2018年06月11日公開
2018年06月11日更新
美味しんぼの山岡と海原雄山が和解したシーンを紹介!理由やきっかけとは?
グルメ漫画の草分けにして代表作と言われている「美味しんぼ」を紹介します。休載を挟みながらも35年以上続いている、美味しんぼの魅力はどこにあるのでしょうか?物語の大きな核となっているのは主人公山岡士郎とその父海原雄山との確執ドラマにあると言われています。そして年月を経てその確執から和解へと美味しんぼのドラマはゆっくりと進行していきました。そこが凡百のグルメ漫画ではないとの高評価を得ている美味しんぼの和解までのシーンをご覧ください。
目次
美味しんぼは100巻以上続いたグルメ漫画!
「美味しんぼ」は原作雁屋哲、漫画花咲アキラによる作品で1983年より「ビッグコミックスピリッツ」にて連載開始され、休載期間があるものの現在も続いている長寿作品です。連綿と発表され続けているグルメ漫画の先駆け的作品とも言われ「クッキングパパ」や「ミスター味っ子」など同時期に発表された作品らとともにグルメ漫画ブームを作り出したとの評価がなされています。
また「まったり」や「ヒラメがシャッキリポンと舌の上で踊るわ!」など料理の美味しさをセリフで表現する際に独特の表現がされていて、大河ドラマのようなストーリー性とは別のところで美味しんぼの人気の一因になっているとも言われています。
東西新聞社に勤めるぐうたら社員の山岡士郎と新入社員の栗田ゆう子はどちらも類稀な味覚センスの持ち主で、それを買われて社主の命を受けて「究極のメニュー」作りを担当することになります。山岡には絶縁状態の実父、美食家で陶芸家でもある海原雄山がいます。海原雄山は帝都新聞の「至高のメニュー」作りの担当となり、ここに長く続く美味しんぼ内親子対決のドラマが開始されたのです。
また、ストーリーが進んでいくと山岡とゆう子の関係性に恋愛めいたものが見え隠れしたり、各々に恋心を抱くライバルが登場し、美味しんぼのストーリー幅が広がりました。更には捕鯨問題、添加物問題、福島第一原発事故を受けての食の問題など社会派的な描写も多く見られ、美味しんぼは様々な評価を受けています。
美味しんぼの山岡と海原雄山の不仲の原因は?
美味しんぼのストーリー中最も大きな核の部分と考えられる山岡と海原雄山の不仲は何故起きたのでしょうか?山岡は海原雄山の息子であることを否定したいのかわざわざ母方の姓を名乗っていますし、海原雄山も息子との縁を切ったことを公言して憚りません。不仲の原因となったことを示す鍵となるシーンを紹介します。
病弱な母へのきつい対応に嫌気
山岡は海原雄山が山岡に対しても厳しく、それでいて家庭を顧みず更には病床中の母親とし子に対して自分のわがままばかり押し付けている男に見えていました。大学生だった山岡は海原雄山の陶芸作品を全て叩き壊して家出してしまいました。更にはとし子を殺したのは海原雄山であるとの思いを強くした山岡は海原雄山を徹底して憎みます。海原雄山もまた山岡を息子とは認めないスタンスを取ることになります。
美味しんぼ18巻に収録されている「焙じ茶の心」にはそんな家族関係が垣間見られるシーンが出てきます。病床に臥せっている山岡の母とし子に海原雄山が「焙じ茶を入れてくれ」と言います。それを山岡は海原雄山の身勝手と受け止めるのですが、海原雄山ととし子との間には息子も入り込むことのできない揺るぎない関係性があり、それを理解できない山岡をとし子は「お前には人の心がわからないの?」と諭すのでした。
美味しんぼの山岡と海原雄山の和解のきっかけは?
長く続く山岡と海原雄山親子の確執ですが、美味しんぼのストーリーが進むにつれて徐々に和解への流れが見えてきました。山岡は何故和解を考えることになったのでしょうか?そして、和解へのきっかけとは一体何だったのでしょうか?和解への第一歩となった美味しんぼエピソードやシーンを紹介します。
45巻「山岡と海原雄山の和解が結婚条件」
物語が進むにつれ山岡とゆう子の仲も親密になっていき、ついに「美味しんぼ」コミックス43巻にて山岡はゆう子にプロポーズをし、ゆう子はそれを受けました。婚約状態となった2人ですが解決しなければならない問題もありました。山岡と海原雄山の和解です。それはゆう子の両親も同じ思いであったようです。
「美味しんぼ」コミックス45巻にはこのようなシーンが出てきます。山岡とゆう子が新居で同居するにあたって揉め事が起きました。その揉め事自体はゆう子の両親の尽力もあり収まったのですが、将来的なことを考えゆう子の両親は山岡に海原雄山との和解を結婚の条件として突き付けました。海原雄山との和解など考えられない山岡は猛反発し一時は結婚を諦めようとしますが、最終的には条件を受け入れました。和解への一歩です。
美味しんぼの山岡と海原雄山の和解の流れ
その後ゆっくりと山岡と海原雄山はお互いに和解へと向けて動き出すことになります。ターニングポイントとなったエピソードやシーンを時系列ごとに取り上げて美味しんぼの魅力に迫っていきます。
47巻「結婚披露宴」
「美味しんぼ」47巻「結婚披露宴」はストーリー上大きなターニングポイントになったと評されています。コミックスのページ数も通常の巻の約1.5倍となっており作者側も出版社側もそのことをわかっていたのではないかと思わせます。ストーリーは山岡とゆう子、そして2人の恋のライバルでライバル同士結ばれた近城とまり子が合同披露宴を行うシーンから始まります。
紆余曲折を経て開かれた合同披露宴は「究極のメニュー」と「至高のメニュー」の対決の集大成の場としても設けられており、山岡とゆう子、海原雄山が披露宴に振舞われたメニューに対して薀蓄や思うところを語っていきます。その中で海原雄山が亡き妻との思い出を語り、自分をここまでの大物になれたのは極貧時代を支えてくれた妻のおかげだと感謝の意を述べました。海原雄山の器の大きさを表すシーンとして高い評価を受けました。
一方の山岡も披露宴直前に母親とし子が病床の身となった原因が自分を出産したことにあったと主治医から聞かされ心境に変化が見られるようになりました。披露宴で「究極のメニュー」と「至高のメニュー」の対決は常に海原雄山の方が上で、幾度となく敗北にまみれたことで自分がここまで成長することができたのだと遠まわしではありましたが感謝の意を伝えました。2人が和解へと動き出す本当に大きなシーンだったと言われています。
68巻「山岡とゆう子の子供」
結婚披露宴で集大成となるはずだった「究極のメニュー」と「至高のメニュー」対決は審判団の判断で継続となりました。山岡・ゆう子夫妻と海原雄山はお互いを認めつつも対決を続ける意思を持ちました。そんな山岡と海原雄山との間に和解へと大きく前進するエピソードが生まれました。ゆう子が妊娠したのです。和解へ向けてどんなシーンが繰り広げられたのでしょうか?
ゆう子の妊娠とともに山岡の乳母代わりだったチヨやその夫中川から山岡が子供の頃のエピソードが語られました。山岡は小さい頃牛肉と玉子が大の苦手で食べることができず、それを海原雄山が懸命に治したというものでした。それを伝え聞いた山岡は実は父親が山岡に厳しかっただけではなくしっかりと愛情を受けていたことも知ることとなり心境に大きな変化が表れました。それは産まれてくる自分の子供たちへと向けられることになります。
76巻「事故で意識不明の海原雄山」
山岡・ゆう子夫妻は双子の子供に恵まれて時には問題を抱えながらも良い家族生活を営んでいきます。海原雄山との「究極のメニュー」と「至高のメニュー」対決もその数を積み上げていきます。そんな中山岡と海原雄山との間に和解へのポイントとなる大きな出来事が起きました。海原雄山が交通事故に遭い意識不明になってしまうのです。
ゆう子は山岡に海原雄山の見舞いに行くよう説得しますが、完全に気持ちが固まっていない山岡はこれを拒否します。しかし、海原雄山不在の美食倶楽部にアジアの首脳を招待する催しがあると知った山岡は美食倶楽部に向かい主不在で動揺する料理人たちに「中川、なんてざまだ!今まで雄山にすべてを任されてきたおまえが、うろたえてどうする!」叱咤激励を飛ばし、自らも厨房に立ち難局を乗り切ろうと奮闘します。
何とか難局を乗り切る道筋は立てたものの肝心の海原雄山の意識は未だ戻りませんでした。ゆう子は山岡に「お父さんと声をかけてあげて」と懇願しますが、山岡はそれだけはできないと拒否します。「あなたは海原さんを父親として尊敬し、愛しているんでしょう?」と心の中の真実を突かれた山岡は「おやじ…」と背中越しでも声をかけました。すると海原雄山は意識を回復しました。美味しんぼ屈指の名シーンと言われています。
88巻「美食倶楽部閉店の危機」
話題の高層ビルのテナントレストランに「美食倶楽部」の名前を見た山岡夫妻は海原雄山が1テナントに美食倶楽部を出すはずがないと困惑しました。しかし、それはある意味事実でした。後日チヨが相談に訪れて来たのです。チヨの話では高層ビルのオーナーに美食倶楽部の料理人が大勢引き抜かれてしまったのでした。何とか力を貸してほしいとすがるチヨに山岡は「雄山の自業自得だ」とけんもほろろです。
しかし、口では憎まれ口を言ってもやっぱり美食倶楽部さらに言えば海原雄山のことが気になって仕方がない山岡は陶芸家から受けた相談を元に器対決を思いつき、それで引き抜かれた料理人たちを美食倶楽部に取り返すことに成功しました。交通事故の一件に引き続いて山岡が海原雄山を助けたのです。こうして美食倶楽部は閉店の危機を脱することに成功し、山岡と海原雄山の関係修復もまた一歩前進しました。
102巻「最後の料理対決」
美味しんぼの中で過去幾度となく読者を楽しませてきた「究極のメニュー」と「至高のメニュー」の対決もいよいよ大詰めを迎えようとしていました。最後の対決が企画されたのです。この場を置いて和解の機会はもうないと危機感を募らせたゆう子は2人の跡を継ぎ「究極のメニュー」担当者となった飛沢やかつての山岡の恋のライバルであり現在は良き仲間となった団社長に協力を求めます。
団社長は対決のテーマとして「究極と至高がお互いにお互いを喜ばせるメニュー」を提案し、究極のメニュー新担当者飛沢は美食倶楽部を訪れ海原雄山に山岡と和解するように直訴します。海原雄山はその提案を跳ね除けますが「衝突し立ち向かってきた息子に対して父親が心を開くのは、その息子が父親を乗り越えたところを示した時のみ」との言葉とともに山岡にこれをとコーヒー豆と水出しコーヒーを飛沢に託しました。
山岡は海原雄山から受けた水出しコーヒーを自分なりに研究を重ね、対決の場に臨んみました。海原雄山はメニューを出しながら妻とし子に対する思いと家族団らんに対する思いを語りました。山岡は究極の水出しコーヒーを出して一同を唸らせましたが海原雄山を納得させるまでにはいかず最後の対決は引き分けとなりました。
対決後海原雄山は山岡にワインを渡します。全てを悟った山岡はゆう子と一緒に美食倶楽部へ赴き、とし子の写真を囲んでワインを飲み交わしました。ついに「美味しんぼ」で父と息子の和解が成立した瞬間でした。
美味しんぼの山岡と海原雄山の感動の和解シーン
美味しんぼは東日本大震災を受けていわゆる「福島編」へ移行します。それは福島第一原発事故後の福島県の食の状況をレポートする形式のドキュメンタリーです。内容については賛否両論があったようで鼻血の描写が物議を醸したりもしましたが、ここで山岡と海原雄山が真の和解を果たすことになるのです。
また、山岡家と海原雄山の関係も良好な状態でした。橋渡し役のゆう子は折に触れ孫たちを海原雄山に引き合わせていました。孫に懐かれ相好を崩す海原雄山が良いとの評判が多くあります。
111巻「真の和解」
山岡一行は東日本大震災後の福島県の食の問題を浮き彫りにする取材を敢行していました。そこには海原雄山の姿もありました。海原雄山は山岡のルーツも自分のルーツも福島にあると言います。実は山岡の母親であり海原雄山の妻であるとし子は福島県出身であり、海原雄山が美術大学生時代の夏休みに福島を訪れた時にとし子と出会ったのです。
美術大学生として自分は将来どうあるべきなのか苦悩する海原雄山にとし子は道しるべを与える役割を果たします。とし子が自分にとって必要な存在だとわかった海原雄山は結婚を申し込みました。その後「海原雄山の遺伝子を継がせたい」という切実な希望を胸に命懸けで山岡士郎を出産しました。海原雄山の告白を受けた山岡は両親の深い愛情を肌身に感じて妻ゆう子ともども感動の涙を流すのでした。
美味しんぼには真の和解が存在した!
山岡・ゆう子夫妻と海原雄山は雄山ととし子の思い出の地である神社にいました。そこで山岡は完全和解の品として家出の時に唯一壊さなかった皿を、海原雄山は親子3人が移っている写真を渡し合います。そこには「真の和解」を果たして心穏やかに在ろうとする父親と息子がいました。
父親は穏やかな表情で息子を見つめ、息子は「ありがとう父さん」と何十年も言えなかった感謝の言葉を伝えました。美味しんぼの親子の「真の和解」は2人のルーツである福島県で実現しました。この「真の和解」に至るまでの展開は大河ドラマに勝るとも劣らないとの評判です。美味しんぼは長編ではありますが是非一度読んでみてください。