零落のネタバレあらすじと感想まとめ!タイトルの意味は?【浅野いにお】

漫画作品『零落』(れいらく)は、40歳を目前にした漫画家を主人公にした物語です。作者の浅野いにおさんの、通算10作目の連載漫画にあたります。2017年の10月に、1巻完結で単行本が発売されています。主人公の漫画家は、作者の浅野いにおさん自身がモデルになったのでは?という感想も多いです。また、実際の漫画家や編集の方がモデルとなっていそうな場面も多くあります。この記事では漫画作品『零落』のあらすじをネタバレ込みでご紹介、そして作品タイトル『零落』の意味や、読まれた方の感想などもご紹介していきます。

零落のネタバレあらすじと感想まとめ!タイトルの意味は?【浅野いにお】のイメージ

目次

  1. 零落と作者・浅野いにおについて
  2. 零落のあらすじネタバレ
  3. 零落のタイトルの意味
  4. 零落の魅力
  5. 零落を読んだ感想や評価は?
  6. 零落のネタバレあらすじと感想まとめ

零落と作者・浅野いにおについて

『零落』の作品情報

『零落』(れいらく)は、ある男が漫画家として、男として枯れ落ちるさまを、描いた作品です。青年漫画雑誌ビッグコミックスペリオールで2017年7号~16号まで連載され、現在は1巻完結の単行本が発売されています。電子書籍で購入することも可能です。『零落』の主人公は40歳を目前にした漫画家の男性です。物語は、主人公の漫画家である深澤の、8年間続いた連載漫画が終わった時点からスタートします。

『零落』で描かれる深澤の人生は、漫画の連載が終わり、10年暮らした妻との関係も終わりを迎えるころです。陰鬱とした日々を過ごす中で、妻が飼っていた猫や、デリヘル嬢のちふゆを心のよりどころにします。

最終的には妻と別れ、これまでの考えを曲げることで、新しいヒット漫画作品を生み出します。そして深澤はその漫画の発売を記念したサイン会で、長年の女性ファンから感想を言われます。『零落』はずっと漫画と向かい合っていた漫画家と、漫画の対峙を。そして女性たちとの対峙を描いた、漫画作品です。

『零落』の作者・浅野いにおのプロフィール

浅野いにおさんは持ち込みから1週間でデビューされた漫画家です。そしてデビュー作は処女作で、わずか4ページの作品なのです。漫画家・山本直樹さんの代理の原稿として、『ビッグコミックスピリッツ増刊Manpuku!』に掲載されました。デビューして読み切り作品が何度か掲載された4年後に、連載を持たれます。この連載を持つまでの間、たびたび編集者と衝突しながら、作風を模索していたそうです。

漫画家として活躍されるほか、イラストレーターとしても活躍されています。また音楽への造詣も深く、バンド活動や作詞提供もされています。そして2018年12月21日~2019年1月14日までは画業20周年を記念して、池袋サンシャインシティで、大規模な展覧会が開催されました。

零落の作者・浅野いにおの他作品

浅野いにおさんの他作品を、いくつかご紹介します。代表作として映画化もされた『ソラニン』、6年間に渡って連載された『おやすみプンプン』などがあります。2019年の現在は『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』が、ビッグコミックスピリッツにて連載中です。どの作品においても、抒情的な情景描写、陰鬱とした心理描写に、定評があります。

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零落のあらすじネタバレ

第1話あらすじネタバレ:8年間の連載を終えた深澤

『零落』は主人公・深澤薫が、過去の女性を回想するシーンからスタートします。そして舞台は現在に移ります。深澤は30代後半で、若い読者を中心に人気を博した漫画家です。8年間続いた連載漫画を完結させますが、最終巻は本屋の取り扱いも悪く、発行部数も減らされています。編集部によって打ち上げパーティーが行われますが、深澤のスピーチを真剣に聞くものは少ない状態です。

深澤には漫画編集者の妻がいました。妻・のぞみは人気の女性漫画家の担当で、忙しい日々を送っています。深澤は、妻の立場や考えに嫌気がさして、離婚を切り出します。主人公深澤の、漫画や妻との繋がりが消えて、落ちぶれていくさまが始まり、『零落』の第1話は終わります。
 

第2話あらすじネタバレ:ちふゆとの出会い


次の連載が決まらない深澤は、アシスタントたちに事務所の解散を言い渡します。そしてアシスタントの女性、富田に散々文句を言われます。深澤はその場を頭を下げてやり過ごします。その出来事やSNS上の悪評判で、鬱憤がたまった深澤は、デリバリーヘルスを依頼します。やってきたデリヘル嬢は、細身で猫目の女性でした。女性は、深澤が新人漫画家時代に付き合っていた女性と、似ていました。名前は『ちふゆ』です。

第3話あらすじネタバレ:周囲の人間との衝突

第3話、冒頭で深澤は、漫画についての本の、インタビューを受けます。そしてインタビュー中に出た『漫画愛』という言葉にいらだちます。インタビュー後、自分の担当編集者に打ち合わせを願いますが、断られます。この辺りのシーンは浅野いにおさんの、編集者と衝突したという実体験が、元になっていると考えられます。

そして事務所解散後にも関わらず、元アシスタントの女性、富田が深澤のもとに来ます。ねちねちと文句を言う富田を、深澤は嫌い、追い返します。うまくいかない深澤は、ちふゆを何度も指名して、それを心のよりどころにしていきます。

第4話あらすじネタバレ:ちふゆの故郷へ

深澤は友人、山石の自宅を訪れます。妻との関係や仕事への姿勢など、これまでのことを会話します。そして離婚届の証人にサインしてもらい、深澤は山石と別れます。深澤は担当編集者に打合せを断られ、『人気漫画家の編集者』として妻・のぞみがテレビに出ているのを見て、虚無感をつのらせていきます。そしてまた、ちふゆに会おうとします。

デリヘルを予約する電話で、ちふゆが今月いっぱいで店をやめることを知ります。ちふゆは祖母の介護のため、一時的に故郷へ帰ると、深澤に話します。深澤は、途中までついていっていいかとちふゆに聞きます。翌日、ふたりは電車でちふゆの故郷へと向かいます。

第5話あらすじネタバレ:ちふゆとの別れ

深澤はちふゆの故郷を訪れます。田舎町で道すがら、ちふゆは幼馴染の友達の話をします。その友達はリサイクルショップで安くなった漫画を買う子だったようで、ちふゆは「100円の漫画のために一生を棒に振るのは嫌」と話します。実はちふゆは深澤とライン交換した時に、深澤の登録名から、深澤が漫画家だと知ったのです。深澤はちふゆに職業を聞かれても「宇宙飛行士」などと言って、答えてきませんでした。

深澤はこれまでより、微妙に態度を変えて接してくるちふゆに、失望します。ちふゆの故郷から離れる時、ちふゆとの未来を妄想しながらも、静かに彼女と別れます。この流れには『自分が漫画家だと知られるのが嫌だったのではないか』『二人の関係が変わって切ない』という感想が、寄せられています。
 

第6話あらすじネタバレ:苦悩の日々

季節は冬。深澤は夏に妻と別居し、仕事場を引き払い、自宅に戻っていました。部屋の片づけも仕事も手つかずのまま、深澤は日々を過ごします。堪えたのは妻が飼っていた猫に会えないこと。人恋しさはSNSで解消する日々を送っています。出版社のパーティーで妻・のぞみを見かけるも無視。ちふゆとの連絡も途絶えています。

そんな深澤のもとへ、元アシスタントの女性・富田がやってきます。富田は深澤に漫画を見せて、深澤に難癖をつけます。「私はあなたとは違って漫画を愛してる」などと話す富田に、深澤は激昂します。「帰れ」と部屋から富田を追い出したあと、玄関に座り込みます。やがて物音がします。富田が戻ってきたと思った深澤は、怒って玄関の扉を開けます。そこに立っていたのは富田ではなく、妻・のぞみでした。

第7話あらすじネタバレ:妻・のぞみとの別れ


郵便物を取りにきただけと言うのぞみ。降り出す雨。のぞみが担当漫画家の原稿を抱えていることに気づいた深澤は、彼女を部屋に招き入れます。離婚届にまだ名前を書いていないのぞみは、深澤に「別れたくない」と言います。しかし、のぞみは話し合いの途中に「担当漫画家と待ち合わせている」と立ち上がります。「あの作家はあなたより売れている」そうのぞみに言われた深澤は、のぞみを抱いたあと、決別します。

最終話あらすじネタバレ:猫目の女性

最終話は、第1話と同じく深澤の回想からスタートします。新人漫画家時代、深澤は連載が決まった時に、先輩から漫画について語られます。深澤はこの時にたまった鬱憤を「軽々しく口にしたくないくらい漫画に対して愛情はある」と、当時の恋人にこぼしています。その恋人は猫目の女性です。

深澤は、売れ筋を狙った連載漫画を描きます。そしてその漫画は、新宿で深澤のサイン会がひらかれるほど、人気が出ます。深澤はそのサイン会で、長年漫画のファンだと言う女性に出会います。女性に漫画の感想を言われますが、それは深澤の望んでいたものとは違うようです。うつむいて涙を零し、声を落とします。再び回想。深澤は、漫画への向き合い方と、猫目の恋人のことを思い出します。

零落のタイトルの意味

『零落』は、落ちぶれることを意味する

タイトル『零落』についてネタバレします。『落ちぶれる』という意味です。このタイトル『零落』の意味が示すとおり、主人公はヒット作を完結させたあと、なかなか次回作が出せず、周囲との関係も悪化していく生活を送っています。また『零落』には主人公以外にも日々に苦しむ人間や、欲のあまり品格を失った人間などが登場します。『零落』しているのは主人公だけではないと、言われています。

『零落』『凋落(ちょうらく)』『没落』との違いは?

『零落』は、もともと草木が枯れて落ちることを表現する言葉のようです。そこから、人が落ちぶれることを表現する言葉にも、なったようです。類語に『凋落』(ちょうらく)や『没落』があり、いずれも『落ちぶれる』を意味します。細かくネタバレすると『凋落』(ちょうらく)は花がしぼみ落ちることから人が落ちぶれることを表現する言葉になったもので、衰えて死ぬ、という意味もあります。

『没落』は落ちぶれて滅びるという意味の他に、城や陣地などが敵の手に落ちてしまうことなども、意味します。凋落や没落は、零落より恐ろしい意味と考えられます。人生や漫画について苦悩する、40歳前の主人公の物語には『零落』の意味が一番、ふさわしいということもできます。

零落の魅力

零落の魅力(1)独特な世界観

浅田いにおさんの作品は前に述べたとおり、抒情的な情景描写、陰鬱とした心理描写などに定評があります。この『零落』においてもそのように定評があり、主人公深澤の職業が浅田いにおさんと同じ『漫画家』であるためか、人が持つ自尊心や消失感に、リアリティが強いと、感想が寄せられています。

零落の魅力(2)絵柄

イラストレーターとしても活躍される浅田いにおさんの絵柄は、緻密な部分と漫画的な部分とどちらも内包されていると評判です。背景は写真を加工したものを多用されてるので、映画を見ているような気分になる方もおられるようです。
 

零落の魅力(3)作者の浅野いにおの自伝?

『零落』の主人公、漫画家の深澤は、浅野いにおさんと少し似た姿に描かれています。そしてネタバレしたとおり深澤は妻と離婚するのですが…なんと浅野いにおさんにも、離婚された経験があるのです。浅野いにおさんは、その後で漫画家の鳥飼茜さんと再婚をされています。その時に結婚を祝して、お相手の鳥飼茜さんと対談をされました。

この2018年に行われた鳥飼茜さんとの対談で、浅野いにおさんは「僕はもう自己紹介漫画は描きたくないかな」と、言っています。この『もう描きたくない自己紹介漫画』とは、『零落』のことを指していると思われます。二度と描きたくないと言われるくらいですから、『自伝』の部分があるのではと噂されています。

零落の魅力(4)実際の編集者も登場?

『零落』にはモデルがいるのでは?と思わしき人物ばかりです。特にそう感じるのは深澤がインタビュー中に「漫画家だからって漫画を愛してる前提で話すのやめてもらえませんか?」と突っかかる編集者とライターです。『このマンガがすごい!』の担当の方かと噂されています。このほか、実際の女性漫画家がモデルと噂されるキャラクターもいます。外見や描く絵柄が、その実際の女性漫画家のものとそっくりなのです。

零落の魅力(5)偏屈な漫画愛

主人公の深澤は漫画を愛しているといえなくもない、そんな感情を抱えています。その深澤の感情は、他者には一見でわからないものとして描写されています。編集者たちと衝突するエピソードのあと、深澤は「あのライターって人もネットレビュー斜め読みしたみたいな質問…」と、いらついています。「漫画家だからって漫画を愛してる前提で話すな」と言った直後に「俺の漫画を適当に読むな」と、言ったようなものです。

アシスタントの女の子と衝突する時も「軽々しく漫画愛とか言うな」と怒ります。この深澤の漫画への感情は、ラストのページまで使って表現されています。

零落を読んだ感想や評価は?

『零落』の大まかなあらすじや魅力を述べたので、読者の方の感想をご紹介していきます。『零落』のことを『気分が落ちる話』と称した上で、『嫌いじゃない』と言っている方もおられます。浅野いにおさんの代表作『ソラニン』を、青春だったと述べられています。

長年の浅野いにおさんファンである方からは、好評価なものが多いようです。やりたいようにやっていい、食い入るように読んだという感想も、あがっています。


そして『零落』には、浅野いにおさんの他作品は趣味ではないけれど『零落』はハマった…!という感想も、見受けられます。『零落』が持つ独特のリアリティが、新たな読者を引き寄せたと評判です。
 

零落のネタバレあらすじと感想まとめ

浅野いにおさんの『零落』について、あらすじをネタバレ込みで、魅力や感想などもご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?『零落』の主人公・深澤は『誰もが感動する話題作』このような煽り文句がついた漫画の帯に、強いわだかまりを抱く男です。陰鬱としたある漫画家の人生の一部をつづったものです。単行本としてはもちろん、電子書籍の配信もあります。『零落』している主人公の物語、ぜひ読んでみてください。

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