2018年10月14日公開
2018年10月14日更新
大奥の作者・よしながふみとは?原作漫画のネタバレあらすじや他の作品も紹介
よしながふみ作・漫画「大奥」といえば、「男女逆転・パラレル時代劇」として広く知られています。まだ連載中にもかかわらず、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(2006年)や手塚治虫文化賞マンガ大賞(2009年)などをはじめ多くの賞を受賞し、ドラマ化や映画化もされています。この記事では、漫画「大奥」の作者・よしながふみについて、その他の作品のあらすじ紹介、漫画「大奥」のあらすじをネタバレを含んで紹介していきます。
目次
大奥の作者のよしながふみとは?原作漫画のあらすじをネタバレ紹介!
「男女逆転・パラレル時代劇」として知られている、よしながふみ作・漫画「大奥」。隔月刊誌『MELODY』にて2004年から連載されていています。文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(2006年)や手塚治虫文化賞マンガ大賞(2009年)などをはじめ多くの賞を受賞し、その部分的なあらすじはドラマ化や映画化もされています。
また、よしながふみの「大奥」は海外でも多く翻訳されて出版されており、日本国外からも評価されている作品です。この記事では、漫画「大奥」の作者・よしながふみについて、その他の作品の紹介、漫画「大奥」のあらすじをネタバレを含んで紹介していきます。
大奥の作者のよしながふみとは?
よしながふみプロフィール紹介
漫画「大奥」の作者・よしながふみは、1971年生まれ、東京都出身です。血液型はB型。慶應義塾大学法学部を卒業した後、同大学院法学研究科中退。ペンネームの由来は、女優の吉永小百合と檀ふみからとったそうです。同人サークル「大沢家政婦協会」の主宰者で、しばらくの活動を休止していましたが、2015年のコミックマーケット89より活動を再開しています。
『ベルサイユのばら』のアンドレや『スラムダンク』などの影響を受けながら、青年誌・少女誌などで幅広く活躍しています。ビブロスや芳文社などのボーイズラブ(BL)誌での執筆、ボーイズラブ小説の挿絵なども手がけています。
よしながふみ漫画作品
1994年に芳文社の月刊漫画雑誌『花音』の10月号で『月とサンダル』でデビューします。その後、2001年には『西洋骨董洋菓子店』がテレビドラマ化され、2002年に第26回講談社漫画賞少女部門を受賞します。2006年には『大奥』第1巻で第5回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、2009年には『大奥』で第13回手塚治虫文化賞大賞を受賞しました。
その他単行本化されている漫画作品は、『本当に、やさしい。』『1限めはやる気の民法』『ソルフェージュ』『こどもの体温』『愛とは夜に気付くもの』『彼は花園で夢を見る』『愛すべき娘たち』『それを言ったらおしまいよ』『フラワー・オブ・ライフ』『ジェラールとジャック』『きのう何食べた?』、その他エッセイに『愛がなくても喰ってゆけます。』『あのひととここだけのおしゃべり』などがあります。
よしながふみ作品の作風
一般漫画誌から少女漫画誌、ボーイズラブ漫画誌まで幅広く活動しているよしながふみの漫画作品は、リアルな心理描写と独特な余白の創り出す空気感が評価されています。
かなりの食通で、作品内にも度々美味しそうな料理が登場してきます。『西洋骨董洋菓子店』や『きのう何食べた?』などの食べ物を題材にした作品は言うまでもなく、その他の作品でも美味しそうな料理の描写は欠かすことなく出てきます。また、メガネが好きで、作品内には必ず1人はメガネをかけた人物を登場させるようにしているそうです。
またBL誌連載作品だけではなく、青年誌や少女誌連載作品にも、同性愛者が登場する作品が多いのも特徴です。商業誌で活動してからは、自身の商業作品の後日談を同人誌として発表していたこともあり、一部の作品はまとめて単行本化されています。
大奥の原作漫画のあらすじをネタバレ紹介!
よしながふみの「大奥」は江戸時代の徳川幕府の大奥を題材に、大胆にも歴史上では男性である人物を女性に、女性である人物を男性に置き換えた「男女逆転時代劇」です。当時の文献「カピタン本国報告」にある、「御簾越し家光拝謁し、少年のような声だと思った。拝謁の場は若い男性ばかり同座していた。市中で女性が多く働いているのを見た」などの史実と、フィクションを巧みに織り交ぜたストーリー構成となっています。
以下は、よしながふみ原作漫画・男女逆転時代劇「大奥」のあらすじを、巻数ごとにネタバレを含んで紹介していきます。ネタバレを多く含むあらすじ内容となりますのでご了承ください。
よしながふみ「大奥」の原作漫画1巻あらすじ〈ネタバレあり〉
時は江戸時代の初め頃、「赤面疱瘡」という、若い男だけがかかりほぼ死に至るという恐ろしい奇病が、日本全土に広まったことから物語は始まります。高熱を出し、全身に広がった真っ赤な発疹が爛れて膨れ上がり短期間で10人に8人は死に至る「赤面疱瘡」。この病の流行から80年ほど経った時代には、男子の人口は女子のおよそ4分の1で安定します。
しかし、あまりに男子の生存率の低さのため、男の子は子種を持つ宝として大切に育てられ、婿を取ることは武士や裕福な商人にのみ許された特権になっていきます。そして当然、女子がすべての労働力の担い手となり、あらゆる家業が女子のみに受け継がれることになります。それは徳川将軍家も例外ではありませんでした。
3代将軍・徳川家光以降、将軍職も代々女子が継いでいました。そして江戸城の本丸の大奥には、希少な男子を集めて、俗に美男三千人などと言われる女人禁制の男の城・「大奥」が作られたのです。
時は下って7代将軍家継の時代の正徳6年(1716年)、貧乏旗本の息子・水野祐之進は、幼馴染の薬種問屋の跡取り娘・お信との身分違いの恋に悩み、それを振り切る形で大奥に入ります。俸禄が出る大奥は実家の経済的助けにもなると踏んだ祐之進は、叔父の伝手で御三の間で働くことになり、呼び名として水野を名乗ることになります。
男たちの権力争いやいじめが渦巻く大奥に失望をおぼえつつも、持ち前のきっぷの良さと剣術の腕前で切り抜ける水野。その姿が、大奥総取締役・藤波の目にとまります。そして7代将軍・家継が没し、8代吉宗が将軍になると、藤波は水野を将軍に目通りできるお目見え以上の御中臈に取り立てます。その後大奥の総触れの際、将軍吉宗の目に趣味のいい裃を着た水野がとまるのです。
総触れの時に将軍に名前を尋ねられたら、その者に夜伽を命じるという意味でしたが、吉宗のように未婚の将軍の場合、初めて将軍の相手をする男子は「ご内証の方」と呼ばれ、将軍の体に傷をつけることになるため死罪になる決まりでした。実家には罪は及ばす十分な見舞金が出るということで、淡々と運命を受け入れる水野。
10日後、江戸城内の片隅で水野の死刑が執行されましたが、それは記録上のことだけで、吉宗のはからいにより、水野は町人・進吉となり、幼馴染で薬種問屋の跡取り娘・お信のところへ戻り幸せに暮らします。一方、吉宗は大奥の華美な贅沢を廃止し、人員を大幅に減らします。そして女が男名を名乗る風習を疑問に思った吉宗は、春日局が命じて記録させている大奥の日記「没日録」を読み始めます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画2巻あらすじ〈ネタバレあり〉
「没日録」は3代将軍・家光が29歳の若さで「赤面疱瘡」で亡くなる寛永9年(1632年)から始まります。それから6年後、京から江戸城を訪れた公家万里小路有純卿の三男で美貌の僧・有功は春日局の脅迫により小僧の玉栄と共に無理矢理還俗させられ、家光の小姓として大奥に入れられます。しかし本当の目的は家光が既に死亡している事実を隠すため、家光の落胤である少女・千恵姫に世継ぎをもうけさせようとしていたのでした。
気むずかしく癇癪もちの少女・千恵に「お万」と名付けられ、はじめは戸惑う有功でしたが、千恵がこれまでいかに女性としての誇りを踏みにじられてきたかという過去を知るにつれ、有功はこの千恵こそが「自分が救うべきたったひとりの存在」だと気づきます。そしてそっと千恵に女物の打掛を着せかけるのです。こうして「傷付き凍えた雛がお互いに身を寄せ合うような恋」が始まりました。
よしながふみ「大奥」の原作漫画3巻あらすじ〈ネタバレあり〉
愛情に満たされた千恵は元々の聡明さを発揮して、政治への才覚を見せるようになります。その後しばらくは有功と千恵に平穏な日々が訪れますが、肝心の子宝には恵まれません。しびれを切らした春日局は新たな側室を次々と連れてきます。愛と嫉妬に苦しみながらもお互いを思いやる2人。そして春日局亡き後、ついに千恵は女将軍・家光として家臣の前に姿を現します。
よしながふみ「大奥」の原作漫画4巻あらすじ〈ネタバレあり〉
女将軍・家光が誕生したことによって、少しづつ女大名も増えていきます。しかしこれはあくまで仮の措置なので男名のまま家督を継いでいきました。そして春日局没後、空席になっていた大奥総取締の座に有功が付きます。伝説の大奥総取締・お万の方の誕生でした。そして慶安2年(1651年)、千恵は3代将軍家光としてこの世を去ります。有功は千恵の遺志を継ぎ、4代将軍家綱・千代姫のため大奥に残ります。
14歳になった家綱は能や狂言、水墨画ばかりに関心をもち、政治にも自身の結婚にも興味がありません。何を奏上しても「左様せい」としか答えないため、「左様せい様」とあだ名をつけられます。しかし、家光時代の優秀な幕臣の支えにより政権は安定していました。江戸で明暦の大火(1657年)が発生した晩、有功と二人きりになった家綱は、有功への好意を告白します。有功は大奥総取締を辞し、永光院と名乗り出家するのです。
家綱は後継ぎを生まずに没し将軍の座には有功の元部屋子・玉栄の娘、館林藩主・綱吉が就きます。5代将軍・徳川綱吉。華やかな元禄時代の将軍です。綱吉は父親の桂昌院(玉栄)に甘やかされて育てられたため愛くるしく妖艶な容姿を武器に奔放な性生活を送っていました。綱吉は正室・信平が京から呼び寄せた側室候補の右衛門佐を気に入りますが、右衛門佐は年齢を理由に側室を辞退。右衛門佐は大奥総取締の地位に就きます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画5巻あらすじ〈ネタバレあり〉
そんなある日、綱吉はたった一人の後継ぎだった松姫を病気で亡くします。それからというもの、父・桂昌院と右衛門佐それぞれの子飼いの側室たちによる綱吉の寵愛を巡る権力争いが激化します。しかし綱吉はなかなか世継ぎに恵まれませんでした。高僧に尋ねると桂昌院が若き日に犯した殺生の罪がいけないと言われます。生き物、特に綱吉が戌年であることから、犬を大切に扱わねばならぬと言われ、これが生類憐れみの令となります。
よしながふみ「大奥」の原作漫画6巻あらすじ〈ネタバレあり〉
江戸市中では赤穂事件や生類憐れみの令もあり、綱吉の評判は地に堕ちていました。そんな中で綱吉の寝所に刺客が現れます。善政もできず世継ぎも作れない自分はなぜ生きているのかと自嘲し生きる気力を失くす綱吉に、右衛門佐は「女と男の関係は子をなすことだけではない。生きなさい」と言い、綱吉に対する長年の想いを打ち明けます。
右衛門佐と結ばれた綱吉はやっと欲得なしの愛情を手に入れ、父親に逆らい家宣を次代将軍に指名します。しかし直後に右衛門佐は急死してしまいます。その後父・桂昌院も亡くなり、綱吉自身も麻疹に倒れます。その病床に長年の嫉妬に耐えかねた正室・信平が現れ、綱吉の首を絞めます。それを諫めた柳沢吉保でしたが、今度は吉保自身が綱吉を窒息死に追い込みます。「もう誰にも渡しません」と言いながら…。
6代将軍家宣が将軍になる少し前、家宣のお小姓として仕えていた間部詮房は、町で荒れた暮らしをしていた勝田左京を見つけます。左京は間部に恋心を抱きますが、間部の思惑は左京を家宣の側室にすることでした。家宣に接した左京は家宣の人格に感銘を受け、2人の間には世継ぎとなる千代姫が生まれます。しかし、将軍になって3年後、病弱だった家宣は亡くなり、悲嘆にくれる間部を左京は半ば強引に抱いてしまいます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画7巻あらすじ〈ネタバレあり〉
家宣の死により正室・國熙は天英院、左京は月光院と名を改め、家宣と月光院の娘・千代姫が7代将軍家継となります。わずか4歳の家継は病弱で、大奥では次代将軍候補を巡って紀州吉宗派の天英院と尾張継友派の間部・月光院が対立していました。そんな折、江島生島事件により、月光院側の人間である大奥総取締・江島が捕らえられます。月光院と間部の関係を証言させようという天英院派の陰謀でした。
しかし江島は一切を否定し、死罪を言い渡されます。月光院は天英院に、次代将軍に吉宗を推す代わりに江島の助命を頼みます。そして、ここで8代将軍吉宗は大奥の日記「没日録」を読み終えます。そして男子が少ない現状で諸外国に攻め込まれることを危惧し武芸を奨励し、「赤面疱瘡」撲滅に向け小石川養生所を作るなど、様々な改革に乗り出します。
よしながふみ「大奥」の原作漫画8巻あらすじ〈ネタバレあり〉
3人の娘に恵まれた吉宗でしたが、世継ぎである長女・家重には言語障害があり、一方で次女の宗武は容姿端麗で聡明だったため「家重を廃嫡して宗武を世継ぎに」という周囲の声が大きくなっていきました。それ故家重は歪んだ性格になり、酒色に溺れる日々を送っていましたが、吉宗は家重に将軍職を譲ります。一方で家重の側用人・田沼意次は吉宗に政治の才を見出され、表舞台で活躍しはじめます。
吉宗の死後、意次は吉宗の遺志を継いで赤面疱瘡対策に乗り出します。長崎で蘭方医学を学んでいた金髪で目の青い・青沼を大奥に招いて、大奥での蘭学の講義を始めます。諸国を渡り歩く、本草学者・平賀源内も意次に協力しますが、女であるため大奥に入れないことを残念がります。
よしながふみ「大奥」の原作漫画9巻あらすじ〈ネタバレあり〉
家重は将軍職を長女・家治に譲り西の丸へ隠居します。10代将軍・家治は側用人・田沼意次を老中に取り立て幕政と赤面疱瘡の全面解明を一手に任せます。大奥に入った青沼は当時最新であった医療知識で、大奥内のインフルエンザの蔓延を防ぎます。これがヒントになり青沼たちは「赤面疱瘡を予防する」という考えから、西洋の人痘(ワクチン)という考え方に辿り着きます。
一方、老中になった意次はその手腕で大奥や幕閣から絶大な支持を得ますが、蘭学奨励や唯金主義を推し進めたことにより、幕臣や江戸市中の庶民の中にも意次を快く思わない者達が出始めていました。その筆頭が吉宗の孫の松平定信であり、さらにその裏で糸を引いていたのは、同じ吉宗の孫・一橋家の当主である徳川治済でした。
よしながふみ「大奥」の原作漫画10巻あらすじ〈ネタバレあり〉
一度罹ったら二度とは罹らない赤面疱瘡。それなら軽症の患者の膿を針で別の人にうつし、その軽症の赤面疱瘡に予め罹っておけばいい、というのが青沼たちの考えた人痘でした。平賀源内の協力もあって、大奥に軽症の患者が運ばれてきます。次々と人痘が成功する中、松平定信の甥が100人に3人出るという副作用で死亡してしまいます。
そして10代将軍家治の唯一の世継ぎ・家基が急死します。悲しみのあまり体調を崩す家治の薬にも、実は少しづつ毒が盛られていました。世の中を大洪水に地震、浅間山の噴火、そして世にいう天明の大飢饉が襲い、庶民の中からも老中・田沼意次を恨む声が次第に大きくなる中、意次の娘・意知が江戸城内で暗殺されます。力を失った意次は、将軍家治の死と同時に失脚。青沼は死罪に処され、大奥での赤面疱瘡の研究は潰えます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画11巻あらすじ〈ネタバレあり〉
10代将軍・家治の死後、将軍職に就くと思われていた一橋家の治済でしたがこっそりと赤面疱瘡の人痘を受けていた息子・豊千代を将軍にします。11代将軍・徳川家斉です。3代家光以来150年ぶりの男子の将軍でした。しかし政治に口を出すことは許されず実権は母・治済が握っています。大奥には多くの女性が集められ、治済は家斉に子作りを強制します。そしてその一方で、治済は気に入らない子を退屈しのぎに暗殺していくのです。
老中になった松平定信も免職し、まさにやりたい放題、贅沢三昧の治済。そんな中、家斉は治済に隠れて、青沼のかつての弟子・黒木たちに接触し、極秘裏に赤面疱瘡の研究を再開させます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画12巻あらすじ〈ネタバレあり〉
やがて黒木たちは副作用のない赤面疱瘡ワクチンに成功します。しかしその評判が江戸城まで届いたことにより、家斉が隠れて赤面疱瘡研究に手を貸していたことが治済にバレてしまいます。治済は家斉を殺そうと、目の前で毒入りの羊羹を食べるよう勧めますが、その瞬間、治済の方が毒で倒れます。
実は家斉の正室・茂姫と側室・お志賀が、自分たちの子を毒殺したのが治済であることに気付き、長年にわたって治済暗殺の計画を進めていたのでした。治済は一命をとりとめたものの話すことも身動きすることもできない体となります。その後、家斉は赤面疱瘡予防接種を普及させていき、男子の人口は急速に回復します。家斉は将軍職を息子・家慶に譲り、数年後に息を引き取ります。
よしながふみ「大奥」の原作漫画13巻あらすじ〈ネタバレあり〉
12代将軍・家慶は、実の娘・祥子に執着していました。他家に嫁がせなくてもいいとの理由から、祥子を世継ぎと決め、名を家定と改めます。この頃男子の人口は元通りの数まで増えていましたが、病弱な兄に代わり阿部正弘も、女でありながらその家督を相続します。家慶の性的虐待に気が付いた正弘は、家定を西の丸奥に囲い込んで家慶から守ります。西の丸奥の総取締には、正弘が陰間から見受けした武家出身の瀧山が就きます。
家定は、正室や側室を次々と毒殺する家慶から守ってくれる阿部正弘の忠義に感じ入り、将軍となる覚悟を決めます。そんな折の嘉永6年(1853年)、黒船が浦賀に来航し、ショックを受けた家慶は急死。家定が13代将軍になります。そして大奥に、家定の3人目の正室として薩摩から後の天璋院篤姫が輿入れしてきます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画14巻あらすじ〈ネタバレあり〉
後の天璋院篤姫、島津忠敬は今和泉家の次男生まれます。頭脳明晰であったため、本家の島津家当主・島津斉彬の養子になり徳川家定の三番目の正室になるべく名を「胤篤」と改め徳川家に輿入れします。島津斉彬に「世継ぎに一橋慶喜公を推せ」という命をうけて大奥に送り込まれた胤篤は、周囲の思惑とは別に家定と心を通わせていくのでした。
一方、阿部正弘は病に倒れます。病をおした最後の登城で、見違えたように健康になった家定を見て「自分はきっと、上様の代わりにすべての病と業を背負って先に逝くためにこの世に生まれてきた」と涙を流し、胤篤に家定のことを託します。そして政治の世界では、大老・井伊直弼が誕生します。
よしながふみ「大奥」の原作漫画15巻あらすじ〈ネタバレあり〉
懐妊した家定は、さらに深く胤篤と心を交わします。しかし家定の懐妊は世間では秘密にされていたので、お腹が大きくなった家定が大奥を訪れない日々が続いていました。心配する胤篤と瀧山。そんな折、1カ月も前に亡くなっていたという家定の形見の懐中時計が胤篤の元に届きます。家定の遺言で出家も許されない胤篤は名を天璋院と改め、薩摩には帰らず大奥に残ります。
世の中では井伊直弼による安政の大獄、幕府に逆らう者に対する粛清が行われていました。そんな中、紀州徳川家の福子が、家茂と名を改め14代将軍に就任します。大老・井伊の強硬な政策は留まることを知らず、ついに桜田門外の変で井伊は暗殺されてしまいます。いよいよ「倒幕」という情勢に傾いていく中、幕閣が推し進めたのは公武合体、将軍家茂と帝の弟・和宮の結婚でした。そして和宮が京から輿入れしてきます。
よしながふみ「大奥」の原作漫画16巻
足が不自由だという噂の和宮でしたが、実際に輿入れしてきた和宮は女性でした。果たして彼女の正体は?今後の展開が気になる第16巻は、2018年10月29日発売です。
大奥の原作漫画はどこまで史実通り?
よしながふみの漫画「大奥」には多くの江戸時代の歴史的事件が出てきます。男女が逆転しているという設定の中で、どれだけあらすじが実際の史実に沿っているのか検証してみました。ネタバレあらすじやネタバレを含む内容となりますのでご了承ください。
鎖国に至った経緯
江戸時代において、海外諸国との接触は幕府が管理・統制していました。理由はキリスト教布教の抑制。ポルトガルやスペインなどのカトリックの布教活動は植民地政策の一環として行われていたので、豊臣秀吉がキリスト教布教を禁止して以来、江戸幕府もそれを引き継いでいました。経済活動と布教を分けて考えていたオランダやイギリスなどのプロテスタント系との貿易は限られた場所で行われています。
よしながふみの漫画「大奥」の作中でも、春日局が「表向きは貿易による利益の、ご公儀による独占とでもしておけばよい」と語っています。実はその裏には、赤面疱瘡の流行で男子の数が激減したことを諸外国に隠すために国を閉じたとされています。オランダの商館長の謁見も男のいる大奥で行い、長崎の出島には女が相手をする遊郭を作り、男子の武芸を奨励するなど、陰では諸外国に日本の事情を知られないよう努力していました。
吉原遊郭
吉原遊廓とは、江戸幕府によって公認された遊廓です。始めは江戸日本橋近くにあり、明暦の大火後、浅草寺裏の日本堤に移転しています。初期の江戸の人口の男女比は圧倒的に男性が多かったと考えられ、江戸中期でも人口の3分の2が男性という記録があります。そのような時代背景の中で、江戸市中に遊女屋が点在して営業を始めるようになったのが始まりです。
しかしよしながふみの「大奥」では、男女比が逆なっているため、吉原にいるのも男性ということになります。家光は大奥の人員整理として100名の健康な男子を吉原に送り込んでいます。その後、陰間と呼ばれた彼らは、客の女性を怖がらせないために女の格好と仕草で相手をしていました。歌舞伎も芝居も男子ではなく女子が役者として演じているのが、よしながふみの「大奥」です。
生類憐れみの令
よしながふみの「大奥」では5代将軍綱吉が松姫を失くした後、世継ぎに恵まれないことを心配した父・桂昌院が、護国寺の僧・隆光に「世継ぎが生まれぬのは、あなたが若い頃に行った殺生のためだ」と言われます。今後は生き物を大切にしかも綱吉は戌年なので特に犬を大事にしなさいと言う隆光。そして発布されたのが「生類憐れみの令」でした。隆光は過去に桂昌院を「いずれ天下人の父になる相が出ている」と予言した僧でした。
この話は概ね実際の逸話通りに描かれています。僧侶のモデルとなったのは2人。桂昌院に男子が生まれることを予言して護国寺の僧となるのは亮賢。生類憐れみの令を出すきっかけを作ったのは護持院の隆光です。本来の「生類憐れみの令」は、人間を含む全ての動物を大切にしましょうというものでした。当時頻繁にあった捨て子や姥捨て、また簡単に暴力を振るう人が多かったことを鑑みて、庶民のモラルの向上を目的としたものでした。
しかし次第に極端に厳しい項目も発布されるようになり、牛、馬、鳥、魚、果ては貝や虫にまで殺生を禁止しています。手元で犬を飼っていられなくなった人が犬を捨て、町に野犬があふれて、人を噛み殺すこともありました。そのため犬を収容する小屋を作ったり、餌代がかかったり、江戸幕府の財政をかなり圧迫したと言われています。
赤穂浪士事件
江戸城松之大廊下で吉良上野介義央に斬りつけたとして、播磨赤穂藩藩主の浅野内匠頭長矩が切腹に処せられ、その後亡き主君の浅野長矩に代わり、家臣の大石内蔵助良雄以下47人が吉良邸に討ち入り、吉良義央を討った事件を赤穂浪士事件と言います。一般的に知られる勧善懲悪の物語・忠臣蔵は、人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」が元で広まったものです。ただ、浅野の刃傷沙汰の動機は史実には記録されていません。
よしながふみの「大奥」では、男系を守っている家系の浅野内匠頭長矩が、度重なる小さな誤解を恨みに思い吉良上野介義央という老女に切りかかっていったのが発端になっています。そして赤穂浪士47人はすべて男子でした。庶民の間でも人気の高い赤穂浪士でしたが、綱吉は切腹を命じます。さらに武家の跡目を男子が継ぐことを禁止する令を出すのです。この物語で家督の女子相続が慣習化したきっかけとなっています。
江島生島事件
江島生島事件とは、江戸城大奥御年寄の江島が月光院の名代として行った寺詣りの帰りに、芝居小屋・山村座で生島新五郎の芝居を観て大奥の門限に遅れてしまったことが発端となり、関係者1400名が処罰された綱紀粛正事件です。江島は生島との密会を疑われ、評定所から下された裁決は遠島。生島は三宅島への遠島となりました。よく言われる江島が生島を長持の中に入れて大奥に忍び込ませ、逢瀬を繰り返したという話は俗説です。
漫画「大奥」と同じように、当時の大奥に天英院派と月光院派の二代勢力があった経緯から、江島生島事件は月光院の失墜を狙った天英院の陰謀であったと言われていますが、特に史料もないため憶測の域を出ないと言われています。しかし江島の罪がただの風紀違反にしてはやけに重いのも事実で、やはり何らかの大きな力が関わっていたと考えられるのかもしれません。
大奥の作者のよしながふみの描く他の作品も紹介!
以下は、よしながふみの「大奥」以外の作品を一部、簡単に紹介していきます。よしながふみ作品はこれ以外にも、魅力的な作品がたくさんありますので、機会がございましたら是非読んでみてください。
よしながふみ『こどもの体温』
1998年7月21日に新書館から発行されたオムニバス形式のよしながふみ短編集。父子家庭の父親・酒井高紀とその息子紘一を中心に、2人を取り巻く様々な人間模様を描いた切なくも心温まる短編集です。雑誌『Wings』に掲載された5編にプラスして「たまにあった一日」が書き下ろしで収録されています。
よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』
2000年6月25日に新書館から発行された、全4巻のよしながふみの漫画作品。住宅街で、深夜にひっそりと営業する洋菓子店「アンティーク」。そこで働く無精ひげのオーナー・橘と天才パティシエで「魔性のゲイ」である小野。洋菓子店「アンティーク」を舞台に巻き起こる人間模様を描いた作品です。この作品を原作に日本ではドラマやアニメ、韓国では映画も作られました。
よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』
2004年5月10日に新書館から発行された、全4巻のよしながふみの漫画作品。白血病治療のため、1年1ヶ月遅れで高1になった花園春太郎。個性豊かな人々に囲まれ、どこにでもあるようでどこにもない、そんな学園生活を描いた作品です。題名の「フラワー・オブ・ライフ/flower of life」とは、英語で「生涯の最盛期」などの意味です。
よしながふみ『きのう何食べた?』
2007年11月22日に講談社から発行された、現在も『モーニング』で月に1度のペースで連載中のよしながふみの漫画作品。キャッチフレーズは「2LDK・男2人暮らし・食費、月3万円也」。料理上手で几帳面・倹約家な弁護士・筧史朗と、美容師・矢吹賢二のゲイカップルの日常を描くほのぼのグルメ漫画です。単行本には作品内に登場した料理のレシピも掲載されています。
大奥の堺雅人主演の映画やドラマも要チェック!
よしながふみの漫画「大奥」は3度に渡って映像化されています。ここではそれぞれのあらすじ内容を簡単に紹介していきます。
大奥
2010年10月1日公開された映画で、よしながふみによる漫画「大奥」の第1巻を基にした「水野・吉宗篇」になります。水野祐之進を嵐の二宮和也、徳川吉宗を柴咲コウが演じ、興行収入23.2億円を記録しています。
大奥〜誕生[有功・家光篇]
2012年10月より12月までTBS系列で放送された連続ドラマです。よしながふみ原作漫画「大奥」の第2巻から3巻を中心に、女将軍徳川家光の誕生および側室・万里小路有功とのあらすじが描かれています。万里小路有功を堺雅人、徳川家光を多部未華子が演じています。主演陣の演技は高く評価されて、堺雅人と多部未華子はギャラクシー賞テレビ部門の個人賞などの賞をを受賞しています。
大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]
連続ドラマが終わった直後の、2012年12月22日に公開された映画で、よしながふみ原作漫画「大奥」の第4巻から6巻を基に、女将軍・徳川綱吉と、大奥で成り上ろうとする右衛門佐とのあらすじが描かれています。前作の万里小路有功に似ているという設定の右衛門佐を堺雅人、徳川綱吉を菅野美穂が演じました。撮影期間はテレビドラマよりも先に撮影されています。
大奥の作者のよしながふみや原作漫画についてまとめ!
漫画「大奥」の作者・よしながふみについて、その他の作品の紹介、漫画「大奥」のあらすじをネタバレを含んで紹介してきました。一風変わった視点から見る江戸時代。もしかしたらこれが本当の歴史では?と思わせるくらい魅力的な江戸城大奥の世界。機会がありましたらぜひ、よしながふみの世界を読んでみてください。