2018年05月31日公開
2018年05月31日更新
封神演義のハンバーグ事件とは?伯邑考の最期とトラウマレベルの過激内容
封神演義を知らない人でも「ハンバーグ事件」というワードを耳にしたことがあるんではないでしょうか?およそ少年誌に似つかわしくないあまりにも過激な内容から、当時の少年少女にトラウマを植え付けた有名な事件です。今回は再アニメに続編新作連載でブーム再来の封神演義の重要事件、トラウマ必死のハンバーグ事件とは何なのか。何故そんな悲劇が起こったのか。事の発端から事件が封神演義のストーリーに与えた影響まで徹底解説します!
目次
封神演義とは?
封神演義は中国明代の神怪小説をモチーフに安能務翻訳の同題小説を原作にした藤崎竜作画のSFファンタジー漫画です。週刊少年ジャンプ(集英社)にて1996年から2000年まで連載され大人気を博しました。
独特ながらもキレイ目調の絵柄とは裏腹に、少年誌ギリギリのブラックジョークや時代考証を一切無視した突飛な演出など、過激な内容にもかかわらず、コミカルで切り口で描き、そしてそれらすべてを完全に伏線回収する練られたストーリー構成は、今も根強いファンを獲得しています。
出典: http://festy.jp
しかし一方で少年誌ながらもあまりに過激な内容ゆえに、読者の少年少女にトラウマを植え付けたのが封神演義が封神演義たる所以でもあります。今回はそんな封神演義によるトラウマの筆頭格、ハンバーグ事件について紹介します。
封神演義のあらすじ
封神演義の舞台は今から3000年も遡る古代中国殷王朝の時代。名君で知られた第30代皇帝紂王が仙女妲己を召しいれて以来、悪政が続いたことを嘆き、仙人界崑崙山より教主元始天尊が弟子・太公望が派遣されます。封神演義はそんな太公望が人間界に悪影響を及ぼす仙道を封じ、革命を起こし殷王朝を打倒する封神計画のため、仲間を集め知略を巡らし、強大な敵に立ち向かう物語です。
再アニメ化・完全新作連載で封神演義再ブーム到来
覇穹 封神演義
1999年の『仙界伝封神演義』以来2度目のアニメ化が、原作終了から18年の時を経て実現。『覇穹 封神演義』とタイトルも新たに2018年1月よりTOKYO MX系列で放送が開始されました。『仙界伝封神演義』では放映当時、原作が未完だったため途中からアニメオリジナルストーリーが展開。『覇穹 封神演義』では、スタッフ・キャストを一新し原作をなぞったストーリー展開となっています。
封神演義 外伝
封神演義のブーム再来は再アニメ化に留まらず、なんと2018年4月から封神演義本編のその後のストーリーを描いた完全新作『封神演義 外伝』が週刊ヤングジャンプ(集英社)にて連載開始。20年近い時間が経過しながらも、当時の絵柄が完璧に再現されつつ、時間の流れを考慮してブラッシュアップされた作画も話題となっています。
封神演義の登場人物紹介
封神演義には人間・仙道そして幻獣を合わせ数多くのキャラクターが登場します。あまりにも膨大な数のため、ここではハンバーグ事件にかかわるキャラクターをピックアップして紹介します。
太公望(たいこうぼう)
本作封神演義の主人公。崑崙山の教主・元始天尊の弟子にして仙道屈指の頭脳を持つ策略家。元始天尊の命を受け、人間界に革命を起こし、周軍の軍司となります。元々は人間であり幼少期に人狩りにあい一族郎党皆殺しにされたところを元始天尊に拾われ、仙道として修業を積みました。
性根は厳しくも心優しい仙人ですが、少年誌の主人公らしからぬ仲間からもブーイングを受けるような卑怯で小狡い手段を好んで使う一方で、仙道が人間界にもたらす悪影響とその戦いに人間を巻き込むことを嫌悪する人間想いな一面があります。
妲己(だっき)
殷の皇后にして傾国の美女。その正体は狐の妖怪仙人であり、仙人界でも屈指の実力者です。その美貌から殷の名君紂王を堕落させます。圧倒的な戦闘力も持ちながらも自ら戦場に赴くことは少なく、太公望をも凌ぐ策で周軍を苦しめます。愛くるしい見た目に反し、過激で残虐な刑罰を生み出し、あまつさえそれを楽しむ残忍な性格の持ち主です。今回紹介するハンバーグ事件を筆頭とする封神演義のトラウマ製造機です。
紂王(ちゅうおう)
第30代そして最後の殷の皇帝。かつては文武共に優れた名君として名を馳せながら、稀代の女好きであることが仇となり、妲己につけ入る隙を与えてしまいました。妲己を迎えて以降、妲己の意のままに悪政を行う傀儡となった哀れな皇帝です。
姫昌(きしょう)
殷の四大諸侯のうち西岐を預かる西伯侯。温厚で公平な聖人として民衆から敬愛される明主だったため、妲己の始末の対象となり、彼女の策略により幽閉の身となります。ハンバーグ事件の被害者の1人であり、事件後、太公望を西岐に迎え入れますが、拒食症となりやがて衰弱死します。
姫伯邑考(きはくゆうこう)
姫昌の長男にしてハンバーグ事件最大の被害者。妲己の誘惑にも勝る理性を持ち、非常に優秀な美男子でしたが、幽閉の身となった父を救うため訪れた朝歌で、妲己の策略にはまりハンバーグ事件に合います。
姫発(きはつ)
姫昌の次男であり、伯邑考の弟。女好きの放蕩息子のように振舞っていましたが、本来は正義感が強く人望の厚い人物。ハンバーグ事件を発端に衰弱死した父に代わり、西岐を周と改め武王を名乗り革命を起こします。その後、周の初代皇帝となり亡き父姫昌に文王の名を与えました。
黄飛虎(こうひこ)
仙人の素質を持ちながら見いだされなかった天然道士。代々殷王家に仕え、強靭な心身を持つ武人として鎮国武成王の名を与えられた殷の石柱の1人でしたが、妲己の策略により妻と妹が自害したことで殷を見限り、周へと渡ります。周では開国武成王を授かり、重要な戦闘要員となりました。
トラウマ必死!封神演義が生んだ衝撃のハンバーグ事件とは?
げに恐ろしきハンバーグの正体
週刊少年ジャンプといえば、ナルトやドラゴンボールなど日本のみならず世界中でブームを引き起こした日本屈指の少年誌です。集英社の調べによると2009年時では読者アンケートの7割が10代、また2012年の調査でも15歳以下の読者が7割近くを占める正真正銘の少年誌であり、編集部も小中学生の男子をターゲット層としています。
そんな少年少女の読者を震撼させ、トラウマとして刻み込んだハンバーグ事件とは一体どんな事件なのでしょうか?
ハンバーグ事件で用いられたハンバーグは殷の皇后・妲己自らが料理したハンバーグです。漫画では某クッキング番組のパロディ風に描かれており、手際よくリズミカルに調理されていきます。そしておいしそうに出来上がったハンバーグは、幽閉されている姫昌のもとに昼餉として運ばれていきます。
そしてハンバーグを食しただけで、姫昌は解放されることとなります。何故なら、ハンバーグに用いられた『おいしそうなひき肉』とは姫昌の実子・伯邑考の人肉だったからです。
妲己の巧妙で残虐な罠!食べざるをえなかった姫昌
姫昌はハンバーグに実の息子伯邑考の人肉が用いられていることに気づいていました。しかし、ハンバーグは殷の皇后である妲己が自らが料理し、罪を問われ幽閉の身にあった姫昌にいわば下賜されたものです。食べることを拒めば、更なる罪に問われる可能性が非常に高く、姫昌には食べる以外の選択肢が用意されていませんでした。
その後、実の子の肉を喰らった姫昌は、その事実に気づくことのできない聖人とは程遠い取るに足りない人物として、解放されることとなったのです。
そもそもハンバーグ事件は何故起こったのか
全てはここから始まったハンバーグ事件の前座酒池肉林の宴
トラウマのオンパレードともいえる封神演義ではハンバーグ事件の発端として、ハンバーグ事件に匹敵する過激な事件があります。それが姫昌が幽閉される原因となった事件、酒池肉林の宴です。これもまた封神演義を知らずとも、中国の故事を由来とし現代まで四字熟語として残るほど有名な言葉です。
作中では妲己の発案で東西南北四方向を治める四大諸侯を招き、酒で造った池と林の中に罪人と虎を放ち襲わせ、そのショーを肴に酒を楽しむ酒池肉林の宴を催します。
罪人とはいえあまりに過激すぎる内容に異を唱えた東伯侯と南伯侯はその場で処刑され、西伯侯である姫昌は紂王の乱心とその原因が妲己にあることを見破ります。同時にこの宴が自分たち四大諸侯を始末するために計画されたものと気づきながらも、主君の暴走を諫めるのが臣下の忠義として、紂王に進言します。
あわやこれまでと思われた姫昌は、紂王からの信頼も厚い武成王・黄飛虎により窮地を救われますが、そのまま国に返すわけにはいかないと処刑の代わりに幽閉されることになりました。
父を救うためやってきた伯邑考は無念のハンバーグに
その後7年、幽閉され帰らぬ父を救うため、伯邑考は家宝の品々を携え朝歌を訪れます。父と同じく聡明な伯邑考は謁見の僅かの合間に、諸悪の根源が妲己にあることを確信します。
しかし献上した猿が、妲己の威圧感にあてられ妲己に襲い掛かったため、暗殺の容疑をかけられ処刑、すなわちハンバーグにされるという悲惨な最期はトラウマ多しの封神演義でも1、2を争う壮絶な末路となりました。
史実は封神演義に負けず劣らず過激だった?実在したハンバーグの刑
実在した伯邑考のその惨過ぎる最期
封神演義はファンタジー要素の強いフィクションですが、登場人物は実在する者も多く、史実に近い展開も数多くあります。姫昌と伯邑考も実在した人物の1人です。
史実では人質にされていたのは伯邑考で、その後、父姫昌が紂王によって捕えられると体を切り刻まれる凌遅刑に処され、釜ゆでにされた後、その肉を用いた肉汁にされ、父姫昌に出されました。なんとこの悲惨な末路は封神演義の中だけのフィクションではなく、史実でも食肉にされ、実の父に食されるという悲劇の親子だったというわけです。
リアルハンバーグの刑!恐ろしすぎる凌遅刑(りょうちけい)の内容とは?
伯邑考に課せられた凌遅刑とは歴代中国王朝の刑罰の中でも最も残酷で重い内容でした。主に謀反の首謀者などに科せられた刑罰とされています。その内容はあまりにも過激で残酷。なんと生きたままの人間の肉を少しずつ削ぎ落し、長時間にわたり激痛を与え苦しませて死に至らすというもの。そして削ぎ落された人肉は、漢方薬といて売られていたといわれています。
本当は怖い封神演義!トラウマがトラウマを呼ぶ伯邑考の最期
封神演義のハンバーグの事件のその後、姫昌は釈放され伯邑考の魂魄が封神台へと送られることとなるこのシーン。お気づきでしょうか?すでに恐怖でお腹いっぱいのハンバーグ事件、その恐ろしさは上限知らずです。
先に紹介した通り、凌遅刑とは「生きた」人間の肉を削ぎ落す刑です。封神演義の中で伯邑考に科せられた刑は明言されておりませんが、削ぎ落された伯邑考の人肉を用いたハンバーグは姫昌の昼食として出されます。その後、伯邑考の魂魄が飛んだのはその夜。つまり、伯邑考は昼頃に刑を執行され、生きたまま切り刻まれながらその夜、魂魄が封神台へ送られるその瞬間まで、激痛の中存命していたことになります。
これが封神演義の物語のみならず、史実でも科せられた刑だというのだから、実に恐ろしい話です。
ハンバーグ事件が実は封神演義の根幹?その後の影響について
重要人物たちをつないだハンバーグ事件
伯邑考にとってはこれ以上にない悲劇となったハンバーグ事件。しかしこの事件に起因して、物語では3人の重要人物をつなぐことになります。それが太公望と姫昌と黄飛虎。正確には姫昌と黄飛虎の出会いは酒池肉林ですが、この出会いもすべてハンバーグ事件とその後の対立関係を形成するために妲己に仕組まれたものでした。
また、釈放された姫昌は太公望と出会い、彼を西岐へと迎えます。その後の周において多大な戦力となる知と武、2人の実力者と主君がこの事件を介してい繋がることになります。
ハンバーグ事件に起因した殷と西岐の対立構造
こうして西岐へと迎え入れられた太公望は、革命を起こし殷を打倒する対抗馬として姫昌を新たな王とする新しい国の建国を姫昌に促します。自身も捕えられ息子も殺された姫昌は、もはや殷の未来はないと悟り太公望の要請を受け入れ、殷を打倒する決意をします。
トラウマを負ったのは読者だけじゃない!ハンバーグ事件その後の姫昌
あまりに過激な内容で読者に消えないトラウマを植え付けたハンバーグ事件ですが、当然当事者である姫昌の負った傷は計り知れません。実の息子を食肉にされ、あまつさえ自ら食さなければならなかった姫昌はその後、拒食症となり衰弱していきます。そして全てを太公望と次男姫発に託し、静かに息を引き取りました。
3秒クッキングでも外せない!超高速展開『覇穹 封神演義』でもやっぱりハンバーグ事件
2018年4月から放送開始となったアニメ版第2作目となる『覇穹 封神演義』。1999年放送のオリジナル展開となった第1作目の続編というわけではなく、完全に別個の原作主軸のアニメ版ですが、そのストーリー展開が超高速だと話題になっています。
アニメ封神演義、このスピードだと妲己ちゃんの3秒クッキングが放送されそう。
— usamomomo (@cx5cz) January 12, 2018
それもそのはず、原作はコミックス23巻に及ぶ内容を2クール23話で完結させようとなると1話に1巻分の内容を集約する必要があり、多くの内容が変更またはカットになりました。Twitterではそんな超速展開をハンバーグ事件時のクッキングシーンにかけて3秒クッキングと呼んでいます。
しかしそんな高速展開を見せる『覇穹 封神演義』でも、やはりハンバーグ事件は外せません。2話放映時には酒池肉林と合わせてカットになった際は、その過激さが原因かと一時騒然となりましたが、第4話で無事お披露目となりました。
どれだけ過激な内容であろうと、その後の物語転換を左右する事件だけに、やはり外すことはできなかったようです。アニメでも原作通り妲己とその妹の胡喜媚が軽快なクッキングで視聴者のトラウマを抉っています。
古参も新参もトラウマ地獄!封神演義の今後に期待
アニメの放送に加え新作連載開始となり2018年は封神演義にとって新たな年の幕開けとなりました。連載当初のファンはもちろん、今期のアニメや続編漫画から新たな封神演義ファンの獲得が予想されます。
しかしストーリーが確信に迫っていくと同時にトラウマ展開も増えていくので、かねてからのファンは過去のトラウマを掘り返され、また新規のファンには新たなトラウマを植え付けていくであろう封神演義。今後の展開からますます目が離せません。