2018年10月23日公開
2018年10月23日更新
火の鳥 鳳凰編のあらすじ紹介!残酷な輪廻の物語のラストと感想は?【手塚治虫】
「漫画の神様」手塚治虫の代表作にしてライフワークとまで呼ばれている作品が「火の鳥」です。「火の鳥」は過去と未来を行き来する壮大なサーガとして知られていますが、12の長編・中編・短編から成っています。その中でとりわけ傑作であると評価が高いのが「火の鳥 鳳凰編」です。何故「鳳凰編」が名高いのでしょう?ここでは「火の鳥 鳳凰編」のあらすじをラストまで紹介します。手塚治虫が「鳳凰編」に込めたメッセージとはいったいどんなものだったのでしょうか?
目次
火の鳥 鳳凰編のあらすじやラストを徹底紹介!
「漫画の神様」と称される手塚治虫の代表作にしてライフワークとまで呼ばれている作品が「火の鳥」です。「火の鳥」は実に30年以上に渡り掲載誌を変えて発表され続け、過去と未来を行き来する手塚治虫流大河ドラマとして知られています。そして、長編・中編・短編合わせて12の編から成る壮大なサーガが「火の鳥」です。
数多い「火の鳥」のエピソードの中でとりわけファンの間で最高傑作であるとの声が多いのが「火の鳥 鳳凰編」です。手塚治虫は「鳳凰編」の中で輪廻転生を描き切り、衝撃的なラストまで一気に読ませる説得力があると評されています。ここでは「火の鳥 鳳凰編」のあらすじをラストまで紹介します。手塚治虫が「火の鳥 鳳凰編」に込めたメッセージに迫っていきます。
火の鳥 鳳凰編の作品情報
「火の鳥 鳳凰編」は手塚治虫が自ら創刊した漫画雑誌「COM」に1969年8月号から1970年9月号まで連載されました。「火の鳥」は「COM」の看板作品として同誌のラストまで連載され続けました。「COM」は手塚治虫はじめ石ノ森章太郎・永島慎二・松本零二など名だたる漫画家が作品を執筆し、また新人漫画家の発掘も行い、あだち充・竹宮恵子・能條純一らを輩出したことでもよく知られています。
火の鳥鳳凰編のあらすじは奈良時代の日本を舞台にしています。不幸な事故で生まれた直後に隻眼・隻腕となってしまい世の中を恨んで盗賊になった青年と国の特命で命がけで火の鳥の像を彫らんとする仏師の2人を主人公として過酷な時代を生き抜いた2人の人生、さらに輪廻転生をラストまで描き切ったとしてファンのみならず高い評価を得ています。1986年にアニメ映画化、1987年にゲーム化されています。
火の鳥作者の手塚治虫について
ここでは「火の鳥」の作者である手塚治虫について紹介します。手塚治虫は60年の生涯で約700タイトルの作品を描き、枚数にして約15万枚にものぼると言われています。戦後の日本漫画会のパイオニアでもあり、飽くなき創作意欲をしてやがて「漫画の神様」とまで呼ばれるようになりました。手塚治虫とはどのような漫画家なのでしょうか?
手塚治虫プロフィール
手塚治虫は1928年大阪府に生まれました。幼少時に兵庫県宝塚市へと引越します。手塚治虫は宝塚歌劇団の大ファンで、幼少年期に観た宝塚歌劇が後の作風に影響を与えたことがよく知られています。そして、手塚治虫はディズニーのアニメ映画の大ファンであったことも有名です。単行本作家時代に「バンビ」や「ピノキオ」を描き自らを「ディズニー狂い」とまで呼んでいました。
手塚治虫は大阪帝国大学付属医学専門部在学中の1946年に「マアチャンの日記帳」でデビューしました。1947年発表の「新宝島」の大ヒットで有名となり単行本作家として活躍した後、1954年発表の「ジャングル大帝」以降は雑誌連載中心の執筆活動へと移行していきました。
「ジャングル大帝」以降も週刊誌・月刊誌問わず、ジャンルを問わず「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「ブラック・ジャック」「アドルフに告ぐ」など多くの代表作を描き続けましたが、1989年に胃がんで亡くなりました。その旺盛なアイデア・創作意欲に触れた関係者やファンによっていつしか「漫画の神様」と称えられるようになりました。
手塚治虫の代表作
ここでは手塚治虫の代表作をいくつか紹介します。画像や簡単なあらすじを交えながら「漫画の神様」の魅力を浮き彫りにしていきます。
鉄腕アトム
「火の鳥」「ジャングル大帝」と並ぶ知名度を誇っていると言われている代表作の一つが「鉄腕アトム」です。前身の「アトム大使」を入れると1951年から1968年まで実に18年近くにわたって「少年」に連載されました。日本初の国産テレビアニメとしても有名です。また、それ以前にも実写化されており、その後も2度アニメ化、さらにはCG映画化されたことで連載時を知らない世代にもファンを増やし続けています。
科学省長官であり、天才科学者である天馬博士は交通事故死した息子の飛雄の代わりとして科学省技術の粋を集めてロボットアトムを作りました。しかし、あくまでロボットであり息子にはなり得ないと悟った彼はアトムをサーカスに売り払います。アトムはお茶の水博士に助けられました。アトムは人間とロボットの違いに悩みながらも様々な事件に立ち向かっていくのです。テレビアニメ版の悲劇的なラストも話題になりました。
マグマ大使
「マグマ大使」は1965年から1967年まで少年画報に連載されました。1966年には実写化され日本初のカラー特撮作品として知られています。また、1992年には当時のリメイクブームを受けてOVA化されています。善悪が入り乱れる大河ドラマを得意とする手塚治虫作品には珍しく勧善懲悪の要素が強いストーリーだと言われており、それ故に漫画家の島本和彦をはじめ「マグマ大使」を好きな作品に挙げるファンも多いです・
「マグマ大使」の簡単なあらすじ紹介です。「宇宙の帝王」ゴアはその超能力を駆使していくつもの惑星を手中にしてきました。ゴアは地球を我がものにしようと地球人に宣戦布告しました。地球の創造主であるアースは自ら創ったロケット人間マグマにゴアと戦うように命令します。また、アースは勇敢な少年マモルにマグマを託し、マモルはアースからもらった笛でマグマを呼んでゴアとの決戦に臨むのでした。
バンパイヤ
1960年代後半になると手塚治虫はそれまで以上に闇の部分を強調した作品を量産するようになりました。「バンパイヤ」はそうした手塚作品の代表作だと言われています。第1部が1966年から1967年まで「週刊少年サンデー」に第2部が1968年から1969年まで「少年ブック」に連載されました。また、アニメ合成実写化されており水谷豊かのデビュー作として知られています。なお、第2部は未完でラストは描かれていません。
木曽の山奥で暮らしていたトッペイ少年は漫画家になりたくて上京し、虫プロに押しかけて給仕として雇われました。しかし、彼は夜中に満月を見ると狼に変身する特異体質の持ち主でした。彼の集落は何かのきっかけで動物に変身する「バンパイヤ」だったのです。悪魔のように知的で冷酷な少年ロックはトッペイのことを知り、バンパイヤであることの弱みを握って、彼を自らの野望成功のための道具として使うようになります
MW(ムウ)
「MW(ムウ)」は1976年から1978年まで「ビッグコミック」に連載されました。数多い手塚治虫作品の中でも異彩を放つストーリーで知られています。同性愛と猟奇殺人事件を題材にしたドラマ展開は当時のファンの度肝を抜いたと言われています。またラストも衝撃的でラスト1コマでの大どんでん返しも高く評価されています。2009年には実写映画化され、玉木宏と山田孝之のダブル主役で大きな話題となりました。
エリート銀行マン結城美智夫には連続殺人犯という裏の顔がありました。彼は事件後教会に行き犯した罪を懺悔するのですが、その懺悔を聞く神父賀来巌と結城には肉体関係がありました。2人は少年時代にある島に貯蔵されていた毒ガスMWに侵された生き残りでした。ガスの影響で凶暴な人格となってしまった結城は凶行をエスカレートさせていき遂にはMWを奪い全世界にばら撒くという野望を実行に移すのでした。
ネオ・ファウスト
「ネオ・ファウスト」は1987年から1988年まで「朝日ジャーナル」に連載されました。連載中に手塚治虫が亡くなったために同時期連載の「グリンゴ」「ルードウィッヒ・B」とともにラストが描かれなかった未完の絶筆として知られています。また、ゲーテの「ファウスト」を基にして日本の近代史を描いたことでも話題になりました。
「ネオ・ファウスト」の簡単なあらすじです。1970年代学園闘争の渦中にあったNG大学の一ノ関教授は生命の秘密が解き明かせずに人生を終えようとしていることに絶望して自殺しようとしますが、そこに女悪魔メフィストが現れて生命の本質と宇宙の謎を解き明かすべく自身を若返らせる契約を結びます。一ノ関が満足した人生を送れたら対価として彼の魂をメフィストに渡す契約でした。
火の鳥 鳳凰編の登場人物
ここでは「火の鳥 鳳凰編」の登場人物を画像つきで紹介します。「火の鳥 鳳凰編」は奈良時代の日本を舞台にした物語で、奈良の大仏建立など当時の政治状況についても描かれています。それ故に実在の人物も登場しており、それが「火の鳥 鳳凰編」のストーリーにリアリティを与えていると言われています。 簡単なあらすじを交えて紹介していきます。
我王
「火の鳥 鳳凰編」の主役の1人が我王です。我王は生まれたばかりの時に父親の転落事故に巻き込まれてしまい隻眼・隻腕となってしまいました。そこから村中の人々から迫害されるようになり、ある日嫌がらせをされた相手を殺したことから終われる身となり、殺人と強盗を繰り返しながら盗賊の首領となりました。
盗賊の首領となった我王はさらに強盗殺人を繰り返しました。しかし、妻である速魚を過ちで殺してしまったことで激しく後悔し、捕まったところを良弁僧正に救われ、良弁僧正の旅のお供をすることで次第に人間としての良心に目覚め、悟りを開いていくことになるのです。
我王は盗賊時代に重度の鼻の病を患いました。病は治りましたが、鼻が醜く大きくなってしまいました。物語内で明確に語られてはいませんが、その見た目から我王は「火の鳥 黎明編」に出てくる猿田彦の子孫ではないかと言われています。そして、彼の子孫もまた「火の鳥」サーガのラストまで深く関わっていくこととなるのでした。
大和の茜丸
大和の茜丸は都の仏師です。弥勒菩薩像を見に行く旅の途中で我王と出会い、彼に右手の筋を切られてしまします。一度は仏師の道を諦めかけますが、無事だった左手を使って再起を果たします。その後時の権力者であった橘諸兄の依頼で鳳凰の彫像を彫る特命を受けますが、3年で彫らなければ首を刎ねられるという理不尽な命令でした。
茜丸は鳳凰の手がかりを掴むために筑紫国へと向かいました。そこでブチという少女と出会い心を通わせます。しかし、鳳凰彫像完成期限の3年を迎え、結局彫ることができなかったので捕らえられてしまいました。処刑直前にもう一人の権力者吉備真備に救われて、正倉院の中で鳳凰、火の鳥に出会うのでした。
速魚
速魚は茜丸の妹として、彼を傷つけた我王を追って茜丸の手当てを頼みましたが、我王はそれを断り彼女を誘拐し強引に妻としました。強盗殺人を繰り返す我王に対しても常に優しい態度で接しており、冷酷で無慈悲な我王ですらも速魚の前ではおとなしくしていました。
速魚は我王が鼻の病に倒れた時に、彼の誤解を招いたことで切り殺されてしまいます。その時自分が実は茜丸の妹ではなく、最初から我王のことが好きで近づいたことを告白しました。彼女の正体もそこで明らかになりますが、それを知った時我王の中で激しい後悔の念が走り、同時に人間としての慈悲の心が芽生え始めたのでした。
ブチ
茜丸が火の鳥の情報を追い求めて筑紫国にやって来た時に出会った少女がブチです。ブチは年貢米を盗み食いしていた罪で石子づめという石で生き埋めにされる罰を受けていました。そこを茜丸に助けられましたが、今度は茜丸をだまして命の危険に晒してしまいます。それでも怒らずブチを気遣う茜丸に次第に惹かれていきます。茜丸もブチの隠れた清い心に惹かれ、2人は心を通わせていきます。
茜丸はブチの外面と内面の美しさを表現する為に彼女をモデルとして仏像を彫っていました。仏像は見事に完成しましたが、鳳凰彫像完成の期限が過ぎても完成しなかったことで茜丸は役人に捕まって都へと移送されることになりました。ブチは茜丸を引き留めるために身を挺して役人に楯突きましたが、斬られてしまったのです。
良弁僧正
良弁僧正は実在の人物です。史実では聖武天皇より東大寺大仏建立の命を受け、それに尽力したことによって東大寺の初代別当となりました。「火の鳥 鳳凰編」では大仏建立に絡む政治事情に嫌気が差し我王を引き連れて諸国を旅し、その中で輪廻転生や人の生きる道を身をもって我王に教え込む師匠的存在として描かれており、後に我王は良弁を「師」と発言して仰いでいます。
橘諸兄
橘諸兄も実在の人物です。皇族出身の公卿として政治的手腕を揮い、聖武天皇の手助けをしました。大伴家持と親交があったことでも知られており「万葉集」の撰者とする説もあります。「火の鳥 鳳凰編」では権力を笠に切る人物として描かれていて、茜丸に火の鳥の彫像作成を命じた時も理不尽な要求をしています。
吉備真備
吉備真備も実在の人物です。奈良時代の学者であり公卿です。学者出身の公卿は吉備真備と菅原道真の2人だけです。史実では橘諸兄の抜擢を受けて彼を補佐する立場で聖武天皇の政治を助けましたが「火の鳥 鳳凰編」では橘諸兄と権力闘争をしていて、その流れで茜丸を救い彼に東大寺大仏のデザインから建立の責任者を任せることになります。
火の鳥
「火の鳥 鳳凰編」での火の鳥は他の編で見られるようなその生き血を狙われる存在ではありません。我王と茜丸それぞれの主人公の前に現れて2人に輪廻転生とは何か、人生の目的とは何かと問うていきます。
いわば2人の若者を導く存在として描かれていますが、その導きによって2人は異なった人生、異なった価値観を得ていくことになるのです。
火の鳥 鳳凰編のあらすじをネタバレ!
ここでは「火の鳥 鳳凰編」のあらすじをネタバレで紹介していきます。「火の鳥」サーガの中でも屈指の傑作として名高い「鳳凰編」とはいったいどのようなストーリーなのでしょうか?そしてどのようなラストを迎えるのでしょうか?
不幸な生まれの我王と真面目な茜丸の登場、そして出会い
「火の鳥 鳳凰編」のあらすじ紹介です。我王は生まれてすぐに父親の転落事故に巻き込まれて隻眼・隻腕というハンディを背負ってしまいました。さらには事故の影響で母親もメンタルに異常をきたし、村中から迫害されていました。ある日、我王は自分の力で勝ち取った食物を負けた相手に泥で汚されたことに怒り、怒りに任せて相手を殺しました。ここから我王の盗賊生活が始まります。
我王は殺人後の逃亡途中で焚き火にあたっていた大和の茜丸と出会いました。彼は仏師で弥勒菩薩像を見るために永宝寺という寺を目指していました。我王は真摯に物事に向かう茜丸に苛立ちと嫉妬を感じて、理不尽にも親切にした彼の右腕を斬ってしまいました。我王はそのまま逃亡し、茜丸は命からがら寺へ着きましたが右腕の筋が切れていて器用に動かすことはできないだろうと告げられました。
火の鳥 鳳凰編のあらすじ紹介/我王と速魚
「火の鳥 鳳凰編」のあらすじを紹介します。我王は自分を追ってきた茜丸の妹と称する速魚という女性を連れ去って強引に夫婦の契りを結びました。その後も我王は強盗殺人を続けます。速魚が何のために人を殺すのかと尋ねた時に「殺さなきゃあ俺は金が手に入らねぇ」と答えました。我王は仲間を増やし盗賊の首領となりました。この時期に後の師となる良弁僧正と出会っています。
一方、命が助かった茜丸でしたが右腕の筋を切られたことで仏師の道が途絶えたことで、悲嘆にくれていました。しかし、寺の住職の導きによってやる気を取り戻して左手で仏像を彫る修行に入りました。それは想像を絶する苦行でしたが、彼は失敗を繰り返してもひたむきに打ち込みました。
速魚との別れ、我王の後悔
「火の鳥 鳳凰編」のあらすじを紹介します。我王が盗賊の首領として人々に恐れられていたある日、彼の鼻に異常が起きました。痛みとともにどんどん鼻が肥大していったのです。速魚が作った薬を塗って治療していましたが、子分がこれは薬ではなく毒だと言ったことを鵜呑みにした我王は怒りに任せて速魚を切ってしまいました。致命傷を負った速魚は我王に自分は茜丸の妹ではなく初めから好意で近づいたことを話しました。
鳳凰編のあらすじ紹介です。速魚が絶命すると人の姿は消えました。そこにはテントウムシの死骸がありました。それはかつて我王が逃亡していた時に偶然助けたテントウムシだったのです。そのことを思い出した我王は激しい後悔の念に襲われました。そしてあちこちを彷徨った末にあっさりと捕まってしまったのです。
それまで我王が犯した罪の多さ、罪の重さから鑑みれば当然死刑になるべき状態でしたが、死刑の場へ連行された際に上意によって彼の命は救われました。彼を救ったのは良弁僧正でした。良弁僧正は我王の心に人間らしさが宿り始めていることを見抜いて、自分の旅のお供に我王を抜擢したのでした。その場で良弁僧正は我王に初めて輪廻転生の話をして聞かせました。
茜丸への特命…火の鳥の像を三年で彫れ!
火の鳥鳳凰編のあらすじを紹介します。我王が良弁僧正の弟子となったのと同じ頃、茜丸の元に橘諸兄がやって来ました。彼の目的は茜丸に鳳凰(火の鳥)の彫像を作らせることでした。期限は三年、もし未完成に終わったら茜丸の命は奪われてしまうという内容でした。当然断ることもできずに茜丸は見たこともない鳳凰(火の鳥)を求めて諸国を旅することとなりました。
鳳凰編のあらすじ紹介です。茜丸は思い余って吉備真備邸を訪れました。唐に渡ったことのある吉備真備の所ならば鳳凰(火の鳥)手がかりがあると考えたからです。しかし、彼は茜丸を追い返してしまいました。失意の茜丸は彷徨って偶然通りかかった寺で火の鳥の古文書を読むことができました。古文書は「火の鳥 ヤマト編」の登場人物川上タケルが書いたものでした。それを唯一の頼りに茜丸は筑紫国へと旅立ちました。
我王、悟りへの萌芽/茜丸、ブチとの出会い
火の鳥鳳凰編のあらすじを紹介していきます。我王は旅の途中で行き倒れの男に会います。男は飢え死にしてしまいますが良弁僧正は「お経を読んだって一文にもならん」と我王を突き放しました。失意の我王は狂い病の流行っている集落へと迷い込みます。助けを求める村人に対して何もすることができない彼は無意識のうちに魔除けの像を彫っていました。村人たちは我王に感謝の言葉を言います。彼が初めて人の役に立ったのです。
鳳凰編のあらすじ紹介です。茜丸は筑紫国で石子づめの刑に処せられていた少女ブチを助け出しました。しかし、ブチは恩を仇で返し彼は2度も瀕死の目に遭ってしまいました。それでも茜丸はブチに慈悲の心をかけ続けました。最初はかたくなだったブチも茜丸の優しさに引かれ始めていました。茜丸もそんなブチの内面に隠れていた清らかな心に惹かれ、いつの間にか2人は行動をともにしていました。
茜丸、ブチをモデルに仏像を彫る
火の鳥鳳凰編のあらすじ紹介です。茜丸は追い込まれていました。鳳凰の彫像完成期限が迫っていたからです。ブチは逃げることを勧めますが、茜丸は逃げ切れないと諦念の気持ちが芽生えていました。彼に死んでほしくないと懇願するブチに茜丸は彼女をモデルにして仏像を彫ることを願い出ました。ブチはそれを受け入れて、ここに2人の共同作業が始まったのです。
ブチをモデルにした仏像は見事に完成しました。しかし、鳳凰彫像の完成期限は過ぎてしまいました。茜丸は捕らえられて役人に連行されようとしました。ブチは必死に抵抗しますが役人に切られてしまいました。都に戻った茜丸は処刑寸前で助けられました。助けたのは橘諸兄の政敵吉備真備でした。彼は茜丸の仏師としての腕を買い、鳳凰に拘る彼に正倉院への出入りを許したのです。
輪廻転生/茜丸編
火の鳥鳳凰編のあらすじを紹介します。正倉院の中で茜丸は鳳凰が描かれた図を見つけました。彼は鳳凰を求めて航海へと旅立ちますが、嵐に巻き込まれて命を落としました。すると彼はミジンコに転生しました。ほどなく魚に食われてしまい、今度は亀に転生しました。人間に捕らわれてしまい、今度は小鳥に転生しました。母鳥に連れられて彼は鳳凰、火の鳥を目の当たりにしました。
鳳凰編のあらすじ紹介です。そこで茜丸は目覚めました。今までのことは火の鳥が見せた夢だったようです。鳳凰の姿を目に焼き付けた茜丸は見事な鳳凰の彫像を完成させました。彫像が帝に評価されたことで彼は大仏のデザインを任され、やがて大仏建立の責任者へと出世していくのです。
捕らわれた我王、そして悟りの第一歩へ
火の鳥鳳凰編のあらすじ紹介です。我王は無実の罪を着せられ投獄されてしまいました。我王の無実を証明できる良弁僧正は何故かその場から消えていました。我王は2年間拷問に耐え続けました。ひたすら茶碗のかけらで壁に仏像を彫り続けました。2年経って我王の無実が証明され、彼は娑婆へと戻ってきました。その月日は我王から凶暴さを奪い、彼は大きな悟りへの一歩を歩み始めていました。
良弁僧正との別れ…悟りを開いた我王
火の鳥鳳凰編のあらすじ紹介です。我王は良弁僧正が奥州で即身仏になろうとしていることを知り、国分寺へ向かいました。すんでのところで会話をすることができました。良弁僧正は我王に独自の悟りを開いてほしくてあえて見捨てたと話しました。我王は偉い僧正が即身仏になろうとしていることが理解できないでいました。
我王は即身仏になった良弁僧正と何日も向き合いました。「人が仏になるなら生きとし生けるものはみな仏だ!」我王は遂に己自身の悟りを開くことに成功したのです。彼が目指すものは生きとし生けるものに施しをすることでその手段は仏像を彫ることです。国分寺を飛び出した我王は諸国を行脚し、乞われるままに仏像を彫り続けました。こうして我王の名は国中へ広まっていきました。
一方の茜丸は大仏建立に集中していました。集中し過ぎて当初の目的を見失っていました。国の至る所で日照り、飢饉が発生していました。それを受けて吉備真備は失脚しました。茜丸は橘諸兄に仕えることになりました。地位の安泰に喜ぶ茜丸の前に死んだはずのブチが現れました。助かっていたのです。しかし、俗物になった茜丸にブチは失望してその場を去りました。
火の鳥 鳳凰編のラストは?
ここでは火の鳥鳳凰編のラストを紹介します。2人の若者と輪廻転生とを描き切った傑作である火の鳥鳳凰編はどのようなラストを迎えるのでしょうか?
輪廻転生/我王編
火の鳥鳳凰編のラスト紹介です。我王と茜丸は大仏殿の鬼瓦製作で互いに対決することとなり、久しぶりの再会を果たしました。達観した佇まいを見せる我王に茜丸は焦りを感じ始めていました。製作の場で我王には怒りの感情と怨みの感情が出ていました。これまでの半生を振り返っていたのです。そこに火の鳥が現れ、我王の輪廻転生を見せ始めました。
我王の子孫はいつの時代も苦悩に満ちていました。政治と戦って処刑された者もいれば、世界の終わりを救えずに核戦争で息絶えた者もいました。悲惨な光景を見せられて絶望する我王に火の鳥は力いっぱいその感情を鬼瓦に込めるように諭しました。我王は一心不乱に鬼瓦製作に打ち込みました。一方の茜丸は鬼瓦製作に目的を見出せずに焦るばかりでしたが何とか完成へとこぎつけました。
鬼瓦製作対決の行方は?
鬼瓦対決の結果を問う審査会が行われました。我王の鬼瓦は見る者全てを圧倒しましたが、投票の結果は茜丸の勝ちでした。すぐに異議が唱えられました。八百長であることを恐れた茜丸は我王が過去に盗賊であったことを述べて話を逸らし、我王の右腕を切り落とさせた上で都から追放することに成功しました。
我王と茜丸はどうなった?
その後茜丸は大仏殿の北倉が火事になった際に火を消そうとして巻き込まれて命を落としました。今際の際で彼は火の鳥に出会いますが人間に生まれ変わることはできないと告げられ、その魂は天へと昇っていきました。焼け跡から茜丸の頭部が見つかり、ブチがそれを預かることとなりました。
火の鳥鳳凰編のラスト紹介です。我王は右腕を失いながらも伏見の山奥で自然とともに生きていました。生きるだけ生きて人間の生気を甦らせたいという誓いを立て、口で仏像を彫っていました。そこに茜丸のお骨を持ったブチがやってきました。我王は茜丸を弔うことにしました。
ストーリーが繋がる
我王はその後も実に400年近く生き続けました。「火の鳥 乱世編」に再登場しました。「鞍馬山のテング」と呼ばれ行き場を失った少年たちを導く存在になりました。その中には乱世編の主役である弁太や後の源義経である牛若丸もいました。
火の鳥 鳳凰編の主題歌について
「火の鳥 鳳凰編」は1986年にアニメ映画化されています。時間の制限から我王が途中からあまり登場しないなどストーリーについての評判は芳しくないと言われています。主題歌は当時角川三人娘として知られていた渡辺典子が歌っています。
火の鳥 鳳凰編を観た感想は?
ここでは「火の鳥 鳳凰編」を観た感想をTwitter上でツイートしている方を紹介していきます。SNS上ではどのような感想が挙がっているのでしょうか?
火の鳥の鳳凰編、茜丸の仏師としての人生のピークで夢に見る、火の鳥のとこで毎回泣く
— umi (@s4_1_s5_2) October 19, 2018
茜丸の人生を忘れてしまっても、火の鳥に会いたかった気持ちだけは、まるで火のように小鳥の心に残ってるの切なすぎて…せつねえ… そして二度と人には生まれ変われない茜丸…… 😭
茜丸が辿った人生に涙した方のツイートです。茜丸は二度と人間には生まれ変われない輪廻転生を火の鳥から伝えられたのであまりにも残酷な運命だと語っておられます。
私事ですが、最近手塚治虫の火の鳥読み返しました
— Asungs (@asungs312) November 28, 2017
小学生以来だったんですが、今読み返すと色々感じるものは違いますね
嗚呼素晴らしき哉
特に未来編と鳳凰編が好き pic.twitter.com/h19qbIShKA
大人になって「火の鳥 鳳凰編」を読み返された方のツイートです。子供の頃読んだ作品の感想が大人になって読み返すと変わるということはよく言われています。
今日がまんがの日というのは、手塚治虫の誕生日だからなのだそうです。手塚治虫で、最も凄いと思ったのは「火の鳥・復活編」です。
— ちゃーちゃん(仮名) (@tibe_llO_JOJO) November 3, 2017
でも今読みたいのは、鳳凰編かな。ブチという娘が最高な生き方をしてますよね。
茜丸が、悶々と悩んでる時も……。#マンガの日 #手塚治虫生誕祭 #火の鳥 pic.twitter.com/ww3yV8QoHb
「火の鳥 鳳凰編」のブチに思い入れのある方のツイートです。ブチは鳳凰編の中で特に愛くるしく人気の高いキャラクターであると言われています。
火の鳥 鳳凰編のあらすじやラストまとめ
「火の鳥 鳳凰編」は火の鳥サーガを代表する傑作だと言われており、鳳凰編が一番面白い、一番感動したと評価するファンも多いです。手塚治虫が2人の青年の人生を対比させた意味と輪廻転生の奥深さに是非一度触れてみることをお勧めします。そして手塚治虫が遺したメッセージを感じ取ってみてください。