フリージア(漫画)の最終回までネタバレ!松本次郎が描く狂気の作品の評価は?

「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?漫画「フリージア」それは漫画全体を覆い尽くす狂気の渦!漫画「フリージア」は登場人物全てが狂気の淵にいる物語。漫画「フリージア」は狂気を中心に進む物語。漫画「フリージア」は狂気の果てにある種の感動を呼ぶ物語。漫画「フリージア」は狂気に彩られた近未来シュミレーション。漫画「フリージア」は敵討ちの物語。漫画「フリージア」は愛と友情の物語。鬼才松本次郎の描く漫画「フリージア」評価不能の狂気が最終回まで加速する!

フリージア(漫画)の最終回までネタバレ!松本次郎が描く狂気の作品の評価は?のイメージ

目次

  1. 漫画「フリージア」とは?
  2. 漫画フリージアに見られる狂気性
  3. 漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!隅川に対して叶チームが挑む
  4. 漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!元テロリスト岩崎の敵討ち代理を行う
  5. 漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!追い込まれて行く溝口
  6. 漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!溝口が叶殺害を企てる
  7. 漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!最終回の結末は?
  8. 「フリージア」漫画版と映画版の相違点
  9. フリージアは評価が難しいと言われる程大きな作品だった!

漫画「フリージア」とは?

近未来の日本においては軍隊が存在し敵国と戦争中であった。国民は政治情勢に関心が薄く、離れた所で生活が営まれているが、犯罪被害者による「敵討ち」が法律で認められている。主人公叶ヒロシは敵討ちを請け負う「敵討ち代理人」に就職した。過去に会得した「擬態」を武器に初めての任務を難なく完遂する叶。しかし、そんな叶を同じチームの先輩溝口は気に入らず密かに叶殺害を企てる。

同じくチームを組む叶と同日入社の山田は原則原理主義者であり、叶と溝口嫌悪しながらも代理人の仕事に染まっていく。叶を評価し代理人に推薦した女性事務官のヒグチは過去に自分が強姦された現場で叶と会っていた。叶は己が何者であるか判らず常に自己の内面の中で彷徨っている。彼が想像の中で生み出した「友人」がヒグチと瓜二つであった。「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?

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漫画フリージアに見られる狂気性

漫画「フリージア」を一読して最初に感じるのは絵柄からもたらされる不安定さである。先輩漫画家田島昭宇の影響下にあると思われる細い線を多用した漫画でありながらリアル寄りの描線が紡ぐグロ描写・ゴア描写・エロ描写は読み手の感情を逆撫でして止まない。漫画表現としての極北が漫画「フリージア」にはある。

漫画表現としての狂気性

漫画「フリージア」は好き嫌いがハッキリ別れる絵であるし評価も難しい。絵柄で漫画をチョイスしたり好きな漫画家を決める読者が大半であることを考えると大きなハンディにもなっている。だが、最終回まで読み進めていくうちに引き込まれる不思議な力が存在していることも事実で真に読み手を選ぶ漫画が「フリージア」だといえる。

ストーリー漫画としての狂気性

漫画「フリージア」は敵討ち代理人となった叶ヒロシの物語であるが、自分が何者であるか判らず在るべき姿を模索する叶は精神に大きな欠陥を持ち意味不明なモノローグやダイアローグがひたすら続く。故に単純にストーリーを追うという漫画本来の真っ当な読み方ができなくなってしまい、読者も叶と同じような不安を抱えたまま漫画「フリージア」を読み進めていくこととなる。「フリージア」はホラー漫画として読むことも可能だ。

漫画「フリージア」のその他の登場人物も何かしらの欠陥を抱えていて物語を暗く彩る。あらゆる狂気が渦を巻く漫画世界。漫画「フリージア」は最終回まで全くパワーダウンすることない。絵柄と物語の両面に狂気を孕んでいる「フリージア」はまさに稀有な漫画だ。

漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!隅川に対して叶チームが挑む

叶チームは過去に保険金殺人を犯したヤクザ幹部隅川に代理人執行を行う。隅川には警護人として「幽霊」と異名を取る凄腕の立花が就いた。叶は死闘に次ぐ死闘の末に幽霊を殺し、隅川の処理にも成功した。だが、幽霊が今際の際に叫んだ「このままではお前も俺と同じ末路を辿るぞ」の言葉に困惑する叶。

幽霊から不当な評価を受けたことで彼の精神世界は更に深い所へ落ち込んでいく。叶の落ち込みに引きずられるように溝口、山田の精神の落ち込みも深まる。「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?

「フリージア」主人公叶ヒロシとは何者か?

漫画「フリージア」主人公叶ヒロシは眼鏡に地味な服装の青年でおよそ敵討ち代理人に向いているとは思えないが、軍隊出身者で常に冷静沈着な判断力とそこで会得したと思われる擬態(敵に自分の位置を悟らせない能力)を武器に任務を「仕事」として忠実に成功に導いている。一方でその内面は非常に不安定で、自身の内部のバランスを保つために彼にしか見えない「友人」を創り上げている。

友人は当初ヒグチの姿をしていたが、代理人仕事で殺めた人間へと姿を変えてしまい彼を闇の奥へと引きずり込む。叶は痴呆状態の母親と行きずりで知り合った恋人ケイコと三人暮らしをしている。その関係は良好ではなく、しばしば家の中では漫画として捉えるにもおぞましい場面が繰り広げられている。

漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!元テロリスト岩崎の敵討ち代理を行う

叶チームは過去にSPを殺害した元テロリスト岩崎の敵討ち代理を行うこととなった。当初岩崎は執行を甘んじて受けるつもりでいたが、身を挺して彼を守った仕事仲間のシバザキの死と心の拠り所であるメル友のコトミに何が何でも会うために敵討ちのルールを破り逃げ出し、コトミの元へ向かった。

叶は最初岩崎を処理せずに逃がしてしまうがその後コトミが住む地域まで追い詰め、名乗らずにコトミと出会った岩崎の心の充足感を確認した上で彼を処理する。岩崎との一件後叶の心境に小さな、やがて大きくなる変化が生ずる。「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?

ネタバレ有り!ストーリーテラーとしての漫画家松本次郎

漫画「フリージア」は高い狂気性を孕んだ漫画であると先述したが、狂気性の陰に隠れて実は非常に緻密に計算されて描かれた漫画であることが物語の端々に窺える。漫画「フリージア」には幾つもの複線が散りばめられているが、ほとんど回収されている。漫画「フリージア」が単純に破綻したストーリー漫画ではないということだ。

その一端が岩崎のエピソードの中で見られる。岩崎が自室でコトミとメールを交わすシーンでテレビに映っているのは叶最後の仕事相手となる田中慶太なのだ。漫画「フリージア」内で所謂「ラスボス」の存在を比較的初期にしかもさりげない形で提示している漫画「フリージア」を見るにつけストーリーテラーとしての漫画家松本次郎に畏怖の念を抱く。

漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!追い込まれて行く溝口

叶の存在を疎ましく思う溝口は代理業務の完遂が難しくなるほど精神を蝕まれていく。一方山田は正義感や原理主義が薄れ後輩を指導するまでの清濁併せ持つ代理人へ成長する。そんな中叶は岩崎の一件と自らを愛してくれているケイコとの間に関係性を見出し、内面の平穏を得つつあった。

交通事故で親子を殺害した寺島の敵討ちを叶と新米の金子・飯島のチームで行うこととなった。寺島には幼馴染の元ヤクザ井出と女警護人岩尾が就いた。飯島が井出と岩尾に殺され金子も重症を負う中、叶は何かを悟ったかのように理詰めで寺島を処理し、岩尾との一騎打ちとなるが金子が場を収めて岩尾は生き延びることとなった。「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?

「フリージア」における漫画家松本次郎のユーモアセンス

漫画「フリージア」は狂気の物語であると再三書いているが、漫画家松本次郎はこの殺伐とした漫画「フリージア」に潤いを与えようとしてか幾つかのユーモアが盛り込まれている。場面の随所に猫の「みー太」という漫画らしいゆるキャラっぽいものを配置したり、岩崎とシバザキ、寺島と井出の奇妙な友情を時には漫画チックにコミカルに描いている。また寺島処理のエピソードには先達漫画へのオマージュが見て取れる。

井出の死体を運んで逃げようとする寺島、とうに事切れている井出を起こそうとする寺島のシーンは人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第4部で吉良吉影のスタンドで致命傷を負った虹村億泰を介抱する東方仗助のシーンに通ずるものがある。女警護人岩尾の生還と併せてこのエピソードにはその他のエピソードにはないユーモアが感じられる。漫画「フリージア」内でも異色のものとなっている。

漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!溝口が叶殺害を企てる

精神に異常をきたした溝口はかねてよりDVを行っていた妻を自殺に追い込んだことで完全に錯乱状態となってしまい、実行に移せないでいた叶殺害を決意する。周到に準備を重ね、叶への尾行を繰り返し遂にその時が来た。武装した溝口は買い物帰りの叶を襲うが失敗に終わる。呼び止められた警官隊に発砲し、幻影に追われ街中で暴徒と化した溝口に鉄槌を下したのは連続通り魔犯人の女子高生だった。

断末魔に溝口は死に追いやった妻ヨシコの名前を呟いた。そしてケイコと母親との平穏な暮らしを夢見て精神に平穏が訪れつつあった叶にもまた再び闇のどん底へと落ちて行く出来事が起きようとしており、そこから来る違和感が彼を覆いつつあった。「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?

漫画におけるグロテスク描写のゴア描写について

漫画はその進化の過程で「描写」を重視する傾向が強まった。「リアルさ」と言い換えても良い。その発端となったのは漫画の神様手塚治虫に対するアンチテーゼ漫画としての劇画の誕生であり、劇画が進化し更に天才漫画家大友克洋によるリアルな絵柄の誕生で漫画のリアル信仰は決定的なものとなった。リアルさによって際立つ漫画表現がグロ描写とゴア描写である。漫画「フリージア」内にふんだんに盛り込まれている。

漫画「フリージア」内でのグロ・ゴア描写

本来楽しんで読むものであった漫画に持ち込まれたこの両描写は「リアルさ」の名の下で皮肉にも進化し、その「リアルさ」故に有害として規制の対象になっていく。規制についての考察はさておき、松本次郎の絵柄にもその痕跡は見て取れる。グロとゴアの両方を見事に表現してみせたのが溝口の妻ヨシコが彼の作ったスパゲティを食べては吐き戻しする場面である。ひたすら気持ち悪い描写であるが故に印象に残ってしまう。

漫画フリージアのあらすじをネタバレ紹介!最終回の結末は?

国会議員を親族に持つ青年田中慶太。彼は政治組織アジア連合自由同盟の代表であり、ルックスの良さも手伝いメディアに露出することでタレント的な人気があった。しかし、彼もまた幼少時のトラウマから精神に異常をきたすことがあり、衝動的に人を殺した過去があった。漫画「フリージア」内でも印象に残る描写がなされている。

最終回へ向けての田中慶太

その過去は親族によって揉み消されたが、政治闘争に利用され敵討ちの対象となってしまう。恋人で元アイドルのYO-KOとの生活に価値を求めようとするが、彼女は賊に襲われ重傷を負い声を失ってしまう。漫画「フリージア」において叶の最後の敵討ち対象者であり先述のようにラスボスである。2人の対決で漫画「フリージア」は佳境を迎える。「フリージア」とは何か?「フリージア」は何処に?「フリージア」の意味とは?

最終回へ向けての叶ヒロシ

ケイコ、母親との平穏な暮らしに価値を見出していた叶は敵討ち代理人を辞め他街へ引っ越すことを決めた。辞表を出した後叶は驚愕の事実を知ることになる。実はケイコは隣に住む間男の鈴木に惨殺されており、その遺体と共に数ヶ月暮らしていたのだった。会話をしていたケイコは彼が創り出して鳴りを潜めていた「友人」であった。心の拠り所を残酷な形で失ってしまった叶は最後の代理人仕事として田中処理へと赴く。

ネタバレ有り!ストーリーテラーとしての松本次郎

漫画「フリージア」について、意外と言及されることが少ないようだがタイトルの「フリージア」が謎だ。何故「フリージア」なのか?それが明らかになるのが漫画「フリージア」内で田中の執行前に田中と声を失ったYO-KOが病床で会話(筆談を交えて)するシーンである。

花瓶に活けてあった花がフリージアでYO-KOはフリージアの花言葉が「将来への展望」だと教える。また、叶は花売り少女美保とわずかではあるが心を交わす。花は2人にとって重要なメタファーとなった。叶と田中にフリージアがもたらす「将来への展望」はあるのか?フリージアを見つけられるのか?フリージアを求めて2人はやがて決戦の場を迎える。フリージアはどちらの手に?

フリージア最終回に将来への展望はあったのか?

超法規的措置で田中が常に買い物をしているデパートの1階が敵討ち執行場所となった。敵討ち代理人は叶含め6人、田中の警護人は8名一般人を巻き添えにしながら銃撃戦が繰り広げられ1人また1人と双方犠牲者を出した。

叶は田中を追い詰めるがそこに敵国の爆撃が起こり田中は逃げ延びる。叶も生き延びるが程なく終戦となり日本は敗戦国となってしまう。情勢が変わり敵討ち制度は廃止となり追われる身となる叶。しかし、「友人」を利用し更に生き延びた叶がオープンカフェで佇む田中の前に血塗れの状態で現れ銃口を向けた。フリージアはどちらに微笑んだのか?

「フリージア」漫画版と映画版の相違点

漫画「フリージア」は2007年に玉山鉄二主演で映画化された。この時点で完結していなかったし漫画「フリージア」の狂気は大衆娯楽としての映画向きではないので仕方ないのだが、漫画「フリージア」が放っていた狂気性は完全に失われてしまっている。漫画版「フリージア」の輪郭をなぞっただけの別物と化している。

映画版「フリージア」は狂気性では残念ながら漫画版「フリージア」の足元にも及ばない。あくまで漫画版「フリージア」を元にした別のドラマとして鑑賞する必要がある。どちらも未見であれば先ず映画版「フリージア」を観てから漫画版「フリージア」を読んだ方が良いだろう。

フリージアは評価が難しいと言われる程大きな作品だった!

漫画「フリージア」は非常に評価が難しい漫画のようだ。漫画全体を大きく暗く包んでいる狂気に気を取られるとそれだけの評価になってしまうからである。登場人物は皆一様に狂っていて感情移入がし辛い。だが、最終回まで読むとぼんやりと漫画物語のテーマが見えてくるようだ。松本次郎は漫画「フリージア」で良いも悪いも併せ持った「人間そのもの」を描きたかったのだ。

その手段としてあえて人間の醜い部分をカリカチュアライズして読者に提示して見せたのだ。醜い部分を強調することで浮かび上がる高潔な部分もある。叶がケイコ、母親と見果てぬ地で新生活を夢見たこと。田中がYO-KOに花屋をさせて自分は見守ること。どちらも叶わなかったが狂気の渦の中でとても美しく輝いている。2018年に入って愛蔵版とKindle版が刊行された漫画「フリージア」を是非ご一読をしてはいかがだろうか?

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