2019年06月04日公開
2019年06月04日更新
新世界よりの原作小説・漫画・アニメの評価まとめ!海外での感想は?
超能力の出現による新たな文明を描いた貴志祐介の近未来SFホラー小説「新世界より」。重厚な世界観と衝撃的な結末で話題を呼び、日本SF大賞を受賞しました。アニメ版は海外でも評価が高く、精密に構築された世界観と深いストーリーは多くの議論を巻き起こしました。この記事では新世界よりの原作小説、アニメ版、そして漫画版それぞれの特徴や、国内そして海外での評価感想を紹介していきます。
目次
新世界よりとは?
新世界よりは超能力の出現による新たな文明を描いたSF作品です。様々な衝突の末、呪力を持った人類が新たに築き上げた社会とはどんなものなのか。物語は歪な均衡の上に成り立つ社会に対し、少しずつ疑問の目を向けていく少女、早季の視点で描かれています。圧倒的な想像力で描かれた貴志祐介の「新世界より」。この記事では新世界よりの原作小説、アニメ版、漫画版の評価や感想を紹介していきます。
新世界よりの作品情報
新世界よりの原作小説、アニメ版、そして漫画版それぞれの特徴や情報について以下で紹介していきます。
新世界よりの原作情報
新世界よりは2008年に刊行された貴志祐介のSF小説が原作です。上下巻2冊構成で1000ページ超が書き下ろしされ、第29回日本SF大賞も受賞しています。原作者の貴志祐介は多重人格を描いた「ISOLA」や、保険金殺人を描いた「黒い家」、サイコパス教師を描いた「悪の教典」などほとんどの作品が映像化されています。本作「新世界より」もまた漫画化、アニメ化などメディアミックスされました。
2011年から新世界よりの前日譚となる「新世界ゼロ年」が小説現代で連載されています。小説現代は現在休刊となっていますが、新世界ゼロ年の最新作は小説現代のホームページで公開されています。
新世界よりの漫画情報
漫画版の新世界よりは及川徹作画で別冊少年マガジンにて2012年から2014年にかけて連載されました。ストーリーの時系列やキャラクターの設定、一部のキャラクターが登場しないなど、原作小説から大きく改変がされています。肉体的接触を促すことで精神安定を図るという原作設定から、同性同士のエロティックなシーンが多く登場し、漫画版はそこが大きな特徴となっています。
新世界よりのアニメ情報
アニメ版の新世界よりは2012年から2013年にかけて放送されました。キャッチコピーは「偽りの神に抗え」。原作小説と同じく三部構成で、全25話となっています。ストーリーは原作小説を忠実に再現しており、映像作品ならではの演出で物語の不気味さや心情の動きがよりわかりやすく表現されています。主人公早季の声を務める声優種田梨沙、彼女が歌うエンディング曲「割れたリンゴ」も高く評価されています。
新世界よりのあらすじ
舞台は1000年後の日本。人類は呪力と呼ばれる念動力を身につけ、バケネズミと呼ばれる生き物を使役しています。主人公の早季は注連縄に囲われた集落、神栖66町で暮らしており、注連縄の外には「悪鬼」、そして「業魔」がいるとされ、注連縄を超えて外に出ることは固く禁じられていました。子供達は12歳になると呪力に目覚め、和貴園と呼ばれる小学校を卒業し、全人学級に進学します。
12歳になった早季にも呪力が発現し、彼女も全人学級に進学します。全人学級で同級生だった覚、瞬、真理亜、守と再会し、グループで夏季キャンプに参加します。そこで5人はミノシロを模した化け物、ミノシロモドキと遭遇。しかしミノシロモドキは化け物などではなく、国立国会図書館つくば館の端末機械だということが判明します。彼女たちはミノシロモドキから悪鬼、そして業魔の正体、そしてこの社会の真実に触れてしまいます。
禁断の知識に触れてしまった5人は、現れた僧侶・離塵によって呪力を封じられてしまいます。しかし呪力を封じられ連行される途中、外来種のバケネズミによる襲撃を受け、離塵は風船犬によって殺されてしまいます。早季と覚はその後外来種のバケネズミ「土蜘蛛コロニー」、そして彼らと戦争をしている「塩屋虻コロニー」、「大雀蜂コロニー」と出会い、バケネズミの社会について知ることになります。
バケネズミの闘争に巻き込まれる最中、早季は大人達の儀式を真似て、覚の呪力を復活させます。大雀蜂コロニーに保護されたあと、大人達に引き渡されることを恐れて逃走し、瞬達と合流、瞬の呪力も復活させます。神栖66町に戻ったあと、大人達から面談を受けますが、処分されることはありませんでした。
2年後、14歳になった早季達。瞬の様子がおかしくなり、恋人の覚のことも避けるようになります。学校に来なくなった瞬を心配した早季は瞬の家を訪れますが、彼の家の周囲は異形化していました。瞬は自分が呪力が漏れ出し周囲を歪ませてしまう業魔となってしまったことを早季に告げます。そして瞬は歪んだ地面に飲み込まれてゆき、命を落としてしまいます。
その後瞬の存在は町からも、学校からも、記憶からも消えてしまいます。早季は自分のグループにいる稲葉良に違和感を感じ、グループにいたのは違う誰かだったのではないかと考えますが、それが誰だったのか思い出せません。早季たちは覚の祖母、倫理委員会の議長富子に呼び出しを受けます。そこで早季は自分が富子の後継者候補であることを告げられます。
成績が振るわない守は、自分が処分されてしまうのではないかと怯えて家出をします。彼の話を聞いた真理亜は、守とともに町を離れることを決意します。早季と覚は富子から今戻ってくれば処分することはないと言われ、2人を探し塩屋虻コロニーにたどり着きますが、すでに真理亜たちはそこを離れていました。早季と覚は塩屋虻コロニーがまるで人間社会のように発展していることを目にし、不気味さを感じます。
12年後、早季と覚は26歳になり、早季は保健所でバケネズミの研究を、覚は妙法農場で働いていました。傘下にあるコロニーの襲撃をきっかけに、大雀蜂コロニーと塩屋虻コロニーとの間で闘争が起きます。急速に力をつけた塩屋虻コロニーに対し、安全保障会議では懸念が示されます。夏祭り、神栖66町はバケネズミから襲撃を受けます。人間に反旗を翻したバケネズミによって人々は次々と殺されてしまいます。
人間側も呪力を使って反撃に出ますが、バケネズミ側にはある秘密兵器がありました。呪力を持つ子供、悪鬼を有していたのです。早季は悪鬼の容姿からそれが真理亜と守の子供だと確信します。人間は愧死機構によって同じ人間を殺すことができないため、早季たちは1000年前に呪力を持つ人間を殺すために作られた大量破壊兵器「サイコバスター」を探しに大雀蜂コロニーの将軍・奇狼丸の案内で東京に向かいます。
廃墟と化した東京の地下を探索する早季たちは、東京の恐ろしい生き物たちに襲われながらも、サイコバスターを見つけ出します。追ってきた悪鬼にそれを使用しますが、しかし失敗してしまいます。そこで早季はこの子は悪鬼ではないのではないかと気づきます。バケネズミに育てられたため、自分を人間と認識しておらず、愧死機構が人間相手には働かないのです。
奇狼丸が人間に化け、悪鬼の前に立ちはだかり、自分の命を犠牲にして愧死機構で悪鬼を殺します。切り札を失った反乱の首謀者スクィーラは拘束され、報復裁判で永遠に苦しむよう無間地獄の刑が科せられます。その後覚はバケネズミの遺伝子を調べてわかったことを早季に伝えます。バケネズミはネズミが進化したものではなく、呪力を持たない人間が変えられた姿だったのです。
呪力を持たない人間と敵対した時、殺しても愧死機構が働かないように呪力を持った人間達が彼らの姿を変えたのでした。報復裁判で、スクィーラは自分たちは人間だと訴えます。彼は早季たちと同じようにミノシロモドキを捕まえ、そこから知識を得て、人間に反旗を翻すことを決めたのです。10年後、結婚した早季と覚は新たな業魔や悪鬼の出現を危惧しながらも、新しい命と共に未来へ希望を抱いていました。
新世界よりの原作小説に関する感想や評価は?
新世界よりの原作小説に対する感想は評価はどのようなものがあるのでしょうか。以下では実際に読んだ人の感想と評価を紹介していきます。
「新世界より」読了。アクション小説というか、エンタメ小説というか、こういうのは久しぶりに読んだ。たまに読むと面白いもんだなあ。世界観もしっかり作られていて満足した。とにかく奇狼丸が格好良すぎ。これに尽きる。
— kfnks (@kfnks) April 2, 2009
新世界よりの独自の世界観を高く評価する感想が多く見られました。新世界よりでは超能力の出現で変貌した世界をその欠陥を含めて丁寧に描かれています。また身を呈して悪鬼を倒した奇狼丸をかっこいいと評価する声も多く見られました。
『新世界より』を今、読破した。
— りこ (@rkdqj7ca6kpug71) October 2, 2015
前々から気になっていてやっと読めた本だけれど、私は普段SFを読まないため衝撃が強かった。いつもは小説の中だからと一線を引いて読む筈の世界観に引き込まれて、クライマックスに恐怖していた。気分が小説に寄せられて暗くなってるから次は明るい本を読む事にする
ホラー作品としても評価する感想も多く見られました。新世界よりでは集団の幸福のために弱者を淘汰する社会が描かれています。SF作品の多くは未来に起こりうることを想像して描かれていますし、丁寧に構築された世界観だからこそファンタジーでありながらもそのリアルさに恐怖を感じる人が多いようです。
【新世界より】
— 龍神ーTatsukamiー/6.23あに街参加予定 (@Tatsukami0726) May 29, 2019
俺の中で最高の作品だと思う。アニメから入って、原作の小説と漫画も読んだけど世界観が素晴らしい。人間の美しい部分と醜い部分が細かな描写で描かれていて、感動する。アニメからでも小説からでも漫画からでも楽しめる作品。好きすぎて、原作何回も読んでる。続編が来て欲しい。
アニメ版や漫画版も含めて原作小説を評価する感想も見られました。アニメ版では映像として楽しめますし、漫画版はまた違った味わいで楽しむことができます。新世界よりはどの入り口から入っても楽しめる作品かもしれません。
新世界よりの漫画に関する感想や評価は?
新世界よりの漫画版に対する感想は評価はどのようなものがあるのでしょうか。以下で実際に読んだ人の感想と評価を紹介していきます。
『新世界より』原作者「新世界は大人が子供の記憶や感情までも支配するディストピア社会である」
— あまぜん (@naru_rulez) November 20, 2013
アニメスタッフ「新世界はミステリアスで幻想的な世界で少年少女たちに苦難を与える」
漫画版作者「新世界では女の子たちが野外百合エッチしてる」
新世界よりは原作小説、アニメ、漫画でそれぞれやや違った趣向で楽しむことができます。原作小説にもある、精神安定を図るために濃密な性的接触を行うという設定から、漫画版では同性同士のセクシャルなシーンが多々登場します。漫画版ではそういった面でも楽しめると言えるでしょう。
新世界より、ググったらエッチな漫画のキャプチャ?が出てきて、同人誌が引っ掛かってしまったわ…と思ったら公式だった
— 瀬々 (@krung_theppp) July 26, 2014
すでに知られているかもしれませんが、「新世界より」のコミカライズはかなりの百合度です。
— くろ鐘@うさブラック (@belus_belu) May 30, 2015
ボノボ型社会の有益性が主張されてます。
アニメじゃなくて漫画の方が百合度高いです。
どれくらい高いかというと、5000弱くらいですかね。#百合
やや激しい性的表現があることから、漫画版新世界よりを同人漫画のようだと評価する声も見られました。読者層を広げる、また原作小説をなぞるだけではつまらないという作者の意図があるのかもしれません。
新世界よりのアニメに関する感想や評価は?
新世界よりのアニメ版に対する評価や感想はどのようなものがあるのでしょうか。以下では実際にアニメを観た人の感想や評価を紹介していきます。
新世界よりもすごく好き。
— 🦕きょう (@p_kyou) May 22, 2019
悪鬼に追われるところすごくハラハラするし、オチがハマってんなぁって感じ
アニメ見つつ原作を並行して読んでたんだけど、アニメだけではわからない細かい部分を原作で補いつつ、文字だけではわからないビジュアル的な部分をアニメで補うのが最適な楽しみ方だったと思う。
原作小説を読んだ人は、アニメ版でビジュアル面を補えたと評価する感想が多く見られました。アニメ版は原作に忠実に沿ったストーリーなので、小説と並行して読むのもいいかもしれません。
今まで見てきたアニメで何が一番よかった?って聞かれて少し考えたんだけど、多分「新世界より」ですな.....!!!
— れお@ (@TRONT_ROOM) April 11, 2017
これは神作を超えた神作だったな!こういう世界観、新世界より以外で見たことないからそこが凄い!
けっこう知らない人多いいから見たことない人はオススメです〜! pic.twitter.com/L0NWIJ7vt1
「新世界より」のアニメはいちいち説明してないけど原作の細かい設定を拾ってるので、相互に無限ループで楽しめる。アニメではぼかされてるシーンが原作でははっきり描かれてて、それを承知してからアニメを観ると大変味わい深い、というのもお楽しみ。
— きしる◎なお (@xylnao) April 30, 2016
原作と合わせて楽しめるという評価が全体的に多く見られました。映像作品だからこそ表現できる部分と、活字だからこそ表現できる部分とで相互に補い合うことで、新世界よりの世界観をより深く味わうことができるのかもしれません。
新世界よりに関する海外での評価・感想は?
新世界よりのアニメ版は海外でも高い評価を得ています。日本ではやや萌え系にも取れるパッケージビジュアルと内容とのギャップであまり受けが良くなかったとも言われていますが、海外では深い世界観に基づいた内容が高く評価されたようです。以下では実際にアニメ版を見た海外の人の評価や感想を紹介していきます。
これまで見た中で、もっとも奥深い作品だった。ドヴォルザークの交響曲も
効果的に使われてたね。どんな褒め言葉でも言い表せないくらい感銘を受けた。
タイトルにもなっているドヴォルザークの「新世界より」を原曲とした歌曲「家路」。アニメ版ではこの曲が効果的に使われていたと評価する声が海外の人から多数見られました。アニメ版では音の面からも新世界よりの不気味で不安を煽る世界観がしっかりと表現されていたと評価されています。
とんでもない作品だった。恐れおののいたよ。
この陰鬱ながら込み入った物語が大好き。スクィーラが可哀想と思ったのは私だけかな?
人間とバケネズミ、白黒が安易にはつけられないストーリーは、海外でも多くの議論を呼んでいました。政治的暗喩を含んだ興味深い作品だと評価する海外の人も見られました。
これは、過小評価されている最高の作品だと思う。
これほど素晴らしいストーリーの作品には、いまだにお目にかかった事が無いね。
日本でそれほど成功しなかったのが、残念でならない。
日本のアニメランキングなどを見て、低い評価に落胆する声も海外で多く見られました。海外では全体的にストーリーの質の高さを評価する声が多く見られました。
新世界よりのアニメの魅力
海外でも評価の高かったアニメ版新世界より、その魅力はどんなところにあるでしょうか。アニメ版新世界よりの魅力を3つの点から紹介していきます。
アニメの魅力①ホラーの演出
新世界よりのアニメ版は映像作品だからこそできるホラー演出が魅力です。原作小説もSFホラー作品ではありますが、ネコダマシやバケネズミ、悪鬼、業魔など、映像で見せられることでよりその恐ろしさが分かりやすくなっています。また全体を流れる不穏な空気、背景に流れる歌曲「家路」が物悲しさを演出しています。
アニメの魅力②原作の再現
アニメ版のストーリーは原作を忠実に再現しています。原作小説が1000ページを超える長編のため、細かい部分は省かれてはいるものの、活字だけでは読み取りにくい部分を映像としてアニメで補うことができます。
アニメの魅力③幸福な社会
新世界よりは近未来を舞台にしており、一度滅びかけた文明を新たに作り直した社会が描かれています。呪力によって滅びた世界から、呪力を持ってどう幸福な社会を実現するか。進化はしたものの、人間の欲深さや弱さが変わったわけではなく、そうした意味で新世界よりは私たちの現実の世界と照らし合わせて人間のあり方を改めて考えさせられる作品です。
新世界よりの評価まとめ
この記事では新世界よりの原作小説、アニメ版、漫画版の国内での評価、そして海外での評価感想を紹介しました。いずれも世界観を評価する声が多く、アニメ版は特に海外で高い評価を得ていました。
それぞれのメディア作品で異なる良さがあり、原作に忠実なアニメ版では映像作品ならではの絵や音での世界観を楽しむことができますし、漫画版では原作設定を活かしたエロティックな面を楽しむことができます。まだ新世界よりをご覧になっていない方は、どの入り口から入ってもそれぞれの良さで新世界よりの世界を楽しむことができるでしょう。