文豪ストレイドッグスの芥川龍之介の異能力を考察！声優や太宰治との関係は？

TVアニメの第3期製作が決定し、ますます盛り上がりを見せる「文豪ストレイドッグス」。「文豪がイケメン化して能力バトルを繰り広げる」というコンセプトのこの作品には、著名な文豪と同じ名前を持つキャラクターがたくさん登場します。この記事では文豪ストレイドッグスから主人公たちと敵対するポートマフィアの構成員・芥川龍之介に注目し、異能力「羅生門」や太宰治との関係性、担当声優の小野賢章の代表作を紹介します。

「文豪ストレイドッグス」は朝霧カフカ原作、春河35作画による漫画で、2013年から「ヤングエース」で連載されています。2016年にはTVアニメ第1期、第2期が放送され、2018年3月に完全新作となる劇場版「文豪ストレイドッグス　DEAD APPLE」が公開されました。2018年9月現在、TVアニメ第3期や舞台版「文豪ストレイドッグス　黒の時代」の公演も控えている人気作品です。

実在した作家や作品がキャラクターや異能力の名前として引用されていることから、角川文庫や各地の文学館とのコラボも頻繁に行われており、描き下ろしイラストやパネルが展示されることもあります。文豪ストレイドッグスは若い世代が文学作品に興味を持つきっかけにもなっているようです。

暮らしていた孤児院を追い出され、行くあてもなくヨコハマの街をさまよっていた中島敦は、鶴見川で入水自殺をしようとしていた太宰治と出会います。太宰は異能力によって難事件を解決する探偵集団「武装探偵社」のメンバーで、近頃出現する「人食い虎」の捜索をしているのでした。中島も成り行きからそれを手伝うことになりますが、太宰は中島こそが「人食い虎」の正体だと告げます。

実は中島は異能力「月下獣」の持ち主で、無意識のうちに虎に変身して徘徊していたのです。太宰の異能力「人間失格」によって鎮められた中島は、太宰のスカウトにより武装探偵社に入社することになりました。しかし、中島には何故か海外の異能力者団体から高額の懸賞金が懸けられており、ヨコハマを根城とするポートマフィアから狙われるようになり、次第に異能力者同士の戦いに巻き込まれていきます。

文豪ストレイドッグスの芥川龍之介は、黒い外套と「僕（やつがれ）」という一人称が特徴的な20歳の青年です。公式プロフィールでは身長172cm、体重50kg、誕生日は3月1日、血液型はA型、好きな物は骨董、茶、無花果、嫌いな物は盆栽、犬、風呂、蚕豆、蜜柑となっています。異能力は「羅生門」ですが、これについては後の項目で詳しく解説していきます。

文豪ストレイドッグスに登場するポートマフィアは、ヨコハマ一帯を縄張りとする闇組織です。現首領は森鷗外で、幹部をはじめ多数の異能力者で構成されています。ポートマフィアに逆らって生きていた者はいないと噂され、政府や軍からも怖れられています。芥川は首領直属の遊撃隊隊長で、特殊部隊に匹敵する戦闘能力を持つ実働部隊「黒蜥蜴」の指揮権も有しており、異能力者の中でも特に危険視されています。

ポートマフィアの首領である森の命令で中島をつけ狙う芥川は、殺戮に特化した異能力「羅生門」をためらいなく使い、一般市民を巻き込むことも厭わない冷酷非道な性格の持ち主です。また、プライドが高く他人を寄せ付けない一匹狼でもあります。その一方で、部下の危機を救うために異能力を使ったり、裏切りを犯した部下を許そうとするような優しさを見せることもあります。

芥川は身寄りのない子供で、唯一の肉親である妹と境遇を同じくする仲間たちと貧民街で暮らしていました。しかし、ある日ポートマフィアの下部組織構成員に仲間たちを殺されてしまいます。芥川は単身で復讐に向かいますが、当時幹部に昇格したばかりの太宰治に認められ、妹と共にポートマフィアに加入することになりました。ちなみに、芥川が時々咳をしているのは、貧民街で暮らしていた頃肺を患ったためです。

先の項目でも少し触れましたが、芥川には妹がいます。名前は銀といい、黒蜥蜴の十人長を務めています。異能力は持っていないものの、忍者のような俊敏な動きと袖に隠し持った小太刀を武器としています。細身な体格で男性と間違えられることもしばしばですが、「黒髪の撫子」と絶賛される美貌と可愛らしい声の持ち主です。名前の由来は芥川龍之介の小説「おぎん」ではないかと言われています。

芥川のモデルは言わずと知れた同姓同名の文豪・芥川龍之介です。実在の芥川は大正期に活躍し、「羅生門」、「鼻」、「芋粥」といった古典から題材を得た作品（王朝もの）、「蜘蛛の糸」、「杜子春」、「トロツコ」などの児童文学、芸術至上主義的な「地獄変」などの作品で知られています。文豪ストレイドッグスの芥川の能力の由来である「羅生門」は教科書にも採用されているので、一度は読んだことがあるのではないでしょうか。

文豪ストレイドッグスの登場人物はあくまでキャラクター化されたものであり、文豪本人ではありませんが、モデルとなった文豪のプロフィールやエピソードが反映されている部分もあります。芥川の場合は、生年月日や趣味嗜好、病弱であるという点などが実在した作家の芥川と一致しています。

豪華声優が揃い踏みしていることでも話題になった「文豪ストレイドッグス」。芥川龍之介の声は、若手声優の小野賢章が担当しました。ここでは、文豪ストレイドッグスの芥川役の声優・小野賢章のプロフィールや代表作を紹介します。

芥川龍之介の声を担当している小野賢章は、アニモプロデュース所属の声優です。公式プロフィールによれば生年月日は1989年10月5日、出身は福岡県です。2012年までは劇団ひまわり系列の砂岡事務所に所属し、子役として活動していました。ドラマや舞台にも多数出演している他、2014年からは音楽活動も行っており、声優の枠にとらわれず様々な分野で活躍しています。

小野賢章の声優としての出演作でも最も有名なのが「パリー・ポッター」シリーズで、12歳から10年間主人公ハリー・ポッター（ダニエル・ラドクリフ）の声の吹き替えを担当していました。それ以前にも「エリザベート」や「ライオン・キング」といった舞台作品に子役として出演していましたが、ハリー・ポッターへの出演は声優としての活動を始める大きな転機になったと語っています。

小野賢章は2006年に「ツバサ・クロニクル」のカオス役でTVアニメ初出演を果たし、2012年には「黒子のバスケ」の主人公・黒子テツヤ役を演じました。また、2016年から公演されている舞台版「黒子のバスケ」でも黒子テツヤを演じています。「文豪ストレイドッグス」の舞台には出演していませんが、「ReLIFE」の海崎新太のように声優として演じたのと同じ役で舞台に立つこともあります。

声優だけでなく俳優として舞台に立つことも多い小野賢章は、ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズンに山吹中学校の室町十次役で出演していました。同じく山吹中学校のキャラクターを演じた俳優の寺山武志、早乙女じょうじ、岸本卓也とは「雲水」というユニットを結成しており、現在も定期的にイベントや舞台の公演を行っています。

「極上文學」は「本格文學朗読演劇」と銘打った日本文学を題材とする朗読劇で、小野賢章は第4弾「藪の中」で盗賊・多襄丸を演じました。「藪の中」は芥川龍之介の作品で、「羅生門」のタイトルで黒沢明によって映画化されており、運命的なものを感じるファンも多いようです。なお、小野賢章は第6弾「ドグラ・マグラ」（原作・夢野久作）にも青年I役で出演しています。

「文豪ストレイドッグス」の見どころは、何と言っても異能力者同士の派手なバトルです。ここでは、異能力とは何かを解説すると共に、芥川龍之介の異能力「羅生門」について詳しく紹介していきます。

文豪ストレイドッグスにおける異能力とは、常識では考えられない不思議な現象を起こす特殊な力を意味しています。多くの場合、異能力に目覚める何らかのきっかけがあるとされていますが、物語冒頭の中島のように自分が異能力者であることに気付かないまま生活している者も存在します。また、異能力によって成功を収める者がいる一方で、異能力が原因で差別を受けたり、自分の力を制御できず自滅してしまう者もいます。

異能力には体の一部を変形させるもの、戦闘に特化したもの、独立した生命体を召喚するものなど様々な種類があります。非戦闘系の能力としては、治癒、現実改変、精神操作といったものが存在しますが希少とされており、精神操作系の能力者は最も忌み嫌われています。また、異能力を血の繋がった他者に譲り渡す方法もあると言われていますが、詳細は不明です。

芥川の異能力「羅生門」は、纏った外套を黒獣に変化させるというものです。あらゆるものを喰らうこの黒獣は、芥川から「悪食」と称されています。攻撃に特化した能力ながら、自分と相手との空間を喰わせることで防御を行なったり、外套を長く伸ばして空中に立つこともできます。「羅生門」の力は芥川の性格も相俟って危険視されており、武装探偵社に入社した中島が「芥川に遭ったら戦わず逃げろ」と教えられる程です。

「羅生門」には様々な形態があります。「羅生門・顎（アギト）」は黒獣の顎部分を発現し攻撃対象を噛み砕く能力で、さらに大きな顎を発現させる「羅生門・獄門顎（ごくもんアギト）」、複数の顎を発現させさらに広範囲に攻撃を行う「羅生門・連門顎（れんもんアギト）」などのバリエーションも披露されています。

「羅生門・叢（ムラクモ）」は黒獣の腕部分を発現し、相手を八つ裂きにする技です。この腕は伸縮自在で、広範囲への攻撃が可能となっています。「羅生門」、「羅生門・顎」と共に第4話で初めて使用されました。

「羅生門・彼岸桜（ひがんざくら）」は、巨大な塊の中心から飛びだした無数の針で相手を貫く技です。「羅生門」は外套の面積と攻撃範囲が比例するため、外套の大半を使用するこの技はかなり強力なものになっています。第12話で初めて使用されました。

「羅生門・早蕨（さわらび）」は、地面から無数の針を出現させ相手を貫く技です。「羅生門・彼岸桜」と同じく、第12話で使用されました。

「羅生門・天魔纏鎧（てんまてんがい）」は、芥川単独で使用する「羅生門」最強の形態です。外套に筋肉と鎧の役割をさせ、身体能力を飛躍的に向上させることができますが、その分芥川にも大きな負担がかかってしまうため長時間の使用はできません。第35話で初めて披露されました。

「月下獣羅生門（げっかじゅうらしょうもん）」は、中島と芥川の合体技です。北米を拠点とする異能力者集団「組合（ギルド）」が第三勢力として参戦してきたことで、中島と芥川がタッグを組んで対抗する戦いも描かれることになりました。作中ではこれまでに「月下獣羅生門・虎叢（とらむらくも）」、「月下獣羅生門・黒虎絶爪（こっこぜっそう）」が披露されています。

芥川の能力である「羅生門」の由来は、言う間でもなく芥川龍之介の小説です。小説「羅生門」は、職を失い行くあてもない若い下人が羅生門で死体から髪を抜いている老婆と出会い、生きる為に悪事を働く決意をし老婆の服を奪って逃げるというストーリーで、「強奪→獣に喰らわせる」というイメージからこのような能力になったのではないかとファンの間で考察されています。

先の項目でも少し触れましたが、芥川龍之介と武装探偵社の太宰治の間には深い関わりがあります。ここでは文豪ストレイドッグスの太宰治のプロフィールや二人の出会い、その関係性について紹介します。

文豪ストレイドッグスの太宰治は武装探偵社に所属する22歳の青年で、誕生日は6月19日、身長181cm、体重67kg、血液型はB型、好きな物は自殺、酒、蟹、味の素、嫌いな物は犬と中原中也です。「清く明るく元気な自殺」を座右の銘とする自殺マニアで、あらゆる手段での自殺を試みていますが全て失敗に終わっています。マイペースで掴みどころがない反面、頭脳、身体能力ともに優れ時折冷酷な一面をのぞかせることもあります。

異能力は「人間失格」で、直接触れた異能、または異能力者を完全に無効化することができます。本人の意志に関わらず発動しており、あらゆる異能力による攻撃は太宰には効果がありませんが、治癒能力も無効化してしまうという難点があります。

武装探偵社に入社する前はポートマフィアの一員で、史上最年少で幹部に昇格し、首領・森鷗外をして「4年後には私を殺して首領の座に就ける」と言わしめる実力の持ち主でした。中原中也とコンビを組み「双黒」として裏社会にその名を轟かせていましたが、友人・織田作之助の死を機にポートマフィアを脱退、2年間の潜伏期間を経た後武装探偵社に入社しました。

太宰のポートマフィアを抜けるきっかけになった事件については、角川ビーンズ文庫から刊行されているノベライズ「文豪ストレイドッグス　太宰治と黒の時代」で描かれています。TVアニメでは第2期13話から16話に相当するエピソードで、敵組織「ミミック」との戦いを通して18歳の太宰と友人・織田作之助と坂口安吾の関係性が描かれています。

文豪ストレイドッグスの太宰治のモデルは、昭和期に活躍した同名の作家です。異能力の由来にもなった「人間失格」の他、「走れメロス」、「津軽」、「御伽草子」、「斜陽」といった作品で知られています。文豪ストレイドッグスの太宰治には、自殺未遂を繰り返した点や坂口安吾、織田作之助との交友関係、中原中也とは同人誌「青い花」を通して一時期交流があったものの後に袂を別ったというエピソードが盛り込まれています。

芥川がポートマフィアに加入するきっかけを作ったのは太宰です。太宰は芥川の教育係を務めていましたが、その教育方針は非常に厳しく「ぽんこつな能力」、「役に立たない」、「飲み込みが悪い」といった言葉を投げかけます。しかし、これは芥川の頑固な性格や単独行動を好む傾向を心配してのことで、その才能は高く評価していました。

現在の芥川が着ている外套は太宰に与えられたもので、これによって近距離でしか発動できなかった「羅生門」のリーチを伸ばし、多才な戦い方を身に着けました。二人の出会いから芥川のポートマフィア加入のエピソードは、文豪ストレイドッグス第6巻に収録された掌編「心なき狗」に描かれています。

今でこそ激情的な面が目立つ芥川ですが、貧民街時代は「心がない」と言われるほど感情に乏しい子供でした。そんな芥川に感情や生きる意味を教えてくれたのが太宰です。そういった事情から、芥川は太宰に強い執着心を持っています。芥川は太宰に認めてもらいたい一心で強さを求め、戦いに身を投じていきますが、太宰は芥川を置いてポートマフィアを去ってしまいました。

武装探偵社に加わった太宰は、中島をスカウトし部下として目をかけるようになります。自分には冷たく厳しかった太宰が、中島には優しく接しているのを見た芥川は、中島に激しい対抗心を燃やします。芥川が中島を狙うのはポートマフィア首領・森鷗外の命令によるものではありますが、それ以上に太宰に可愛がられている中島への嫉妬や敵対心が表れています。

一度中島に敗れ大怪我を負った芥川ですが、組合が加わり武装探偵社、ポートマフィアによる三つ巴となった戦いに無理を押して参戦し、中島と手を結び組合のフィッツジェラルドを撃破します。フィッツジェラルドとの戦いから帰還した芥川に、太宰は「強くなったね」と声を掛けました。ずっと自分を認めてくれなかった太宰から褒められた芥川は、安堵のせいかその場で気を失ってしまいます。

太宰はしばしば中島と芥川を比較し、芥川を挑発するような言動を見せます。そんな太宰の目的は、速度と根性骨を併せ持つ前衛タイプの中島と、後衛でこそ真価を発揮する芥川にタッグを組ませ「新しい時代の双黒」とすることでした。中島と芥川の組み合わせは、太宰と中原の「双黒」に対して「新双黒」とファンの間で称されています。

実在した作家の太宰治と芥川龍之介の間にも関わりがありますが、文豪ストレイドッグスで描かれた二人とは反対に、太宰が芥川に憧れていたというエピソードが多く伝えられています。2013年に日本近代文学館に寄贈された、太宰が中学から高校にかけて使っていたというノートには芥川龍之介の名前が何度も書き込まれ、芥川らしき似顔絵の落書きや、芥川の名前と自分のペンネーム案を並べた書き込みまであったといいます。

また、第1回芥川賞の候補に選ばれたものの落選した太宰が、審査員の川端康成による評への反発を表明したり、芥川賞授賞を懇願する4mにも及ぶ長文の手紙を送り付けたエピソードは有名です。

冷たく非情な一方で部下への優しさを持ち合わせ、太宰に対しては激情的なまでに憧れと執着を露わにする、そんなところが芥川龍之介の人気の秘密と言えるでしょう。原作の連載やTVアニメ第3期、舞台版の上演と、これからも文豪ストレイドッグスの展開と芥川の活躍に期待が高まります。