2018年10月07日公開
2018年10月07日更新
くちづけでの貫地谷しほりの演技の評価は?知的障害者を扱った映画あらすじを考察
「くちづけ」という作品は、2010年に舞台として上映され、2013年に映画となって公開されました。知的障害のある人々の日常、それを取り巻く社会の環境について、触れることのできる作品です。この中で、貫地谷しほりが知的障害のある女性を演じています。その演技で彼女はブルーリボン賞を獲得するなど、高評価を得ました。その演技や話題を呼んだあらすじの考察も交えながら、「くちづけ」をご紹介していきます。
目次
くちづけでの貫地谷しほりの演技の評価は?映画あらすじも考察!
出典: https://eiga.com
映画「くちづけ」は、2013年に公開されました。知的障害のある人々の生活などについて扱った、社会派ストーリーです。こう聞くと真面目で難しい作品かと思われてしまうかもしれませんが、笑いあり涙あり、でも最後は誰もが考えさせられる作品です。
タイトルが「くちづけ」なので恋愛ストーリーかな?と思われそうですが、恋愛の愛情ではなく、あまりにも深すぎた親子の愛情が描かれています。
娘への愛情が真っ直ぐで、深くて、それにより周りに助けを求められなかったある1人の父親と、その愛情を身体いっぱいに受け止め続けた娘の物語を、あらすじからご紹介いたします。
くちづけの映画あらすじを紹介!
「くちづけ」という物語には、ある年の4月から12月の、たった8か月ほどのできごとが描かれています。主に登場するのは、知的障害のある30歳の女性、「マコちゃん」と、その面倒を1人でみる父親「いっぽん」。そして2人が生活する「ひまわり荘」の仲間達と、ひまわり荘を暖かく見守る人達です。ひまわり荘で平穏に過ごすマコちゃんといっぽん。しかし、そんな2人が悲しい最期を遂げてしまいます。
マコちゃんとうーやんの出会い
ある4月の日、知的障害者の自立支援をする施設「ひまわり荘」に、「マコちゃん」が仲間入りします。父親の「いっぽん」も、住み込みのスタッフとしてやってきます。そして、元々ひまわり荘にいた、宇都宮君こと「うーやん」とマコちゃんは、すぐに仲良くなります。2人とも別の仕事をしていますが、マコちゃんは「うーやんが仕事行かないならマコも行かなーい」というくらいです。周りも困るほど、仲良しになりました。
マコちゃんの変化といっぽんの病気
以前のマコちゃんは施設に預けても抜け出してしまうことが多く、仕事がままならなかったいっぽん。しかしひまわり荘に来たことで、常にマコちゃんを見守れるようになりました。それだけでなく、いっぽんがマコちゃんとうーやんの「結婚したい」という告白まで聞いた矢先、いっぽんに病気が見つかります。
マコちゃんは、体は30歳でも、心は7歳で止まってしまっています。そんな娘を1人にするなんてことは考えられないのに、その一方で自分の余命を感じてしまういっぽん。「自分がいなくなったらマコはどうなるのか」という心配が膨らんでいくばかりです。しかし、「誰かに相談したら、相談された人が大変になってしまう」と思い、病気のことを誰にも相談できず、1人で抱え込んでしまいます。
ひまわり荘の閉鎖
ひまわり荘の経営は、そこで過ごす住人達に対し国から払われる、障害者年金により成り立っています。しかし、その住人達の家族の一部には、その年金からちゃんとひまわり荘に必要な費用を振り込まない者もいて、段々と経営が厳しくなっていきます。とうとう、1人の仲間がひまわり荘を出ることになってしまいました。
更に、うーやんまでも、ひまわり荘を卒業することになります。いよいよひまわり荘は一時閉鎖。これによりマコちゃんは、うーやんと離ればなれになるだけでなくまた施設に預けられるのですが、やはり抜け出してしまいます。誰もいないひまわり荘に勝手に入り込み、いっぽんが迎えに来ると、「いっぽん、いっぽん」と泣きながらいっぽんに抱きつきます。
いっぽんの決断
いっぽんは、アルバイトをして生活費を稼ぎ、施設から抜け出すマコちゃんを探す日々に戻りつつも、病気はどんどん進行していきます。そして、病院から「肝臓がん」とはっきり書かれた診断書を渡されてしまいます。いっぽんの精神は極限まで追い詰められ、ある1つの、あまりに辛い決断をします。そして11月の夜、ひまわり荘でマコちゃんと最後のお別れをし、自分の手でマコちゃんの命を絶ついっぽんの姿がありました。
マコちゃんが11月に亡くなり、いっぽんも1か月後にガンで亡くなります。その年のクリスマス、皆がひまわり荘に集まりました。12月25日はマコちゃんの誕生日です。うーやんは、マコちゃんといっぽんが死んだことを理解していません。その日、うーやんはひまわり荘でマコちゃんとの結婚式をしようとしていました。タキシードを着て、マコちゃんへのプレゼントを用意して、うーやんはマコちゃんを待っているのでした。
くちづけの映画あらすじを考察!
「ひたすらにマコを愛し、彼女の幸せを望んだいっぽんが、なぜ、こんな選択をしなければならなかったのか?」。映画「くちづけ」公式サイトの中に、こんな一文があります。この映画からの、社会へのメッセージのようです。「くちづけ」の公開後、「障害者である娘を父親が自ら殺す」というあらすじに様々な評価の声が挙がりました。あらすじに対する世間から寄せられた評価や感想を、ご紹介します。
『くちづけ』053@完成披露/ 知的障害児問題とかがテーマだろうが、現代の社会に投げかける問題が沢山あって考えさせられた。どこの家庭にも起こり得る老人問題も同じである。竹中父さんの取った行動は親として理解出来る。私もそうするだろう… http://t.co/g7o4ZyGUMS
— もも san (@serendi_momo) April 18, 2013
あらすじに対し、「やるせない、救いがない」という声も多いところ、「いっぽんの行動に対し、親として理解できる」という声もありました。もし自分が、「この人が不幸にならないよう自分が守りたい、でも自分にはもう時間がない。周りに迷惑もかけたくない」、と自分も周りも頼れなくなった時、いっぽんの行動は他人事ではないのかもしれません。
映画「くちづけ」
— 佐々木卓司 (@nojiroo) June 7, 2013
Nojiroo
今日観てきました。障害者の私には、余命わずかなことを理由に知的障害の娘を殺害してしまう話を感動的な映画にした宅間さんの脚本の感覚に悔しい思いです。私達の未来を、勝手に自分達の価値観で予測して心配して殺す。これが感動的な映画でしょうか。
自ら障害を持つ方からは、「感動的などではない」という声も寄せられました。いっぽんは心の底からマコちゃんを愛し、不幸にしたくない、と毎日そればかり考えていました。マコちゃんは、そんないっぽんに「将来が心配だから」という理由で自分の命が奪われ、そしてその事に対し世間から「泣ける!」という感想を持たれています。マコちゃんはこのことをどう感じているのでしょうか。
私達、「障害者の親」(なんてイヤな言葉でしょう)は、
— ふじおかった (@yfujioka2) November 26, 2017
死後、子供が生活できるよう「財産」を残そうとします。でも「お金」の意味が十分理解出来ない娘に幾何の財産を残してどうしましょう?
私は、「善意の人間関係」を残すしかないのかな?って思っています。
映画「くちづけ」ではないけど。。
いっぽんもマコちゃん自身も、「いっぽんがいなくなったら、マコちゃんは生きていけない」と思っていました。そのため、突然自分の命のタイムリミットを告げられたいっぽんは、「何を残せば、自分がいなくてもマコちゃんが生きていけるのか」を考える余裕がなかったように見えます。自分がいっぽんだったら、何を残しますか?
くちづけの映画キャストを紹介!
映画「くちづけ」のメインキャラクターを務めた、豪華俳優陣を紹介します。貫地谷しほりと竹中直人は以前も親子役をしたことがあり、撮影中も息ピッタリだったとか。映画では本当の親子のような2人を見ることができます。
貫地谷しほり/阿波野マコ役
2002年に映画でデビューした貫地谷しほり。2007年には連続テレビ小説「ちりとてちん」でヒロインとして活躍しました。「くちづけ」(2013)で映画初主演です。この映画では、かわいくはにかむマコちゃんから、激しく泣き叫ぶマコちゃんまで、すさまじいまでに感情の動くマコちゃんの役を、息を飲むような演技で表現しています。この演技が評価され、ブルーリボン賞受賞となりました。
竹中直人/阿波野幸助・愛情いっぽん役
面白い役のイメージも多い竹中直人。1996年のNHK大河ドラマ「秀吉」では主役としての秀吉役、また2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」でも秀吉役を演じ、「秀吉役」にぴたりとハマった俳優としても有名です。「のだめカンタービレ」でのシュトレーゼマン役から、ドラマ「ようこそ、わが家へ」での、悪人すぎると評価の高かった超イヤな部長役、「くちづけ」で見せたいっぽん役と、振り幅が果てしない大御所俳優です。
宅間孝行/うーやん役
宅間孝行は、俳優業の他、脚本家・演出家・映画監督まで務める多彩な人物です。この映画「くちづけ」でも、重要なキャラクターであるうーやん役をしながら、原作・脚本を務めました。誰もが知るドラマでは、「アタックNo.1」(2005)や「花より男子」のドラマ・映画で脚本をしています。ある小さな新聞記事をきっかけに宅間孝行があらすじを考え、2010年に「くちづけ」は舞台として上映されました。
舞台の時も、うーやん役は宅間孝行が演じました。その他のキャストは映画とはほとんど違う顔ぶれですが、舞台でも個性豊かな俳優陣が活躍したようです。
田畑智子/トモちゃん(うーやんの妹)役
「くちづけ」で重要なスパイスとなる人物を演じる田畑智子。12歳にして映画「お引越し」(1992)で主演デビューしました。2000年にはNHK連続テレビ小説「私の青空」でヒロインを務めています。声の仕事での活躍も多く、ディズニーアニメ「リロ・アンド・スティッチ」シリーズでは、主人公リロの姉、ナニ役を担当。旅番組「世界ふれあい街歩き」では、多くのナレーターの1人として、2007年から2012年にかけて出演しました。
くちづけでの貫地谷しほりの演技の評価は?
父親であるいっぽんが大好きで、ひまわり荘ではうーやんや仲間に囲まれて平穏に過ごしながらも、最後は父親の手によって亡くなってしまうマコちゃん。2週間という短い撮影期間でマコちゃんを演じきった貫地谷しほりのその演技は、国内外から大きな評価を得ました。
くちづけ。ただほっこりするだけじゃなく悲しくなるだけじゃない深く考えてしまったいい映画。貫地谷しほりがいい演技してまっせ pic.twitter.com/fEzzhBLkRM
— m2kn (@m2kn1173) May 6, 2016
最初に撮影したのは、「(貫地谷しほりが)竹中さんのひざの上に頭を乗せて、おでこをグリグリっとするシーン」だったそう。「マコちゃんといっぽん」はもう既にできていたのかもしれません。しかし健常者が障害のある人を演じるというのは、本当に難しいことでしょう。この撮影にあたり、貫地谷しほり自身、インタビューで「生まれて初めてっていうくらい悩んだし、つらかった。早く帰りたかった」と語っています。
くちづけという映画を観ると、貫地谷しほりさんはほんとに天才だなとか思う。
— 篠原 理沙 しのはらりさ (@risasnhr) May 13, 2015
マコちゃんの役作りのために、貫地谷しほりは実際にグループホームも訪れました。しかし、「方向性がつかめるんじゃないか?そう思っていたんですが、当たり前だけど本当にみなさん個性がバラバラなんです。さらに選択肢が広がっちゃいました」とのこと。「最初のワンシーンを撮る直前まで悩み続けていたし、いまでも自分の中で答えは出せていません」と、掴み切ることが難しい役だったようです。
ブルーリボン賞受賞
「くちづけ」での演技が評価され、貫地谷しほりは2014年、第56回ブルーリボン賞主演女優賞を獲得しました。26歳での受賞です。貫地谷しほり自身、主演女優賞を初めて受賞。受賞式の舞台では、「(撮影当時)26歳の時に26本目の作品に出演して、主演女優賞をいただけて。本当に夢のようです」と語りました。
貫地谷しほりさんの受賞を喜んでいる方が多いようです。
— イチゴイチエ (@151A_ICHI5ichiA) February 9, 2014
なので、写真も映画「くちづけ」でまとめてみました。
第56回ブルーリボン賞【主演女優賞】
貫地谷しほり「くちづけ」
頑張りが報われ、
おめでとうございます*\(^o^)/* pic.twitter.com/knMDWpgHKk
「マコちゃん」役の時はかわいらしい服装でしたが、この受賞式で見せた、全く違う雰囲気のセクシーなブラックのドレスも話題になりました。ブルーリボン賞獲得に対し、SNSでも、多くの人がお祝いの言葉を送っています。
海外での上映
2013年4月20日、イタリアで行われる「ウディネ・ファーイースト映画祭」で上映されました。1999年から毎年行われている、20年近く続く映画祭です。イタリアは障害児教育に熱心に取り組んでおり、その取り組みは1920年代から始まっています。そのイタリアでも「くちづけ」は受け入れられ、多くの涙とともに鑑賞されました。
くちづけの映画を観た人の感想とは?
出典: https://eiga.com
「くちづけ」の公開直前、試写会鑑賞者など一足早く作品を観た人向けに、公式サイトには「100万つぶの涙ぼっくす」という、感想の投稿場所が設置されました。ただ泣ける感動映画というものではないことを、多くの方が綴っています。
SNSにもたくさんの声
くちづけ🎦
— さくら@映画垢 (@x3As7fOjK9lG8Dg) April 26, 2018
あらすじとか知らずに観たら想像より奥深い映画で泣けた😢知的障害のある人の立場やその面倒を見ている人の立場になって考えるいい機会になったと思う。切ないとかじゃ現せないレベルのラストで、人生好きな人と幸せに生きようって思いました💐 pic.twitter.com/JR9HEr670n
「くちづけ」というタイトルの雰囲気や、竹中直人と貫地谷しほりの愛情いっぱいの様子の画像のためか、「実際に観たら、全然ほのぼのストーリーじゃないし、ラストで泣いてしまった…」という感想を抱く人が多かったようです。障害のある人の気持ち、その人を支える人の気持ちについて、考えるいいきっかけになった、という声が見受けられます。
学校で観た「くちづけ」って映画 本当に感銘を受けた、、、
— とやまこうき (@hanabi__m) December 22, 2017
学校で観るような映画だから知的障がい者を主体としたほのぼのした映画だと思ったら全然違った
実際にあった事件を元にした映画で 知的障がい者の親の感情とかを克明に表現してて心が苦しくなった、、
福祉に興味ない人も是非とも見てほしい pic.twitter.com/R1vZ3wQtwJ
「将来福祉関係の仕事を考えている人、今は福祉に興味がない人も、観てほしい」というおすすめの声も多く上がっていました。この映画の主な登場人物は、たったの14人程度です。しかし、知的障害のある人々は、日本だけでも54.7万人と言われています(2013年時点)。「マコちゃん」がこれだけいて、この数以上の「いっぽん」がいることになります。その人達の物語の1つが、この映画「くちづけ」で表現されています。
障害者数は、身体障害者366.3万人(人口千人当たり29人)、知的障害者54.7万人(同4人)、精神障害者320.1万人(同25人)であり、およそ国民の6%が何らかの障害を有していることになる。
世の中は普通の人が
— 心愛✿*゚ありがとう (@zero1love1) January 4, 2016
生活するように
出来てるから
生きにくいよね
結末は哀しくて
手を差しのべてくれる
善良な機関
少ないのも現実で
被災しても
親が亡くなっても
あの子たちは
生きてくための
スキルが少なくて
考えさせられます#映画 #くちづけ
「くちづけ」ではマコちゃんがいっぽんより先に亡くなってしまいましたが、そうではなくいっぽんが病気でマコちゃんより早く亡くなっていた場合、マコちゃんはどうやって生きていけたでしょうか。ひまわり荘は閉鎖され、施設からは逃げてしまっていました。それでも、いっぽんが恐れていた「浮浪者や犯罪者になってしまう」のを避けるには何が正解だったのか、と考えさせられた人が多かったようです。
各界著名人からも絶賛
出典: https://eiga.com
一般の人にだけでなく、多くの著名人もこの「くちづけ」を高く評価し、涙しました。映画「くちづけ」の公式サイトにその声が掲載されています。自らもダウン症の子供たちを支援している、女優の戸田恵子さんからも、「私達は感動しただけで終わらないようにしなければなりません。(略)いつも気にかかる事はお子さんより、実はご両親のお気持ちだったりしています。」という声が寄せられています。
くちづけでの貫地谷しほりの演技の評価やあらすじまとめ!
この映画のタイトル、「くちづけ」というたった一つの言葉に、どれほの深い愛情と切なさが含まれているのでしょうか。貫地谷しほりの圧巻の演技と、あまりにやるせない、心の痛むあらすじで話題を呼んだ映画「くちづけ」。障害のある人にとって、本当の障害とはなんなのか、皆が考えさせられた1本です。是非ご覧ください。