2018年08月16日公開
2018年08月17日更新
天空の城ラピュタのロボットは怖い?名前や巨神兵との共通点を考察
名作アニメ「天空の城ラピュタ」に登場する、魅力的なロボット兵。個性も名前もないのに気になってしまうロボット兵について、「天空の城ラピュタ」での行動や、モデルをまとめました。また、ロボット兵がよく間違えられる「風の谷のナウシカ」の巨神兵についても、ロボット兵と何が似ていて何が違うのか、詳しい考察をまとめています。ぜひこの記事を読んでから、もう一度「天空の城ラピュタ」をご覧ください。
天空の城ラピュタのロボット兵とは?
この記事では、いまも人気の衰えない名作アニメ、「天空の城ラピュタ」に登場する「ロボット兵」についてまとめました。ロボット兵については、怖い、強い、可愛い、など、人によって様々な感想を抱きます。「天空の城ラピュタ」内でロボット兵はどのように活躍したのか、どのような考察があるか、ご紹介します。
天空の城ラピュタとは?
「天空の城ラピュタ」は、1986年夏に公開されました。宮崎駿監督にとっては3本目の長編アニメです。スウィフトの「ガリヴァー旅行記」から「天空に浮かぶ城」という設定と「ラピュタ」の名前を借り、それ以外は宮崎駿監督のオリジナル作品です。
ストーリーとしては王道のボーイミーツガール、そして冒険譚です。飛行石や天を漂うラピュタ城など、天空にまつわる設定が、物語のスケールを大きくしています。主人公たちが国や軍に立ち向かう様も見逃せません。
また、「天空の城ラピュタ」には、魅力的な人物や設定がたくさん登場します。特に、舞台をラピュタ城に移してからは、冒険感に拍車がかかります。なぜならラピュタ城は、天空に浮かぶ城であり、失われた古代文明(ラピュタ文明)の聖地だからです。ロボット兵は、そんなラピュタ文明の遺物です。
天空の城ラピュタのロボット兵の種類を紹介!
ロボット兵は、ラピュタ文明で作られた人型の自律ロボットです。名前については、個々の名前はもちろん、固有名詞や型名に至るまで明かされていません。「天空の城ラピュタ」内では「ロボットの兵隊」「ロボット」という名前で呼ばれています。
「天空の城ラピュタ」に登場するロボット兵とは?
ロボット兵はヘルメットのような頭部、左右アンバランスな瞳、逆三角形の大きな胸部、平べったく長い手足をもちます。胸元にはブースターがあり、一部のロボットは空を飛ぶ姿を見せました。また、頭部からビームを放つロボットもいます。
表情を表す機能はありませんが、顔の中央にある2つの発光体で、人との意思疎通が可能です。「天空の城ラピュタ」パンフレットには会話装置があると書かれていますが、「天空の城ラピュタ」においては、台詞のあるロボット兵は出て来ません。
「天空の城ラピュタ」で、動きを確認できるのは、戦闘能力の高いタイプ(以後、戦闘兵)と庭園の手入れをしたり墓守をする癒やしタイプ(以後、園庭兵)の2種類です。「天空の城ラピュタ」パンフレットでは、ほかに看護型もあることを言及しています。
ロボット兵の胸にはラピュタ帝国の紋章が描かれており、飛行石を持つ者の命令に従います。命令の是非を問う・命令に背くなど自我を持つ描写はありません。
戦闘兵
戦闘兵に該当するのは、「天空の城ラピュタ」において、国がラピュタ文明調を査するきっかけとなったロボットや、物語後半でムスカによりラピュタ城から地上へ解き放たれたロボットたちです。
ボディの色は赤茶色です。腕には棘があり、皮膜をだして飛ぶことができます。高い戦闘能力と耐久力を兼ね備えています。あまり自衛行動は見受けられません。ラピュタ城には手足を丸めた形で格納されていました。
動きは無機質であり、命令遂行のための手段は攻撃的です。また、容赦や手心も見えません。そのため、後述の園庭兵に比べて兵器感が強く、「怖い」と結びつきやすいキャラクターです。
園庭兵(園丁兵)
園庭兵は、パズーとシータが、ラピュタ城の庭に不時着した際に出会ったロボットです。先に戦闘兵と出会っていたため警戒していたパズーとシータですが、怖いどころか穏やかな動作に和むシーンもあります。
ボディの色は緑色。腕に棘はありません。歩く際に「ぽーん、ぴーん」という心地よい音が流れます。もともと下された命令がなんだったかは不明ですが、王庭の手入れや墓守を担当していると考えられます。
動きは有機的であり、命令遂行のための手段も紳士的です。シータに花を差し出す姿や、キツネリスや小鳥など小動物が懐いている姿も描かれています。戦闘兵とは逆に、作中1、2を争う癒やしキャラだと評判です。
「天空の城ラピュタ」におけるロボット兵の初登場は?
実はラピュタ城に到着するまでに、パズーとシータはロボット兵と出会っていました。それは「天空の城ラピュタ」の前半、シータのティディス要塞幽閉時のことです。
国や軍がラピュタ文明の調査を行うきっかけとなったのが、ラピュタ城から落下してきたロボット兵です。装備的には戦闘兵でした。そのロボット兵は機能が停止していると見なされ、軍の要塞に納められていました。
そこへ、パズーと引き離されたシータが幽閉されたのです。「おばあちゃんから聞いた、困ったときのおまじない」を意味も分からず詠唱するシータ。
そのおまじないでロボット兵は起動します。ただし、身体が欠損しているため、いびつな動き方をします。不完全な状態ではありながら軍を相手に見事な大立ち回りをし、その攻撃力にシータも「怖い」と逃げだしてしまいます。
しかし、ロボット兵がシータのために尽くしていること、シータのお願いは聞いてくれることがわかり、シータはロボット兵に頼ります。撃たれてもちぎれてもシータのために働くロボット兵の献身により、シータは無事パズーやドーラたちに救出されるのです。
この怖くも切ないシーンは、日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」が「天空の城ラピュタ」放映と連動して開催した「みんなで選ぶ!好きなシーンランキング」の結果で、見事1位を飾りました。
「天空の城ラピュタ」におけるロボット兵の最後は?
シータのために軍と戦ったロボット兵は、最終的に飛行船艦ゴリアテの砲撃で木っ端みじんとなりました。では、ラピュタ城に残っていたロボット兵はどうなったのでしょうか?
クライマックスで唱えられた「滅びの呪文」により、崩壊を始めたラピュタ。戦闘兵も動きを止め、下層部やムスカとともに、海へ落下していきました。
園庭兵の最後については、はっきりと語られていません。ただ、下層部の落下により軽くなったラピュタ城が、飛行石により上昇を始めた折り、ゆっくりと庭を歩く姿が確認されています。その肩にはキツネリスが、頭部には小鳥がいます。
天空の城ラピュタのロボット兵にまつわる考察を紹介
失われた古代文明、ラピュタ文明の生き残りとして、物語に花を添えるロボット兵。名前もなく、個性もないのに魅力を放つロボット兵について、考察をまとめます。
ロボット兵に名前がない理由
実は宮崎駿監督作品の中で、ロボット兵に酷似したロボットが登場しています。それが、「ルパン三世」(テレビ第2シリーズ)に出てくる「ラムダ」と「シグマ」です。
登場するのは1981年放映の最終話「さらば愛しきルパンよ」です。ラムダはルパンの名前で宝石店を襲うなど東京を舞台に大暴れします。
しかし、実はラムダの操縦者であるマキは、ラムダで暴れることで、「"ロボットは怖い"と東京の人々に実感させたい」という思惑を持っていたのです。ロボットの兵器転用を食い止めるためです。
ラムダは人が乗り込むタイプのロボットでした。その改良版であるシグマはさらに、操縦者不要の自律型にまで進歩しています。その姿も、双頭ではあるものの、首のプロペラはなくなり、一見するとよりロボット兵に近づいています。
宮崎駿監督はこのロボットのデザインを気に入っていました。ルパンで使ったことはあったものの、心残りがあったため、ラピュタに再登場させたと語っています。
ロボット兵の元ネタは?
ロボット兵の元となった、ラムダ・シグマ。そのモチーフは、アメリカで作られたアニメ『スーパーマン』第2話の「The Mechanical Monsters」に出てきた現金強奪ロボットです。
岡田斗司夫氏は、「秒数から動きから完全に同じなんだけども、でも宮崎さんのほうがカッコいいんですよ」と「BSアニメ夜話 vol.01 ルパン三世 カリオストロの城」で話しています。
ロボットとシータの名前に秘密がある?
「ラムダ」「シグマ」「シータ」…この3つの名前に共通することがあります。それが、いずれもギリシャ文字一文字で表せるということ。ラムダはΛ(λ)、シグマΣ(σ)、そしてシータはθ(Θ)です。数学や物理学、工学など幅広い分野で使われています。
「天空の城ラピュタ」ヒロインのシータという名前は、もともとギリシャ文字からとられたと天空の城ラピュタGUIDEBOOK復刻版に書かれています。ただ、戦闘兵、園庭兵のどちらのロボット兵とも心を通わせた少女の名前と、モデルとなったロボットの名前に共通点があることは、意味深長です。
ジブリ美術館にロボット兵がいる?
三鷹の森ジブリ美術館の屋上には、「守り神」としてロボット兵が安置されています。このロボット兵は、腕に棘がありますので戦闘兵です。胸の紋章は、その傍らに落ちています。
ロボット兵と巨神兵の共通点は?
「三鷹の森ジブリ美術館の屋上に巨神兵がいる!」と喜んでしまう方や、「ロボット兵と巨神兵をごっちゃにして覚えていた」という声もよくあがります。
これ、巨神兵じゃなかったんです。ロボット兵だったんです。今までずっと勘違いしてました!(^_^) https://t.co/ncXLGPx68X
— 木坂聖一 (@godlovesjapan) May 10, 2018
巨神兵は、1974年公開の映画、「風の谷のナウシカ」およびその原作漫画に登場します。1000年前に文明を崩壊させた「火の七日間」を引き起こした「最終兵器」です。漫画版では、戦争や汚染を止めるために作成された「調停者」だと書かれています。
ナウシカの時代にはすでに化石になっていますが、1体だけが復活ます。ただ、その復活は完全ではなかったため、ほとんど機能しませんでした。どろどろに溶けながらも、一面を焼け野原にするほどの高威力ビームを撃つシーンは、大きな山場です。
ロボット兵と巨神兵の共通点はいくつかあります。まず、「○○兵」と呼ばれていること。つまり、兵器です。さらに作った文明が、「失われた古代文明」であること。ロボット兵にも、映画版ナウシカの巨神兵にも名前はありません。(ただし、コミック版ナウシカでは、自我を持った巨神兵が、ナウシカに「オーマ」と名前をつけられています)
見た目も似ています。「大型」ですが、兵器なのに「人に近い形をしている」からです。特に、ナウシカのオープニング映像に出てくる巨神兵は、頭がヘルメット状で腕が長いため、ロボット兵とよく似て見えます。
また、ざっくりとした命令で具体的に動くという、「自律型」である点、攻撃手段としてビームを放つ点も似ています。さらに、作品終盤で「悪役」が使ったことや、「不完全」であっても、「圧倒的な強さを誇る」ことも共通点にあげられます。
さらに、巨神兵が放つビーム(プロトンビーム)が、ラピュタ城の撃つ「ラピュタの雷」と同類という説もあります。また、どちらの作品にも小型飛行機が出て来る、キツネリスが登場するなど、世界観も似通っています。
ロボット兵と巨神兵の相違点は?
まず、素材がかなり違います。巨神兵の身体は、人工的な機械部分と生物のような有機組織の両方で作られています。ロボット兵も半有機体ではありますが、表面に見える部分は機械的です。サイズも大きく異なります。巨神兵は75mに及ぶのに対し、ロボット兵は3.5mです。
作られた目的も異なります。巨神兵が作られた目的はひとつ、戦争調停でした。ロボット兵は他国制圧や生活圏の手入れなどさまざまです。
なお、どちらも庵野秀明さんがデザインをしたから、という情報も散見しますが、庵野さんが原画に参加したのはナウシカのみで、「天空の城ラピュタ」の原画には参加されていません。
ロボット兵の怖さについての意見・感想は?
老若男女問わず人気と思われがちな「天空の城ラピュタ」ですが、「見ることが出来ない」「苦手だ」「怖い」という感想を持つ方もいます。その理由の一つに、ロボット兵があがります。
ネット上でも、「ラピュタのロボット兵が怖い」と相談する人がいます。ですが、「無理に克服する必要はない」「そのままでいてほしい」との暖かい言葉が返ってきていました。
昔は怖いだけだったロボット兵、今見ると、シータを必死で護ろうとしてたんだよね。
— htmokm→→→→→ (@spica619) September 29, 2017
だから塔の上で忠誠を誓っていた。そしてパズーに託して力尽きる…。
切ない…。#ラピュタ
「ロボット兵が怖い」の筆頭となるのが、シータ救出シーンとムスカによる総攻撃シーンです。この2シーンは、ロボット兵の一方的な攻撃と、それに対して為す術のない人間たち、という図式になるからです。
多分、動き回るロボット兵達が子供の時に目に焼き付いちゃって、トラウマになっちゃったのかもしれない…四足歩行するやつとか…
— オストリカ (@kun83lo) August 10, 2018
成長するにつれ、「平気になった」「シータを守った紳士だった」など、ロボット兵への評価が変わったという声もよくあがります。ただ、わずかながら、成長しても「ロボット兵は怖い」という意見もあります。
ロボット兵は怖い?優しい?
ロボット兵の印象が、「怖い」「優しい」の両極端あることは先述しました。これは個性ではなく、ラピュタ人が、戦闘兵であれば「怖い」、園庭兵や看護兵には「優しい」を設定したのだと考えれば不思議ではありません。
なお、宮崎駿監督は、もともとロボット兵を、「ラピュタという文明の凶悪な部分を出すため」に登場させました。そのため、「怖い」という印象を持ったのであれば、宮崎駿監督の狙ったとおりなのです。
天空の城ラピュタのロボット兵は怖いけど気になる存在だった!
今回は、「天空の城ラピュタ」に登場するロボット兵を様々な角度から検証しました。「怖い」だけではないロボット兵の魅力を感じていただけたでしょうか。ぜひもう一度、ロボット兵を気にかけながら「天空の城ラピュタ」をお楽しみください。