レイリが面白い理由とは?岩明均・室井大資コンビの戦国漫画の魅力を紹介

『レイリ』とは『寄生獣』岩明均×『秋津』室井大資が描く歴史超大作である。主人公は、死にたがりの少女・レイリ。戦災孤児として武将・岡部丹波守に拾われた彼女は、ある男との出会いによって人生に翻弄されていく。『寄生獣』で冷徹かつきめ細かに人間という生き物を描いた岩明均は、この強くそして切ない少女・レイリをどのように描くのか?そしてレイリは、多くの人間が血を流した戦国の世を、無事生き抜くことができるのか?

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目次

  1. レイリが面白いと言われる理由に迫る!
  2. レイリとは?新感覚戦国漫画?
  3. レイリが面白いのは岩明均と室井大資が理由?
  4. レイリのあらすじを知るともっと面白い!
  5. レイリを読んでの感想は?
  6. レイリが面白い理由まとめ

レイリが面白いと言われる理由に迫る!

『レイリ』は、別冊チャンピオンにて連載中の歴史超大作漫画である。原作を岩明均(『寄生獣』、『ヒストリエ』)、作画を室井大資(『秋津』、『エバタのロック』)が担当している。漫画家歴30年以上の大ベテランである岩明均と、まだ20年にも満たない室井大資の異色タッグが話題の本作品だが、多くの漫画ファンが面白いと絶賛する理由は何なのか?ここでは、その理由と『レイリ』の魅力に迫る。

別冊チャンピオン2015年12月号より連載がスタートし、2016年11月8日に1・2巻が同時発売、2018年9月現在も別冊チャンピオン(秋田書店)にて好評連載中の『レイリ』。岩明均が執筆まで14年もの構想期間を費やしたという本作品、コメディーを得意とする室井大資が作画を手掛けることで期待を超える化学反応が起きている。その証拠に、「このマンガがすごい!」2017年1月ランキングにて、オトコ編1位を獲得している。

レイリとは?新感覚戦国漫画?

時は戦国時代、「戦国の雄」と謳われた武田信玄を失ったばかりの武田軍が、「尾張のうつけ」と称された織田信長に大敗した「長篠の戦い」から4年後、天正7年(1579年)の遠江の国から物語は始まる。そしてこの物語は珍しいことに、「負けた側」である武田家側のエピソードを描く作品なのだ。ここからは、話の内容についても深く掘り下げていくので、ネタバレに注意して欲しい。

百姓の娘であったレイリは、長篠の戦いの残党狩りの被害を受け家族を失い天涯孤独の身となるが、たまたま通りかかった武田家家臣・岡部丹波守に拾われる。丹波守を恩人として慕い、最後は「丹波さまの盾」となって死にたいと豪語する死にたがりの少女・レイリは、小山城の雑兵では手も足も出ない程の剣術を会得していた。

そしてレイリは、ある男との出会いによって自らの人生に翻弄されていくことになる。ある男の名は土屋惣三、武田家一の剣と槍の使い手と目される武田家家臣の一人である。彼に連れられて着いた先は甲斐の国・府中の甲府館であった。

武田家当主・武田勝頼の敗北のせいで家族が殺されたと考え、憎悪を膨らませる彼女の前に現れたのは自分とそっくりの顔をした、勝頼の嫡男・信勝であった。なんと彼女に与えられた役割は、信勝の影武者となって彼の代わりに死ぬことだったのだ。

レイリは実在の人物?

そもそもレイリとは実在の人物なのか。原作者の岩明均は、史実においてレイリという少女のポジションには間違いなく誰かがいた、と第1巻のあとがきで語っている。なぜこのようなマイナーな人物を歴史漫画の主人公にしたのだろうか。実は岩明均は、現在連載中の『ヒストリエ』でもマイナーな歴史上の人物を主人公にしている。

『ヒストリエ』は、古代ギリシャのマケドニア王国・アレクサンドロス大王の書記官を務めたとされる、エウメネスという人物の生涯を描いた漫画だ。もちろんこの人物についての資料は数少なく、世間一般でもあまり知られていない。

それにもかかわらず、第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞と、複数の大きな賞を受賞しているのだ。マイナーな人物を掘り下げることが面白い漫画の要素の1つであるならば、『レイリ』も間違いなくその方程式に当てはまるだろう。

岩明均が描きたい「出来事」とは?

『レイリ』第1巻のあとがきにて、岩明均は次のようなことも語っている。本作品はもともと実際に起こった「ある出来事」を描きたくて構想された物語だというのだ。また史実では、武田信勝は1582年の天目山の戦いで家臣の裏切りにも遭いながら、齢16歳の若さで自害している。なんと物語開始時点からたった数年の出来事である。

果たしてレイリは影武者としての役割を全うするのか?岩明均が描きたい「出来事」とは一体何なのか?物語を読み進めると分かっていくであろうこの謎こそが、『レイリ』が面白いと言われる理由の1つなのだ。

作品裏話として次のことが語られている。当初の構想では、他に主人公の候補が2名いたというのだ。その2名は没落していく武田家側にいながら、乱世の中で出世していく人物達だという。その2名も脇役として物語に登場する予定だと原作者本人が語っている。その主人公に落選した者達が誰なのかも考察しながら読んでいくのも、本作品の楽しみ方の1つだ。

レイリが面白いのは岩明均と室井大資が理由?

『寄生獣』を生んだ奇才・岩明均

『レイリ』が面白い漫画たる所以、それは何といっても岩明均×室井大資の異色コラボである。岩明均はSFから歴史まで幅広いジャンルをカバーし、尚且つ重厚なストーリーを描く漫画家として評価されてきた。一方で、室井大資の人気作である『秋津』はコメディー漫画である。一見真逆とも思えるこの組み合わせは、一体どのようにして生まれたのか?

岩明均は、1985年に『ゴミの海』でデビュー。代表作は、1988年から1995年にかけて連載された『寄生獣』だ。本作品は海外からの人気も厚く、ハリウッドとのライセンス契約の関係で長い間メディアミックス化が阻まれていたが、2014年、2015年には山崎貴監督による実写映画化も実現している。

岩明均は物語の作り方に特徴があり、「出来事」を先に配置してその中で「キャラクター」達を動かしていくという、漫画家としては少し珍しいタイプだ。そのプロセスによって生み出される重厚且つ面白いストーリーと衝撃的な展開の数々が、岩明均作品の見どころだ。

室井大資の代表作・『秋津』

室井大資の代表作は、『秋津』だ。本作品は、漫画家である秋津薫とその一人息子である秋津いらかが繰り広げる、少しブラックな日常コメディだ。岩明均が作品化の為に室井大資を選んだきっかけも、本作品だという。コメディーとは笑いであり、笑いは読者のウケを考えなければ描くことはできない。岩明均はその点に着目して、室井大資を選んだと語っている。

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レイリのあらすじを知るともっと面白い!

第1巻

死にたがりの少女・レイリの物語は天正7年(1579年)の遠江の国から始まる。小山城の雑兵達が賭けの立ち合いに興じる中、洗濯物を干す少女が1人。しかしただの少女ではない。勝ち残りで最後まで残った雑兵の男はこの少女に立ち合いを願い出るが、手も足も出せず敗北してしまう。この少女こそがレイリであり、本作の主人公なのだ。

レイリは長篠の戦いあと天涯孤独となったその身を、小山城を治める岡部丹波守に預ける。そしてレイリは言うのだ。「最後は丹波さまの盾になってちゃんと死にます!」ここから、死にたがりの少女の物語が始まる。

物語は4年前、長篠の戦いまで遡る。織田軍に大敗を喫した武田軍は、残党狩りから逃れるため森の中を敗走する。その中の1人に、武田軍・岡部丹波守がいた。彼は敗走のさなか、とある民家に寄って井戸の水を分けてもらう。そして不運なことに岡部丹波守が去ったあと、その民家が残党狩りに襲われてしまうのだ。父と母、そして息子までも殺され、生き残った娘だけが森の中を逃げ回るが、すぐに残党狩り達に追いつかれてしまう。

残党狩りの1人が娘の体にまたがり、体を弄ぼうとする。今にも襲い掛かろうとしたその瞬間、不安になり舞い戻って駆け付けた岡部丹波守が、残党狩りの男に一太刀を浴びせ娘を救う。この少女こそが本作の主人公・レイリなのだ。岡部丹波守に引き取られたレイリはひたすら剣の修行に明け暮れ、城の雑兵ではまるで敵わないレベルまで、剣の腕を磨いた。

ある日、武田勝頼より「とある書状」を預かった武田家家臣・土屋惣三が現れる。書状の内容は、武田軍最前線基地である高天神城に主将として岡部丹波守に入城して欲しいという内容であった。岡部丹波守は快諾し、惣三は安堵する。

ふと外を見やった惣三の目に入ったのは、いつものように賭けの立ち合いに興じていたレイリであった。レイリに興味を持った惣三は、レイリに勝負をけしかける。この出会いこそが、レイリを数奇な運命へと導いていくことになるのだ。

第2巻

レイリは土屋惣三に手も足も出せず敗北する。それでも食い下がろうとするレイリを岡部丹波守は制止し、小山城の雑兵達に高天神城へ入城することを発表する。レイリは自分も連れて行って欲しいと懇願するが、拒否された挙句、土屋惣三についていき小山城から出ていくことを命じる。レイリは岡部丹波守にこれまでの感謝の言葉を伝え、小山城を去ることとなる。

土屋惣三に連れられてレイリが向かった先は、甲斐の国・府中。長篠の戦いで無謀な戦いを挑んだ武田勝頼への恨みつらみを述べながらレイリが対面したのは、自分とそっくりな顔をした勝頼の嫡男・信勝であった。自らを天才と称する信勝に困惑するレイリに告げられた役割は、武田信勝の影武者になること。レイリは多少動揺しながらも、影武者育成のため信勝のもとに足しげく通うこととなる。

第3巻

信勝と影武者の1人・和助が屋敷で影武者の訓練をしているさなか、敵からの急襲を受ける。信勝は、目の前で弓矢を受け命を落とした和助にショックを受け、レイリに体を預け涙を流す。信勝がレイリの前で初めて弱みを見せた瞬間だった。後日、信勝は影武者育成の場所変更を提案する。甲府館の外に出るのは危険だと惣三が諭すが、むしろ自らをエサにして敵をおびき寄せよる作戦に出たいと言う。

信勝とレイリが新しい場所で影武者訓練をしている最中、信勝の読み通り再度敵からの急襲を受ける。レイリの巧みな剣術で敵を圧倒するも、信勝に敵の刃が迫る。すんでのところで惣三が現れ、レイリとの共闘によって敵を殲滅するが、信勝には引っかかる要素があった。信長がこんなくだらない手を使うはずがないと。

時は天正8年(1580年)、夏。敵・徳川家康より城攻めに遭っている高天神城から2通の書状が届いた。1通は岡部丹波守より救援を求める手紙、もう1通は副将の横田甚五郎より救援は不要とする手紙。どちらに従うべきか頭を悩ませる勝頼であった。

高天神城は勝頼が陥落させた特別な城であることから、救援を出す方向で議論がまとまりかけていた。そんな中、信勝が軍議に乱入し、これは織田信長の罠であり、救援を出してはいけないと発言する。果たして高天神城の運命は?

第4巻

新しい城を築く、と唐突に決断した武田勝頼に対して「どうせろくでもない城だ」と不審に思った信勝は、普請奉行に任命されている真田昌幸を呼び出す。計画図面を用意させて説明を受ける信勝であったが、説明を聞いた上で一層不信感を高めるのであった。

レイリは、救援が来ないにも関わらず半年以上も籠城戦を続けている高天神城を不審に思い、真田昌幸に信勝のフリをして探りを入れた結果、救援が来ないことをあえて知らせていないという事実を知る。そして天正9年(1581年)、レイリは主命に背くことで死罪になると知りながら、1人高天神城へと向かうのだ。

徳川家康本陣に忍び込んだレイリは、家康の後ろを取り短刀を首に突きつける。岡部丹波守を救うためにここで家康を殺すことも辞さないと考えていたレイリだったが、直感的に殺さないほうが良いと感じた結果、生かしたまま本陣を去り高天神城の本丸へと向かう。果たしてレイリは岡部丹波守を救えるのか?そして無事脱出できるのか?

レイリを読んでの感想は?

岩明均が初めて原作を手掛けるということもあり、連載当初からファンの間では期待感が高まっていた。1・2巻の同時発売後も、続きを早く読みたいとの声が多数出ている。

もちろん歴史好きからの評価も高い。それはやはりレイリという異色な主人公の存在が大きい。レイリとは一体何者なのか?本当に実在する人物なのか?その謎を追っていく楽しさも、この漫画が面白いと言われる理由であり、楽しみ方の1つだ。

そして何といっても、岩明均と室井大資の異色タッグがレイリの魅力を最大限に引き立たせている。岩明均が思い描くレイリに室井大資が命を吹き込み、最高の物語に仕立て上げているのだ。「出来事」重視の岩明均が丁寧に散りばめたいくつもの伏線も本作の見どころだ。

レイリが面白い理由まとめ

さて、様々な観点から『レイリ』が面白いと言われる理由を考察してみたが、分かって頂けただろうか。改めてその理由をまとめてみよう。

まず第1に、死にたがりの少女・レイリというミステリアス且つパワフルな主人公。そして第2に、岩明均と室井大資という異色のタッグ。第3に、岩明均が描きたい「出来事」。この先、果たしてレイリは戦国の世を生き残ることができるのか?今後の『レイリ』から目が離せない。

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