2021年10月07日公開
2021年10月07日更新
【親なるもの断崖】道子の人生を振り返る!悲しい最期をネタバレ解説
親なるもの断崖の道子の人生を振り返っていきます!今から30年以上前に刊行された曽根富美子による漫画作品「親なるもの断崖」。戦後70年を機に電子図書で再版されると、あっという間にダウンロードは47万回を突破、大きな反響を呼びました。この記事では、戦前の暗い世情を背景に運命に翻弄された1人の少女・道子に焦点を当て、彼女のたどった辛く悲しい人生をネタバレで解説していきます。劣悪な環境で病気に罹った道子は、最後、死亡してしまうのでしょうか?
親なるもの断崖の道子とは?
親なるもの断崖の作品情報
この記事では、漫画作品「親なるもの断崖」に登場する道子という不幸な女性に焦点を当て取り上げていきます。道子の話題に入る前に、まずは作品情報を紹介します。最初に作品概要、そして簡単なあらすじへと続きます。
親なるもの断崖の漫画の概要
「親なるもの断崖」は、曽根富美子による日本の漫画作品です。1988年秋田書店の発行する月刊レディースコミック誌・ボニータイブにて1989年まで連載され、1991年には単行本が出版。1992年には第21回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しています。
その後、親なるもの断崖は長らく絶版となっていましたが、戦後70年となる2015年に電子図書として新たに登場します。ダウンロード数が47万回を超えるなど大きな反響を得たことで、親なるもの断崖は書籍化され新装版・親なるもの断崖が刊行されました。
親なるもの断崖のあらすじ
昭和2年、今からおよそ90年前の北海道室蘭市が舞台です。青森県の貧しい農村から4人の少女たちがやって来ました。16歳の松恵を筆頭に彼女の妹で11歳の梅、13歳の武子、11歳の道子です。彼女たちは口減らしのため室蘭市内の遊郭・富士楼に売られたのです。同行してきた女衒の男は、地球岬を通過するとき、それがアイヌ語で「親である断崖」を意味すること、そして死にたくなったらここに来るようにと教えました。
道子のプロフィール
ここからは、本題である漫画「親なるもの断崖」の道子の話題に入っていきます。まずは彼女のプロフィールから紹介していきます。
室蘭やって来た昭和2年4月時点で11歳の少女だった道子。親孝行な優しい心根の持ち主です。栄養不足から体は小さいままで容姿もよくなかったため、彼女には90円と言う安値しか付かず父親を落胆させました。
道子が売られてきた楼閣・富士楼では、彼女の容姿を見た女将が客の前には出すことをためらい、裏方の仕事を命じます。うぶな道子は、武子に教わるまで遊郭が何をする場所かさえ知りませんでした。教わった後も、なぜ男が女にそんなことをするのか不思議がる始末です。その一方で、華やかな衣装で男から持て囃される梅や武子に羨望を覚え、自分も女郎として働きたいと梅を通じて女将に訴えますが叶いませんでした。
親なるもの断崖の道子の人生
ネタバレ①お梅や武子とともに売られてきた道子
ここからは、親なるもの断崖の道子の人生をネタバレで解説していきます。青森県の貧しい農村から北海道室蘭市の楼閣・富士楼に、お梅や彼女の妹・松恵、そして武子とともに売られてきた道子。
女将に自分は芸者になれるかと尋ねますが、道子を一瞥した女将に冷たく否定されてしまいます。結局道子は、店の表には出ず裏方として下働きをすることになります。
ネタバレ②女郎への憧れ
客を取る楼閣の表の仕事は任されず、裏方としての仕事に精出す道子。肉体労働に明け暮れる日々でいつもお腹はペコペコです。一向に下働きから抜け出すことができないまま、辛い毎日を送る道子。彼女が富士楼にやって来て、3年という年月が過ぎようとしていました。
どうしても女郎になりたい道子は、女将に女郎になれるよう頼んでほしいとお梅に懇願します。お梅は断り切れず、言われた通り女将に道子を女郎にしてくれないかとお願いします。他ならぬお梅の頼みでしたが、道子の容姿を理由に女将は突っぱねました。
ネタバレ③病気で長く生きられない道子
お梅が道子の件をお願いした時、女将の口から思いがけない事実が飛び出しました。それは道子の病気に関することでした。道子は重い病気に罹っており、その病気のために長く生きられないと言うのです。お梅は元気そうに見える道子が病気であることにショックを受けて、その場に立ちすくんでしまいました。
ネタバレ④山羊楼へ売られていく道子
病気と容姿を理由に楼閣の裏方に甘んじてきた親なるもの断崖の道子。彼女の希望が、ようやく叶う時がやって来ます。ここにいては女郎になれないと判断した道子が行動を起こしたのです。道子は希望通りに山羊楼という楼閣に売られていきました。
山羊楼に着いた道子は唖然とします。楼閣と言っても名ばかりのあばら家です。女郎たちは地べたにゴザを敷いて客の相手をしています。いわゆる「女郎のタコ部屋」と呼ばれる劣悪な環境の”職場”でした。しかし道子は怯みません。彼女はそれほどまでして女郎になりたかったのです。
病気持ちで器量もよくなかったものの床上手な道子は、瞬く間に評判の女郎となります。しかし、彼女に付いたあだ名は「幕西の大衆便所」という不名誉なものでした。
親なるもの断崖の道子の悲しい最後
ネタバレ①道子と連れて逃亡しようとするお梅
最後に、親なるもの断崖の道子の悲しい最後、死亡についてネタバレ解説していきます。道子が山羊楼へ売られていった後、お梅は使いの者に命じて道子の様子を探ります。使いが目にしたのは抜け殻のような道子の姿でした。着るものがないので、道子は仕方なくゴザを体に巻いて土間に座り込んでいました。劣悪な衛生環境で多くの客を相手にしたことで、やがて道子は性病に罹り視力をほとんど失ってしまいます。
一方、富士楼では、お梅が反政府活動家の恋人・中島聡一と逃亡を決意していました。道子の窮状を耳にしたお梅は、彼女も一緒に連れて行こうとします。富士楼に立ち寄ったお梅は、道子の体を無理やり引きづりながら聡一との待ち合わせ場所・断崖めざして急ぎます。
聡一よりも一足先に断崖に着き、一息つくお梅と道子。しかし、道子の体に異変が現れます。大量の吐血をしたのです。道子の体はすでに限界に達していました。
ネタバレ②道子は愛国心の強い男に殺されて死亡
漫画・親なるもの断崖のネタバレ解説、道子の最後、死亡に関するネタバレです。お梅と道子の前に現れたのは待っていた中島聡一ではなく、お梅を追ってきた愛国心の強い男でした。「この非国民!」と男は叫ぶと持っていたナイフで道子を斬りつけました。道子は斬りつけられた反動で断崖から真っ逆さまに転落。最後は夜の闇にのみ込まれていき死亡してしまうのです。
男は、暗闇でお梅と間違えて道子を刺し死亡させてしまったのです。間違えて道子を死亡させたことに気づいた男は、改めてお梅に襲い掛かろうとします。しかし、駆けつけてきた仲間に制止され、お梅は彼らに捕まってしまいました。
親なるもの断崖の道子に関する感想や評価
ここまで漫画・親なるもの断崖の道子特集をお届けしてきましたが、最後に道子に関する感想や評価をTwitterより紹介します。
「親なるもの 断崖」はね……皆辛いんだけど道子が本当に。
— ∆きよもと∇ (@Tokkaru_bi04) February 16, 2021
「醜女」で成長不良で客がとれないと判断されて下働きしてる彼女が、『自分も綺麗なべべ着て客とりてぇ』と梅を羨ましがる図が辛くてな。彼女にとって「客をとる」が「一人前」の証なんだよ。ただの搾取なのに。
最初に紹介する親なるもの断崖の道子に関する感想や評価は、悲しい物語の中でも道子の人生が辛いと言う方のツイートからです。
醜い容姿で客が取れない道子が、奇麗な着物を着て客を取るお梅を羨ましがるところが特に辛いと言います。ただ搾取されているだけなのに、客を取ることが一人前の証となっている道子の境遇に思いを馳せているのでしょうか?
「親なるもの断崖」続き。道子さんはまともな女郎にすらなれない辛苦を背負っていたが、周囲には間違いなく救いの存在だっただろう。武子さんは暴力的な世界で野望を果たし、お梅さんは嘲りと罵りにうちひしがれても立派に子を産んだ。遠くにあっても繋がり、互いを思いやって生き抜いた女性賛歌。
— 徘徊紳士 (@Naoyang1978) August 2, 2015
続いて紹介する親なるもの断崖の道子に関する感想や評価は、物語の内容に関してネガな感想が多い中、親なるもの断崖のストーリーを前向きに捉えているツイートからです。
暴力的な世界で望みを遂げた武子や立派に出産に漕ぎつけたお梅はもちろんの事、多くの読者が辛いと言う道子の存在さえ「周囲にとって救いの存在」とポジティブに捉えています。そればかりか、作品全体を「女性賛歌」だと評価していました。
曽根富美子氏の「親なるもの 断崖」を読み返してみた。最初読んだ時は、女郎になったお梅や道子の運命にただただ涙したものだけど、もう一度読んで、日本全体が狂っていく過程~終焉の物語だったんだと背筋が凍った pic.twitter.com/vCyJ5Irh7z
— きゃんびー🍡 (@CottonCanBy) April 1, 2017
最後に紹介する親なるもの断崖の道子に関する感想や評価は、親なるもの断崖を読み返したと言う方のツイートからです。
初めて親なるもの断崖を読んだ時には、遊郭に売られていったお梅や道子の運命に唯々涙したと言います。ところが、もう一度読み返すと、親なるもの断崖という物語の背景が見えてきたそうです。日本全体が狂っていき戦争へと突入していく過程から国が焼け野原と化す終焉までの物語だとわかり背筋が凍る思いだったと語っています。改めて読んだことで、木々だけでなく”森”全体が見えるようになったのでしょうか?
親なるもの断崖の道子まとめ
ここまで、「親なるもの断崖の道子の人生を振り返る!」と題して、彼女のプロフィールやわずか11歳で楼閣に売られていった辛い人生についてネタバレで解説してきました。
Twitterの感想にもあったように、親なるもの断崖の道子は辛く悲しい人生を歩みました。容姿が醜いため客を取ることができず裏方の下働きに甘んじていた道子。梅の姉・松恵は初日に客を取らされ、ショックから首を吊って自殺します。ところが、道子は奇麗な着物を着て客を取り、女郎として働く少女たちに憧れを抱きます。しかし、劣悪な環境で身を破滅させる病気に罹った上、最後には死亡してしまいました。
楼閣に売られる時、安い値段しか付かなかったことを父親になじられる道子ですが、彼女は親を恨んだりしませんでした。誰よりも優しかった道子が、誰よりも辛い人生を送ることになってしまいました。道子のような人生を送る女性の背景には、昭和初期から太平洋戦争終結までの暗く陰惨な社会情勢も少なからず影響していると言われています。皆さんはこの記事を読んで親なるもの断崖についてどう感じたでしょうか?