25時のバカンス(市川春子作品集2)をネタバレ考察!内容や感想は?

25時のバカンスは、アニメ化して話題となった『宝石の国』の市川春子さんの作品集です。25時のバカンスの美しく奇妙なストーリーは難解な部分もあり、様々な考察がされています。読者によって解釈の分かれるこの25時のバカンスは、いったいどんなあらすじなのでしょうか?今回は、作者の市川春子さんのプロフィール、そして25時のバカンスに収められている3つの短編漫画のあらすじをネタバレ紹介します!

25時のバカンス(市川春子作品集2)をネタバレ考察!内容や感想は?のイメージ

目次

  1. 25時のバカンス(市川春子作品集2)の内容や感想を紹介!
  2. 25時のバカンスとは?市川春子についても紹介!
  3. 25時のバカンス(市川春子作品集2)のあらすじをネタバレ考察!
  4. 25時のバカンス(市川春子作品集2)を見た感想は?
  5. 25時のバカンス(市川春子作品集2)の内容や感想まとめ

25時のバカンス(市川春子作品集2)の内容や感想を紹介!

25時のバカンスは市川春子さんによる漫画作品で、表題作を含む3編からなる短編集です。読者によっては「難解」と言われ様々な考察がなされるこの25時のバカンスには、どのような話が収録されているのでしょうか?25時のバカンスのあらすじと読者の感想をネタバレ紹介していきます。

25時のバカンスとは?市川春子についても紹介!

市川春子プロフィール

市川春子さんは千葉県出身の漫画家です。大学卒業後は一度デザイナーとして活動しますが、自身のアイデアを全て盛り込めるものとして漫画という媒体を選び、執筆を始めました。デビュー後この25時のバカンスを含む短編をメインとして発表していましたが、2012年に初の長編『宝石の国』を連載開始。この宝石の国は2017年にアニメーション化され大きく話題を呼びました。

幼いころから花や虫が好きだったとインタビューで語る市川さん。そういった身近な「生命」どうしの関わり合いを描いた漫画が25時のバカンスを含めた作品集に収められています。無機質でありながらもどこか情欲的なキャラクターデザインもファンから高い評価を受けています。

25時のバカンスとは?

25時のバカンスは、2010年から2011年にかけて月刊アフタヌーンに掲載された3本(うち1本は前後編)の短編漫画を収録した短編集です。マンガ大賞ノミネート作品でもあります。海底、月、宇宙を舞台に独創的な物語が繰り広げられ、モダンなタッチの作画と詩的な台詞で生命の彩りが美しく描かれています。

25時のバカンス(市川春子作品集2)のあらすじをネタバレ考察!

25時のバカンスには、異形の姉弟の関係を描いた表題作、土星に立地する女学院のSFストーリー『パンドラにて』、高校生が北国で月の王子と出会う『月の葬式』の3編が収録されています。それぞれどのような話なのか、考察も交えながら25時のバカンスのあらすじをネタバレ紹介していきます。

『25時のバカンス』のネタバレあらすじ

25時のバカンスは、閉鎖しかけている深海生物研究所の副室長である乙女(おとめ)という女性が主人公です。天才美人化学者として研究所の中心的人物でもあった乙女ですが、研究所閉鎖にあたって管理していた生物や職員の差配に追われ全く休みをとっていないことが分かり、強制的に研究所の保養所で有休をとることになります。

共にバカンスを過ごすことになったのは12歳年下の弟、甲太郎。甲太郎は世界を飛び回るカメラマンで、仕事のついでに大好きな「奇妙な生き物」の写真を撮ることを趣味としています。そんな甲太郎は幼い頃の事故で左目が真っ赤に染まっているという身体的特徴があります。その容姿が原因で心無い言葉をかけられたこともある甲太郎ですが、乙女の「私は好きだ」という率直な言葉に安心したというエピソードも語られました。

甲太郎を呼び寄せたのには理由があり、撮影してほしいものがある、と乙女は甲太郎に頼みます。そして撮影の約束の時間である25時、甲太郎は信じられないものを目にしました。乙女は深海の貝に身体を侵食され既に中身を食い尽くされた状態で、いま甲太郎の目の前にいるのは貝の中のバクテリアの力によって再構築された身体だというのです。戸惑う甲太郎をよそに、乙女は「珍しい生き物好きだろう」と撮影を望むのでした。

貝に侵食された乙女

25時のバカンスのなかでも特に印象的な、甲太郎に撮影される乙女のシーンです。カメラのレンズ越し(=甲太郎目線)にフラッシュを浴びる乙女は、「他人に見えないか」と問いかけます。そして視点が切り替わり、ガラスに映った甲太郎(=乙女目線)が「姉ちゃんにしか見えねぇ」と返すのです。一見何気ないやりとりですが、その後乙女は少し残念そうな表情をします。

直接的な描写はありませんが、物語が進むうちに甲太郎に対する乙女の秘された感情が少しずつ露わになっていきます。研究所の職員から頼りにされている乙女は、休み中だというのに結局色々な用事で研究所に引っ張り出されてしまいます。そんな姉を見かねた甲太郎は職員の一人に頼みい二人きりになれるよう協力してもらうのですが、そうこうしているうちに乙女の身体の中の貝が一匹ずつ深海に帰っていってしまいました。

貝がいなくなったためだんだんと動かなくなり、とうとう割れてしまった乙女の身体。乙女は甲太郎に割れた部分から身体の中に手を入れ、あるものをとって欲しいと頼みます。乙女の身体から出てきたのは、貝の協力を得て体内で作った義眼でした。これがあれば甲太郎の赤い目を治すことができると乙女は言います。甲太郎が怪我をした瞬間を目撃した乙女は、それに見とれてすぐ救急車を呼ばなかったことをずっと後悔していたのです。

異形の姉弟、乙女と甲太郎の関係

乙女の告白を聞いた甲太郎は驚きますが、姉と同じ"異形"の赤い目を覗かせ真剣な表情でそれを受け止めます。深夜の撮影のときから、次第に気づき始めた乙女の想い。甲太郎への献身的ともいえる愛情は、ただの家族に向けられたものとは言い切れません。

乙女の甲太郎に対する感情については読み手にゆだねられている部分が大きいです。しかし、乙女が身体の中を探らせるシーンや甲太郎へ向けられる意味深な表情と台詞から、単なる姉弟愛だけでなく近親愛と考察した読者もいるようです。乙女が失った足の代わりに義足を作ってくれた甲太郎とともに過ごす、25時のバカンスの美しいラストシーンは必見です。

『パンドラにて』のネタバレあらすじ

25時のバカンスの2作目は、土星の衛星"パンドラ"が舞台のSF作品です。「卒業後は衛星"エンケラドゥス"で研究を行うことができる」という建前で、パンドラには選び抜かれたエリートの女子生徒が集められます。その学校のはみ出しもの「ナナ」が物語の主人公です。ナナは全身真っ黒で一言も言葉を発さない少女「ロロ」と出会い、やがて優秀な学生と成長していきます。

ロロの正体は、ナナの兄が開発したロボット"クアドラ"の中に入った知性のある細菌でした。ナナの兄は妹の素行を正し落第を防ぐため、以前ナナと親しかったクアドラを送り込んだのです。そして明らかになっていくパンドラの真の目的や、ロロとナナの隠された友情。パンドラに集められた少女たちの運命は思わぬ方向に動いていきます。

『月の葬式』のネタバレあらすじ

25時のバカンスの3作目は、感受性の高い天才高校生がストレスから北国に逃避してしまうお話です。高校生は北国を彷徨ううちに、一人の男性と出会います。男性は高校生を匿うかわりに、屋外でなくしてしまった何らかの"リモコン"探しを手伝ってほしいと言いました。町の人々から好かれている様子の男性ですが、毎度適当なことを言っているのか誰一人その本当の正体を知る人はいません。

ある日、男性は「自分は月の地下に住んでいたが、流行り病に罹り地球に静養に来た」と高校生に教えます。皮膚が硬化してボタンのような形で剥がれ落ちてしまい、やがて内臓だけになってしまう奇病。高校生は家族の医者に見せようとしますが、地球の医学では治すことができないと拒否されてしまいます。リモコンの行方と、高校生の決意。地球人と月人との不思議な絆が描かれます。

25時のバカンス(市川春子作品集2)を見た感想は?

貝殻や宝石などの「無機物」を題材に、不思議で新しい生命のあり方や愛情を描き深く考察できる市川春子さんの作品に心を惹かれるファンは多くいます。25時のバカンスもそのうちのひとつです。

意味のつながりの危うい散文のセリフは、コマの中に文章を配置するマンガならでは。ほっそりした人物を割って穴空ける。詩的なセリフとグロで身体性とローーーマンチックなSFがスゴいぜ。

こちらは漫画ならではの表現を高く評価した感想です。25時のバカンスで乙女が顔を開き中の貝を見せるシーンや、月の王子が穴だらけの身体を晒すシーンはグロテスクでありながら、繊細な線で丁寧な描写にロマンを感じる読者もいるようです。

ちょっと気持ち悪いしちょっと怖い、けれど手に取らずにはいられないし読み始めたら止まらない。そういう魅力があると思う。

25時のバカンスをはじめ市川さんの作品は、絵柄がシンプルだからこそコマ間に躍動感があり次々と広がっていくストーリーから目が離せない、と読者から評されています。キャラクターどうしのやり取りも簡素であるため、読み手によって文脈を探る考察がなされ、様々な解釈が生まれ続けています。

25時のバカンス(市川春子作品集2)の内容や感想まとめ

25時のバカンスに収録されている3編のあらすじをネタバレ紹介しましたが、いかがでしたか?どれも現実と空想が入り混じった不思議な世界とキャラクターが魅力的な作品となっています。

詩のようなテキストと一切無駄のない洗練された絵で構成されているため、そこから何を読み取るか人によって異なるこの作品。ぜひ25時のバカンスを読んで、自分なりの考察を楽しんでみてください。

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