イヴの時間はSFアニメの傑作!あらすじ・登場人物や感想をネタバレ考察

「イヴの時間」とはSFアニメの傑作。主人公のリクオは親友のマサキと学校帰りに人間型ロボットの「サミィ」が寄り道した場所を調べるとそこにはイヴの時間という喫茶店がありました。二人はこっそりと様子を見に入ります。そこはロボットと人間を区別しない不思議な店でした。やがてリクオは店で出会うヒトビトを通じてロボットに対する誤解や偏見を解いていきます。人間型ロボットと人間とが共存する優しい世界を作ろうという試みとそれに対するリクオとマサキの反応が「イヴの時間」という物語です。

イヴの時間はSFアニメの傑作!あらすじ・登場人物や感想をネタバレ考察のイメージ

目次

  1. イヴの時間のあらすじネタバレや登場人物を紹介!
  2. イヴの時間の登場人物は?
  3. イヴの時間のあらすじネタバレ考察!
  4. イヴの時間を観た感想や評価は?
  5. イヴの時間のあらすじネタバレや登場人物まとめ

イヴの時間のあらすじネタバレや登場人物を紹介!

さて今回ご紹介するのはSFアニメの傑作「イヴの時間」です。「未来、たぶん日本。“ロボット”が実用化されて久しく、“人間型ロボット”(アンドロイド)が実用化されて間もない時代。」主人公のリクオは家事アンドロイドの「サミィ」の行動記憶の中に命令した覚えがない行動を発見してしまいます。GPSで行き先を突き止めると其処には不思議な喫茶店がありましたという話です。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

このタイトルだけでフィリップ・K・ディックの傑作SF小説で映画「ブレードランナー」の原作です。近年、続編の「2049」も公開された「ブレードランナー」の舞台は近未来。「レプリカント」と呼ばれる人造人間が犯罪行為に手を染め、彼らを専門に追うハリソン・フォード演じるデッカード刑事の物語が「ブレードランナー」。

「イヴの時間」は「ブレードランナー」とは全く異なる切り口から「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に迫った作品です。つまり、人間と同じように作られ、一目で区別が付くように普段はリングを表示しているアンドロイドたちがどんな悩みや不安を抱えているかという事を問い、彼らと我々人類とが平和的に共存出来るのかという事を問いかける物語です。ネタバレですが劇中でセトロがこの作品の名を持ち出します。

スタジオリッカ

「イヴの時間」を作ったのはスタジオリッカというグループです。他にも「サカサマのパテマ」などを手がけています。

イヴの時間とは?

「イヴの時間」は元々はネット配信されていた各15話全6話の物語です。これを劇場公開用に再編集したのが劇場版「イヴの時間」です。内容が非常に現実的だということで絶賛され、各賞を受賞しました。更に海外発信向けにクラウドファウンディングで資金提供を募ったところ20万ドルもの大金が集まったため、多言語の字幕と英語吹き替え版が制作され、イラストや小説もオマケにつく豪華仕様となりました。

それでは登場人物のご紹介、ネタバレあらすじ、考察、作品に対する感想。最後にまとめの順番でご紹介させて頂きます。最後までどうかおつきあいください。

イヴの時間 | スタジオリッカ

イヴの時間の登場人物は?

「イヴの時間」には様々な登場人物が出ていますが、ここで紹介するのは一回限りの来店者は除外、来店しない人物も敢えてご紹介しません。店の関係者と常連客だけに絞ります。またあらすじ内で分かる情報はなるべく控えます。ネタバレあらすじの終わった段階でご紹介しなかった情報は考察に入ってから公開する予定です。

登場人物のご紹介

リクオは本作の主人公で高校生。サミィの行動記録から喫茶店「イヴの時間」を知り、常連客となります。ピアニストを目指していましたがロボットピアニストの乱入劇を通じてロボットに対する不信感を強め、サミィに対しても冷たい態度を取りますが、イヴの時間でのヒトビトとの交流を通じてそれが人間側の勝手な誤解だという事実に気づいていきます。人間の女性との関係はあまり上手でなく、デリカシーに欠ける部分もあります。

サミィは向坂家のハウスメイドロボット。リクオの母親からは娘のように大切にされ、本来ならリクオとの関係も良好だったのですが、ロボットピアニスト事件を通じてリクオから若干避けられています。一体どういう経緯で「イヴの時間」の存在を知ったかについては最後まで謎ですが、ナギに愚痴をこぼしたり悩みを打ち明けることで、「一番大事な家族であるリクオのため」になにか出来ることはないかと奮闘しています。

マサキはリクオの親友で特待生。将来はロボット法についての弁護士を目指しています。父は倫理委員会のメンバーであり、ロボット三原則に「嘘をついてはならない」が入っていないことにロボットへの不信感の根があります。リクオ同様に「イヴの時間」の常連客になりますが、本音の部分ではセトロに指摘されたように「ブレードランナー」。そうした在り方には過去が大きく関わっています。

ナギは「イヴの時間」のウェイトレス。店のルールを遵守させることにこだわっています。どんな姿のロボットにも差別なく接し、お客として扱います。リクオのことはサミィから聞いて色々知っていたことで、彼の疵を癒やすために行動します。実はリクオとは相思相愛の関係ともとれる描写もされています。

アキコは「イヴの時間」の常連客。ハウスメイドロボットですが、本性の部分では立て板に水の勢いで早口にしゃべる女の子です。リクオたちに正体が判明した後も変わらない態度で接します。また「家族のことが大事でもっと知りたい」という言葉に嘘はないようです。子供のあしらいも上手でシメイの不在時にはチエの面倒を引き受けています。ニット帽がお気に入りのようです。

コージとリナは「イヴの時間」の常連客で仲睦まじいカップル。リナはある出来事を通じてリクオに感謝しています。一見するとどちらかがドリ系のカップルのようです。

シメイとチエは「イヴの時間」の常連客です。チエは天真爛漫な女の子で悪戯好き、シメイは好々爺といった印象の男性。チエは自分を猫だというのがマイブーム。シメイはそんなチエが可愛くて仕方ないお爺さんのようです。

セトロは店の奥で読書に勤しんでいることの多い人物です。マサキは彼から「ブレードランナー」と指摘され、彼の正体を暴いてやろうと尾行したこともありましたがアッサリ失敗しました。謎めいた雰囲気の男性です。

劇中用語解説

ここでは劇中に登場する用語の幾つかについてあらかじめ解説させて頂きます。ほとんどが劇中でも説明されますのでご安心ください。

「ドリ系」を解説させて頂きます。人間型ロボットに精神依存している人間のことです。普及につれて人間よりも従順なアンドロイドを恋人がわりにする人たちを指します。

「倫理委員会」を解説させて頂きます。人間の尊厳を保つため、ロボットの違法行動を監視し、人間への啓発活動を行う民間団体のことです。

「ロボット三原則」を解説させて頂きます。ロボット三原則はSF作家のアイザック・アシモフが提唱した理論です。1.ロボットは人間に危害を加えない。2.ロボットは人間の命令に従う。3.ロボットは1条と2条に反しない限り自分の身を守る。以上の三原則から成ります。

「ハウスロイド」を解説させて頂きます。ハウスロイドは広く普及している家事用アンドロイドのことです。人間の形をした比較的新しい物から、人間の形からかけ離れた旧式まで色々。家電でかつ蔑視の対象となっています。

イヴの時間のあらすじネタバレ考察!

それではここからあらすじのネタバレ考察に入ります。今回ネタバレあらすじ紹介でご紹介するのは前述した通り全6話を纏めて公開された劇場版をベースにします。内容的にはほぼ同じですのでお好きな方を鑑賞されることをオススメします。バンダイチャンネルで各話ごとの視聴も出来ます。

「未来、たぶん日本。“ロボット”が実用化されて久しく、“人間型ロボット”(アンドロイド)が実用化されて間もない時代。」というメッセージから物語は始まります。芦森博士と瀬戸口の場面から物語は始まりますが、「イヴの時間」を楽しむだけなら詮索は必要がないので無視してください。ネタバレになりますがサミィの記憶回路整理のシーンも同様です。

命令した覚えのない行動記録

リクオはハウスメイドロボットのサミィの行動記録を確認していました。すると座標の羅列の中から「Are you enjoying the time of EVE?」という謎の文字列を発見します。「イヴの時間を楽しんでいるかい?」リクオには何を言っているのかわからないようです。

テレビでは日本の食糧自給率が80%を超えたとニュースが伝える一方で、倫理委員会の啓発CMが流されます。

ドリ系が社会問題化し、倫理委員会はロボットの行動制限にとても熱心です。ドリ系だと指摘されるのは今でたとえれば、「ロリコン」と指摘されるぐらいに恥ずかしいことだと理解してください。

不思議な喫茶店「イヴの時間」

登校したリクオはサミィの不可解な行動記録について親友のマサキに相談します。すると学校帰りにGPSの位置情報を辿ってみようという話になります。

GPSの発信源を辿ったリクオとマサキは「イヴの時間」という喫茶店の前に辿り着くのでした。二人が勇気を出して一歩店に足を踏み入れると。

こんな看板が置かれていました。「イヴの時間」のルールとは店内ではアンドロイドと人間の区別がつかないようになっていました。つまり、アンドロイドは頭部のランプを消しているのでした。

それは違法行為でしたが店は方針上、プライバシー厳守だとウェイトレスのナギに注意されます。注文を聞かれた二人は「イヴレンド」を注文します。

リクオとマサキはおしゃべりなアキコと知り合います。彼女はどう見ても人間のようでした。ドリ系を疑うマサキは彼女に何故ここに来るのか尋ねます。するとアキコは「家族のことが分かるようになりたいから」だと屈託なく答えるのでした。

後日、雨の日にサミィを待っていたリクオはアキコがクラスメイトのハウスロイドだと知ってしまいます。帰宅したリクオは正直なところショックでした。アンドロイドの本質は人間と見まごうほどだったのです。サミィのことが尚更理解出来なくなります。

サミィに珈琲を出されたリクオはその味がイヴレンドと一緒だと気づきます。「何勝手なことしてんだ」とリクオはいきり立ちますが、アキコの言葉を思い出します。「見た目が一緒なのに中身が全然違うから、理解を深めたい」そう感じていたのはアンドロイドの方だったのです。

眼鏡を取られて

翌日、リクオはマサキからロボット三原則について教授されます。三原則の中に「嘘をついてはならない」とは書かれていません。つまり、聞かれていないことに答える義務はなく、本当の事を答える必要もないということです。改めて「イヴの時間」に来店したリクオとマサキは態度の変わらないアキコに唖然とします。

そしてマサキは幼児のチエちゃんの悪戯で眼鏡を隠されてしまいます。アキコが言うにはパンツの中に隠したりするということ。仕方なく眼鏡を取られて視界がぼやけたまま過ごすリクオでした。一方、マサキは静かに読書するセトロを注視していました。「私になにか?ブレードランナー」とセトロに指摘され、「ルールに従順でないとここは楽しめない」と忠告されます。カッとなったマサキは店を出るセトロを尾行しようとします。

しかし、店はお客が出ていった後、しばらくドアがロックされる仕様になっていました。マサキは苛立ちますが、ナギから「プライバシーって大切よ」と指摘されます。マサキは出て行き、コージとリナのカップルも帰ります。リクオはアキコとの話に夢中になっていました。ロボットはなぜ内緒にしたり嘘をつくのか?チエちゃんを膝枕したシメイはそれは相手のためだからと指摘します。

リクオはやっとチエちゃんがナギに眼鏡を預けていたことに気づきます。眼鏡をかけたリクオの前に居たのはサミィでした。

カッとなったリクオはサミィがつけていた髪バンドに手を掛けて外します。サミィはバツが悪そうに店を出て行きます。後を追おうとしたリクオはナギに呼び止められます。「座りなさい」

ナギは諭すようにゆっくりと話し始めます。最初は打ち解けられなかったサミィでしたが少しずつ話すようになりました。服を買ってくれるお母さん、たまに見る怖い夢、ピアノを弾かなくなった男の子。そしてナギに頼んだのです「珈琲を上手く淹れるにはどうしたらいいか」と。サミィは色々と悩んでいたのでした。

カップルの秘密

店の常連客リナとコージはいつもイチャイチャしているカップル。思春期のリクオはリナの巨乳に釘付け。マサキがそれをからかうとナギは二人を紹介して話してみなよと言い出します。自己紹介はしたものの最初はぎこちなかった4人でしたが、コウジの持つシネマタイドに興味を示したリクオがファイルを広げると其処には別の女性とベッドに横たわるコウジが映っていました。リナは席を立ってしまい修羅場の予感。

リクオがリナを慰めに行くとリナの膝から部品が飛び出していました。リナは特注のアンドロイドで修理工場には出せない身でマスターの護衛役なのです。

一方、マサキがコウジを問い詰めると一緒に映っていたのは彼のマスターだと打ち明けます。つまり彼のマスターはドリ系でリナに雰囲気が似ているという話でした。

リクオとマサキは情報を突き合わせ二人が両方ともアンドロイドでそれぞれ相手を人間だと誤解しながら好意を持っている関係だと知ってしまうのでした。

浮浪ロボット「カトラン」の来店

リクオ、マサキ、ナギが他にお客がいないのでくつろいでいるとリクオがおかわりを頼んでナギが店の奥に居る間に浮浪ロボットが来店します。店のルールを確認したロボットは人間のフリをします。

最初はからかうようにあしらうリクオとマサキでしたが、ロボットが壊れる寸前だと気づきます。自己紹介で名乗ろうとしたロボットは奇妙な音を発して二人を閉口させます。

ナギはロボットをお客として扱います。リクオの行動を見たロボットは真似をしてイヴレンドを注文するのですが、二人はいつショートして爆発するかと気が気ではありません。どうにか飲ませまいと年齢を聞いたりするのですがどんどんややこしいことになります。

其処にチエとシメイが現れ更にややこしいことに。結局ロボットはイヴレンドをストローで吸い上げます。しかしチエのせいで足が取れてしまいます。そして、ナギが見守る前で力尽きます。

回収費用を惜しんだ持ち主が不法投棄の際に個人情報を消し、型番を削り落としたのです。人間の都合で使い捨てられるロボット。この事件が切っ掛けでナギやリクオに付き合いきれなくなったマサキは店に寄りつかなくなります。

リクオの古傷

リクオがピアノを弾かなくなった訳はコンクールで受賞した際に乱入したロボットが演奏を始めあまりにも上手くて感動したことでした。それからリクオはサミィにまで真似されるのを嫌い彼女の前でピアノを弾くのを止めてしまったのでした。リクオの弾くピアノがサミィは大好きでした。どうにかしたいという思いがあったサミィは夜中にピアノを練習します。そのせいで家族はリクオを含めて寝不足になっていました。

イヴの時間に来る前にリクオはマサキから嫌な話を聞いてしまいます。極秘裏に研究開発中の育児ロボットがシメイにそっくりだったのです。次々と人間の領域を侵していくロボットにリクオも思うところがありました。イヴの時間で寂しそうなチエを見たリクオは皆に冷たい態度を取ってしまいます。

二階席でうたた寝してしまったリクオは拙いピアノの音で目を覚まします。サミィがチエのリクエストでピアノを弾いたのでした。憤慨して下りて行こうとしたリクオは毛布に気づいてナギに返します。

そして、サミィやみんなの前でピアノを演奏するのでした。遅れて来たシメイにチエのことを感謝され、リクオの心は氷解します。

マサキの深い疵、ナギの隠された過去

イヴの時間でアキコとテレビを観ていたリクオはマサキについてもう来ないのかと聞かれます。マサキも難しい状況でした。倫理委員会の広報代表は真崎篤郎。マサキの実の父親でした。ナギたちはマサキが名前だと誤解していました真崎マサカズが本名だったのです。

倫理委員会の母体となった反ロボット団体はかつて「トキサカ事件」という少女への傷害事件を起こして当時の代表が辞任するというスキャンダルがありました。以後はなりを潜めてきたのですが、倫理委員会という団体として再び台頭してきたセトロはそうした事件と背景について語ります。

ずっと居ないと言い続けていましたがマサキの処には旧式のハウスメイドロボが居ました。マサキはテックスと名付けていました。幼い頃、両親の離婚に遭遇したマサキはテックスからお父さんもお母さんも悪くないと慰められます。

それを父、篤郎が影で見ていたのです。以来、テックスは一切話さなくなりました。そのことで裏切られたと感じたマサキはロボットには心などないと思っていました。

リクオはイヴの時間でナギから、家でサミィからリクオにまた店に来て欲しいと頼まれます。

マサキはリクオにまで裏切られたと感じていました。家でテックスにイヴの時間のことを話します。しかし、真崎篤郎はテックスに倫理委員会の重要情報を入力していました。スパイ・アンドロイドを選抜し、怪しい店に送り込んで内偵させるというものです。

店に来るようにナギとサミィに言われたと告げるリクオに怒ったマサキは倫理委員会に告げ口しようとしますが、テックスが自宅から居なくなっていました。そこへリクオから電話がかかってきます。

突然現れた旧式のロボットが店内でモメ毎を起こしている。テックスのことだと勘付いたマサキは慌てて駆けつけます。やはり店に来ていたのはテックスでした。

その後、テックスは客を装って入店したアンドロイドを見てデータベースを照合し、倫理委員会が放ったスパイだと判断します。篤郎から「何も話すな」と命令されていたテックスでしたが、アンドロイドの口からその場に居た人間の情報まで漏れればマサカズにも危害が及びます。

テックスはマサカズを守る為にアンドロイドに警告し、アンドロイドは退散します。上位にある篤郎の命令でなにも話せなかったテックスはマサカズを守るためにやっと言葉を話しました。リクオはやがてテックスもマサカズとまた以前のように話すようになると告げます。こうして物語は終幕します。

イヴの時間のネタバレあらすじ考察

ネタバレあらすじの感想は如何でしたでしょうか?登場人物について欠けていた情報もネタバレあらすじで大体埋まったかでしょうが何人か謎を残している人物がいます。彼らについてや倫理委員会について考察していきます。

サミィの悪夢と隠された過去についての考察

一体、サミィが誰の紹介で「イヴの時間」に来店するようになったか?その答えは彼女の過去と関わりがあると考察されます。

わざと存在をスルーしてきましたが芦森博士というAPCの主任研究者がサミィの母親だと考察されます。彼女はセトロこと部下の瀬戸口を使って「イヴの時間」を長らく内偵調査してきました。しかし、明らかに倫理委員会の規定に反した店の存在を報告することなく、少なくとも瀬戸口の調査を終わらせていません。

そしてコレです。つまり、芦森博士には自分の作った娘であるサミィの行動を把握しその行動をコントロールすることも出来ます。「サミィがイヴの時間を訪れたのは芦森の指示」と考察して間違いなさそうです。

また、浮浪ロボット「カトラン」とサミィは直接接触していませんがサミィは記憶の整理作業でカトランのことを認識しています。「カトラン自身にも検索出来なかった記憶をサミィは確認している」ので成立するこのワンシーンからサミィは近くに居る電子情報体の記憶の検索や補正まで可能な高性能アンドロイドだと考察出来ます。

またリクオがイヴの時間に初来店した際にはサミィとは遭遇していません。二度目で出会います。初回時に来店していたアンドロイドの記憶である書斎のシーンはサミィが盗み見したものだと考察出来ます。実はここが潮月博士の研究施設だということはエンドロールの最後で明白です。

そしてこのシーンですが劇中二度登場します。一度目はリクオがサミィの行動記録を調べていたとき、二度目は劇場版の45分過ぎ。サミィが自分の行動記録を整理するシーンですが、幾つか疑わしいものが混ざっています。画像が用意出来なくて残念ですがイヴの時間にいるリクオが座って驚いており手が前に。普通に考えるとアキコの視覚画像ですがその場面では「リクオと正対して座っておらず角度がおかしい」のです。

サミィ自身が目にしていない筈のリクオの画像と向坂家にサミィがやってきた経緯に芦森博士が存在すること。その後、芦森博士がサミィに危害を加える様子と謎の男性。謎の男性の左手は義手のようです。エンドロールに登場する彼こそが芦森博士の言う潮月であると考察出来ます。

サミィの言う悪夢とはこの前後の画像です。また、芦森博士は瀬戸口との会話から潮月と袂を分かっており、彼の所在と目的について探っていると考察されます。いずれにせよサミィはただのハウスロイドではありません。人工知能研究の第一人者が作り出したプロトタイプの高性能スパイアンドロイドと考察できます。

アキコ、ナギの正体とトキサカ事件の謎

あらすじで使用したのとは別のトキサカ事件の被害者少女の画像です。よく目を凝らすと名前が凪澤アキコと読み取る事が出来ます。エンドロールではあたかもトキサカ事件の被害者がナギであるかのようにされていますが、その相手は10年前には販売されていたテックスよりも遙かに旧式のロボットです。

倫理委員会でのやり取りやセトロのセリフからすると十数年前にトキサカ事件は起きています。報道は反ロボット団体がすり変えたもので実際には反ロボット団体のメンバーが誤って少女に対する傷害事件を起こしたと考察出来ます。

ちなみにアキコと言えば彼女です。彼女はリクオとマサキが目にした通り、クラスメイトのハウスロイドだということになっています。しかし、本当なのでしょうか?年齢的には事件当時の5歳から十数年を経て十代後半で付合しているようです。そして顔立ちはトキサカ事件の被害者の少女とナギにそっくりです。

つまりこういうことです。アキコにそっくりなハウスロイドはアキコをモデルにして作られた量産型で、潮月がデザインしたものだという考察。作られた目的は潮月が「トキサカ事件」の被害者であるアキコの存在を意図的に隠すためであり、「イヴの時間」に出入りしているアキコは実は人間だという考察です。

エンドロールの内容は一見するとトキサカ事件の概要と顛末のようですが、時間的には符号しません。かつてロボット法を揺るがす大事件が起きた。潮月博士や芦森博士が試作段階だったGHXを反ロボット団体に破壊され、養育被験対象者のナギが負傷。その後、ナギは二人に引き取られます。ナギと潮月博士が「イヴの時間」を作るために苦労してきたこと、潮月博士にとって元嫁の芦森博士に試作型のサミィを破壊されたことがトラウマ。

そして、並べれば姉妹のように似ている二人。アキコがアンドロイドだと思わせつつ人間ならば、協力者が不可欠です。一人はデザインした潮月博士。そしてもう一人がナギ。ナギはアキコの実の母親です。トキサカ事件とは当時は時坂町に在住していた潮月と助手のナギに対し反ロボット団体が破壊活動に及んだ処、二人の娘であるアキコに妨害され、誤ってアキコが重傷を負ったと考察できます。

皮肉にも歴史はまた繰り返されてしまったわけです。アキコの行方=潮月の所在地だと芦森博士は考えています。さてこのブランケットをリクオに掛けたのは誰でしょう?リクオはナギだと思っていましたが、ナギの反応は「ふーん」。店の二階にアキコは頻繁に出入りしていますがナギは一度も行っていません。

倫理委員会についての考察

倫理委員会は元は反ロボット団体でした。民間の団体であることは、倫理委員会=日本政府ではないことでも明白です。むしろ日本政府はAPCという政府系の研究機関にテコ入れしており、ロボットの活躍の場を拡大させようとしています。APCの研究者である芦森博士はロボット法さえも無視できる1138というコードの存在を警戒し、サミィやセトロを使って「イヴの時間」を内偵調査していると考察できます。

別の考察

イヴの時間は実験場。被験者はリクオ。根拠は、ロボット法違反なのにも関わらず、政府(倫理委員会など)は黙認。リクオの父はハウスロイドの仕事をしています。つまり、被験者は「一般人」ではなく「実験を計画した人の身内」が好ましいとの判断。つまり、実験の第一責任者はリクオの父で、仕事から推測するに、実験の目的は「なんらかの方法でハウスロイドの普及の促進を促すものの証明」というものです。

さっと読むと納得してしまうのですがテックスの事件がリクオの認知と無関係なのと芦森博士が事件を重要視していること。また「イヴの時間」が調査保留扱いになることなど矛盾する点があります。

続編についての考察

物語はリクオの「それはまた別の話」で終わります。つまり続編の可能性を示唆しながらも、劇場公開から8年経つのに作られていません。考察しようとしましたがそれらしき情報は発見出来ませんでした。

他にも「イヴの時間」についての考察には様々なものが存在します。筆者が示した考察も単なる憶測に過ぎません。興味のある方は調べてみては如何でしょうか?

イヴの時間を観た感想や評価は?

それでは「イヴの時間」に寄せられた感想についてまとめます。8年前の作品ですのでわりと新しい感想をなるべく沢山ご紹介します。レヴューサイトでの感想・評価は5段階で4に届くか届かないぐらいです。否定的な感想はほとんど見かけませんでした。

人工知能やロボットが徐々に我々の日常に組み込まれつつある今の時代にあらためて観ると感慨深い。

公開時ではなくて今見てるから余計にそう感じるんだろうけど、現実とフィクションのバランスが絶妙。特にロボットに対する話し方は秀逸。

確かに人間がハウスロイドに対して抱く「家電」扱いやからかいの描写については如何にもありそうです。その一方で精神依存して「恋人」扱いするドリ系が居る事もかなり現実的です。なにしろスマートホンという道具にさえ精神依存する人が多い世の中になりましたから。人の形をしていなくても、スマホのアプリでAIが自動的に恋人と会話するような音声対応するだけで精神依存しきる人が続出しそうです。

最初に観た時は不法投棄のカトランで泣いた。何度も何度も観ると誰かの為にと意思をもって行動していること自体に考えさせられ感動する。人間とロボットを区別しない「ルール」としたのが効果的だった。

不法投棄の描写についてもリアルでしたし、とうとう名乗れなかった「カトラン」という名前に泣かされるという感想も多いようで「イヴの時間 カトラン」と検索するだけでも相当数ヒットします。

イブの時間は名前は知ってたけど見ていない作品の代表例でした。今回教えてもらって本当におもしろく観ることができました。

とてもシンプルな感想なのですが、胸に手を当てると思い当たる節がちらほらと。詰み本や録画放置されている映画など、ついつい接する機会を逃しているものに心当たりはありませんか?

正しいと思うこと自体がエゴで、大切を守るためのルール、大切を守るための行動、そこには色んな視点があって、みんな守りたいものはそれぞれだから、簡単じゃない。

皆さんはどのような感想に共感されましたか?実のところご紹介出来るような文章量ではない長い感想が圧倒的に多く、ブログとして感想や評価、考察をまとめて紹介されている方がとても多いです。それだけ、作品に深く考えさせられる要素が詰まっているようです。

イヴの時間のあらすじネタバレや登場人物まとめ

さて、そろそろまとめに入らせて頂きます。「イヴの時間」は決して遠くない未来に現実に起こりそうな事柄を描いています。実際にAI(人工知能)は恐るべき速度で進化し続けており、これにロボット工学の技術を加えれば人間の能力を超え、様々な分野に進出して人間から仕事という仕事を根こそぎ奪い取る日もそう遠くないようです。

その一方で発電所がストップすると北海道中停電という事態。電気がなければどんな道具もガラクタで、場所によっては水も飲めない。昨今はフィクションを超えるような現実が溢れていて、何を何処まで想定すれば良いやらという世の中です。

ファティマまたはオートマティックフラワー

「イヴの時間」や「ブレードランナー」とは異なるものとして「ファイブスター物語」という作品があります。これはデザイナーの永野護が月刊ニュータイプ誌上で現在も連載中の漫画です。ファティマはその物語の中に登場する有機演算生命体のことです。つまり、ロボットを通り越した人造生命体です。

多くの場合、女性型として作られるファティマはモーターヘッドと呼ばれる巨大ロボットの操縦をサポートするために産み出されます。しかし、一般人以上の能力を持つため権利を著しく制限されています。ファティマからマスターと呼ばれるのは騎士またはヘッドライナーと呼ばれる極めて高い戦闘力を持った人間だけです。騎士もファティマも「星団法」という超国家的法律で厳しく行動制限されています。

連載期間は30年を超えますがまだ最新刊にして14巻という極めて遅いペースで進行しており、いきなりの大幅設定改変など付き合う方も大変な作品です。ファティマという呼称も現在はオートマティックフラワー(AF)に変更されています。本質的には人間以下に扱われ、人間に見えないように振る舞い、一般人に抵抗すら許されないという意味ではロボット以下の扱いで多くの悲劇を生んでいます。

まとめ

さて今回は「イヴの時間」をご紹介させて頂きました。正にSFアニメの傑作という内容で前述した通り、劇場公開から10年を経た現在の社会ではより吃緊の課題となっているようです。AIの性能の問題やロボットの安全性といった問題よりも法整備が遅れていて果たしてサミィのような人間型ロボットが現れた時にそれに対応出来る法律が用意されているのか?という問題は深刻です。

なにしろ2020年の東京オリンピックに向けて「空飛ぶ自動車」が開発中。自動運転システムについても研究や試験は進んでいるのに法整備は全く進んでいない状態なのです。そうした社会の到来と容易に予想される問題に対する想像力が欠けている人たちが立法の府に多いのが最大の問題かと。議員さんたちにも「イヴの時間」を観て頂き、劇中の倫理委員会のように啓発する必要性がありそうです。

もっとも、何処までがロボットで何処からが非ロボットなのかという定義も曖昧です。トラクターはロボットではありませんが、それがGPSの位置情報をもとにAIによって動かされたらロボットなのでしょうか?それと人間の尊厳とはなんの関係もありませんし、味が変わるのは単なる錯覚です。ドリ系というのも2次元のキャラクターやスマホに精神依存する人たちと比べたらとキリがありません。

上に紹介した漱石先生のアンドロイドではありませんが「皆様ご機嫌よう」。ご覧になられていない方は是非一度は「イヴの時間」をご覧になられては如何でしょう。

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