚 と分かります。「モリのアサガオ」では、主人公が死刑囚についてや死刑執行の是非について何度も悩みますが、背景には暗い森とアサガオの絵が描かれていきます。また、「モリのアサガオ」の森は心が迷う場所という意味にもなっているようです。
作者紹介
死刑制度を題材とした「モリのアサガオ」を書いた作者はどのような人かご紹介します。漫画家、郷田マモラ、1962年生まれ、三重県伊勢市出身。大阪総合デザイン専門学校でグラフィックデザインを学んだ後、1993年「虎の子がゆく!」と「花の咲く庭」でデビュー。ちばてつや賞一般部門大賞を受賞とミスターマガジンの新人漫画賞入選を受賞しています。
1998年にドラマ化された「きらきらひかる」や2005年映画化された「MAKOTO」を執筆。「モリのアサガオ」は2004年から2007年まで漫画アクションに連載され、平成19年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞しています。2010年には テレビドラマ化され、主人公役を伊藤淳史、死刑囚渡瀬満役をARATAが演じました。
2015年「モリのアサガオ」の初舞台化もされました。脚本はオリジナルで、放送作家でもある田中大祐が手がけました。キャストはW主演で、新人刑務官・及川直樹を前内孝文、死刑囚・渡瀬満を南羽翔平という今注目の若手俳優が演じました。
モリのアサガオの漫画あらすじをネタバレ!
それでは、漫画「モリのアサガオ」の1巻のあらすじをネタバレを含みながら紹介していきます。靴の足音と絞首刑用の縄、刑務官と囚人の若い2人の男性とアサガオ。「最後に直樹の顔を見て俺は死にたい」と言った囚人・満を苦しそうな顔で見つめる刑務官・直樹。そして満の刑の執行が執り行われるという流れで「モリのアサガオ」は始まります。
拘置所への配属と死刑執行
大阪市にあるなにわ拘置所に配属された新人刑務官、及川直樹。元拘置所所長である父のコネで刑務官となり、死刑囚舎房に配属します。先輩刑務官の谷崎と一緒に巡回を行った直樹が見た死刑囚の生活は、想像していたのと異なるものでした。服装や頭髪が自由で、お金があればある程度のものを買う事もできる生活。凶悪な犯罪を起こした死刑囚に怯える直樹ですが、反省もせずに楽な生活を送っている死刑囚に納得がいきませんでした。
直樹が最初にかかわりを持つことになった死刑囚・石嶺。石嶺は7人の女性を凌辱、殺害した犯罪者でした。「死刑囚はアサガオと同じだ」と言った石嶺。直樹の着任祝いに振る舞われた大福を、反省した態度をみせない石嶺に渡さず自分で食べてしまった直樹。石嶺は大福をもらえず涙します。冷静になった直樹は、悪いことをしたと反省し大福を買って翌日渡そうとします。しかし、すでに石嶺は死刑が執行された後でした。
渡瀬満の存在
自分を責める直樹。同じ頃、拘置所に直樹と同い年である渡瀬満が送検されてきました。野球少年だった直樹は、同じく野球少年だった満の噂を聞き、いつかは対戦してみたいと思っていました。しかし、満の両親が身勝手な理由で田尻勝男に殺害されてしまいます。田尻は捕まりますが、仇討ちのため出所した田尻を殺害した満。復讐のためだけに壮絶な人生を歩んできた満に、刑務官の直樹はあこがれていました。
死刑囚の言動に振り回される直樹。死刑囚たちは償いの気持ちがないのではないか、自由に過ごしすぎではないか、そして虫けらのように何の予告もなく処刑されてしまうという結末、刑務官の仕事は何なんだろう、と考え悩み始めます。午前中の巡回の靴音に怯える死刑囚に気を遣う反面、命を奪われた被害者のために怯えながら生きていけばいいとも考えます。悩む直樹は、仏像の貼り絵に没頭する死刑囚・世古利一と向き合いました。
反省した死刑囚
世古は4体の仏像を貼り絵で作っていましたが、別の囚人から、延命措置ではないかと聞き疑う直樹。しかし、4体の仏は世古が殺した人を現していることと、毎日欠かさず被害者に対し償いの言葉を記していたことを知ります。死刑囚の中にも悔い改めて真面目に反省している人間がいることに気づいた直樹に、先輩刑務官・若林勇三が「改心した人間を殺してしまうことがはたして正しいと言えるのか」と問います。直樹が「死刑反対」についても考え始めます。
死刑囚・香西忠伸も反省し、7年間遺族に毎日のようにお詫びの手紙を書き続けていました。そんな中、初めて遺族から香西宛に手紙が届き、喜んだその夜自殺未遂を起こします。謝罪を受け入れてもらった状況で、これ以上のおわびの言葉が見つからない、更に自分への憎しみが遺族の生きる希望になっていたかもしれないのにそれを奪ったのではないかと悔やみ、自殺しようとしたと語る香西。凶悪な犯罪を起こした死刑囚が、清らかな心になっていると感動した直樹でした。
満の裁判
渡瀬満の初公判が行われます。満は、自分の両親を殺害した田尻を切り殺した際、田尻が抱えていた田尻の娘も一緒に切り殺していました。裁判の争点は、田尻が娘を抱えていたことを知っていたかどうかで、それによって罪の重さが異なります。満の弁護士には、田尻勝男を弁護した弁護士が付いていました。満は裁判で、娘には気づかなかったと検察の起訴内容を一部否定しましたが、直樹には不自然に感じるものがありました。
反省しない死刑囚
満を指示する支援団体の女性から、人殺しと言われた直樹。自分の仕事も人殺しなのかと悩みます。更に直樹は死に直面している被害者の1人と会ってしまいます。直樹の拘置所にいる死刑囚・星山克博に家族を殺され独り身の上、胃がんを患い数カ月の命だと知ります。星山の本当の気持ちが分からないまま死ぬのが気がかりだという女性。拘置所内のことは言えない規則だ、と話す事を拒否しますが、星山に罪の意識について問う事にしました。
星山は反省しないどころか、自分のおかげで命を取られずに済んだことを感謝してほしい、とまで言います。直樹の顔が鬼のように変わり、怒りが込みあがりました。「星山のような極悪人は生かしておいたらいけない、死刑は必要なんだ、被害者に代わってふざけたアサガオを処刑しなければならない」と思う直樹。直樹の心も激しく揺れ動きます。
以上が1巻のあらすじでした。恐ろしいと思っていた死刑囚にも様々なタイプがいると気づいた直樹。反省した死刑囚には死刑制度は重いのでは、反省しない死刑囚には死刑は当然だ、と誰もが思うことを直樹が代弁してくれています。しかしそれは刑務官としての立場で思う考えであって、死刑囚にかかわる当事者の立場になったとき、考えが更に深くなっていきます。
モリのアサガオ1巻後のあらすじ
その後のあらすじですが、直樹の本当の父親が元死刑囚だと知ります。しかも、拘置所にいる死刑囚・深堀圭三をかばい嘘を付き通し、冤罪で死刑になったことを知ってしまいます。動揺し壊れかける直樹。冤罪が証明され拘置所を出る元死刑囚を目の当たりにし、冤罪で死刑になった父の過去を知る直樹。冤罪がなぜ起こるのか、無くならないのかが語られます。そして死刑制度に対するもう一つの視点、冤罪でも死刑になるという事に悩みます。
一方、裁判で娘がいることを知っていた、と供述を翻す満に死刑判決が。自分の両親を殺した男の刑を軽くした弁護士への復讐だと語る満。死刑に怯える満ですが、直樹には弱い姿を見せないようにし、仇討ちは正当だったと反省する素振りは見せません。満は直樹を避けているような素振りを取り続けました。
しかし直樹が自分の素性を知り思い悩み壊れかけたとき、直樹が頼ったのは満でした。満も直樹の様子がおかしい事に気づき、直樹のいら立ちや悩みを聞き大丈夫だと励まします。満に気持ちをぶつけたことで、少しずつ冷静になる直樹。冷静になったことを確認すると、また距離をおきはじめる満。2人の心の距離は縮まらないでいました。
モリのアサガオの漫画の最終回あらすじをネタバレ!
満の妹への愛情
死刑囚、刑務官、そして被害者と接しながら、死刑制度について悩み続ける刑務官直樹。「モリのアサガオ」は、刑務官である直樹と死刑囚である満が親友となり、その親友に死刑を執行するという話で始まりました。刑を執行するものと刑を受けるものが何故友達になれたのか、漫画「モリのアサガオ」の最終回のあらすじをネタバレしながら紹介します。
児童福祉施設にいる死刑囚の父を持つ少年について若林から相談を受ける直樹。しかもその父親は冤罪で死刑執行された可能性が高く、直樹と同じ境遇を持つことから話をしてほしいと頼まれます。死刑囚の父を持つことで周囲からいじめを受け、悩み苦しんでいた少年。直樹が調べると、なにわ拘置所で別の事件を起こし死刑判決を受けた人物が真犯人だと分かり冤罪だったことが判明し、少年に生きる希望を与えました。
冤罪による死刑に再度悩む直樹。ある児童福祉施設にいた一人のしゃべれない少女が持っていたぬいぐるみに見覚えがあった直樹は、その少女が満の妹だと分かります。妹に満の事を知りたいから教えて欲しいと懇願し、妹は筆談で満との再会について話してくれました。満は仇討ちを終えた後、出頭するまで1年間どのように過ごしていたか分かっていませんでした。それは裁判でも明らかになっておらず、謎の1年でした。
満は仇討ち後、妹に会うため施設の近くに隠れ住みました。再会した妹から一緒に死のうと言われますが死に切れません。ある日、満が妹を見守る中、一人の男が妹を狙い殺そうとしました。その男は、満が仇討ちをした田尻勝男の実弟、田尻達男でした。妹は恐怖で気を失いますが、目が覚めると達男はいなくなっており、満が話をつけたから大丈夫と。その後、満は警察に出頭しました。妹に何があっても生き続けてくれと言い残して。
友情と信頼と罪の償い
直樹はその話を満にしますが、満からはこれ以上俺にかかわるなと言われてしまいます。しかし半年後、満から直樹と話がしたいと言われます。不思議に思いつつも話をする直樹に、満は俺のことをどう思っているのかと聞かれ、直樹は素直にキミに救われた、感謝してると伝えました。満からも、直樹とのかかわりで死の恐怖をまぎらわせることができ、感謝してると言われます。
直樹は嬉しいと思う反面、満の言動に疑問がありました。「死刑」を受け入れたのに、どうして「死」を恐れて心を乱していたの!?」満は妹を襲った達男から、死刑で死ななければ妹を襲うと脅されていたのでした。直樹はやっと満の気持ちを理解することができました。死に向き合う覚悟ができ、明るくなった満。2人の距離は一気に縮まり親密になっていきます。それでも仇討ちは後悔していないと言う満。
その満が心を乱します。脅していた達男が事故で死んだ記事を読み、妹に危害が及ばないと知り、自分は死刑になりたくないと言い出しました。しかし直樹は満が罪と向き合って欲しいと考え、「満が行った仇討ちは死刑に値する」と言い切りました。揺れ動いていた気持ちが固まった瞬間でもあります。冤罪のこと、脅されていたことを踏まえても、人として反省しながら負の連鎖を断ち切る必要性があると考えたうえでの判断でした。
復讐そのものを反省してほしいという直樹の言葉を受け入れ、仇討ちを後悔した満。魂のキャッチボールの物語は終わりを迎えます。満に死刑執行命令が出されました。死刑されることをしたので受け入れるという満と死刑になるのは不条理ではないかとうろたえる直樹。「もしも、生まれ変わったら直樹と一緒に野球がしたいな」死を受け入れた満は穏やかに直樹に語り掛けました。そして直樹が見守る中、満の刑が執行されました。
死刑制度に対する直樹の想い
直樹は今までの経験から、刑務官の仕事と死刑制度について振り返ります。冤罪を含む、刑の執行にかかわる不条理な点など見直すべき事はあるが、直樹は今の時点では「死刑」を廃止しようとは思わない、と考えます。そして、閉ざされた森で極限状態におかれている死刑確定囚に対し、刑務官は相手を理解し受け入れ親身に対応する必要があることも悟ります。これからの人生で考え方も変わるかもしれないと悩み続ける直樹でした。
登場する刑務官の考えも様々です。死刑によって人殺しをしてしまったと悔やみ、精神が壊れる刑務官もいれば、サービス業の一端として世話をしているという刑務官もいます。また、満のような仇討ちを起こさないために死刑は必要と考えたり、悔いて反省している人間を死刑にしてもいいのだろうかと言う刑務官もいます。様々な意見を受け入れつつ刑務官の仕事はなにかについても悩み続けていきます。
モリのアサガオの漫画を読んだ感想を紹介!
難しいテーマである死刑制度の在り方を問う、漫画「モリのアサガオ」を実際に読んだ人はどのような感想を持ったのか、Twitterのコメントと感想を紹介していきます。
最近読んだ書評。漫画ですが。モリのアサガオ。死刑制度に焦点を当てた作品。緻密な取材で、死刑囚の暮らしや執行までの流れをリアルに描写している。非常に精度が高い。
— りゅう (@ryu_soaring) August 16, 2010
「モリのアサガオ」のリアリティを評価しているコメントと感想です。拘置所の中の様子や刑務官の考えなど、普通に暮らしていれば知ることがない世界を漫画にした意味は大きいようです。まさしく都会の中にある深い森の中の様子は、入った人でなければ分からないという感想ですね。
『モリのアサガオ』、再読一気読みしてしまった、最後にかけて本当に苦しくなる。「死刑」も人が人の(しかも日常接している人の)命を奪うという事実に、向き合わざるをえない、賛成派も反対派もぜひ。この秋、伊藤淳史×ARATAでドラマ化が楽しみ。伊藤君は「私たちの教科書」もよかったなぁ。
— 吉田正純 (@myosida) August 11, 2010
このTwitterは、刑務官の仕事の辛さや死刑の重みについての感想を述べています。最後にかけて苦しくなるというのは、直樹と満のことでしょうか。「モリのアサガオ」を再読したということは、何年たっても考えてしまう内容なのかもしれません。
郷田マモラ先生の「モリのアサガオ」を読み始めました。紙面の上に寛げられた線と台詞一つ一つがズシンと重いのは確かにそれぞれの真実と人間の魂が描かれているからなのだろう。3巻の途中これから一人の人間が死ぬ(死刑が執行される)頁の前で遂に机に突っ伏してしまった…物凄い漫画です。
— クリスマスネ夫は土曜G22b (@yukiuou) February 8, 2017
物凄い漫画だと絶賛しているコメントと感想です。直樹と一緒に考え、悩み、死刑に向き合いながら漫画を読んでいるのかもしれません。刑務官、死刑囚、そして被害者が発する台詞に考えさせられるものが多いのも、「モリのアサガオ」の特徴です。Twitterのコメントを見ても、「モリのアサガオ」は考えさせられるすごい漫画、という意見や感想が多かったです、
モリのアサガオの漫画あらすじまとめ!
今回は漫画「モリのアサガオ」のあらすじや感想についてご紹介しました。刑務官と死刑囚の友情と死刑制度の在り方についての話でしたが、読んだ後も「一体どうしたらええんや。わからんくなってきた…」という直樹の言葉が離れないと話題です。
絵が独特で、絵本のようにも見えますが、読み続けると漫画の世界観に合うと感じてくると言われています。拘置所の世界、そして深い森に迷い込む感覚を知りたい人はぜひ、漫画「モリのアサガオ」を手に取ることをお勧めします!