セルの声優・若本規夫はどんな人？ドラゴンボール以外の担当キャラは？

ドラゴンボールは1984年から1995年まで週刊少年ジャンプで連載された鳥山明先生のマンガです。アニメはドラゴンボール（1986年～1989年）、ドラゴンボールZ（1989年～1996年）、ドラゴンボールGT（1996年～1997年）、ドラゴンボール改（第1期2009年～2011年、第2期2014年～2015年）、ドラゴンボール超（2015年～2018年）の5作品が放送され、超長期シリーズとなっています（画像はドラゴンボール超のもの）。

7つ集めればどんな願いも叶うという秘宝ドラゴンボールをめぐる孫悟空の冒険と、仲間との友情やライバルとのバトルを描いた少年マンガの王道とも言うべきストーリーは読者の少年たちを虜にし、海外でも大人気となりました。孫悟空の必殺技かめはめ波は、誰もが1度は真似をしたことがあるのではないでしょうか。

セルはマッドサイエンティストのドクター・ゲロの手で作られた人造人間で、孫悟空、ベジータ、ピッコロ、フリーザといった高い戦闘力を持つ異星人をはじめ、その他数種類の生物の細胞から生み出されました。元々の細胞の持ち主の必殺技はもちろん、ピッコロの再生能力のような種族特有の特殊な体質も受け継いでいるという、作中に登場する戦士の中でも異質な存在です。名前は細胞を意味するcell（セル）に由来しています。

未来の世界で生まれたセルは、人造人間17号と18号を吸収し完全体（画像の形態）となることができると知りますが、2人は既にトランクスに倒された後でした。そこでセルはトランクスを殺害し、タイムマシンで人造人間17号、18号が生きている現代にやってきます。そしてピッコロ、クリリン、ベジータとの闘いを経て人造人間17号、18号の吸収に成功し、天下一武闘会を模したセルゲームの開催を宣言します。

セルは挑戦者たちを一蹴し、孫悟空と死闘を繰り広げますが、体力が尽きた悟空は降参し息子・悟飯と戦うことになります。セルは悟飯に本気を出させるため、セルジュニアを生み出し観戦者を痛めつけます。人造人間16号はセルもろとも自爆を試みますが、爆弾が抜き取られていたため失敗し、セルに破壊されてしまいます。それを見た悟飯はスーパーサイヤ人2に覚醒し、ダメージを食らったセルは人造人間18号を吐き出します。

逆上したセルは地球ごと自爆しようとしますが、悟空の瞬間移動で界王星に移動させられ爆発しました。しかし、核が残っていたため奇跡的に復活を果たし、トランクスを殺害します。さらにベジータを弾き飛ばし、悟飯とのかめはめ波の打ち合いに突入しますが、ベジータの気功派に気をとられたところに悟飯の渾身のかめはめ波を受けて消滅しました。

若本規夫さんはシグマ・セブン所属の声優で生年月日は1945年10月18日、出身は山口県です。ドラゴンボールのセル、サザエさんの穴子さん、銀河英雄伝説のオスカー・フォン・ロイエンタール、ジャンプフェスタ版ワンピースのギャンザック、ニニンがシノブ伝の音速丸の他、松本人志のすべらない話などテレビ番組のナレーション、吹き替えの分野でも活躍しています。

若本さんは早稲田大学法学部卒業後、警視庁機動隊で約2年勤務していたという異色の経歴の持ち主です。当時は学生運動が盛り上がりを見せていたこともあり、1968年に新宿で起こった新宿騒乱では最前線に出動していたそうです。少林寺拳法三段、全日本剣道連盟三段、禊流古神道神法教傳会師範代と武道に精通しており、70歳を過ぎた現在でもトレーニングで若々しい体と声を維持しています。

警視庁機動隊を退官後は日本消費者連盟の創立メンバーを務めていましたが、上司を殴り飛ばしてクビになり、酒に酔って帰りの電車で横になっていたところ棚から落ちてきた新聞に載っていた養成所の広告を見て声優の道を志したとのことです。1972年ごろから声優の仕事を始め、サザエさんの穴子さんなどを担当する一方ナレーションや吹き替えを中心に活動していましたが、2000年以降アニメやゲームへの出演も増えています。

ドラゴンボールやワンピースといったバトルシーンの多い作品への出演へも多い若本さんですが、機動隊時代の経験から、殴られた時の演技ひとつでも顔を殴られた時、腹を殴られた時と演じ分けることができるそうです。一部では胃腸薬の強力わかもとにちなんで、強力若本とも呼ばれ親しまれています。

独特のセリフ回しと渋く力強い声質、穴子さんの知名度などから、若本さんはニコニコ動画でカルト的な人気を誇っています。ニコニコ動画が大きな盛り上がりを見せた2000年代後半には、若本さんの出演シーンでは「ブルァアア！」というコメントで埋め尽くされ、若本さんの声真似を収録した動画や演じたキャラクター同士を掛け合わせたコラ画像が投稿されるなど話題になりました。

ニコニコ動画では若本さんの真似をすることを意味する「若本る」という造語も生まれました。基本的には若本さんへの親しみや敬意によるものですが、若本さん自身はギャグキャラクターとして扱われることを快く思っていないという話もあり、ファンの中でも不快に思う人もいるので使う際には時と場合を選ぶ必要があるでしょう。

日本では見たことがない人はいないといっても過言ではないであろう長寿アニメサザエさん。担当し始めた時期は不明ですが、若本さんは現在まで穴子さんを演じ続けています（放送が始まった1969年当初はドラえもんの旧ジャイアン役で知られるたてかべ和也さんが演じていたようです）。若本さんの代表作であり、誰もが一度は見たことがあるであろうキャラクターです。

ちなみに若本さんは花沢さんのお父さん（花沢金太郎）や磯野フネの兄である石田鯛造を演じていたこともあります。なお、現在は石田鯛造は沢木郁也さんが担当しています。

1982年から1987年にかけて刊行され、累計1500万部を超える田中芳樹先生のベストセラーSF小説である銀河英雄伝説。若本さんは1988年から2000年までOVAを中心として展開されたアニメにおいて、銀河帝国の提督オスカー・フォン・ロイエンタールを演じました。コミカルな穴子さんとは正反対ですが、渋く威厳に溢れるオスカーもまた若本さんの代表作の1つに数えられています。

ドラゴンボール、スラムダンクと共にジャンプ黄金期を支えた冨樫義博先生の幽遊白書。若本さんは暗黒武術会編で登場する、六遊怪チームの酎（画像左）を演じました。暗黒武術会における主人公幽助の初戦の相手で、得意の酔拳で激しいバトルを繰り広げます。敵として登場しつつも豪快で気のいい兄貴分といった性格で、こちらも穴子さんからは想像もつきませんが、この頃から豪快なキャラクターを得意としていたようです。

若本さんは蔵馬と飛影の盗賊時代の仲間である剛鬼の声も担当していました。子供の魂を好み、盗み出した餓鬼玉を使って次々と奪った魂を食べていましたが、幽助に口の中に霊丸を撃ち込まれ逮捕されました。主な出番は序盤のみですが、その後も回想シーンで何度か登場しています。

今や国民的人気作品となったワンピース。テレビアニメは放送20周年を控え、コラボイベントなどでたびたび注目を集めていますが、若本さんはテレビアニメ版ワンピース放送に先駆けてジャンプ・スーパー・アニメツアー'98(ジャンプフェスタ)で上映された「ワンピース 倒せ！海賊ギャンザック」に出演していました。若本さんが演じたのはジャンプフェスタ版ワンピースオリジナルの敵ギャンザック（画像右下）です。

ルフィ役の田中真弓さんを始め、多くのベテラン声優が出演しているワンピースですが、意外なことに若本さんはテレビアニメ版ワンピースには出演していません。ワンピース、若本さん共に根強い人気を誇っているだけに、テレビアニメ版ワンピースへの出演を望む声も多く上がっています。また、ワンピースのファンの間では、若本さんがワンピースに出演するとしたらどのキャラクターかという予想も盛り上がっているようです。

1998年から1999年にかけて放送されたSFアニメカウボーイビバップ。若本さんは賞金稼ぎの主人公スパイクの宿敵であり、巨大チャイニーズマフィアの幹部であるビシャスを演じました。好戦的で冷酷な性格で、かつて仲間でありながら裏切ったスパイクに強い憎悪と殺意を抱いているという、若本さんの声が映えるキャラクターです。

1991年にアーケードゲームとして登場し、日本中のゲームセンターを席捲した格闘ゲームストリートファイターII。若本さんはストリートファイターIV、CAPCOMvsSNKシリーズ、Cancom Fighitig JAM、グランブルーファンタジーとのコラボでベガを演じています。力強く貫禄溢れる若本さんの声は、ストリートファイターシリーズのみならず格闘ゲームにおけるボスの代名詞ともいえるベガにぴったりです。

2000年にアニメが放送され、現在の萌え4コマや日常系の人気の走りとなったあずまきよひこ先生のあずまんが大王。若本さんは天才少女ちよちゃんのお父さんを演じました。元々は夢の中の存在で、画像のようにオレンジ色のネコに似た姿をしていますが、空を飛べたり銃弾を跳ね返したりと不思議な能力を持っています。謎めいた生態に若本さんの演技が加わり、シュールな笑いを誘いました。

2006年から2008年まで放送されたアニメD.Gray-manでは、若本さんは黒の教団のエクソシストの1人であるウィンターズ・ソカロ元帥を演じました。戦死した弟子を悼むどころか情けないと言い放ち、趣味は殺し合いという残忍な人物で恐ろしい外見をしていますが、スタッフから「好きにしていい」とのお墨付きをもらった若本さんのアドリブにより視聴者の興奮と笑いを呼びました。

2003年から2006年まで放送された、雷句誠先生原作のアニメ金色のガッシュベル!!では、若本さんはビクトリーム、通称華麗なるビクトリーム様を演じました。画像の通り頭と体がV字型をしており、V字に異様なこだわりを持っていますが、ふざけた外見に反して確かな強さも兼ね備えているというキャラクターです。また、登場回数は少ないものの高い人気を誇っているキャラクターでもあります。

チチをもげ！など一度聴いたら忘れられないキャラクターソングでも知られている金色のガッシュベル!!ですが、ビクトリームにも持ち歌があります。タイトルは「ベリーメロン～私の心をつかんだ良いメロン～」。タイトルの通りメロンへの愛を力強く歌い上げています。お馴染みの「ブルァアア！」もあり、2000年代後半のニコニコ動画では穴子さんやセルと共に人気となりました。

2004年に放送されたアニメニニンがシノブ伝。若本さんは主人公シノブのお目付け役である音速丸を演じました。アニメ化前の2003年にもドラマCDが誌上通販限定でリリースされており、アニメとは別のキャストが出演していますが、原作者の古賀亮一先生のリクエストにより音速丸は若本さんが続投となったそうです。

黄色い球体に手足と羽が生えた一見すると可愛らしい外見ですが、「趣味で鷹をやってる」という謎の生物です。さらに画像のような2メートル近いマッチョ体系に変化したり、本来の仕事である忍者の教育の代わりにセクハラかオタク談義ばかりしていたりするのに加えて、若本さんのアドリブにより強烈なキャラクターに仕上がっています。

若本さんは声優だけでなくナレータとしても活躍しています。代表的な番組は、2004年から放送されている松本人志のすべらない話。独特の発音のタイトルコールは聞いたことがある人も多いでしょう若本さんは嵐にしやがれ、投稿！特ホウ王国などのバラエティ番組以外にもCMのナレーションも多く務めているので、若本さんの名前や出演作を知らなくても無意識のうちに声を聞いているということもあるはずです。

2005年に第1作がCAPCOMから発売され、アニメ、舞台、実写映画と広くメディアミックスも行われている戦国BASARAシリーズ。若本さんが演じているのは魔王と呼ばれ恐れられる織田軍の総大将信長です。恐れ知らずの非情な人物として描写されることの多い織田信長ですが、BASARAでもそういった性格付けがされており、まさに若本さんの得意とするイメージのキャラクターではないでしょうか。

原作は最終章に突入、8月には実写映画第2弾の公開も控えてますます盛り上がりを見せる空知英秋先生の銀魂。若本さんは警察庁長官の松平片栗虎を演じています。画像の通り渋い外見に加え、面倒見がよく真選組からはとっつぁんと呼ばれ慕われる一方、娘の栗子を溺愛しチャラ男の彼氏を暗殺するために真選組を駆り出して振り回したりもする、何とも銀魂らしいキャラクターです。

若本さんがキャスティングされたのは、空知先生が監督と雑談していた時に「とっつぁんの声は穴子さんの人がいい」と言ったことからだそうです。若本さんの＝渋くてかっこいい男性キャラクターというイメージが定着していることの表れと言えるエピソードです。

2006年から2008年に放送されたアニメが人気を博し、劇場版3部作も制作されたコードギアス 反逆のルルーシュ。若本さんが演じたのは、ブリタニア帝国の第98代皇帝であり、主人公ルルーシュの実父でもあるシャルル・ジ・ブリタニア皇帝です。カリスマ性に満ちた君主で、ルルーシュの天敵として立ちふさがる、威厳に満ちたキャラクターに若本さんの声がマッチしています。

人気声優による童話や怪談の朗読CDを発売しているDEARSからは、「若本規夫の百人一首」と題した朗読CDが発売されており、タイトル通り若本さんの声で百人一首が楽しめます。この他、Come across ～DEARS朗読物語～Vol.1 日本の昔話、DEARS怪談物語～小泉八雲の章～、若本規夫の雑学語録100といったDEARSの作品にも若本さんが参加しています。

2010年に発売され、2018年までに4度に渡ってアニメ化された人気の乙女ゲームうたの☆プリンスさまっ♪にも若本さんが出演しています。若本さんが演じたのは、早乙女事務所の社長にして早乙女学園の学園長であるシャイニング早乙女。かつては代表曲が2000万枚の売り上げを記録した伝説のアイドルで、現在は新たな才能の育成に努めていますが、規格外れの言動で周囲を振り回す人物です。

うたの☆プリンスさまっ♪のファンディスクAmazing Ariaでは、若き日のシャイニング早乙女（画像後列右）を攻略することができます。若本さんはアンジェリーク 魔恋の六騎士のマクシミリアス役、学園特救ホトケンサーのヅケホルマリン役などで乙女ゲーに出演していますが、いずれもサブキャラクターなので、シャイニング早乙女は貴重な若本さんボイスの攻略キャラクターと言えます。

2017年9月から放送中の平成ライダー19作目にあたる仮面ライダービルド。3人目の仮面ライダーである猿渡一海が仮面ライダーグリスに変身する時に使う、スクラッシュドライバーのシステム音声を担当しているのも若本さんです。若本さんの声はグリスの武器ツインブレイカーや仮面ライダークローズの強化アイテムであるクローズマグマナックルにも使用されています。

若本さんは2008年に放送された仮面ライダーキバでも、劇場版に登場するアークキバットの声を担当していました。猿渡役を演じているのがキバの主演だった武田航平さんということもあり、これはキバ10周年を意識しているのでは？と喜びの声が上がっています。また、若本さんは星獣戦隊ギンガマンのナレーション、ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国の鋼鉄将軍アイアロン役でも特撮作品に出演しています。

独特の絵柄と全方面に喧嘩を売る作風でクソマンガとして人気を獲得した大川ぶくぶ先生の4コマ漫画ポプテピピック。2018年に放送されたアニメは毎週声優が変わる上、AパートとBパートで声優だけを変えて同じ内容を放送するという手法で話題になりました。若本さんは第3話Bパートでピピ美（画像左）を演じました。ポプテピピックとはいえ、若本さんのまさかの女子高生役です。

ポプテピピックには数えきれない程のネタが仕込まれているのですが、第3話では若本さんがストリートファイターシリーズでベガ役を演じていたことから、画像のようにピピ美がベガの衣装を着るというシーンもありました。また、ポプ子とピピ美役の声優は何らかの縁がある人同士がキャスティングされており、第3話Bパートのポプ子役は中尾隆聖さんでドラゴンボール繋がりとなっていました。

画像のように渋く威厳のあるキャラクターを演じることが多い一方で、マスコットや人外のキャラクターも担当しそのインパクトから話題になってきた若本さん。異色の経歴や独特の台詞回しに注目が集まることが多いですが、その演技力は確かでいくつもの脇役、悪役をこなし作品を彩ります。70歳を超えても若々しい声と体を保ち続ける若本さんのますますの活躍が期待されます。